死んだ筈の戦友が戦術人形になって帰って来たんだが?   作:SUPER64

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よくTS系にある男が女になって男友達が女になった友達にドギマギするって言うストーリーが好きなので書きました。


第1話 死んだ筈の戦友が戦術人形になって帰って来たんだが?

テセウスの船と言う言葉を知っているだろうか。実を言うと俺もこの言葉の語源となった話は詳しくは知らないんだが、例えばとある車があってその車のパーツ全てを新しいパーツに置き換えた場合、それは同じ車だと言えるのか否かと言う哲学の話だ。この話自体は昔からなんとなく知っていたがまさか俺自身がこの問題について考えさせられる事になるなんて思っていなかった。

 


 

俺の名前はマイケル・ウォーレス。ウェスタン・アーミーって言う名前のPMC、民間軍事会社に所属している何処にでもいる様な普通の男だ。今日は久しぶりの休日だったので街を酒を飲んだりして家でゆっくりして時間を過ごしていた。更に嬉しいことにこの休みは明日まである。PMCと言うブラックな職場で連休を貰えることは結構珍しいことなのでこれはとても嬉しい。

 

明日は何をしようか。久しく乗っていない俺の愛車に乗ってドライブするのも良いかも知れねぇな。ソファに座ってスマホを弄りながらそんなことを考えているとブーー!っと俺の家のチャイムが鳴った。が、今の時間は夜の12時過ぎ。普通こんな真夜中に家のチャイムを鳴らす奴は居ない。俺の住んでいるこの街の治安の悪さを考慮に入れて考えるにこの時間帯に来る奴の6割は人の家の金目の物を奪い取る為に来たクソ野郎どもだ。

 

俺は護身用にと用意しているスタームルガーのLCRxと言う名前の小型リボルバーを机の引き出しから取り出しシリンダーを横にスリングアウトさせて357マグナム弾がちゃんと装填されているのを確認して元に戻す。そしていつでも直ぐに撃てる様にハンマーを起こしておき、LCRXを左手に持つ。

 

ドアの前に立ちドアスコープで誰かを確認してみると意外なことにドアの前に立っていたのはどう見てもサイズが合っていない黒色のパーカーを着た少女だった。真っ白な髪と赤色の目が特徴的な少女で見た目的に年齢は多く見積もっても20歳程だろうか。にしても相手が女って言うのは少し予想外だった。こう言う場合の相手は男の場合が多いからな。

 

それにあの女の髪の色も気になる。歳行った老人とかなら分からなくもないが若い女性なのに髪が全部白色ってのは普通あり得ない。染めている可能性も無くはないが髪を白色に染める奴もそう居ない。だが相手が若い女だろうが髪が白かろうが油断して良い訳じゃない。相手が誰だろうが平等に容赦しない。相手に警戒されない様に何気ない感じを装って俺はドアの向こうの奴に向かって話しかけながらドアを右手で少しだけ開ける。

 

「こんな時間に何だよ。今何時か分かってんのか?」

 

少しだけ開けたドアの隙間から顔を出して俺は女と対面する。顔を確認してみるがやっぱり知り合いとかじゃない。知らない奴だ。因みに左手に持ったLCRxはドア越しに構えて女を狙っている。もし女が変な動きをしたらドア越しに撃つ。

 

「悪いな。この街に到着したのが9時過ぎでここに来るのにも時間がかかったもんでな」

 

ポケットから拳銃を出して金を出す様に脅迫したりするのかと思っていたんだが予想外な事に女はまるで友人に話すかの様な口調でそう俺に言って来た。

 

「誰だ?」

 

「・・・今からとんでもない事を言うけど怒ったりして撃たないでくれよ?」

 

「内容によるな」

 

コイツ俺が銃を構えているのに気づいているのか?まぁどっちにしてもこの状況だとこっちがある程度は有利だ。相手は武器は持っておらずこっちはリボルバーをいつでもシングルアクションを通用が出来ている。だがお互いの距離が近過ぎる。もし相手が近接格闘の上手い奴なら俺が負けてしまう可能性も多いにある。

 

「ケネス・サクソンって奴を知ってるだろ?」

 

俺はその名前を聞いた瞬間、この女への警戒度を一気に上げた。ケネスサクソン。俺の戦友であり親友だった男。丁度半年前に俺の目の前で敵に撃たれて死んじまった奴だ。そんな男の名前を出して来たこの女は何者だ?

