実力主義の教室にようこそせず   作:太郎

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お気に入り300人突破ありがとうございます!

今回は特にオリ主ちゃんの性格が出たんじゃないかな。苦手な人はごめんなさい。今までと変わってないよって思ったらごめんなさい次に期待してください。


7話

「ポイントが入らないって、どうすりゃいいんだよ」

 

「私、ポイント全部使っちゃったよぉ……」

 

 似たような声がクラス中であがる。ポイントが既にない人がたくさんいるらしい。かわいそうだ。いや〜それにしても朝のホームルームで全部説明してくれて助かった。わざわざ授業受けなくてもいいじゃん。ありがとう佐枝ちゃん先生。

 私はカバンを持って立ち上がるとドアの方へ向かう。有栖ちゃんにポイントが入っていることは確認できたし、それを確実に我がものにするために早く帰ってチェスの練習をしなければ。ボードゲーム部でもポイント支給日ということでいつもより活発に賭けが行われることだろう。今から楽しみだ。そうしてドアに手をかけた私に声がかかる。見つかった。

 

「松崎さん、どこへ行くんだい?」

 

 振り返ってみると声の主は我らDクラスのリーダー洋介くんだ。洋介くんが帰ろうとした私に声をかけたことでクラス中が静まり返り私を見つめる。団結力〇じゃん。

 

「どこって?帰るんだよ?」

 

「帰るって…?」

 

  何を言ってるんだい?といった顔をこちらに向ける洋介くん。彼は佐枝ちゃん先生の話を聞いてこれからは真面目に授業を受けていかなければと考えたらしく、私の行動が理解できないらしい。

 

「そのままの意味だよ。あぁこの学校が嫌で実家に帰らせていただきます。って話じゃなくてこの教室にいる意味がなくなったから寮の自分の部屋に帰るってことだよ」

 

 私はしょうもない冗談で返す。しかし誰もクスリともしない。それどころか私を見る目が険しくなるばかりだ。

 

「来月、ポイントを獲得するために僕たちはクラス全体で協力しなきゃならない。まずは欠席や授業中の私語なんかをなくしていかないとダメだと思うんだ。違うかな?」

 

 洋介くんは優しくゆっくりと言う。ここで私が「心配しないで、今日の分の出席は買ってあるから」なんて言ってもそういう話ではないのだろう。3分の1は買ってないわけだしね。ならばここで私の考えをクラスに伝えておいた方が今後が楽だろう。

 

「うん、何も間違ってないと思うよ。まずはマイナスをなくしてどこかでポイントを増やす。これがDクラスが来月からポイントをもらおうとするならばすべきことだよ」

 

「そこまでわかっているんだね。ならどうして松崎さんは帰ろうとしているんだい?」

 

「単純な話だよ。私はポイントはいらないからだよ」

 

「ポイントがいらない?」

 

「うん、正確には頑張って授業を真面目に受けてまでポイントをもらうくらいなら評価最低でも自由な時間を過ごしたいんだ。それに佐枝ちゃん先生も言ってたじゃん。この学校ではポイントがなくても死にはしないって」

 

 そう。これが私の意見。きっとこの考えは私でいうボードゲーム部のような学校から支給されるポイント以外にポイントを得る手段を手に入れることができた者にしか理解できないだろう。

 みんなが私の話を聞いてまたザワザワしだす。おおよその内容は私への文句だろう。

 

「だいたいアンタが毎日サボるせいでポイントがなくなっちゃったんじゃない!アンタがいなければ少しくらいポイントが残ってたかもしれないのに!」

 

 誰かがそう叫ぶ。それを皮切りにみんなはっきりと私に憎悪を向けてくる。洋介くんはそんなクラスメイトをどうしたらいいか分からずにオロオロしている。頑張れ。

 

「確かに私がいなければポイントは少しは残ったかもしれない。でもそれはみんなも同じでしょう?遅刻欠席105回、授業中の私語や携帯を触った回数391回だっけ?前者に関しては私は数日関係してるけど後者に関しては全くの無関係だし、結局は誰かがいなくてポイントが増えたとしても誤差の範疇だよ」

 

 あっけらかんと言う私にみんな一瞬黙り込むがすぐに一人の男子生徒が声をあげる。

 

「…お前がサボったのは数日どころじゃないだろ!初日以外1度も来なかったじゃねぇか!」

 

「あぁそれなら心配しないで。私、授業の出席買ってるから。出席日数足りないとこの学校だからとか関係なく退学になっちゃうからね」

 

「「「えっ…」」」

 

「私は3分の2の出席を買ってるから今月だと私が欠席扱いになってるのは7日かな?ほら数日でしょ?」

 

