FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話 作:ペットボトル羊
「サーヴァント反応接近中! 霊基パターンは
荒れ果てた管制室。
「数と位置は!?」
「サーヴァント5騎、
「昨日とほぼ同じか……!」
報告を受けた司令官──ロマニ・アーキマンは、歯嚙みしながらも素早く指示を送る。
「──サーヴァントの情報は発覚次第両マスターに送りつつ、悪竜の魔力
『はい!』
部下たちの力強い返事。
そこに暗然たる雰囲気は少ない。
絶望的な戦力差でも、確かに自分たちにできる
(思っていたよりも戦意が衰えていないな……)
内心ほっと息をつく。
──一日目の防衛戦は酷い内容だった。
単純な損害に注力したならば、味方陣営は一人疲労で倒れただけでほぼ無傷といえるだろう。加えて倒れた
額面通りに受け取ると、むしろやや優勢といったところだが──敵の余力が有り余っている上でこの結果、ということが問題だった。
遊ばれている。
一手の失敗も許されぬ状況、誰もが手一杯の形相、力を尽くしている味方、その上で──敵には余裕がある。
「…………」
許されるのならば、今すぐ全身の力を抜きたい──そう思ったロマニは、すぐさま己を叱責した。
いまだ特異点で戦っている仲間たちがいる。
彼らが諦めていないというのに、何を弱気になっているのだと。
(『奇襲』か……)
絶望的な戦力差でなお、カルデアの士気が保たれていることには理由がある。
──逆転の一手。
魔術師であるマスターが提示した、一縷の望み。
……それは、奇襲というより暗殺といった方が正しかった。
──元来、奇襲も暗殺も圧倒的不利な状況下で行われる試みである。既に詰んでしまった盤面をひっくり返す為に、無謀ともいえる策で敵陣営に飛び込むのだ。
莫大なリターンを得られるかもしれない代償に全て失うリスクを背負うそれは、フィクションなどではあっさりと成功する印象が強いが、実際は無駄死にする可能性が非常に高い。故に、人理焼却という未曾有の事態ではあまり推奨したくない手段だが……現実は甘くない。
──つまるところ。
カルデアの士気は保たれているように見えるだけなのだ。
(『奇襲』が失敗したとき、万が一生存できても再起は……)
生き残ったカルデアの人員も選りすぐりの精鋭だ。現状が理解できていない筈がない。
戦える人間は本来の
大雑把に、楽観的に考えても、崖っぷち一歩手前といったところだろうか。
それは責務に忠実だからか、一人の人間としての意地か、ただ苦痛から逃れたいが故に、
人知れず、肩が重くなっていくことをロマニは自覚した。
「──マスター・タナカと敵性サーヴァントが接触!」
「っ、真名は!?」
──一つ、開示しておくべきことがある。
魔術師が提示した『奇襲』。形勢を逆転させる乾坤一擲は──やろうと思えば、初めてヴォークルールの砦を訪れたとき、竜の魔女の余命宣告の後に実行可能であった。
それが実行されなかったのは、同マスターの疲労状況、戦力の把握、味方になるであろうサーヴァントたちとの
「え……? 何で……!?」
観測されたデータを確認した一人の職員が困惑の声を上げる。
「どうしたんだ!? 詳細を──」
「
首魁と思わしきサーヴァント直々の登場。管制室に緊張が走るが、しかし僅かに戸惑いも伴っていた。
──防衛戦、一日目。
圧倒的な戦力差を直に経験してなお、彼は
根拠はある。
亜竜種の残骸などを利用して作成した簡易礼装で、微増だが戦力の強化やジークフリートの復帰が予定よりも早まることが分かった。だから、トップサーヴァントの異常性を冬木でより深く実感していた魔術師は、『奇襲』が失敗したときのリカバリーをジークフリートに任せられると確信して──彼が復活したら、万全の体制で決戦に臨めると。
