蓮太「悪い、ゴースト……ちょっと疲れたから魂に戻っててくれ」
そう一言だけ言って彼女を戻したあと、改めて考える。
あの時に感じたあの感覚、『人助け』の言葉に反応したこと、一瞬でピンと来た。
理由が綾地さんと同じなのなら、あんな変な部活にいきなり入りたいと願う事もわかる。
紬「ごめんね? その……隠し事しちゃってて……」
蓮太「気にすることないだろ、魔女なんて存在は周りの人達には認知されていないものだ、存在そのものを信じやしないさ。俺たちみたいな
それに……ぶっちゃけそれのお陰で助かったんだ。どっちかって言うと謝らなきゃいけないのは俺の方だ。
紬「綾地さんも魔女……なんだよね?」
寧々「はい、そうですね。椎葉さんと同じく《心の欠片》を集めています」
蓮太「つっても安心してくれ、別に椎葉さんの事情を深く探るつもりはないからさ」
持ってきてくれた飲み物をグイッと飲みながら言葉を続ける。
蓮太「大体の事は察したしな」
きっとあの喫茶店で出会ったあののじゃロリっ子が契約者なのだろう。会話から察したりするとそう考えるのが1番辻褄が合う。
紬「え? なんで……?」
蓮太「生きていく上で言いたくないことなんていくらでもあるだろ、別に魔女になったきっかけとかも聞く気は無いし、それについてのデメリットは大体予想できてる」
明らかに違う椎葉さんと他の女子の場所……そう、服装。それがおそらく魔女としての代償。
最近の違和感だった点が徐々に結びついてきたな。
寧々「そうですね、私も無闇矢鱈に付け入る気はありません。お互いにそうなってしまった事情があると思いますし…………」
紬「綾地さん…………ありがとう、えへへ……」
新たな魔女が判明したのもそうだけど……もっとやばい事が発覚している。まずは今の俺にはやっぱり《心の欠片》が必要なこと、欠けた部分はやっぱりあの薬じゃあどうしようもなかった。
つまりはまた振り出しに戻ったってことだ。そして…………
蓮太「にしてもまさか綾地さんに続いて椎葉さんの《心の欠片》まで奪っちまうとは…………本当にごめん」
紬「う、ううん! 全然気にしないで!? あんな事情を聞いたあとだと、そんな小さなことなんてどうでもいいよっ!」
そう、一応心が落ち着き始めた時に椎葉さんには一通り説明をした。
俺が今立たされている状況、そして綾地さんの手伝いをしている簡単な説明を。
蓮太「つってもそんな訳にはいかないさ。勝手に奪ったのは事実なんだ、どうにかして椎葉さんの欠片もちゃんと返すから……その時まで待っててくれ」
寧々「だとしたらやはり……椎葉さんにはオカ研に正式入部してもらった方がよさそうですね」
紬「え? いいの……?」
蓮太「そうだな、そっちの方がいいと思う。お互いに事情を知ってるなら下手に隠さなくてもいいし、正直俺と柊史だけじゃあやっぱり不安なところもあったしな、その意見には賛成だ」
欠片を互いに取り合うことにはなるけれど……2人が喧嘩をするところなんて想像もできないしちゃんと話し合って決めるだろう。そこは俺が関与するところではない。
それに……近くにいてくれた方が色々と都合がいい。椎葉さんも欠片を求めている以上はお互いにメリットがある提案だろう。
紬「でも欠片はどうするの? せっかく綾地さんが頑張って整えたシステムなのに、ワタシがそれを邪魔しちゃったら……」
寧々「そこはおいおい考えましょう、椎葉さんがよければ……是非協力し合いたいんですが……どうでしょう……?」
紬「だったら…………お言葉に甘えさせてもらっても……いいかな?」
蓮太「ふふっ、決定だ。それじゃあよろしくな椎葉さん」
と、こうして俺たちの所属するオカ研に新たな新メンバーが加わった。
仮ではなく正式に入部してくれたおかげで部員数は全員で5人。この部活もかなり大所帯になったもんだ。
問題は次々に重なっていく一方だが…………絡まった糸は順番に解くしかない。まずは目先の人助けだ。
一応魔女同士で協力関係にもなれたし……これは一件落着ってことでいいかな?
と色々考えながら柊史に今起こったことを全て伝える。因幡さんには悪いけど、とりあえずは俺たち4人での秘密だ。これだけはバレる訳にはいかない。
とにかく言えるのは…………これからはもっと大変になるな。その為に今日はもう寝よう。