 

 

「何処でその名前を知ったかは知らないがそっから先の発言には気をつけろよ。もしケネスを馬鹿にする様な事や侮辱する様な事を言ったら問答無用で殺すからな」

 

「分かった。でも今から話すことは別にアンタを馬鹿にしているつもりはないからキレないでくれよ」

 

そう言って女は一旦間を開けると真剣な表情で俺の目を見ながらゆっくりと話し始めた。

 

「オレは・・いや、オレがケネス・サクソンだ」

 

「は?」

 

今コイツは何て言った?俺の耳が度重なる銃声で遂におかしくなったんじゃなければ今のコイツはオレがケネスだとかほざかなかったか?いきなり何を言っているんだよコイツは。

 

「お前な、相手を騙したいならもっと調べてからにしろよ。ケネスは女じゃねぇ。男だ」

 

「そうなんだよな。男の筈なんだけどな。でも気がついたら女になってたんだ。信じられないだろうけどな」

 

確かに喋り方は相棒(ケネス)に似ている。だが似ているのはそれだけだ。年齢も容姿も性別も全部がケネスとは違い過ぎている。だがケネスと名乗るこの女の表情は真剣そのもので俺を騙そうとしている様には見えない。もしこの女が相手を騙すことのプロなら俺に嘘を悟られずに騙そうとしてくることもあるがもし本当に俺を騙そうとしているならもっと現実的な俺が信じ易い話をして来る筈だ。コイツが言っていることは余りにも荒唐無稽だ。

 

「全くだ。誰がそんなファンタジーな話信じると思ってんだ?まだガキの方がマシな嘘つくぞ。しかもケネスは半年前に死んでる。俺はこの目でアイツが撃たれて死ぬのを見た。誰がどう見てもアレは完全に死んでいた」

 

「知ってるよ。敵側のPMCの隊員に撃たれて腹に何発か食らって更に首にも食らった。多分大動脈に当たってたんだろうなアレは。首に当たったのが致命傷で大量の血と血のあぶくを吐きながらまともに遺言を残すことも出来ずに死んだよな」

 

「・・・・何でそれを知ってんだよ」

 

相棒の死に際の様子を知っているのは俺の仲間達だけだ。勿論その仲間達の中にこの女は居ないしアイツらがこの話をこんな怪しい奴に話すとも考えられない。本当にコイツは何者なんだ?LCRxを握る左手に力が入る。俺の戦友であり親友であり大切な相棒でもあるケネスを名乗るこの女にムカついて来た。その名前はお前なんかが気軽に名乗って良い名前じゃねぇんだぞ。

 

「何者か知らないが死にたくなかったらそれ以上変な事を言わずに消えろ。2度とその名前で名乗るな」

 

俺は普段より低い声でそう言った。別に相手を怖がらせようとわざとこんな低い声を出した訳じゃ無いが、怒りで自然とこの低い声が出ていた。だがこの女は怖気づいたりせずに話し続けた。

 

「そう言われてもオレは本当の事しか言ってないんだけどな」

 

「・・・分かった。それじゃ本当にお前がケネスかどうか確かめさせてくれ」

 

「OK。何をすれば良い?」

 

「ケネス本人しか知らない様なことを何でもいいから話してみろ」

 

「そうだな・・・・お前の愛車はまだフィアットの126か?」

 

「あぁそうだ。だけどそれだけじゃ証拠にはならないぞ。先に止めてある車を見て来た可能性もあるんだからな」

 

「そのフィアット、元は700ccの50馬力エンジンだったのをもっとパワーが欲しいからって900ccで120馬力のバイクのエンジンを乗せてバック用のエンジンを車に乗せる為にクラッチ、ミッション、バックギアとかを強化したり新しく作ったりしたよな。結局改造し終えるまでに1年ぐらい掛からなかったっけ?」