 クラスがまたもや静まり返る。誰も出席を買うという発想はなかったらしい。もういいかなと思って再びドアに手をかける。

 

「そんなふうにポイントを使ってるならこのままじゃなくなっちゃうんじゃないかないかな?」

 

 そう優しく声をかけてくるのはやはりこの男。洋介くんだ。無視をしてさっさと帰りたいところだが我慢する。

 

「そうだね。もしそうなったら授業を受けに来るよ」

 

「それはポイントが続く限り学校に来ないということかい?」

 

「うん。ごめんね。私もポイントがあるに越したことはないからみんなのことは応援してるよ。あっそうだ。本気でポイントを増やしたいなら私が買ってない残りの3分の1の授業の出席をみんなで買うってのはどうかな?1授業につき1000ポイントだって。クラスみんなで分ければそこまで痛手じゃないでしょ?もしその気があったら連絡してよ。私が買ってない授業教えるからさ。じゃあ今度こそまたね。」

 

 私は矢継ぎ早にそう言うと返事も聞かずに教室から出る。肩凝ったわ〜。あ〜あせっかく桔梗ちゃんとも友達になったのにな〜。まぁ私がこんなふうに行動しても特に問題なく過ごしていけるようなルールを作った学校が悪いよね。

 よし!チェスの練習だ。あっその前に佐枝ちゃん先生に今月分のポイント送っとかないと。

 

 

 

 

 

 

 部屋に帰ってきてチェスの練習をして数時間が経った時携帯が鳴る。ディスプレイには佐枝ちゃん先生と表示されてある。学校は今、昼休みだそうだ。いい予感がする。

 

「はい、松崎です。いきなり電話なんてどうしたんですか?」

 

『君は電話にすぐ出るタイプだったんだな。意外だ。それで要件だが今日の放課後、職員室まで来い』

 

 失礼なことを言われた気がするが気にしないでおく。要件についてはどうせ放課後には部活に行こうと思っていたから制服から着替えてないので学校に行くこと自体はそう苦ではない。だが理由が気になるところだ。

 

「どうしてですか?」

 

『理由は言えん。』

 

 えっ!人を呼び出そうとしておいて理由言えないってどうよ?なんか一気にダルくなったな。

 

「嫌です」

 

『お前ならそう言うと思ったがな、残念ながらこれは命令だ。来なければ退学処分とする』

 

 退学処分。物騒な言葉が出てきた。なにか退学になるようなことでもしてしまっただろうか?それともタダの脅しだろうか?

 もし脅しならここでYESと言えば今後も似たように呼び出しをくらってしまう。それはダメだ。初めが肝心なのだ。ここは勝負だ。

 

「特に退学になるようなことをした覚えはないのでいきません。それに一教師が生徒を好きに退学させられるなんて職権濫用でしょ。私はそんなことはできないに賭けます」

 

 電話口の向こうでため息が聞こえる。気のせいかな?私、佐枝ちゃん先生にため息つかれすぎじゃない?

 

『はぁ、わかった。5000ポイントやるから来い』

 

 やっぱり出来なかったらしい。それにポイントを払ってまで私にしたい話は気になる。しかし長引いて部活に行けないなんてことになったら笑えない。今日は稼ぎどきなのだ。

 

「私今日、部活に顔出すつもりなんですけど、用事ってどれくらいで終わりますかね?」

 

『長くなっても30分といったところだ』

 

 30分…それくらいなら特に問題ないか。

 

「分かりました。いきますよ。あぁでもポイントはいりません。まぁ借り1つってことにしておいて下さい。放課後すぐに向かえばいいですか?」

 

 ポイントは別にいらない。先生に生徒を退学する権利がないこと、先生からのポイントの譲渡が可能なことがわかっただけでも儲けものだしね。

 

『あぁそうしてくれ。くれぐれも遅れるなよ』

 

「はーい」

 

 電話を切るとアラームをセットする。七限が終わる20分前にセットしとけば余裕で間に合うだろう。そして視線をチェス盤に移す。さて次はどっちの手番だっけ?

