戦術人形になった男は今日も対物ライフルをぶっ放す。   作:SUPER64

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お待たせしました。これからアンツィオちゃんの冒険が始まります。思っていたより多くの人に読んでもらって更に沢山の人にお気に入り登録をしてもらって感想も貰えたので超嬉しかったです。皆さんありがとうございます。


第1話 出会い

廃棄されたI.O.P社の研究施設から抜け出した俺は行く当ても無かったので適当に荒地を歩いていた。戦術人形と言うこともあり普通の人間より体力はある様で約60キロの対物ライフルはを背負っている状態で結構歩いたけどまだまだ体力に余力はある。

 

「同じ様な景色で飽きちゃうなぁ」

 

石ころを蹴りながら歩いていた俺は1人寂しく呟く。時計を持っていないから正確な時間は分からないけど結構な時間歩いた筈だ。最初の内は見慣れない景色にワクワクしながら歩いていたけどずっと同じ様な景色が続いていたお陰で流石に飽きていた。

 

適当に歩いているとは言ったが一応ちょっとは考えて歩いていて、少し前に車が複数台通った跡がある砂利道を見つけたからそれに沿って歩いている。だが車どころか人にも今の所出会えていない。泣けるぜ。研究施設から持って来た水と食料もそこまで多くは無いから飢え死にする前に人に出会うか人が居る所に行きたいけど見渡す限りずっと荒地が続いていて人が住んでいそうな建物も無い。

 

もしかして道を間違えたか?とも思ったが今更ルート変更しても遅いので諦めてこの道に沿ってひたすら歩くしかなさそうだ。それからもひたすら歩き続けていたが歩いても歩いても景色は殆ど変わらず誰にも会えない状況が続いた。体力的にはまだまだ大丈夫だったが暇を持て余しまくった俺はとあることを思いついた。

 

「どうせだから試し撃ちでもしてみよ」

 

せっかく戦術人形になったと言うのにまだ俺は銃をぶっ放していない。そして暇だったのでこのアンツィオ20ミリ対物ライフルの威力を確かめてみたくなった。それに今背負っているアンツィオは全くゼロイン調整をしていない状況な訳でゼロイン調整をする為にも試し撃ちをしてみることにした。弾はマガジンに入れているヤツ以外にもバラでリュックの中に10発入れているから少し撃つ程度なら問題ない。

 

背負っていたアンツィオを手に持ち折り畳んでいたバイポッドを展開して地面にアンツィオを置いた。実はこの銃には前に付いているバイポッド(二脚)の他にストックの近くにもモノポッド(一脚)がありこれらを使って銃本体を支える。

 

こんな大型の対物ライフルの反動なんてとんでもないに決まっているので伏せ撃ちの状態で銃を構える。後ろのモノポッドの高さ調整し先ず試しに目測約300メートル先の岩に狙いを定める。とある兵士の話によると素人なら100メートル先の的に2〜3発当てれば上手い方だそうだが戦術人形となった今の俺なら300メートル先のあの岩に当てる事は出来る筈だ。ボルトハンドルを前後に動かしてチャンバーに弾を装填する。この搭載されているスコープの最低倍率は5倍で300メートル先の岩もはっきり見える。狙いを定め、息を吐いてから呼吸を止めゆっくりとガク引きにならない様に気を付けつつトリガーを引いた。

 

ダゴォンッ‼︎

 

鼓膜が破けるんじゃないかと思う程凄まじい発砲音と共に強烈な銃の反動が右の肩に来る。そのあまりの反動に銃どころかうつ伏せになっていた自分自身が少し後ろにバックした。発射時の爆風とマズルから噴出された発射ガスによって俺の周りに大量の砂埃が舞う。次の瞬間にはクソ長い銃身から放たれた20ミリ弾が岩の手前の地面に当たり土煙を巻き上げた。

 

「す、凄い・・・」

 

威力もそうだが発射時の反動も凄かった。身体にガツンと来る感じでまるで人に右肩を思いっきり蹴られた様な感じだった。ただ岩の真ん中を狙ったのに手前に落ちたし右にもずれていた様に見えた。言うことでゼロインを調整する為に上と横のツマミを回して調整する。調整を完了するとボルトハンドルを前後に動かして空薬莢を排莢して次弾を装填する。もう一度息を吐いてから止め、狙い覚ましてトリガーを優しく引いた。

 

再び猛烈な発砲音と反動が来て目の前で大量の砂が舞う。飛んで行った弾は岩のほぼ真ん中辺りに着弾し当たった場所を抉り取り岩の表面に穴を作り上げた。本当に凄い威力だ。もしこれを生身の人間に撃ったらどうなってしまうんだろうか?想像出来ないはとてもグロいことになりそうだ。多分直撃したら原型を留めないレベルで吹き飛ぶ可能性がある。まぁ取り敢えずある程度の射撃練習と調整は出来たし弾もあんまり多くはないからこれ以上は撃たないでおこう。ボルトハンドルを前後に動かして空薬莢をだし、マガジンを抜いて新しく2発入れてから銃に戻した。

