もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~   作:紗沙

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第55話 突然の凶行

朝の教室はざわついていた。

その騒ぎようは、ロゼリアさまの王位継承放棄事件と同じくらい大きなものだ。

 

けれど話している内容は、かなり物騒なものだった。

 

「知ってる?行方不明の生徒が出ているって」

「それに寮内で魔法の発動の痕跡があったんでしょ?」

「嘘だろ?夜寝てたけど、魔法の音なら起きそうなもんだけどな……」

 

周りの声に耳を傾けると、どうやら昨日の夜に私が聞いた音は間違いではなかったようだ。

エヴァ達も険しい様子で何かを考え込んでいる。

 

やがて教室の扉が開き、ロッド先生が入ってきた。

先生は珍しく真剣な表情で教卓に行くと、私たちを見渡した。

 

「皆さん揃っていますね。もう噂にもなっていますが、1寮から5寮までで魔法の使用の痕跡が発見されています。さらに、行方不明の生徒も何人か出ています。幸い第1寮ではまだ行方不明者は出ていません。この件について、なんでもいいです。情報を持っている方はいませんか?」

「…………」

 

ロッド先生の言葉に教室中が静まり返る。

私は思い当たる節がある。けれど、今この場で話していいのか、少しだけ悩んだ。

 

「もしも言いにくいことだったら、後ほど個別に私を訪ねてもらっても構いません」

「先生、私昨日の夜、魔法の音のようなものを聞きました」

 

後で先生の所に行っても良いかと思ったが、別に後ろめたいことはないので発言する。

先生は驚いたように私を見た。

 

「本当ですか?もう少し詳しくお願いします」

「聞いたと言っても大きくはなかったです。寮内だとは思いますが、かなり離れたところでの音でした。私の侍女も同じ音を聞いています。魔法の音は気になりましたが、部屋からは出ませんでした」

「ふむ……寮内は広いですからね。少なくともウリアさんの部屋の近くではないということでしょう。なんにせよ部屋を出なかったことは素晴らしいです。もしそれでウリアさんの身に何かあれば深刻ですからね。ちなみに同室の方は妹のエヴァさんでしたね」

 

先生はエヴァにも視線を向ける。

しかしエヴァは首を横に振った。

 

「私は聞いていません。私、眠りは深い方で、寝ると途中では起きないので」

「なるほど。分かりました。ウリアさん、貴重な情報ありがとうございます。……他に何か知っている人はいませんか?」

 

先ほどと同じように教室が静寂に包まれる。

ロッド先生は皆の顔を見て、息を吐いた。

 

「皆さんもウリアさんと同じく、なにか音を聞いたり、犯人らしき人を見たとしても独断で追ってはいけませんよ。必ず私たち教員を頼ってくださいね。皆さんが巻き込まれることが最悪であるとよく覚えておいてください」

 

ロッド先生の言葉に、私たちは深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件が大きく動いたのは、その翌日だった。

その日、私たち生徒は教室ではなく大講堂に集められた。

 

ここに集められるのはクローネ先生が亡くなったと知ったとき以来だ。

壇上にはベリアル学園長が立っている。

 

「行方不明になっていた生徒が見つかりました」

 

学園長の言葉に、生徒達がざわつく。

 

「さらに、魔法を彼らが使用したことも分かっています。……しかし、彼らは事件当時の記憶を失っていました。学園はこの事態を重く受け止め、事件として対処することに決めました。全生徒の皆さんはしばらく寮内で待機、全教員は原因の追究と、今なお見つかっていない行方不明生徒の捜索にあたります」

 

そこまで話して、ベリアル学園長は一瞬話すのをためらうそぶりを見せた。

しかし、息を吐き再び口にする。

 

「……行方不明の生徒は記憶を失う直前にクローネ先生の幽霊を見た、と口を揃えて言っています」

(……え!?)

 

突然出てきた言葉に私は内心で驚いてしまった。

クローネ先生の幽霊。それはミストが悩まされていたものだ。

 

思わず彼女に視線を向けたが、遠くに立っている彼女はうつむいているだけで、様子は分からない。

 

「クローネ先生の幽霊や様子のおかしい生徒を見つけた場合は、決して近づかずに教員に報告してください。絶対に一人で解決しようとしないように!」

 

ベリアル学園長の言葉が大講堂内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、大変なことになったね。訓練どころじゃなくなっちゃった」

「……ウリアって、本当に訓練が好きだよね」

 

訓練ができないことを残念に思い、呟くと、ムースに苦笑いされた。

そんなこと言われても、生まれてこの方訓練をしない日の方が珍しいのだから仕方がない。

 

「まあ、とりあえずミストを回収しようよ。遠くから見てたけど、あれ絶対寝てないって。最悪私たちの部屋で一緒に寝るのも考えた方がいいくらいだよ。いいでしょお姉様?」

「うん、そうだね。私もちょっとミストが心配かな」

 

他のみんなも賛成のようで、私たちは第5寮の教室に向かう。

第1寮の教室からは遠く離れているので、中庭を通らなくてはならない。

 

