呪われた少年と第四真祖(リメイク)   作:青は澄んでいる

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聖者の右腕編Ⅲ

昨日の尾行少女関係の騒動の後憂太は無事帰宅して今日ある人物に呼び出され彼の通っている学校である「彩海学園」の高等部に向かっていた。

 

そして目的の場所である教室に着いた。

 

「失礼します」

 

「うむ、来たか乙骨」

 

「えっ?何で憂太が来てるんだ?お前補習とか無かったろ」

 

憂太が教室に入ると彼のクラスメイトである古城とこの常夏の島にもかかわらずゴスロリのドレスを身につけた小学生位の少女がいた。

 

南宮那月。

一見すると少女の様な見た目だがちゃんと成人しており自称26歳の女性であり憂太に攻魔師として訓練をつけてくれている人物でもある。

そして憂太は絃神島では彼女の自宅に住まわせてもらい衣食住も提供されているので憂太は彼女に頭が上がらないのだ。

 

「乙骨を呼んだのは別の案件でだ。暁、お前と違ってちゃんと必要な単位は全て取ってるので安心するが良い」

 

「うぐっ。そ、そこまで言わなくても那月ちゃんって痛って!」

 

「教師をちゃん付けで呼ぶなと何度言ったらわかるんだ?お前は」

 

「アハハ…」

 

那月はその見た目故に殆どの生徒からちゃん付けで呼ばれる。

そうして彼女の持っている扇子で頭を叩かれた古城は蹲り憂太は苦笑いを浮かべた。

 

「まあ良い、暁お前は今日はもう帰れ。言っておくが夜遊びなどは控えろよ?私の仕事が増える」

 

「しねえよ!あっ憂太じゃあな」

 

「うん、気を付けて」

 

そうして古城は教室を後にして室内には憂太と那月だけになった。

 

「さて、今日お前を呼んだのは他でもない。乙骨、獅子王機関の剣巫が来ている様だが知ってるな?」

 

「はい」

 

「連中は暁の監視及び必要に応じての抹殺を目論んでいる様だが。乙骨、場合によってはお前も危険だということは分かってるな?」

 

「それは十分に分かっています」

 

憂太は攻魔師であると同時に一人の少女の怨霊をその身に宿している。

「祈本里香」

憂太の幼馴染にして現在は訳あって彼の普段から身につけている指輪に封じられている少女の名前だ。

憂太はその若さにも関わらず攻魔官の資格を取得しており、下手をすれば真祖の眷獣にも匹敵する彼女を使役している事から他の勢力からは脅威として映っていた。

 

特に獅子王機関は真祖さえ滅ぼせるという槍を所持している機関だ、那月の心配も無理もない事だろう。

 

「分かってるなら良い。流石に教え子を殺されるかもしれんともなると、私もいい気はしないからな」

 

「…ありがとうございます那月さん」

 

「学校では先生と呼べ馬鹿者」

 

那月は憂太のお礼に少し微笑みながら次の話へと移った。

 

「それから乙骨、今夜予定はあるか?」

 

「え?いえ有りませんけど」

 

「それならばちょうど良い。今夜私に付き合え」

 

「はい?」

 

『憂太アァァァ?』

 

「里香ちゃん⁉︎落ち着いて!誤解だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてこれから見回りを開始するが、準備は良いな?憂太」

 

「はい、それにしても今朝のアレはやめてくださいよ。お陰で里香ちゃん落ち着けるの大変だったんですから」

 

憂太と那月は夜の街を歩いていた。

現在二人は学園ではない為名前で呼び合っており憂太は今朝の事を咎めていた。

 

「そう怒るな。それより憂太、最近吸血鬼コウモリが襲われてる事件は知ってるな?」

 

「はい。魔族、しかも殆どが吸血鬼の被害者ですよね?」

 

「ああ、幸い全員負傷しているが急所を外されている」

 

近頃この絃神島では魔族への被害が多発していた。

 

