淫魔ちゃんねる二次   作:イベンゴ

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まんが日本昔ばなしはトラウマ製造アニメ。
異論は認める。












「牛鬼渕」

 

 

 

 

 

 

 ひとつ昔のお話をいたしましょう。

 ええ、伊勢という国の山奥でございます。

 はあ、今の三重県でございますねえ。

 かの伊勢神宮で有名でしょう。

 お参りされたかたもおられるのではないでしょうかね。

 さて、その山奥でございますが。

 ある時二人の木こりが山深く入って木を切っておりました。

 一人は年寄りで、一人は若者です。

 昔のことですからねえ。

 今みたいに重機やチェーンソーなんて便利なものはありません。

 日がな一日木を切って、日が暮れればノコギリの手入れです。

 ある夜のことでございました。

 若者が寝酒を飲んでいる横で、年寄りは念入りにノコギリの手入れをしておったのでござい

ますね。

 そこへ――

「こんばんは」

 鈴のような声でした。

 一人の可愛らしい娘がひょっこり顔を見せたのでございます。

 ええ、山の中です。

 しかも夜でございますからねえ。

 はあ、山の中に住む人間もいたと?

 そうですねえ。

 難しいことは浅学でわかりませんが、山窩などと呼ばれた人たちでしょうか。

 そういう人は猟師や木こりと交流することもございましたでしょうねえ。

 ただ、このお話では違っておりまして。

 若者は、

「おや、こんなところに可愛い娘が」

 と、うれしく思ったのでございます。

 鼻の下が伸びていたかもしれませんねえ。

 ですが、年寄りはこの娘を見るなり、ゾッとしたのでございます。

「何をしてるの?」

 娘は尋ねました。

 すると年寄りは心の内を隠して、何気なく、

「ノコギリの手入れよ。木を切ると痛むんでな」

「へえ。じゃ、それで木を切るのだねえ?」

 娘は小首をかしげてまた尋ねます。

「そうだ。けど、この一番最後の刃な。これは鬼刃ちゅうて鬼が来たらひき殺す刃よ。

見せたろうか?」

 年寄りがそう答えますと、娘はキョトンとしました。

 それから、クスクス笑って消えるように去っていったのでございます。

「なんだ、今の娘っこは?」

 若者は娘が去ったのをちょっと名残惜しく思いながら言いました。

「こんな山の中に、あんな娘がおるのはおかしい……。まさか牛鬼じゃあるまいな」

 年寄りは改めてゾッとしながら、つぶやくように言います。

「まさか。ありゃどう考えても人間だった」

 若者は笑い飛ばしますな。

 ええ、昔の人間だってそう迷信を丸のみしてるわけでもございません。

 牛鬼と申しますのは、頭が牛で体が鬼のバケモノです。

 月夜の晩に吠えたり、人間の影をなめたりするなどと言われております。

 なめられた者はどうなるのか?

 さあて……。震えついて死んでしまうとか、言いますが本当のところはわかりません。

 次の日でございました。

 木を切っている最中に、ノコギリの鬼刃が折れてしまったのでございます。

 はい、大きなノコギリを二人がかりで切るのですからね。

 力が過分になってしまうこともあったでしょう。

 やむなく、年寄りはノコギリを直してもらうために下山することにしました。

 一緒に降りぬかと若者に言いましたが、

「面倒くさいわい」

 と、若者は笑って断りました。

 はあ。

 口うるさい年寄りから少し離れたかったのもあるでしょう。

 しょうがないので、

「くれぐれも鬼刃が欠けたことは言うなよ」

 と言い残して、年寄りはふもとへ……。

 そして、でございますよ。

 この夜のことです。

 若者が寝酒をやっているところに、

「こんばんは、こんばんは」

 と、またゆうべの娘が現れたのでございます。

 若者は酒の勢いもありまして、

「ノコギリの鬼刃が欠けたんで仕事がいったん休みになった」

「はあ。じゃあ、鬼刃はもうないんだね?」

 不思議な娘は面白そうに笑っております。

「娘さん、よかったら一緒にやらんかね?」

「まあ、うれしい」

 そしてしばらく二人は楽しくやっておったのでございますが。

 やがて、若者はおかしなことに気づきました。

 酒のせいでしょうか?