学園内は生徒たちが寮に移動しており、少し騒がしかった。

中庭を通り過ぎて少し進むと、第5寮の教室から出てくるミストを見かけた。

 

「あ……」

 

ミストはこっちに気づいて歩み寄ってくる。

相変わらず悪い顔色に、思わず駆け寄ってその手を握った。

 

「あんたねぇ……また寝てないんじゃない?」

「うん……寝れなくて……」

 

エヴァの質問にミストは小声で答える。

その体にルナが抱き着いた。

 

「なら、もう全員でお泊りパーティしちゃう?寮に居ればいいなら、一つの部屋に皆居ても大丈夫でしょ」

「いや、さすがにそれは無理なんじゃないかな。先生たちが僕たちを苦笑いで見るのが目に浮かぶよ」

 

困ったように笑うユウリィに咎められ、ルナは口をとがらせる。

そこで手を叩いたのはムースだ。

 

「全員は無理でも、ウリアの部屋にミストさんを泊めるのはありかもしれませんね。もしそれができなくても一人部屋であるロゼリアさまや私の部屋でもいいと思います。いずれにせよ、戻りながら考えましょう」

「そうですね、ここにいては先生方に早く寮に戻れと怒られてしまうでしょう」

 

ロゼリアさまもそれに賛成し、私たちは中庭を再び通って寮に戻ろうとする。

この後はどうしようかな、なんてことを考えていると、目の前に数人の生徒が急に現れた。

 

行く手をふさぐ彼らを見て首をかしげると同時に、エヴァが私の前に出た。

 

「……行方不明になっていた生徒達が、なぜここに?」

 

ロゼリア様の言葉に答えるように、生徒たちは魔法を放ってくる。

突然のことに驚いたが、戦えないミストを守るように私はマリアを展開した。

 

しかし、生徒たちの魔法は私に届く前にエヴァやルナ、ムースさんにより弾かれる。

その魔法を見てロゼリアさまは不思議そうにつぶやいた。

 

「……おかしいですね。いつもよりも出力が上がっている気がします」

「まさかと思うけど、君は全生徒の魔法の実力を記憶しているのかい?」

「え?はい、そうですが……」

 

ユウリィの驚いたような質問に、ロゼリアさまは当然のように返した。

相変わらずオーバースペックなロゼリアさまに苦笑いをしていると、足音が聞こえた。

 

「皆さん、大丈夫ですか!?なぜここに……それに行方不明になっている生徒まで……」

「ロッド先生!」

 

私の後ろから駆けつけてくれたのはロッド先生だった。

彼は杖のテスタロッサを展開すると、牽制目的であろう火の魔法を生徒に向かって放った。

 

(とりあえず、先生が来たから安心――)

 

次の瞬間、私は急に突き飛ばされた。

油断しきっていた私は前に倒れこみ、すぐに顔を後ろに向けた。

 

冷たい瞳が、細い目の奥からこちらを見据えていた。

光のない、深い闇……深淵のような暗さの瞳が。

 

ロッド先生は私に手を伸ばすミストになにか魔法をかけて、彼女を眠らせた。

それを確認したところで、私たちとロッド先生を隔てるように炎の壁が地面から沸き上がった。

 

「なにを!」

 

炎の向こうでロッド先生がミストを抱えて走り去っていく。

彼を止めたい。でも炎の壁が邪魔で近づくこともできない。

 

すると不意に地面が盛り上がり、炎に覆いかぶさった。

それを行ってくれたムースはエヴァに叫ぶ。

 

「エヴァさん!」

「なに……してんのよ!」

 

オーバーライトを構えたエヴァが跳ぶ。

固有能力の瞬間移動で一気にロッド先生に肉薄したエヴァ。

 

しかし次の瞬間にはまるでそこに来るのを予感していたように、風の刃がエヴァを襲った。

 

「うそでしょ!?」

 

エヴァは咄嗟に防御を固めたが、風の刃はエヴァを力任せに吹き飛ばした。

このままじゃ、エヴァが地面に激突する。

 

「エヴァ!」

 

私は駆け出し、エヴァを体全部で受け止める。

威力を殺しきれずに地面に倒れこんだが、ダメージはマリアがある程度吸収し、吸収しきれない分は癒してくれた。

 

「まずいよ!」

 

ルナが叫ぶ。ロッド先生は既に中庭を抜け、学園の中へと入ってしまった。

 

「追いますよ!」

「ごめんお姉様、助かったよ!ありがとう!」

 

ロゼリアさまの言葉に呼応するようにエヴァが立ち上がる。

彼女の手を引いて私も立ち上がると、すぐにロッド先生を追うために走り出した。

 

(なんでロッド先生が……ミストを?)

 

分からないことだらけだが、今は先生を追うのが先決だ。

だからこそ、私たちは最初に襲い掛かってきた行方不明の生徒たちがもう中庭にはいないことに気づかなかった。

 




◆ルート開放条件
・■■【■■】がエディンバラ学園に潜入している

※原作ではルートが存在しません

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