「この被害者達の共通点は吸血鬼って位でしたっけ」

 

「そうだ、だが未だにその犯人の目的が掴めん。しかしそうなってくると問題なのは暁だ」

 

「はい。万が一古城くんが傷つけられるとなると彼の中に眠る眷獣が黙ってませんからね」

 

第四真祖、暁古城。

彼は確かに第四真祖が従える12の眷獣を宿している。

しかしその全てが古城を宿主として認めておらずしかもタチの悪い事に宿主である古城に危害が及ぶとその災厄の如き力を無差別に解き放つ可能性が高い。

 

「そうなっては面倒だから暁には夜遊びは控えろとは鍵を刺してある。よっぽどの事でもない限りは大丈夫だろう」

 

「だと良いんですけど」

 

少し嫌な予感を抱えながら二人は街の見回りを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫く見回っているとクレーンゲームの前に立つ二人組を見つけた

そして一人は憂太と那月も見覚えのある人物だった。

 

「…」

 

「…」

 

二人はまさか過ぎて言葉も出なかった。

 

「憂太」

 

「はい」

 

「いたな、バカが」

 

「はい」

 

普段ならここでフォローに入る憂太も今回ばかりはフォロー出来なかった。

すると那月は何やら思い付いたのかニヤリと笑みを浮かべ二人に近づいていった。

 

「おいそこの二人ウチの生徒だな?うん?そこのパーカーの男は見覚えがあるな。コッチを向いてもらおうか?」

 

二人は那月に声をかけられてビクッとしクレーンゲームの台のガラス越しに背後を見た。

 

憂太もそのガラスを見て顔が見えそれが彼の同級生の古城と昨日の尾行少女だと気づいた。

古城に助けを求める目を向けられるが憂太はただ手を合わせて謝るだけだった。

 

(ごめん古城くん。今回は僕も庇えないや)

 

(憂太ーーーーーー!)

 

「ほら早くこっち向け」

 

友人に見捨てられた古城が追い詰められているのを那月は実に面白い物を見る目で見ていた。

 

その時突然近くから爆発音が聞こえた。

 

『⁉︎』

 

その爆発は近くにある港辺りから発生した様だ。

するとその混乱を利用して古城と少女はその場から逃げ出した。

 

「なっ⁉︎待て暁!」

 

「那月さん、僕は彼らを追います」

 

「ああそうしろ!私はアイランドガードを呼ぶ」

 

「はい!」

 

憂太は先程の爆発音がした場所を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして憂太は爆発音のした場所の近くに着くとそこには既に戦闘を開始していた少女と片眼鏡の大男がいた。

 

(アレは、魔族狩りの犯人?)

 

憂太が疑問に思っていると突然男が誰かに指示を出すとその背後から亜藍色の髪色をしたロングヘアでケープコートの小柄な少女が出てきた。

 

そして少女は背中からケープコートを突き破り一本の巨大な腕を出現させた。

 

「アレはまさか眷獣⁉︎」

 

憂太は驚愕した。

何故なら眷獣はその特性故に使用者の寿命を食らう。

しかも見たところその眷獣を使ったのは吸血鬼でない上にホムンクルスだ。

ホムンクルスはただでさえ短命な上に戦闘をする様に作られてはいない。

 

(まさかホムンクルスに眷獣を植え付けたのか⁉︎だから今までの被害者の吸血鬼達からあの眷獣の能力か何かで魔力を吸っていたって事?とにかく助けないと!)

