FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話 作:ペットボトル羊
この主人公普通に冬木で死にそう
注釈 この作品は現実で、実際にRTAをする訳ではありません。
運命
2015年7月30日。
無機質な白い廊下を歩く。自分の靴音だけが響いていて、視界には誰も映らない。この世界には一人しか存在していないと思うほどに。
普段は結構な人とすれ違うのだが、今日に限って誰とも会わないからだ。
「まあ、当たり前か」
何せ、今日は偉大な日である。みんな礼装や機器の調整に忙しいのだろう。各々の自室や管理室で過ごしていると思われる。
「──、────」
しばらく歩いていると、強化している聴覚が動物の鳴き声と少女の声を拾った。
「──ああ」
眼球に強化の魔術を叩き込む。常人を遥かに超えて広がった視界の果てに、倒れている赤褐色の髪の少女と、モジモジしている儚げな少女がいた。少女二人に意識が向きかけるが、廊下と一体化している少女のすぐ傍にモコモコした白い謎の生物がいることに気づく。
「──ああ、くそ」
喜び、呆れ、悲しみ。
さまざまな感情が濁流のように胸から溢れ、全身をかき混ぜる。
そして。
最後に零れた諦念が全てを支配した。
脚が止まる。
どこか意思が強そうな印象を受ける少女を起こした線の細い少女が此方に気づいた。白い謎の生物は隠れるように彼女たちの背後に回っている。
相変わらず、微妙に避けられている。
何度目か分からない小さなショックを受けながら、取り敢えず彼女たちに挨拶をした。
──それにしても。
アニメではぐだ男だったのに、リアルではぐだ子だったのか。
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FGOに
正式名称Fate/Grand Order。
簡単に言うと型月が手がけるFateシリーズの一つでソシャゲである。
このゲームは型月史上最大規模の物語で、主人公が所属することになる『カルデア』という組織が人類を救うために戦うのだ。
人類を救うために戦う、というようにFGOには人類どころか星を滅ぼせる敵がポンポン出現する。型月最強の名をほしいままにしていたあのORTと相撲できる、と言えば恐ろしさが伝わるだろうか。三等惑星級の魔力ってなんだよ。ブラックホールを炬燵にあるみかんを剥く並の気軽さで出すな。
魔術師になったからそれらがどれだけ頭おかしいのかよく理解できる。
話がズレた。
自分がいる世界が型月かつFGOだと気づいた俺は、絶望した。
何とこの世界は2015年に滅びるのである。じゃけん残りの余命十数年を楽しみましょうね〜。
ふざけんな。
もう一回死ねるドン! なんて笑えねぇんだよ。
脳裏に主人公たちが人類を救うのを待てばいいのでは? と誰かが囁いたことを覚えている。
なるほど。確かに主人公なら人類を救ってくれるだろう。
この世界はスマホの中の世界ではない。
冬木市も観布子市も三咲町も総耶市も時計塔も魔術も魔法も化物も、カルデアも存在している!!
聖杯戦争も第一回でセイバーとそのマスターが優勝していることになっている!!
アニムスフィア家の当主はマリスビリーだ!!
……俺の知っているFGOの設定と齟齬がない可能性が、高い。
俺の知っている通り人理焼却が起こったとして、七つの特異点が発生したとして、実際に英霊やその時代を生きる英雄に会ったとして!!
原作者など、存在しない、しなかったのだ。
主人公が途中で死ぬかもしれない。
ヒロインが途中で死ぬかもしれない。
そもそもカルデアが爆弾で木っ端微塵になる可能性だってある。
なまじ、アーケードで並行世界のカルデアが無数に存在していることが言及されているからより質が悪い。
……俺の知識では、主人公たちはコヤンスカヤと和解するところまで駒を進めた。
その先の出来事を知らないだけではなく、それまでの出来事が十割起こる確証がない。
──ならば、このまま座して待つなどあり得ない。
……かくして俺は、絶対に生き残ってやると決意し人類を救うための
小説って難しい……。