FGO世界に転生した一般オリ主くんが生き残るためにリアルガチチャートを組んでRTAを走るお話   作:ペットボトル羊

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 ダイスロール判定に失敗したオリ主くん。


選択肢を間違えると死ぬ。間違えなくても死ぬ。

 もう一度探知魔術を起動して念入りに確認するが、生命どころか動いている物体もない。

 

「ちっ」

 

 舌打ちが漏れる。

 嫌な展開(パターン)だ。

 

「だが、最悪ではない」

 

 最悪は、敵性サーヴァントに出会うことだ。

 特にバーサーカー。

 アレに出会ったら、死に物狂いで逃げなければならない。

 

 それにしても、薄々勘づいていたが、やはり俺の運命力とやらは微妙らしい。

 これでは、バレルレプリカを撃つなんて夢のまた夢だ。

 一発でも弾丸を込めたら干からびる自信がある。

 

「……藤丸につけた(マーキング)はっと」

 

 藤丸には触れた瞬間から魔術的な印を付けている。

 レイシフトで剥がれる可能性も普通にあったが、問題なく機能している。保険も問題ない。

 事前に作っておいた冬木市の地図情報を全て展開し、藤丸の位置を調べる。

 

「……ギリギリ範囲内か」

 

 流石に冬木市全域を一つの地図に組み込むことはできない。

 だが、小分けにすることで全域を覆う(カバーする)ことに成功した。

……これも普通に苦労したものだ。かなり頑張ったというのに、少しの間しか使わないし、容量もクソ食うから破棄しなければならない。

 

 もったいない。

 

……藤丸の位置はそこそこ遠いので、ゼムルプスとガットから教わった隠形と、妙漣寺さんから教わった神足通でその場を離れようとして──

 

──()()に従って、近くの瓦礫に突っ込んだ。

 

 まるで、何かが落ちてきたかのような轟音と共に、俺が立っていた場所から粉塵が舞う。

 

「────っ、はぁ、はぁ……!」

 

 極めて限定的な状況でしか発動しない直感が発動した。

 

 其れが何を意味するか。

 

 即ち。

 

 英霊(バケモノ)の降臨だ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ──くそっ」

 

 最後に直感が発動したのは何時だっただろうか。

 確か、魔術回路の制御を失敗する直前だったっけ。

 ああ、くそが。魔術刻印とかいう便利シールはなかったから、本当にヤバかったなぁ。今も、ないが。

 

「……くそ、痛い」

 

 荒い息を抑え込みながら、呟く。

 瓦礫に自動車より速く突っ込んだから、当たり前だ。

 強化していなければ、間違いなくひき肉になっていた。

 

 肉体(からだ)を解析する。

 損傷箇所七、軽傷五、重傷二。酷いのは、右肩と、右腕の二の腕辺りか。

……治療しながら、刺さったガラスや家屋の破片を抜く。

 

「──さむい」

 

 ()()()()()()()()

 生命(いきもの)が必ず抱える、原初の恐怖に俺は襲われていた。

 

()()()()()()()()()()

 

 どうしてだ。

 どうして。

 なんで。

 なぜ。

 

 疑問が浮かんでは消える。

 

 俺は───────

 

『──アナタは、私と同じ(いっしょ)、何も遺せない。それなのに何故、抗う(諦めない)の?』

 

───、────落ち着け。

 

 心的外傷(トラウマ)を抑える方法は作っただろう。

 

 右手で心臓がある胸の中心を掴む。

 そして、大きく空気を吸って肺に送り───ゆっくりと吐いた。

 

 

 

「──決まっている」

 

 

 

 ガラスの破片を、己の顔と同じ高さまで持ち上げる。

 

 

 

 

 其処には

 

 

 

 

 魔術師(クズ)が映っていた。

 

 

 

 

「──、────」

 

──粉塵が収まる前に、発生源を強化した眼で観察する。

 

 一振りの“剣”が、大地を貫いていた。

 

 尋常じゃない神秘。

 

 間違いなく、英霊(サーヴァント)象徴(シンボル)の証である──宝具(ノーブル・ファンタズム)

 

 依然として、()()の探知、感知範囲にはサーヴァントはいない。

 其れ即ち──!