 

憂太は直様刀を取り出し今まさに背中から出てきた二本目の腕で少女を攻撃しようとしてた眷獣の攻撃を呪力を込めた刀を投げつける事で防いだ。

 

「⁉︎」

 

「一体何が⁉︎」

 

「あの刀、まさか!」

 

突然介入してきた一本の刀にそれぞれが反応を示した。

 

「君!大丈夫⁉︎」

 

「あ、貴方は確か」

 

「僕は乙骨憂太。そんな事より今はこの状況をどうにかする事が先だよ」

 

憂太は跳ね返り戻ってきた刀をキャッチしてすぐさま男とホムンクルスの少女に刀を向けた。

 

「姫柊!大丈夫かって憂太⁉︎」

 

「先輩⁉︎なんで」

 

「何ではこっちのセリフだ姫柊のバカ!」

 

「ば、バカ⁉︎」

 

「様子見するだけだって言ったのに何で戦ってんだ!俺の監視が仕事なんじゃなかったのか!」

 

「そ、それは…」

 

「二人とも!話は後にして!」

 

急に喧嘩を始めた二人を叱りながら憂太は目の前の男を見据え男もまた乱入してきた憂太と古城を見据えた。

 

「(刀を持ち明らかに戦い慣れした少年、更に後から来た少年から感じる吸血鬼の気配しかも旧き世代の吸血鬼のそれとは異なる)成程、あなた方が噂の霊呪剣に第四真祖ですか」

 

「へぇ、古城くんは兎も角僕の事も知ってるんだ」

 

「ええ、第四真祖はもちろんの事、貴方はその若さにも関わらず真祖に匹敵するであろう"呪いの女王"を従えその若さで攻魔師として空隙の魔女同様に魔族に恐れられているのですから」

 

「お褒めにあずかり光栄だけど、僕はそんな大層な人間じゃないよ」

 

「ご謙遜を」

 

「まあ今はそれはどうでも良いんです、あなた方を魔族狩りの犯人として連行します」

 

「それは聞けませんねかと言って獅子王機関の剣巫だけでなく貴方と第四真祖を相手にするのは今は分が悪いのも事実。ですので退かせてもらいます」

 

すると男は懐から一つのグレネードを取り出した。

憂太はその正体に感づくと直ぐに後ろの二人に呼びかけた。

 

「古城くん!姫柊さん!目を瞑って」

 

『⁉︎』

 

そして男はそれを投げつけると辺りは眩い光に覆われた。

 

「ぐっ」

 

「キャッ!」

 

「くっ」

(やっぱり閃光弾!)

 

そして光が収まると男と少女は既にその場にはいなかった。

 

「居ない⁉︎」

 

「逃げたのか?」

 

「そうだろうね」

(それにしてもあの二人の目的はなんなんだ?)

 

憂太は男達の目的が分からなかった。

無差別に吸血鬼を襲うのは眷獣を従える少女の魔力を補給する為なのは分かったとして何故そんな事をする必要があるのかの謎が残る。

 

(それにさっきの男の言葉、何か引っ掛かる)

 

『獅子王機関の剣巫だけでなく貴方と第四真祖を相手にするのは今は分が悪いのも事実』

 

(アレはどういう事だったんだろう)

 

憂太は一人思考するが結局答えが出てくることはなかった。

 

「取り敢えず二人とも、もう少しでアイランドガードが来るはずだ、移動しながらさっきの話聞かせてもらえる?」

 

「お、おう」

 

「分かりました」

 

 

 

そしてその後古城と一緒にいる少女の名前は姫柊雪菜という名前で先程の男はロタリンギアの宣教師ルードルフ・オイスタッハと言い少女の方はアスタルテという名前のホムンクルスだという事が分かった。

 

(それにしても何でロタリンギアの宣教師がこの魔族特区で魔族狩りなんてしかも眷獣をホムンクルスに植え付けて行ってるんだ?