 娘の体が次第しだいに大きくなってきたように思えたのです。

 そればかりか、乳房は大きく盛り上がり、まるでスイカのようでございます。

 はて、飲みすぎたかと思っておりますと。

 気づけば、娘は見上げるような大きさになっておりました。

 こうなると、さすがに若者もあわてました。

「お前さん……」

 と、声をかけたところで、ちょうど酒がなくなったのでございます。

 すると、娘はニコリと優しく笑ってこう言いました。

「まあ、お酒がなくなったねえ。じゃあ、わたしのうちで飲みなおしましょう」

 そういうなり、若者をひょいと抱えてしまったのです。

 ハッと見上げると、娘の頭には牛のような角がはえておりました。

「……あ!」

 そう叫ぶ間こそありません。

 娘は若者を抱えて山の道をずんずんと歩いていきます。

 ええ、もう大人と子供ほどの違いがあったのですねえ。

 あまりの恐ろしさに、若者は声もありませんでした。

 いえ、そうなってはもう抵抗してもどうにもなりませんよ。

 暗い山の中を、牛鬼はずんずんと進みましてねえ。

 やがて、深くて暗い池の前に来たのでございます。

 牛鬼は若者を抱えてざぶんと、池へ入ります。

 そのままです。

 牛鬼も若者も、見えなくなってしまったのでございますねえ。

 はい、それっきりでした。

 年寄りが帰ってきた時、若者はどこにもいなかったのでございますよ。

 山狩りなども行われましたが、結局見つかりませんでした。

「あれほど鬼刃が欠けたことは言うなと……」

 年寄りはそんなことを言ったとか言わないとか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛鬼「人間おバカすぎwwwwwwww」

 

 

1:名無しの牛鬼

人間きゅん、ノコギリの刃で鬼が死ぬとか思ってた件www

 

2:名無しの牛鬼

wwww

 

3:名無しの牛鬼

ねえよwww

 

4:名無しの牛鬼

ノコギリって人間の使う道具でしょ?

死ぬわけねえじゃんwww

 

5:名無しの牛鬼

いくら人間きゅんがバカでもなあ……

 

6:名無しの牛鬼

ホンマか?

 

7:名無しの牛鬼

あー聞いたことあるかも

昔、そんな話があったらしいわ

 

8:名無しの牛鬼

うわー

 

9:名無しの牛鬼

すごい話だな

 

10:名無しの牛鬼

実際話聞いた時は爆笑しそうになったとか

 

11:名無しの牛鬼

そらそーだ

 

12:名無しの牛鬼

誰だってそーなる

 

13:名無しの牛鬼

でもまあ結局好みの人間キュンをゲットできたんでハッピーエンドだったそうな

 

14:名無しの牛鬼

うらやましい……!

 

15:名無しの牛鬼

しかしうちらあんまり人間に認知されてねーな

 

16:名無しの牛鬼

名前だけは有名っぽけどな

 

17:名無しの牛鬼

よくミノタウロスと間違えられる

 

18:名無しの牛鬼

友達の牛頭も言ってたわ

 

19:名無しの牛鬼

ってかさ

絵に描かれてる牛鬼ってなんで蜘蛛みたいなのがあるん?

 

20:名無しの牛鬼

うちら女郎蜘蛛と関係ないのにな

 

21:名無しの牛鬼

やっぱり水に住むこと多いからじゃね?

 

22:名無しの牛鬼

あいつらも水棲が多いな、そういや

 

23:名無しの牛鬼

ごっちゃにされたのかあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











 〇牛鬼 うしおに、ぎゅうき
 水に住むことの多い魔族。
 世界各地に類似種が存在する。
 水中には人間も快適に暮らせる住居があるが、さらわれた人間はまず戻らないため
 人食いだと誤解された。
 また日本では仏教の影響により恐れられた。



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