 

「──!」

 

 視界が真白に染まる。

 

「……壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)か」

 

 オレの肉体に触れていた瓦礫以外は全て吹き飛んだ、地面も大きく削れている。本当に、ふざけた威力だ。

 冷や汗が流れる。

 今オレが生きているのは、再現魔術である──偽・結界・六道境界のおかげだ。

 

──結界・六道境界──分かり易く言うと三重結界──は、空の境界に出てくる黒幕、荒耶宗蓮が使う結界だ。

 荒耶宗蓮は、型月のドラ⚪︎もんこと蒼崎橙子が、「魔法の域に達している」と評する程の並外れた結界構築能力を持っている。

 

 つまり、化物。

 

 俺は、その化物が実際に作中で披露していた結界を再現しようとしたのだ。

 だが、失敗した。オレが生み出したのは、全てが劣化した贋作だった。

 憶測でしかないが、衛宮士郎のように、荒耶宗蓮の結界は、彼の起源「静止」が色濃く現れていた術だったからだろう。オレの起源が何か調べる(すべ)がないから断言はできないが、十中八九、「静止」ではない。

 気づいたのは劣化品を生み出した後だったが、これはこれで、使い勝手がいい。藤丸やアーキマンさんに付与したのも、これをより格落ちさせたモノだ。

 

……それでも、オレが持つ防御で、随一の硬度を持っていた。

 

──壊れた幻想。

 

 端的に言えば、宝具を爆弾にして破裂させる技術だ。

 宝具本来の威力を越えるダメージを与えることができる。具体的にはだいたいワンランク上の威力。

 しかし、自身の誇り(いつわ)の具現であり、切り札でもあるそれを捨てることと同義であるので、好んで使用するサーヴァントはいない。修復も基本的に無理だし。

 アニメのバビロニアで牛若丸が使っていたが、あれは例外。相手が英霊(じぶん)よりも遥かに強いティアマト(ゴルゴーン)だからだったのと、後を託せる仲間がいたからだろう。

 

 だが、オレは複合神性(しんれい)どころかサーヴァントですらない。

 だというのに、宝具(ほこり)を捨てた。

 どうやら、敵サーヴァントは宝具を捨てることに何の躊躇いも持っていないらしい。

 

 “剣”

 

 アサシンではない

 

 使い捨て

 

「アーチャー・エミヤか……!」

 

 戦慄する。

 藤丸の位置を注視しすぎた。自身の現在地すら把握していないとは、笑わせる。

 

「此処柳洞寺の近くかよ…………ッ!」

 

 くそ、二番目に引きたくないパターンを引いた。やはり幸運E。

……いや、そう悲観することはない。

 少なくとも、オレがサーヴァントを引き連れてしまい、未だ未熟なキリエライトと藤丸にぶつけてしまう可能性は下がった。

 

 さて、オレには選択肢がある。

 

 一、エミヤの猛攻を凌いで黒い騎士王を張り倒す。

 

 却下。理由は述べるまでもない。

 

 二、助けを待つ。

 

 論外。

 

 三、合流。

 

 分かりきっていたがこれしかない。

 

「……どうする」

 

 顎に右手を添えながら、思考する。

 藤丸は、エミヤの大まかな位置の反対方向にいる。

 最速で合流するには、エミヤに背を向けなければならない。

 

 鷹の目を持つ相手に?

 

 UBWで馬鹿みたいに遠いビルの頂上からバーサーカーを狙撃していた男だぞ。

 

 しかも、オレが壊れた幻想を防げたのは、“剣”が最低ランクの名もない宝具()だったからだ。エミヤがよく使っている偽・螺旋剣や赤原猟犬だと間違いなく吹き飛んでいた。

 

……幸いなのは、彼が黒化によって思考抑制されていることだ。

 一応エミヤが正常である可能性も考えてはいたが、それも、必要のない壊れた幻想を使ったことでなくなった。

 しかし、エミヤは確実にオレに対する警戒レベルを上げているだろう。

 

 だってオレは直前まで狙撃に気づいていなかったのだ。

 

 オレ(凡人)が気づいていないということは、エミヤからもそう(無防備に)見えていたはずで、

 

 なのに、避けられた。

 誘われた、と思ったはずだ。

 

──違います。

 

「──結界修復、完了」

 

 爆ぜる。

 

 オレは勢いよく飛び出していた。

 

 さっきまでオレが盾にしていた瓦礫は、無惨にも“剣”に貫かれている。

 

「──ちょ、勢いありすぎ……ッ!」

 

 狙撃の勢いも利用して全力で飛び出したわけだが、滅茶苦茶速い。

 肉体が悲鳴を上げるが、死ななきゃ安い────!