とにかくこの事は那月さんにも知らせないと)

 

憂太は一旦考えを放棄してその現場を後にした。

 

余談だが古城と雪菜はその後憂太から軽いお叱りを受けたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の騒動から翌日憂太は朝の朝食を那月と摂っていた。

そこで憂太は昨夜に遭遇した宣教師とホムンクルスの少女について話した。

 

「成程、ロタリンギアの宣教師か」

 

「はい。そこで気になるのがその目的で、ホムンクルスの少女を使って何をするつもりなのかが分からないんです」

 

「確かに、ただ単に魔族を狩りたい訳でもないだろうな。それに仮にそうなら他の獣人などの魔族が一部の例外を除いて無事な理由が無いからな」

 

「そうなんです。しかもあの宣教師、今は僕や古城くんそして姫柊さんと戦う時ではないとか言っていたのでそこが気になるんです」

 

「そうか、しかし今この場で考えても特に得るものは少ないだろう。それに今日も学校だ、早く食ってしまおう」

 

「そうですね」

(けど今回の事件、ただの魔族狩りに収まらない気がする)

 

憂太は今回の事件に何かを感じるもその答えに辿り着く事は無くいつもの朝の時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憂太はいつもの通学路を歩いていると古城と雪菜と遭遇した。

 

「古城くん、姫柊さんおはよう」

 

「おう、おはよう憂太」

 

「おはようございます乙骨先輩」

 

3人は互いに挨拶を交わすと学園に向けて歩き出した。

 

「乙骨先輩、自己紹介がだいぶ遅れてしまいましたね。改めまして姫柊雪菜と申します。獅子王機関の剣巫で暁先輩の監視役です。よろしくお願いします」

 

「よろしく姫柊さん。僕は乙骨憂太、よろしく」

 

「はい。ところで乙骨先輩は本当にあの霊呪剣何ですか?」

 

「霊呪剣?」

 

「アハハ、出来ればその名前は恥ずかしいから言わないで欲しかったんだけど。まあそうだよ」

 

「なあ姫柊、憂太ってそっちじゃそんなに有名なのか?」

 

古城の質問に雪菜はまるで信じられないとでも言わんばかりに目を見開いた。

 

「先輩知らないんですか⁉︎霊呪剣、2年前に突如現れた謎の攻魔師で真祖の眷獣さえ凌ぐと言われている"呪いの女王"を従え魔族から恐れられその手に持っていた刀がある事から付けられた通り名です」

 

「へぇー、にしても今から2年前か。そう言えば憂太が転校してきたのは確か中学の最後あたりだったよな」

 

「うん。しかしそんな通り名が付いてると知った時は結構恥ずかしかったかな」

 

憂太は頬を赤くして指でかいていた。

 

「そう言えば乙骨先輩、昨日はありがとうございました。乙骨先輩が居なかったらどうなっていたか」

 

「いや気にしないで。それより古城くんの眷獣が暴走しなくて良かったよ」

 

「えっ⁉︎」

 

憂太の言葉に雪菜は目を見開いて古城を見た。

真祖の眷獣が暴走。そんな事になれば最悪この島が沈む可能性は十分すぎる程にあるからだ。

 

「どういうことですか先輩!真祖の眷獣が暴走するって、なんで先輩が昨日の戦闘の中で眷獣が暴走するんですか⁉︎」

 

「落ち着けって姫柊。確かに俺は前にも言った様に先代の第四真祖からこの体質押し付けられて眷獣も俺の中に居るにはいるけどよ、そこにいるのと実際に従えてるのとでは話が違いすぎるだろ?」

 

「え?」

 

古城の言い分を纏めるとこうだ

・第四真祖の眷獣を受け継ぎはした

・だが眷獣達は自身を主人として認めていない

・だが宿主が危害を加えられるとその名に恥じぬ厄災を撒き散らし周囲を破壊する

・眷獣達が従わないのは恐らく自分が吸血童貞であるから

だそうだ。

 

「成程。しかし童貞?」

 

「えっとつまりは、未経験ってことだよ」

 

「ああ成程、童貞とはそういうことでしたか。って先輩!吸ったこと無いんですか⁉︎」

 

雪菜は古城が吸血行為をした事がない事に驚いた。

そんな彼女の言葉が周りに聞こえ、周りからの視線が集まる。

 

