イナズマイレブン 〜伝説への挑戦〜 【停止中】   作:GAT

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最初はジュニア期編も書こうとしたけど長くなりそうだったのでやめました。
特に主要キャラ出ませんし。


1年生編
俺の覚悟


俺がこの世界に転生してから12年が経った。

 

円堂守の物語(原作)は何事もなく終わり、続く栗松や壁山、その次の虎丸の世代も先月中学を卒業し、ついに中学サッカー界から第1回FFI優勝メンバーがいなくなった。

そして迎えた4月。

 

始まりを告げる満開の桜とともに、俺の伝説(円堂守)への挑戦が始まる。

 

俺が獲得した転生特典はすべての条件を満たしたとき、ようやく効果を得る。

その発動条件は、サッカー部のない中学で1からサッカー部を作り、3年以内にフットボールフロンティアを優勝すること

 

そして俺は条件の1つ、サッカー部のない中学でサッカー部を作るという条件を満たすために、神奈川の清翔(せいしょう)学園中学へと入学。

 

一応県内とはいえ、家からはかなり遠いために寮生活だ。

両親が快く送り出してくれてよかった。まさか徒歩や自転車で通える範囲にサッカー部がない中学がないとは思わなかったし。恐るべしイナズマジャパン効果。

 

とはいえこれで条件その1は満たしたと言ってもいい。

そして残るは部員集めとフットボールフロンティアで優勝。だがその残った問題が難しい。フットボールフロンティア優勝はどこの中学に入ろうが難しいが、最大の難所は部員集めといってもいい。

 

円堂が雷門中サッカー部を作った時だって、最初は染岡と半田の3人から。その次の年で壁山、栗松、宍戸、少林寺が入ってまだ7人。原作が始まっても部員が揃ってなかったのだ。

ここでもそういう事態が起きる可能性はある。

 

いくらイナズマジャパン効果で競技人口が増えてきたからといってその多くはサッカー部のある中学に行く。むしろ俺のようにサッカー部のない学校で1から作る方が異例だ。

 

だからといって何もしないわけではない。

 

【おおきく振りかぶって】という野球漫画がある。細かい内容は言えないが、大まかにいうと野球部のない高校で1から野球部を作り、最終的には甲子園優勝を目指す物語だ。

その際、最初の1年目に集まった部員は経験者が各ポジションごとに1名ずつ計9名、初心者が1名、マネージャーが1名。

 

更には顧問に監督と、1年目から野球部として機能していた。

 

このおお振りのようにここまで上手くいくことは確率的に低いが、女子選手もフットボールフロンティアに出場できるようになった今ならば、初心者も加えれば不可能ではない。

サッカー部を作ろうとしている人がいることを周りに知ってもらえれば、興味を持ってきて来てくれる人がいるかもしれない。サッカー経験者の目に留まれば、入部してくれるかもしれない。

 

そのためのまず最初の行動として、俺は今、生徒会室前に来ていた。

まさかこの学校に来て最初に来る場所が生徒会室になるなんてな。というか俺以外に入学早々生徒会室に来た人っていないと思う。

 

 

「失礼しまーす」

 

 

扉を開けて生徒会室に足を踏み入れる。室内にいたのは1人だけ。

薄い桃色の、後れ毛をたくさん残したツインテールの少女。身長はかなり低く、一瞬小学生かと間違えそうになるほど。

 

 

「新入生⋯⋯ですよね?教室は三階か四階ですよ?」

 

「ああいえ、生徒会に用がありまして。校内に張り紙の提示の許可を貰いに来ました」

 

「張り紙?」

 

「そうっす」

 

 

そしてバックから今日この日のために自腹で作ってきた何十枚もの張り紙をバンッと机に叩きつける。

 

 

「サッカー部、創部希望です」

 

 

校内のあらゆる場所に掲示することによる宣伝。ありきたりだが、だからこそ効果は出やすい。

それにここに来る前に少し見たけど、掲示板に部活動勧誘の張り紙が多数あった。

だから貼ることはできるはず。だからといって勝手に貼るのはいただけないので恐らく管理しているであろう生徒会に赴いたってわけだ。

 

 

「サッカー部⋯⋯ですか」

 

「何か問題でも?」

 

「いえ、そうではなく⋯⋯私は書記なので許可を出すことはできませんし、会長は厳しいお方なので許可を出す以前に創部できるかどうか⋯⋯」

 

「俺を呼んだか?」

 

「か、会長!?」

 

 

入ってきたのは眼鏡をかけたキリッとした表情の黒髪の男。しかも立ち振舞いからして隙が全く無いし強者特有の圧もある。

 

 

「新入生か?お前の教室は三階か四階だぞ」

 

「それ、さっき私が言いました」

 

「そうか」

 

 

すると生徒会長が俺の手元にある紙に目を向ける。そして一瞬だけ目を細くし、俺の目の前に立つ。

強者特有の圧を間近でぶつけられ、気圧されそうになるが、俺の闘争本能がそれを抑える。

 

 

「サッカー部か。悪いが創部は認められない。諦めてくれ」

 

「⋯⋯どうしてですか」

 

「我が清翔学園は部活動に力を注いでいる。昨年の大会では野球部、水泳部、女子バスケットボール部、男子バレー部、卓球部が全国大会出場。それ以外の部活動も、運動部なら最低でも県大会ベスト8以内。文化部は何かしらの賞を取っている。そして、俺が所属している空手部は団体戦、個人戦共に優勝。ほぼ全ての部活が結果を残している」

 

 

ほぼ全ての部活動において、結果を残す。こんなことを成し遂げたのはこの世界では帝国学園のみ。

それがどんなに難かしいことなのか。前世を知る俺なら分かる。

 