 

「──ッ!!」

 

 直感が発動した瞬間、切り札の一つを切る。

 

「“レプリカ”、“太陽”起動……!」

 

 オレの踏み込みで、大地が割れる。

 其れは、明らかに、人間の力ではなかった。

 

──そして、文字通り風になる。

 

「ぐ───」

 

 オレが急加速したことで、エミヤの矢が外れた。

 今のオレは、切り札で身体能力だけサーヴァントと並ぶ状態になっている。

 が、ぶっちゃけこれ貰いもんかつ一回切りなんで、もう二度と使えない。

 ふざけんなよ。

 めっちゃ頑張って交渉したのに。

 

「あ───」

 

 先程とは比べ物にならないほどの痛みが肉体を襲う。

──其れでも、走る。

 骨が折れている気がする。

──其れでも、走る。

 想定よりも、負担がデカい。

──其れでも、走る。

 息を吸いたい。

──其れでも、

 

「生き残ってやる──!」

 

 全力で走った。

 

 

 

 

 

 

 

「────ぁ」

 

 サッカーボールのように、地面を跳ねる。

 

「──ぎっ」

 

 かなり跳ねた気がしたが、やがて、瓦礫に突っ込んで止まった。

 

「……いたた、制御を失敗(ミス)ったか……?」

 

 初めて使ったから仕方がないとはいえ、足を踏み外すとは。なかなかに無様だ。

 

「──狙撃が、ない?」

 

 オレは今、止まっている。弓兵の英霊(アーチャー)からしたら絶好の的のはずだ。

 結界を会得していることは看破されているだろうが、同時にその性能は彼からしたら紙と変わらないこともバレている。

 

 よって、狙撃が止んだということは、

 

「──助かった、か」

 

 鷹の目から逃げ切ったのだ。

 

「運がよかった」

 

 この場合、悪運だろうか。

 原作通り、エミヤが黒い騎士王を守ることに執着していて助かった。

 

「……藤丸の位置は、」

 

 地図を展開する。

 心なしか先程よりも、こちらに近づいていた。

 

「──よし、藤丸も生きている」

 

 取り敢えず、瓦礫に突っ込んだことで生じた土埃を腕で払う。

 

「……ごほっ、ごほっ、鬱陶しい──」

 

 

 

 ぴちゃり。

 

 

 

「──ぇ?」

 

 あかい。

 

「───、」

 

 眼下にある地面に、あかいシミができていた。

 

「ぁ」

 

 おそるおそる、胸に手を添えようとする。

 

「ぁぁ」

 

 なぜかオレの胸から“剣”が飛び出ていて、手を添えることはかなわなかった。

 

「ぁぁぁ──ごふっ」

 

 口から大量の血がこぼれた。

 途端に力が抜けていく。

 肉体を制御できない。

 

 オレは地面に倒れた。

 

「─────ち、ゆ、まじゅ 」

 

 “剣”が刺さったままでは治療できない。なんとか腕を背に回して、引き抜こうとする。

 

「──、ァ、アッ……!!」

 

 あつい。

 灼熱のような痛みがオレの全身を焦がしていた。

 

「──ぎ、」

 

 腕は鉛のように重かったが、それでも、無理矢理“剣”を引き抜く。

 

「 ぁ  」

 

 急速に血液(いのち)が外へ流れ出ているのを感じる。

 はやく傷を塞がなければいけない。

 でも、

 思考がまとまらない。

 

「 ぅ  」

 

 手を伸ばす。

 

「──み、ん  な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

####

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大量の骸骨が私たちを囲んでいる。

 

「はぁーーーッ!!」

 

 それを大盾を持ったマシュが蹴散らしていた。

 

「……ああ、もうっ!」

 

 所長も、片手を拳銃のように構え、ガンドという魔術を撃ってマシュを援護している。あと微妙にマシュを怖がっていた。

 

「──なんでこんなに(エネミー)がいるのよッ!?」

 

 所長が、我慢ならないと叫ぶ。

 

 同感だ。

 ドクターに言われ、何がなにやら分からないまま“レイミャク”とやらがある地点まで、マシュと行動していたが、なんでこうなったんだろう。……“レイミャク”ってゲームでよくある霊脈のことなのかな。

 

「──ああ、ああ……! レフ、レフぅ……!」

 

 霊脈の近くまで来た私たちは、女性の悲鳴を聞いて、急行する。

 その際に、マシュにお姫様抱っこされた。マシュの体は、最初、目が覚めた私を守るために、けっこうな数の骸骨を吹き飛ばしていたことが想像できないほど柔らかかった。ただ、なんとなく、彼女も私と同じ人間なんだと安心したことを覚えている。