 

 

 

 

ピピピピピ、ピピピピピ

 その音で私の意識はチェス盤から離れる。時間のようだ。私は鏡の前で軽く身だしなみを整えてから学校に向かう。今から向かえば学校に着くころには七限がちょうど終わるところだろう。

歩きながら佐枝ちゃん先生の話が何なのか考える。

 私になにか伝えるだけなら電話だけでもよかったはずだ。なら何か手渡すものや見せたいものがあるかそれとも私と佐枝ちゃん先生以外の第三者もいるか。他にも単純に電話では話すようなことではない大事な話ってこともある。

 渡される物といってパッと思いつくのは先日行われた小テスト。休んで受けなかった私のためにわざわざ用意してくれたのかもしれない。しかしこれなら私にポイントを払ってまで呼び出す必要はないし、今日である必要もないだろう。

 第三者がいる場合はどうだろう?ポイントを払ってまで呼び出そうとする訳だし怒られることではないだろう。しかし褒められるのなら呼び出しの理由が言えないのは意味が分からない。かと言ってなにか学校の重大な話なんかを聞かされても私にはどうしようもない。

 この学校ということに囚われずに考えるともしかしたら佐枝ちゃん先生は教師として私とクラスメイトとの和解の機会を設けてくれたのかもしれない。昼休みに電話なんてあまりに行動が早すぎる気がするがこれなら私に理由を言えないのも分かる。先に教えられていたら絶対に断る。めんどくさいしね。それにポイントを払ってまで呼び出したいのも自分の生徒を思う気持ちがあってのものかもしれない。

 うん、考えれば考えるほどそんな気がしてきた。行きたくなくなってきたが約束を破るわけにはいかない。

 学校に着くと廊下を歩いている生徒がチラホラいる。どうやら既に7限は終わっているらしい。ゆっくり歩きすぎたようだ。少し急ぐか。

 

『1年Dクラスの綾小路くん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

 ん?清隆くんも佐枝ちゃん先生に呼び出されてる。私の予想は外れているのだろうか。それとも清隆くんが私の説得代表?清隆くんには悪いが力不足役不足だろう。いや気弱そうだし押し付けられた可能性もなくはないが、洋介くんや桔梗ちゃんはそんなことをするくらいなら自ら私のもとへ来そうだ。実は私が知らないだけで清隆くんも私と同じくらいクラスで浮いて私と一緒に説得される側かもしれない。事なかれ主義を自称する彼に至ってそれはないと思うが。

 職員室に着くとちょうど清隆くんが扉の前にいた。彼も今着いたところのようだ。

 

「やっほ、清隆くん。私も佐枝ちゃん先生に呼び出されたんだけど同じ要件かな?」

 

「お、おう松崎。俺は松崎と違って特に悪いこともしてないし別々の要件じゃないか?」

 

 相変わらず一声目はどもる清隆くん。可愛い。

 

「私も悪いことはしてないよ。それに私も放課後すぐ来るように言われてたしわざわざタイミングを同じにするってことは多分同じ要件だよ」

 

「そうなのか?まぁ先生に聞けば分かるだろ」

 

 そう言って職員室の中へ入る清隆くんにひょこひょこついていくと清隆くんは近くにいた先生に茶柱先生がいるか尋ねる。

 

「え?サエちゃん?えーとさっきまでいたんだけど」

 

 そう応えた先生は、セミロングで軽くウェーブのかかった髪型をしている可愛らしい人だった。佐枝ちゃん先生とは友達なのかもしれない。

 

「今、席を外してるみたい。中で待ってれば?」

 

「いえ。じゃあ廊下で待ってます」

 

 そう言って職員室から出ていく清隆くん。私はまたもやひょこひょこと後ろをついていく。職員室の中で待ってても気まずいしね。

 2人して廊下に出ると、さっき質問に応えてくれた先生もなぜかついてくる。

 

「私はBクラスの担任の星之宮知恵って言うの。佐枝とは、高校の時からの親友でね。サエちゃんチエちゃんって呼び合う仲なのよ〜」

 

 佐枝ちゃん知恵ちゃん。響きがいい。

 

「ねぇ、2人はどうしてサエちゃんに呼び出されたの?」

 

「さぁ?それは俺にもサッパリで」

 

「私も理由聞いたけど教えてもらえませんでした」

 

「理由も告げずに呼び出したの?ふーん、君たち名前は?」

 

 やっぱ理由聞いても教えてくれないって変だよね。よかった、この学校では普通とかじゃなくて。

 

「綾小路、ですけど」

 

「松崎です」

 

「綾小路くんに松崎さんかぁ〜。2人ともモテるでしょ〜?」

 

 この先生グイグイくるなぁ〜。清隆くんがペースについていくのに必死だ。ここは私が助けてあげよう。

 

「そういう知恵ちゃん先生の方がお綺麗ですよ。おモテになるんじゃないですか?」

 

 話題を私たちから知恵ちゃん先生に移す。知恵ちゃん先生は褒められて嬉しいのかにっこり笑う。

 

「松崎さん、嬉しいこといってくれるね〜。綾小路くんもこれくらい言えるようにならないとダメだそ〜。つんつんっと」

 

 助けようとしたつもりだが結局、矛先は清隆くんへ向かう。無念なり。清隆くんも固まってしまってるではないか。

 

「なにやってるんだ、星乃宮」

 