だが、それは。
二日目も耐えられる保証ではない。
『奇襲』の詳細も、実行条件が比較的緩いことだけは共有していない。これは、共有することで生じるであろう早計な判断で適切なタイミングを逃すことを危惧したからであり、
結論から言うと、
魔術師の判断は──間違っていた。
####
太陽が地平から貌を出す。
暖かい輝きは、暗闇を裂いていった。
二日目の早朝である。
戦いの狼煙をぼう、と眺めながら息を吐く。
雄大な大地が我が子を抱擁する母ならば、あれは偉大なる道導たる父だ。
厳しくも優しい太陽。それは、誰もが仰ぐ存在だが──同時に、ちっぽけな生命たちを射抜く
神話において、太陽はたびたび神に見立てられる。
太陽崇拝というヤツだ。古代では、太陽がもたらす環境の変化は人の手が関与できない領域だったので、自然と信仰や畏怖を生んでいたのだろう。現代ではけっこう解明されたが。
──しかし、この世界では神は実在した。
ふと、素朴な疑問が浮かんだ。
どんな、気分だったのだろうか。
人から生まれたが、人ではない彼らは。
神話──特にエジプト辺り──では、太陽神は世界を観測する至上神とされた。人智及ばぬ遥かなる
まるで監視である。あらゆる事象を見通す審判そのもの。さぞ、神話に生きる生命は窮屈だったに違いない。
どんな気分だったのだろう。
全知とか。全能とか。神さまは。何もかも知っている、知られているということは。
全く想像がつかない。
──でも、一つだけ言えることがある。
突風が全身に叩きつけられる。思わず顔を顰めた。
「ご機嫌よう。憐れな天文台の魔術師さん」
人の頭蓋を容易に砕くであろう強靭な両脚は、歩廊の凹部を掴み。大人一人を丸々覆えそうな翼を広げて敵対者を威嚇する。
ワイバーン。先程の突風は、この竜種の仕業だった。
二日目の防衛戦。
既に敵も味方も散開している。敵の采配に変化はない。馬鹿の一つ覚えの如く、しかしこの上なく面倒な展開を作っている。
たしか、敵サーヴァントの反応は五騎だったか。戦力の補充はしなかったのだろうか。逐次投入は下策だが、肝心の戦力が無制限にあるならば話が変わってくるというのに。……だとしたならば、底抜けの阿呆か、既に消化試合だと見切っている賢者か、それとも──何も考えていないか。
響いた声質は、女性のもので、聖処女と酷似……いや、同一だった。
一番面倒な展開だ。そうぼやきながら、黒鍵を握り締め、魔術を
令呪の数は変わらず一画。『原作』では一日経つと復活していたが、それはゲームの仕様上の都合で。現実では、
黒鍵の数も、限りがある。素材も時間も全く足りない。ダ・ヴィンチ女史には頭が下がる思いだが、できれば今度、第七聖典か方天画戟、グレイさんの
鈍く輝く鱗を持つワイバーンの背から、仄暗いサーヴァントが飛び降りた。
黒い騎士王を連想させるくすんだ金髪。褪せた瞳。漆黒の鎧を着込んだ魔女は、対照的な白い旗の
ジャンヌ・ダルク・オルタ。
竜の魔女が、嘲笑の笑みと共に姿を現した。
#
──オルレアンの乙女、ジャンヌ・ダルク。
彼女は世界で最も有名な聖女で、十九歳という若さでこの世を去った英雄だ。その星の如く儚くも眩い煌めきは数多の人間を惹きつけ、導いたことだろう。
が、しかし。百年戦争を駆け抜けた
これは、彼女が敵国であったイングランドに盛大に恨まれていた、彼女の名声が当時の一部の権力者に疎まれていた、などの様々な要素が重なったからであり、後世で彼女の名誉は回復されるのだが……兎も角。