「いや別に可笑しな話じゃないだろ?俺はこの前まで普通の人間だったんだから。て言うか童貞ってこんなところで大声で言うなよ!」

 

「どうしてですか?」

 

「いやそれは…」

 

「姫柊さん、そこで終わってあげて」

 

「おいおいこんな朝っぱらに公共の面前で女子中学生になんつう際どいワードを言わせてんだよ」

 

古城と憂太が雪菜のあまりの天然さに色んな意味で唖然としてると二人にとって聞き馴染みのある声が聞こえた

 

「矢瀬!」

 

「ようおはよう二人とも。とそっちの中学生ちゃんは?」

 

「あっはい。先日から中等部に転校した姫柊雪菜です。よろしくお願いします」

 

「よろしく。俺は矢瀬基樹、古城と憂太のダチだ。しっかし古城は兎も角憂太、お前まで後輩になんつう事言わせたんだよ」

 

「いや僕は何も言ってないよ!」

 

「ハハハっ冗談だって。にしても姫柊ちゃんは音楽でもやってんの?」

 

「音楽を?いえ私は…」

 

「え?けどそのギターケース」

 

基樹の視線は雪菜の背負っているギターケースに向けられた。

 

「あっ!そうでした、うっかり…」

 

雪菜は少し目を泳がせながら何かを思いついたのかのか少し早足で駆け出した。

 

「そ、それでは先輩方、私は凪沙ちゃんとの用事があるので先に行きますね!」

 

「お、おう気をつけろよ?」

 

そんなやり取りをした後雪菜はそのまま学園に向けて走り出した

 

(多分基樹くんこ質問を誤魔化す為の行動なんだろうけど少し強引過ぎないかな?基樹くんも姫柊さんの素性は分かってるだろうに人が悪いな)

 

「なぁ古城、憂太あの娘って不思議ちゃんなのか?」

 

「さ、さあな」

 

「少し天然なだけかも知れないよ?」

 

「ふーん」

 

こうして3人はその後談笑を続けながら学園に歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜彩海学園〜

 

「おはよう古城、憂太」

 

『おはよう』

 

ホームルーム直後の教室で古城と憂太は浅葱からの挨拶に応えてそのままホームルームが始まるまで談笑を開始した

 

「それにしても珍しいわね古城が遅刻しないなんて、明日は槍の雨でも降るんじゃないの?」

 

「うるせえよ俺が遅刻しないのがそんなにおかしいか?」

 

「普段から日常的に遅刻やら欠席やらを繰り返してるからじゃない?」

 

「ぐっ、痛いところを突くなよ憂太」

 

3人がそんな会話をしているとクラスの一角で何やら男子が集まって話していた

 

「なんだ?」

 

「何かあったのかな?」

 

男子達の盛り上がりが気になり浅葱はちょうど近くを通りかかった友人、築島倫を呼び止める。

 

「ねぇお倫、男子達は何の話で盛り上がってるわけ?」

 

「ああアレ?なんか中等部にとっても可愛い転校生が来たんだって、それで今スマホ見せてる男子が後輩に命令してその娘の写真を送ってもらったんだって」

 

倫の言葉に憂太と古城の脳裏に一人の少女が思い浮かんだ

 

「なあそれって姫柊の事だよな?」

 

「うん、他に転校生が来たなんて話は聞いてないから間違いないと思うけど」

 

「暁くんと乙骨くんは行かなくて良いの?」

 

「いや俺は別に良い」

 

「僕もいいかな」

 

二人はここで行くというのも変な気がするので当たり障りのない返事をして遠慮した。

 

「ふーん、まあ当然か暁くんには浅葱がいるものね」

 

「ヘ?」

 

「なっ?」

 

倫の言葉に古城は何を言っているのか分からないという顔をし浅葱は顔を真っ赤にした

 

「そう言えば乙骨くんっていつも指輪を付けてるけど、ひょっとして昔幼馴染から貰ったとかそういう感じ?」

 