 急行した私たちは、骸骨に襲われてる所長を助け、霊脈にマシュの大盾を設置するという流れになったんだが──。

 

『──先輩! 敵性生物を感知しました!』

 

 周りには何もいないのに、マシュが明らかに警戒し始めて、

 

『先輩!』

 

 マシュが、私に向かって飛来した矢を大盾で防いで、

 

『……う、嘘……!?』

 

 まだ原型を留めていた建物から、ワラワラと骸骨たちが出てきたのだ。

 

「助けて、助けて……レフぅ!!」

 

 所長の整った顔がどんどん歪んでいって、ついには涙を流し始めた。同時に精密だった射撃がブレていく。

 応じて、マシュの負担が大きくなって、彼女の顔に焦燥が浮かんでいく。

 彼女の動きは元々、素人目にも分かるくらいぎごちなかったが、今はより顕著だ。

 

──なんで、こんなに冷静なんだろう。

 

 唐突に、頭に浮かんできた

 

 可笑しな話である。

 私は平和な日本で暮らしていた。それなのに、いきなり、こんなことになっても混乱せずに、他人事のようにこの状況を俯瞰している。

 

 なぜ?

 

 カルデアに拉致されたと気づいたときは、普通に困惑して思ったままのことを口にしてしまっていた。

 爆発が起きたときは、しっかり動揺していて、彼に声をかけられて、やりたいことが固まった。

 

──彼。

 

 そういえば、彼──タナカくんはどうしたのだろう。

 私もマシュも心配していた。ドクターも「彼も“レイシフト”しているはずだ」と言っていたはず。だけど、通信が繋がらないらしくて、凄い険しい顔をしていた。

 

「……………来るな、来ないでぇ!!」

 

 所長が、いよいよガンドを乱射し始める。

 

 危ないな、と思った。

 骸骨にも、全然当たっていない。

 

 けど、彼女を責めることはできない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

「──あ」

 

 ああ、なるほど。

 なんでこんなに冷静なのか全く分からなかったけど、そういうことか。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 もっと言うと、何をすればいいか全く、これっぽっちもわからない。

 

 漫画や、アニメに出てくる勇猛果敢な登場人物たちの姿が思い浮かぶ。

 彼らは、当たり前のように“そう”だが、それが、どれほど困難なことかよく理解できた。

 

「─────ぁ」

 

 所長が、顔を涙でぐちゃぐちゃにしたまま、私を見て呆気に取られている。

 

「────先輩!」

 

 マシュが、私を見て、骸骨に囲まれているのに、手を伸ばしている。

 

──私の横に、骸骨が立っていた。

 

 私は、冷静なまま骸骨を観る。

 そして、彼、もしくは彼女の首から上を観たとき。

 

 目があった。

 

 骸骨には眼がないのに、目があったと思った。

 カタカタと骸骨が骨を揺らす。

 それはまるで、私を嗤っているかのようだった。

 

──未だに、冷静に分析している。

 

 骸骨が、握っている剣、と言うより鋭利な棒を振り上げる。

 

──まだ、冷静だ。

 

……ああ、どうやら私は、愚かにも勘違いしていたらしい。

 

 だってそうだろう?

 

 絶体絶命の状態で、未だに何をすればいいかわからないでいる。

 あり得ない。

 ふつう、

 ひとは、

 じしんが害されると感じたなら、何かしら行動(アクション)するはずなんだ。

 

 つまり、

 

 私はここまできて、何も感じていない。

 この状況を、現実(リアル)だと認めていないのだ。

 

 

 

 

 

 

『俺は、君の隣に立って君を支えるよ』

 

 

 

 

 

 

──頭がはじけた。

 

 骸骨の、頭が。

 

「──え?」

 

 それは、誰が漏らしたか。

 私か、マシュか。それとも所長か。

 

 次々に骸骨の頭が弾け飛んでいく。

 

 頭部を失った骸骨は、黒い霧のようなものを出して、消えていく。

 

「──間に合った」

 

 知っている声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ・再現魔術──オリ主くんが死なないために、型月、漫画、アニメ知識をフル活用して、それらに出てくる技術を再現した魔術。だいたい劣化版だが、秘術とか普通にあるのでバレるとやばい。メタ的に言うと、作者の知っている技術が出てくる(基本は型月の技術しか出てこない)。

 
  

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