 

そんなことをしていると砂利道の奥の方から車が一台砂煙を巻き上げながら走って来ているのを見つけた。スコープを覗き込んでスコープの倍率を5倍から最大倍率の42倍まで拡大してその車を観察する。走って来ている車はどうやら古いアメ車の様だ。あんな古そうな車をこんなご時世にわざわざ走らせているってことは運転手は車好きなんだろうなぁと思いつつ運転手の顔を確認してみるとアンバーの髪の毛と頭の上にサングラスを乗せており、ネイビーブルーのジャケットを羽織っている。俺はその格好と顔に見覚えがあった。

 

「あれって・・・もしかしてグリズリー?」

 

まだ距離もあるのでただ格好とかが似ている別の人って言う可能性もあるけど、グリズリーに見える。まぁ兎に角誰であろうとやっと見つけた第一村人だ。流す訳にはいかない。地面に置いていたアンツィオライフルを背負い道の横に立って車が通るのを待つ。あの砂煙の巻き上げ方から察するにあの車は結構な速度を出していた。とするとそんなに待たずに車はここを通過するだろう。

 

そんなことを考えながら待っているとドルルルルッ!と言う独特なエンジン音を響かせながら銀色の車が結構な速度で走って来た。俺は人生で一度はやっておきたいことの一つだったヒッチハイクを実行。腕を水平方向にまっすぐ伸ばし、親指を立てる。が、車は速度を緩めることなくそのまま通り過ぎた。

 

「あり?」

 

止まってくれるもんだと思っていた俺は呆気に取られているといきなり車はブレーキをした様でガザザザザァァ!とこれまた派手に車体が見えなく程の砂煙を巻き上げながら停車した。ドアの開閉する音が聞こえ、こっちに歩いてくる足音も聞こえて来た。

 

「こんな所で何してんの?」

 

そう聞こえて来た声と砂煙の中から現れた姿は紛れもないグリズリーだった。敵意は無いことを示す為に手には何も持たずに俺はグリズリーの方へ歩み寄る。

 

「えっと、実は迷子になってて〜」

 

「迷子?」

 

俺はこれまでの経緯を簡単にグリズリーに説明した。勿論俺が元男の転生者だと言うことは言っていない。それを説明したら面倒な事になりそうだしそもそもこんなファンタジーじみた話を信じてもらえるとも思えないからな。だからグリズリーには目が覚めてからの話をした。

 

「で、今に至るって感じ」

 

「成る程〜つまりアンタは廃棄されていた筈なのに何でか目が覚めて行く当ても無かったから適当に道を歩いていたと」

 

「そう言うこと」

 

「それは丁度良かった。私はグリフィン&クルーガーって言う民間軍事会社に所属しているんだけどグリフィンは知ってる?」

 

「一応」

 

「なら話は早いね。私はそこに所属しているからアンタを保護して貰えるかこっちの指揮官に掛け合ってあげるよ」

 

「良いんですか?」

 

「良いってことよ。私はグリズリー。同じ戦術人形同士、仲良くやろ?」

 

と言ってグリズリーは屈託の無い眩しい笑顔を俺に向けて来た。あぁこう言う感じの姉が欲しかったなと思う今日この頃。

 

「私はアンツィオ。よろしく」

 

「よろしくね!アンツィオ!」

 

簡単な自己紹介を終えて俺とグリズリーは握手をした。グリズリーは元気よくブンブンと俺の腕ごと上下に揺さぶる。

 

「さ、乗って乗って!って、言いたい所だけど乗る前にそのデカい銃をどうにかしなきゃだね〜」

 

と言ってグリズリーは俺が背負っていたアンツィオライフルの方と車の方を交互に見ながら言った。一瞬何が言いたいのか分からなかったが直ぐに分かった。グリズリーが乗って来た車は2ドアの2人乗りタイプの車だ。車内は広いとはあまり言えない。高さもそこまである訳じゃないからどう見ても長さ2.5メートルあるアンツィオライフルを中に入れることは不可能だ。

 

「・・・そうだ!」

 

右手を顎に当てて考えていたグリズリーは何かを思いついた様で手をポンと叩いた。

 

「天井に縛ろっか!」

 

「え?」

 

予想外の方法に俺は疑問符を浮かべる。天井に縛るってど言うことだ?まさかアンツィオライフルを天井に置いて縛り付けるってことか?グリズリーに聞いてみると「そう言うこと」と言ってサムズアップされた。個人的にもうちょっと良い運び方があるんじゃないか?と思ったが実際他に良い考えも浮かばなかったので仕方なく天井に縛ることにした。車の屋根にアンツィオライフルを縦に置き落ちない様にグリズリーが固定用のベルトを4本使いアンツィオライフルをガッチリ屋根に固定した。