 知恵ちゃん先生の後ろから突如現れた佐枝ちゃん先生がクリップボードで知恵ちゃん先生の頭をはたく。痛そうだ。

 

「いったぁ。何するの!」

 

「うちの生徒に絡んでただけだろ」

 

「サエちゃんに会いに来たって言うから、不在の間相手してただけじゃない」

 

「放っておけばいいだろ。待たせたな綾小路、松崎。ここじゃなんだ、生徒指導室まで来てもらおうか」

 

 先生二人の会話からも仲がいいことが伺える。いいな〜。私もいつか佐枝ちゃん先生と仲良くなって美紀ちゃんと呼ばれたいものである。

 

「それは大丈夫ですけど。指導室って俺なんかしました?松崎だけなら分かりますけど」

 

「だから私がなんか悪いことしてるみたいな言い方はやめてよ」

 

 清隆くんが私だけを売ろうとする。清隆くんの中で私のイメージはどうなっているんだ、まったく。

 

「口答えはいい。ついてこい」

 

 佐枝ちゃん先生は私たちにそう言うとついてこようとする知恵ちゃん先生を睨みつける。

 

「お前はついてくるな」

 

「冷たいこと言わないでよ〜。サエちゃんがわざわざ新入生2人を指導室に呼び出すなんて…何か狙いがあるのかって気になるじゃない?」

 

 ニコニコと笑いながら清隆くんと私の肩に手を置いて知恵ちゃん先生は続ける。

 

「もしかしてサエちゃん、下克上でも狙ってるんじゃないのぉ?」

 

 下克上、つまり私たちが上のクラスにあがることだろう。確かにそれは生徒みんなが多かれ少なかれ狙っていることだ。

 だがしかしそれはクラスの問題であり、生徒の問題だ。それに担任が介入してくることはあるのだろうか?もしかして私は今からクラスメイトの説得よりもめんどくさい話を聞かされるのだろうか?

 

「そんなこと無理に決まってるだろ」

 

「ふふっ、確かにサエちゃんには無理よね〜」

 

 含みのある言い方。もしかしたらDクラスを任された佐枝ちゃん先生も不良品でしたなんてこともあるのかもしれない。

 ついてくる知恵ちゃん先生とついてきてほしくない佐枝ちゃん先生の言い合いを見ていると1人の生徒が私たちの前に立ちはだかる。巨乳の美人さんだ。

 

「星乃宮先生。少々お時間よろしいでしょうか?」

 

 どうやら彼女は知恵ちゃん先生に用があるらしい。しめたと思ったのか佐枝ちゃん先生は知恵ちゃん先生のおしりをクリップボードで叩いて言う。

 

「ほら、お前にも客だ。さっさと行け」

 

「もう〜。これ以上は本気で怒られそうだから、またね、綾小路くんに松崎さん。じゃああっちで話しましょうか、一之瀬さん」

 

 そう言って、職員室へ入っていく知恵ちゃん先生。どうやら巨乳美人ちゃんは一之瀬さんと言うらしい。

 佐枝ちゃん先生は知恵ちゃん先生を見送ったあと指導室へと入っていく。

 

「で?なんで私たちを呼んだんですか?」

 

 私はずっと気になっていたことを質問する。そろそろ教えてほしい。

 

「それなんだが、話をする前に少しこっちに来てくれ」

 

 佐枝ちゃん先生は時計を確認したかと思うと、指導室の中にあるドアを開けて私たちを中へ促す。どうやら給湯室のようだ。

 

「お茶でも沸かせばいいんですかね。ほうじ茶でいいですか?」

 

「いいねっ、どっちが多く茶柱立てれるか勝負しようよ」

 

 私がワクワクとヤカンに手をかける。

 

「余計なことはするな。黙ってここにいろ。いいか、私が出てきてもいいと言うまでここで物音立てずにじっとしてるんだ。破ったら退学にするぞ」

 

 佐枝ちゃん先生はそう言って私を見るといらないことは言うなと目で語りかけてくる。いいでしょう。じっとしといてあげましょう。サービスサービス。

 佐枝ちゃん先生が出てドアを閉める。清隆くんと二人で首を傾げながら待っていると程なくしてドアの開く音が聞こえる。

 

「まぁ入ってくれ。それで私に用とはなんだ?堀北」

 

 どうやら佐枝ちゃん先生は私たちに盗み聞きをさせたいらしい。

 

 

 

 

 

 

 




オリ主ちゃんの考え Dクラスみんなで頑張る?いいじゃんいいじゃん!えっ協力してほしい?それはめんどいからパス

今までオリ主ちゃんの思考メインだったから、会話めっちゃムズい。
そして中々1巻が終わらない。
あえて言う。もっと感想と評価が欲しいです。

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