ジャンヌ・ダルクは英雄だ。
これは確固たる事実だと思う。数多の戦場を駆け巡り勝利を齎したオルレアンの乙女は、誰もが羨望の念を覚えた、と豪語できるぐらいには真っ当な英雄の筈だ。
だが、
戦士ではない。
たしかに豊富な戦いの経験があるだろうが、どちらかというとそれは軍略家、扇動者としての比重が多い筈で。いつの世も、偉い人間ほど矢面に立てなくなる訳だ。……まあ、彼女は積極的に前線に突撃していたらしいが。
それでも、一般の兵士に比べたら安全な処にいた筈だ。故に、彼女は純粋な一対一の戦闘では
本物でさえ“そう”なんだ。ならば、魔元帥の中途半端な主観で型取られた偽物なら。
「ちょこまかと──!」
先程まで足場にしていた宙から業火が沸き立つ。火力だけは立派だ。確かに、真面にくらえば即戦闘不能になる。
しかし雑だ。技術もクソもない。馬鹿正直に炎を投げつけるか
黒鍵を投擲しながら魔術をおみまいする。もちろん同じ
「くっ……!」
生憎、伝承防御ならぬ信仰防御で、この土地の基盤はボロボロだ。従って、最も規模の大きい恩恵を受けることはできない。だが──、
戦闘が始まって数分。
竜の魔女の興味が他に向かないように、しかしそれに気づかれないようにほどほどに相手をしている最中。
『解析結果』が届けられた。
『タナカ君、解析が完了した!』
会話を悟られないように、専用の回線を開いて続きを促す。
『
──罠か。
優勢とはいえ、総大将を戦場に寄越すことは余程のことがない限り下策だと考える。総大将が何かの『弾み』で殉職すると味方の士気が急激に下がるからである。
士気は勝敗に直結する。それが最前線ならば、混乱も一入だろう。最後の一押しや、拮抗している戦況にきっかけを与えるためならばむしろアリだと思うが……それでも、厳重な守りを重ねていることが前提だ。キャスターのクラスとはいえ、ジル・ド・レェがそれらを考慮に入れていない、ということは考えづらいが。
手も足も働かせながら、思考を沈める。
もしや最後の一押しを決心した? 態々これ見よがしに余命宣告をして、一日目も余裕満々だったのに反故にしただと?
一度、竜の魔女は性格が悪いから決まりきった勝敗を一気に傾けようとしていない、そう杜撰に考察したことがある。少々以上に雑なそれだが──それでも、的外れとは思っていない。
ならば筋が通らない。
サーヴァントではない
でも観ただろ。シュヴァリエ・デオンが敗北した様を。中途半端な戦力ではむしろ喰われると理解できた筈だ。
だから、二日目は纏まった戦力を送り込んでくる読みで、実現したならば、直ぐに令呪でセイバーを呼び戻して
彼女の手緩さは、自分が安全圏にいる確信から基づくものだ。
──じゃあ、
一貫性のない行動。
サーヴァントを自在に操っている。
幻術。
高位の魔術師の英霊の可能性。
「……いよいよきな臭くなってきたな」
オレの行動先を予測して、炎を置こうとした竜の魔女を秘蹟で牽制する。
本格的にフランソワ・プレラーティが召喚されている可能性を考えなくてはならない。といっても、精々対抗できそうなサーヴァントに知り得る範囲の情報を提供するくらいの抵抗しかできないが……。
それに、仮にプレラーティが召喚されていたとしても、不可解な点もある。
……純粋に
聖杯があるとはいえ、
例えば、サーヴァントの意思統一。封じ込めるだけでも相当の魔力を消費するというのに、自在に操作するなんてかなりの技術とより大量の
仮に上質な霊脈を確保していたとしても、やはり違和感が残る。
……何というべきか。
これは、もっと、根本的な──、
『どうする、タナカ君?』
アーキマンさんからの端的な問い。