 

「なんで固定用のベルトを持ってたの?準備良過ぎない?」

 

「まぁ普段から大きい荷物を天井に乗せたりするからね」

 

「さいですか」

 

走行中に落ちないかなぁ?と不安に思いつつ俺は車の助手席に座った。車の内装はクラシックでオシャレな感じだ。車自体は砂によって汚れていたが車内はとても綺麗な状態だった。こまめに掃除をしているんだろうな。俺が車内を見回しているとグリズリーが嬉しそうに聞いて来た。

 

「どう?良い車でしょ?」

 

「ですね。このクラシックな感じがとても良いと思います」

 

「あ、分かってくれる?これの良さ。最新装備をゴテゴテつけた最近の車は便利にはなっているけどコイツみたいな良さは無いんだよねぇ。最近の車には無いアナログ式のタコ、スピード、油圧、水温、とかのメーターとか最高なんだよねぇ。古いからこその良さって言うやつだね」

 

なんかグリズリーは熱く語り始めたが車はあんまり詳しくないからよく分からない。取り敢えず愛想笑いをしつつ適当に返事をする。

 

「この車、何て名前なんですか?」

 

「エレノア。正確にはシェルビーマスタングGT500、67年モデルのエレノアカスタム」

 

「エレノアってあの60セカンズの?」

 

60セカンズって言うのは古いアメリカの映画だ。超高級車窃盗のエキスパートの主人公が仕事に失敗した弟の命と引き換えに4日以内に50台の超高級車の盗難を命じられる話。その映画で登場する車の一つにそんな名前の車があった筈だ。するとグリズリーは目を輝かせて俺に「あの映画知ってるの⁉︎」と聞いて来た。やべ、下手に言わなきゃ良かったかも。

 

「い、いえ、何か聞いたことあるなー程度で」

 

本当は昔車好きだった父さんと一緒に見たことがあるんだがそのことを言える訳も無いしな。

 

「そっか〜一度は見てみることをおすすめするよ。登場して来る車達がどれもカッコいいんだよ。特にこの車が警察もカーチェイスするシーンとか最高なんだよね!っと、いつまでも喋っててもダメだね。それじゃ、行きますか!」

 

と言ってグリズリーはいきなりアクセルを踏み込んだ。キャビンを揺さぶるかのようにエンジンが野太く咆哮する。一気に車は加速し速度をグングンと上げて行く。余りの加速に身体が座席に押しつけられた。

 

「ちょ、ちょっと速度出し過ぎじゃ?」

 

「どうせここは一本道でカーブも殆ど無い直線コースだがら大丈夫。それにフルパワーで走らせた方がこの子も喜ぶから」

 

と言いつつグリズリーはギアを上げて更に速度を上げる。既にスピードメーターは70キロを軽く突破し80キロからも更に伸びている。

 

「す、凄い加速」

 

「でしょ?V8エンジン舐めるなって話よ。このシャープに吹け上がって行く感じが堪らないんだよね。まぁ加速なら電気自動車の方が良いんだけどアレはちょっと物足りないんだよね。やっぱりこの身体を揺らす振動と腹の底から響く感じのエンジン音が無いと。時々環境保護団体の連中とかがこう言う古い車は排気ガスが大量に出るからとか言って環境破壊だとか地球にもっと優しく車にのれだとか色々文句言って来るけどクソくらえって話よ。地球の方が恐ろしいんだから優しくする義理は無いっての!」

 

結構な速度を出しつつグリズリーはテンションが上がっている様で休むことなく早口で色々と話して来るがその内容の半分以上は入って来ていない。

 

「こう言う車は吹かせてナンボ!エンジンパワーに物言わせて加速させるのが良いの。人間スリルを求めてしまう生き物だからね。スピードへの探究心は誰にも止めることは出来ないよ」

 

道も道で踏み固まって出来た道だったから結果凸凹しており速度も結構出ていると言うこともありエレノアはガタガタと揺れ時には小さくジャンプをしたりして俺はヒップハッピシェイクされた。若干車酔い気味になりながら俺はグリズリーの運転する車にはもう乗らないでおこうと思った。




アンツィオ20ミリ対物ライフルの射撃映像を見ていると本当に反動で撃っている人間ごと少し後ろにバックしてしまっているんですよね。一体どんだけ反動が強いのか。そしてアンツィオの搭載しているスコープはMarch-FX 5-42x56 Wide Angleと言うスコープをモデルにしています。最大倍率で約2キロ先の人の姿も確認出来る高倍率スコープです。

そしてグリズリーが登場した訳ですが車好きだと言う噂を聞いて実際古いアメ車とか似合いそうだなぁと思って私の趣味全開の車に乗せました。後悔はしていない。

次回は多分戦闘回になると思うのでお楽しみ!

ご感想も受け付けていますのでご気軽にどうぞ。


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