最低でも県ベスト8以内。そしてここ神奈川は、雷門、帝国、木戸川と全国トップクラスが3校もいる東京に比べればマシだが、それでもかなりの激戦区だ。

 

 

超攻撃的サッカーで殴り勝つ。攻めしか知らない青い暴君、桐皇(とうおう)学園。

創設以来毎年県大会準優勝。永遠の2番手にして愛しき名脇役、琉居寺(るいじ)学園。

そして県内最多優勝。昨年の王者、目指すは日本の頂点へ、横浜名鳳(よこはまめいほう)中学。

 

 

この全国クラスの三強に加え⋯⋯

 

 

情報を制する者は勝利を制する。データサッカーによる堅い守備が持ち味の情制工業(じょうせいこうぎょう)高校付属中学。

女子校ながら毎年ベスト8以上に入り込む、かつての女子サッカー大会県王者。ガールズチャレンジャー桜ヶ丘女子(さくらがおかじょし)学院。

かつての名門復活へ。古豪は再び光り輝く。輝希(かがやき)中学。

 

他にも隠れた強者が勢揃いだが、ここ数年でフットボールフロンティアのシード権を獲得している中学は大体この6校。

ベスト8に入り込むには、最低でもこの中の1つを倒す必要がある。

まぁ全部倒して優勝するつもりの俺からすればあまり関係ない話だが。

 

 

「だが結果は求めん。俺が求めるのは、この学園の誇りを胸に、最後まで戦い抜く強い心だ。その強い心を持っていれば、結果は勝手についてくると思っている」

 

「強い心⋯⋯ですか」

 

「そうだ。この学校の名を背負って大会に出場する以上、生半可な覚悟や気持ちで挑まれてこの学校の顔に泥を塗るようなことをされては困るからな。お前、名前は?」

 

「明宮蒼斗です」

 

「明宮蒼斗。お前に、絶対に諦めないという強い覚悟はあるか?」

 

 

絶対に諦めない心。それは、フットボールフロンティアを勝ち抜く上で必要不可欠なもの。

イナズマイレブンにおける主人公たちはこの心、雷門魂が一際強かった。だからこそ、どんな壁も逆境も乗り越えられてきた。

 

俺の最終目標は円堂守。そして恐らく、円堂守に挑戦するための最大にして最強の壁は、雷門魂を受け継いだ新たなる王者、雷門。もちろん帝国や木戸川だって怖い存在だが、俺の予想ではそうなると思う。

そんな雷門に勝つためには技術、知識、身体能力もそうだが、何よりも気持ちで負けてはいけない。負けられないんだ。

だからこそ、覚悟はできていた。

 

 

「そんなの、最初からあるに決まってるじゃないすか」

 

「⋯⋯ほう」

 

「俺には野望がある。桐皇も琉居寺も横浜名鳳も、その先の木戸川も帝国も雷門も⋯⋯全部ぶっ倒して伝説に挑む。そのためにここに来たんだ」

 

 

全国制覇は通過点。俺の目的はその先にある。だからこそ、負ける訳にはいかない。

こんなところで、諦めるわけにはいかない。

 

 

「無謀な挑戦だな。だが俺に対して物怖じせず、ここまではっきりと口答えする輩はお前が初めてだ。その度胸に免じてチャンスをやろう。俺が卒業するまでに部員が揃ったら言え。練習試合を組んでやる。その結果次第で、創部を認めてやらんことも無い」

 

「⋯⋯言いましたね?」

 

「ああ。俺に二言はない。確か第3グラウンドはどこも使っていなかったな。お前達が使用できるよう手配してやる。立花、任せるぞ」

 

「はい!」

 

「それから、これに許可は必要ない。どこでも好きな所に貼るといい。幸い入学式まではまだ時間がある。今からなら十分に間に合うだろう」

 

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 

 

生徒会室を退出すると同時に圧迫感から開放される。

生徒会長⋯⋯空手部主将にしてチャンピオン。王者ってのはあそこまで風格があるのかよ。もしこれが円堂守だったら。

⋯⋯いや、円堂はなんか違うな。少なくとも生徒会長が出てた王者の風格とは違うと思うし。

 

だがいずれ、フットボールフロンティアを勝ち抜けば似たような雰囲気を持つ強者と戦うことになる。

一度経験出来て良かった。

 

 

「さてと⋯⋯やるか!」

 

 

早朝から赴いてよかった。入学式までまだ時間があるし、準備に取り掛れる。

おまけににグラウンドの使用許可も取れたし。

 

だけどまだ問題が山積みだ。しかも会長が組んだ練習試合で結果を残さなきゃ創部もできないし。

 

⋯⋯円堂ってこんな大変なことしてたんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、生徒会室では⋯⋯。

 

 

「凄いですね彼。会長に凄まれると大体の人が足がすくむのに⋯⋯」

 

「あいつは最初から戦う覚悟を持っていた強い男だ。そういう目をしていた」

 

「戦う覚悟⋯⋯」

 

 

思い起こされるのは絶対に成し遂げるという強い決意のこもった真っ直ぐな目を持つ、久しく見なかった強大な壁、絶対強者に挑もうとする、無謀な挑戦者の姿。

 

 

「何より恐ろしいのが、あれでまだ1年だという事だ。大物になるぞ、あの男は」

 

「会長がそこまで言うなんて珍しいですね。今までだって肩入れすることもなかったのに」

 

「⋯⋯期待しているのかもな。あの男に」

 

 

強者を目前にしても物怖じしない度胸。何がなんでも成し遂げるという強い覚悟。果てなき道に挑もうとする強い探究心。

どれも挑戦者に必要なものであり、かつては彼自身も持っていたものだ。

だからこそ期待しているのだろう。かつての自分と見比べて。

 

 

 

「見せて貰うぞ、明宮蒼斗。お前の覚悟を」

 

 


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