確かな信頼が込められているそれに、間髪入れずに答える。
「突っ込むしかない」
現状、少しでも戦力差を減らしたいし、そもそも後退の選択肢は存在しない。だから罠と判っていても虎穴に飛び込まざるを得ない。よって考慮すべきは、目の前のサーヴァントが実は
しかし、戦闘の最中十二分に竜の魔女を観ていたので、その可能性はほぼ無いと踏んではいる。……できれば、直接触れて解析したかったが、彼女の火力が高すぎるので不用意に近づけなかった。
『──そうか。何か要望はあるかい?』
「立香中心で観測してくれ」
『了解した』
回線が切れる。
それを見計らってか、無差別の憎悪が響いた。
「──話は終わりましたか」
城壁の歩廊。
禍々しい杭が墓標のように乱立し怨嗟の炎が立ち込める煉獄の中心で、竜を率いて魔女は嗤う。
あまりにも凄惨な様は、いっそ痛々しいともとれる──そんな彼女の様子と比べて、オレは逃げるように空中に立っていた。
「ちょこまかと逃げる蝿を追うのは飽きました」
距離二十数メートル。
魔女を中心に円を描くようにしてこの距離を保っていた。それは、攻撃にも退避にも
カルデアの解析の時間は稼いだ。そろそろ味方の支援に集中したい。
だから。
「だから、こういうのはどうでしょうか?」
彼女には、倒れてもらう。
オレは滑空する直前の鳥のように身を屈め──それを妨げるように
「これは──」
スキル『竜の魔女』による飛竜の一斉突撃。
オレの踏み込みは強制的に停止される。
仕方がない。絶好の餌だと言わんばかりに一心不乱に接近する竜たちを冷静に魔術で処理する。それと同時に警戒度も上げた。
二十、三十。まだ増える。
際限なく増えていく竜。この様子では、周辺の竜を片っ端から支配下に置いているらしい。
まるで嵐だ。竜の魔女を目とする巨大なうねり。なるほど、少し見くびっていた。彼女の真価は莫大な火力ではなく、強力な幻想種を自在に操ることだったのだ。
……けれど、分かっている筈だ。
これは統率ではなく暴走である。一日目の結果から、律されていない飛竜では、不意を突かない限り足止めにすらならないことは明白な筈で。もちろん、また
押し寄せる竜が雷霆で薙ぎ払われる。
大規模な魔術行使。ずしりとした倦怠感に支配されそうだが、無視して更に回路を稼働させる。
内側で駆動音が鳴り響く。肉体の熱が芯から逃げ場を求めて末端まで浸透する。思考が、先鋭化していく。気分がいい。戦闘だけに集中する機械になったような気がして。
今だけは、敵を殲滅することだけに意識を割け──
淡々と、しかし着実に竜の数を減らしながらも敵の位置に視線をやる。
見えない。四方八方を埋め尽くそうとする肉の壁で確認ができないでいた。
身動きも取りづらい。大魔術による反動も相まって、動きが制限されている。先程のように機動力を活かした戦いはできない。
と、いうことは。
「──!」
大気が震える。
急激な魔力膨張。発生源は、敵──竜の魔女。
でも、予兆はなかった。
一から十。十から百。百から千まで。どれほど魔力の扱いに長けていようとその
「──聖杯を、持っている」
刹那の迷い。
踏み込むべきか否か。
背後の何者かに何らかの狙いがあることは明白。手のひらで踊らされている可能性。味方の損害と今後の展望。
均衡を失った天秤。
脊髄を駆け抜ける悪寒。
ならば、一方に傾くことは道理であり。
ここは、一端。
「……ッ!」
砕く勢いで奥歯を噛む。
ここは、必要な博打だろ……! 方針をぶらすな。自分で立てた作戦も忘れたのか!
己の浅ましさに吐き気がする。
思考が精彩を欠いていることを再確認する。
肝に銘じろ。
やることは。
依然として、変わらない……!