「…まあ大体合ってるかな」

 

「そ、そうなんだ…やっぱりそうだよね…」

 

憂太の肯定に倫は先程までの悪戯っぽい笑みを少し曇らせた。

 

「?どうかしたの?倫さん」

 

「えっ⁉︎ううん!何でもない!」

 

そんなやり取りをしていると雪菜の話題で盛り上がっていた男子の一人がスマホ片手に憂太達の方に近づいてきた

 

「なあ暁、お前の妹ちゃん確か中等部だろ?この娘紹介してくれないかな?」

 

「えっ?あ、いや俺の方からは何とも「暁古城、乙骨憂太」?」

 

憂太と古城は名前を呼ばれそちらに目線を向けると白のゴスロリ風の服を着た那月がいた

 

「お前たちそれぞれ要件がある。後で生徒指導室に来るように」

 

「えっと、何で?」

 

古城の質問に那月は何やら意味ありげな笑みを浮かべた。

 

(あっ)

 

憂太は何を言うのか予想が付いたが彼にはどうする事もできそうになかった。

 

「昨夜の件と言えばわかるな?お前と中等部の転校生が一晩中何をしていたのか、包み隠さず話してもらうぞ。ああ乙骨は別件だ」

 

「えっ⁉︎」

 

那月の言葉にクラス全体がシンと静まり返り返った。

そして直ぐに復帰し古城に目線が向けられた。

そんな様子を放置して那月は「では、私は伝えたぞ」と言いそのまま立ち去っていった。

 

「ちょっと暁くん?貴方、浅葱というものがいながら何をしているのかな?」

 

「いや俺と浅葱はそんな関係じゃないって築島⁉︎浅葱は?」

 

「浅葱ならあっち」

 

倫の指差した方を見ると浅葱が何かのレポートらしき物をビリビリに破ってゴミ箱に捨てていた。

 

「そ、それって俺が頼んでいた世界史のレポート…」

 

「ふん!」

 

浅葱はレポートを全てゴミ箱に捨てるとそっぽを向いて自分の席に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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憂太 古城 雪菜 『ストブラさんぽ』

 

「そう言えば古城くんと姫柊さんって初めて会った時の騒動の後何があったの?」

 

「ああそう言えば憂太はあの後居なかったな」

 

「そうでした。まあ暁先輩にはこの島を案内してもらったり凪沙ちゃんのお誘いで暁先輩と凪沙ちゃんの部屋で私の歓迎会をしてくれたり色々してくれましたよ」

 

「へぇー」

 

「しっかし姫柊ってばさ結構な天然なのかは分からないけどゴルフクラブをメイスの一種だって言ったりと色々と凄かったよな」

 

「せ、先輩!それは言わないでください!」

 

「へぇそんな事があったんだ」

 

古城の言葉に雪菜は赤面し憂太は笑いながらその話を聞いていた。

 

「せ、先輩だって(風で煽られてスカートが捲れた時)私のパンツ見たじゃないですか!」

 

「⁉︎」

 

「おい姫柊!」

 

今度は雪菜の言葉で憂太が驚く番だった。

しかし先程とは全く別ベクトルで。

 

「それに(落としてしまい届けようとしてくれた)私の財布の中を勝手に見たり!」

 

「ちょっ!姫柊ストップ!」

 

「その匂いを嗅いで興奮して鼻血を出したり!」

 

雪菜としては古城へのせめてもの仕返しのつもりだったのだが、内容が内容過ぎて憂太の顔から笑みが消えた。

 

そして彼は古城の方を見て言った。

 

「古城くん、いえ古城さん。僕たち一度友情を見直すべきだと思うんだ」

 

「待ってくれ色々と誤解があるんだ!だからその敬語やめてくれ!少しずつ後退りしないでくれよ!憂太ァーーーーーーーーー!」

 

その後古城は何とか誤解を解いたがしばらく憂太から説教を食らった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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