「燃え尽きろ」
臨界点に達した魔力は竜の吐息となり、魔女の障害となる者を焼き尽くさんと荒れ狂う。
その余波で歩廊の凹部が溶解する。摂氏2000℃はくだらない。フライパンの上のバターのようだった。触れれば人体はひとたまりもないだろう。
竜の吐息が鞭のように振り払われる。大量の飛竜が巻き込まれ、悲鳴すら上げられずに炭になった。
高温に対して高い耐性を持つ筈の竜の鱗を貫通する。その
量産可能な捨て駒による妨害。
逃げ場はない。
物量によって強引に機動力を奪われた魔術師は、抵抗する間もなく熱線に飲み込まれた。
──“
骨の髄まで焼き尽くした確信を得た竜の魔女はほくそ笑む。
現代において、いや過去においても偉業と称えられる英雄殺しを為した人間を、魔女はそれなりに評価していた。それなりに評価していたから、それなりの対策をとった。
一番面倒だったのは、奇妙な魔術による空間移動だ。あれのせいで、せっかく追い詰めても軽々と脱出される可能性がある。
だから聖杯の
全て思い通り。
身体中を駆け巡る全能感に魔女は肩を震わせ、
「え?」
血飛沫と共に身体から突き出た十字架に、間の抜けた声を漏らした。
──迫る炎。
耳をつんざく振動と、皮膚をちりちりと刺す熱に脳が警鐘を鳴らす。
竜の魔女の行動に躊躇いはない。察するに、最初からこの
それは正しい。
実行に移しづらいとはいえ、令呪を使われたならば数的有利を生み出せる。あっという間に不利だ。空間移動にしても、大技に合わせられたらどうなるのかは一日目で証明された。
つまりは、何らかの
全くもって正しい、理想の戦法だ。だからこそ──読み易い。
竜の魔女の後ろ。
設定した通りの出口を抜け、彼女の背後をとる。
彼女の読み通り、展開にも多大な労力が費やされるし、不意を突かれたりしたならば、逃げ込む暇なくオレは敗れる。
だが、それは不意をつかれたらであって、来ると判っていたなら準備は容易く。
純粋な情報量と経験の差だった。
「────」
筋肉というばねに乗り、十字架の剣が押し出される。
連立した動作は一本の槍と化し、主の教えに反する異端者の心臓を貫こうと差し迫った。
勝敗は決した。もう覆ることはない。
よって。オレは、この後に姿を見せるであろう“何か”に警戒を強めて──
肉を貫く、感触。
「────は?」
頬に付着する血糊。
くぐもった声を竜の魔女が零す。
──貫いたのは、
外した。
何故。魔女に気づかれたから。それは違う。だって完璧なカウンターだった。一部の狂いもないドンピシャのタイミング。じゃあこの仮定は違う。相手に問題がないのならば。違う。それはつまり。おかしい。自分自身に。違和感が。
──まさか。
躊躇った。
一日目のもどかしさを思い返す。
カルデアでの嘔吐感を思い起こす。
在りし日の失望を思い出して。
「……ッ、離れろ!!」
「──しまっ」
空白を産んだ脳が、現実を再認識しはじめる。
その間に、魔女は不遜な輩を排除せんと行動を起こしていた。
「ぐ、ッ……!」
足元から呪いを帯びた杭が飛び出す。
高密度の呪。軽装甲であるオレは絶対に避けなければならない──!
あらゆる動揺をかなぐり捨て、全能力を総動員して生を拾いにいく。後方に全力跳躍。間一髪で直撃は避けたが、掠った。礼装の使用は問題ないが、破損部分目がけて細菌のように呪いが染み込もうとしている。態勢を整えながら除去を────うわっ!?
原型を留めていない凹部に向かって激突する勢いで転がり込む。すぐ側を憤怒の炎が通り過ぎて、隣接している側防塔を飲み干した。
胃の中に放り込まれた食物のように溶解する塔を見て、漸く戦慄を覚える。危なかった。あと少し遅かったら丸焦げよりも酷いことになっていた。竜の魔女は相当ご立腹とみえ──
「──あ」
魔女の顔は歪みに歪んでいる。先刻までの刺すような美貌は影も形もない。何なら、ちょっと涙目になってるくらいだ。余程怖かったらしい。大いに理解できる。誰だって怖い、死ぬような目にあったら。
なんて。
的外れなことを考えるくらい、オレの
──掲げられている右手。
血液にも似た赤い煌めきを宿すそれは、聖域を侵した不届きものへの怒気をこれでもかと主張する。
「────
ここに。
一つの奇蹟が為った。
「異端者を断罪せよ、
いやぁ、七周年は強敵でしたね……。作者は色んな意味で夜も眠れませんでした。あと水着に石残せませんでした。某アーキタイプさんにぶっぱしました。
もう充分に俺tueeしたじゃろ……?