 

マジかよ。今コイツが話したことは全部合っている。俺は旧車のフィアット126に乗っていてもっとパワーが欲しいと思ってエンジンを大型バイクのエンジンに交換した。彼女の言う通り改造するのに時間はかかったが何とか完成した。

 

「んで、後部座席を取っ払ったりして軽量化したりして車重は600キロ以下になったのにエンジンは120馬力も出るもんだから改造し終わったフィアットはじゃじゃ馬になってたよな」

 

この話も彼女の言う通りだ。改造フィアットは軽呂ボディーに高馬力のエンジンをぶち込んだ結果アクセルを少し踏んだだけでとんでもない加速をするモンスターマシンに生まれ変わった。だがパワーがあり過ぎて素人には運転することが出来ない車になった。俺も何度制御出来ずに事故ったことか。

 

「・・・確かに今お前の話た内容は全部合ってた。だが車の話を聞いただけじゃまだ判断しかねる」

 

 

「オレがお前を呼ぶ時はマイケルじゃなくてマイクって読んでいる。お前がよく吸うタバコの銘柄はジタンとラッキーストライク。酒はバーボンをよく飲むよな。腹にはナイフで切られた痕があったよな。たしか任務の時に角待ちされていた奴に襲われてその時の傷だったけ?」

 

おいおい今言ったのも全部合っているぞ。まさか本当にこの女はケネスなのか?いや、だがケネスとは容赦が余りにも違い過ぎる。やっぱり信じられない。なら引っ掛けの発問をしてみるか。

 

「俺には彼女が居たがその彼女の名前を言え」

 

「いや、お前彼女なんか居なかっただろ。あーそう言えば巨乳の安産体型の美人な彼女が欲しいとか言ってたよな。その様子だとまだ理想の彼女はゲット出来ていないみたいだけどな」

 

引っ掛けの問題にも正確してしかも俺の好みのタイプの女まで当てやがった。

 

「俺とケネスが初めて出会った場所は?」

 

「ウェスタン・アーミー社のブリーフィングルーム。オレが入社して全員の前で挨拶をし終えた後にお前の方から話しかけて来たよな」

 

「ケネスの所属していたチームの名前とそのメンバーの名前は?」

 

「チーム名はサヴェージ(Savage)。メンバーは隊長がアラン・カッチャーで、筋肉バカの黒人ヘイル・フォスター、アジア人でメンバーの中で1番身長が低いソン・ヤン、変態だが腕は確かなスコット・ベイマー、そしてお前、マイケル・ウォーレスとオレだ」

 

到底信じられないがここまで全部コイツが言っていることは本当だ。メンバーの名前も間違っていない。なら、最後にこの質問をしよう。これこそケネスしか知らない話だ。

 

「・・・・ケネスが死ぬ直前、俺はケネスに何て言った?」

 

「あの時はオレも意識が朦朧としていて全部覚えている訳じゃないけど一部なら覚えている。大丈夫。大丈夫だ。弾は掠っただけだ。こんくらい擦り傷だ。だから死ぬな。しっかりしろ。とか色々言ってたよな。最後まで必死になってオレを助けようとしてくれてありがとうな。正直嬉しかったよ」

 

まだ完全にこの状況を理解出来た訳じゃないしコイツの話していることを信じられてはいない。だがこうして色々な質問に正解されるともう信じるしかないだろ。どう言う訳か分からないがオレの相棒が女になって帰って来やがった。

 

「・・・・どう言うことなのか説明してもらえるんだろうな?相棒」

 

俺はそう言うとずっと構えていたLCRxを下ろしてドアを開け、相棒を部屋の中に招き入れた。

 


 

「はぁ⁉︎それマジで言ってんのか?」

 

「マジもマジ。大マジだ」

 

家の中に招き入れた俺はソファーに座ったケネスから敵に撃たれてからの出来事を聞いて驚きの声を上げた。その内容は想像以上にぶっ飛んだ内容だったからだ。ケネスによると撃たれて死んだ後、見知らぬ部屋で目が覚めたらしい。そしてそこで自分が女になっているのに気がついたらしい。本人も相当驚いたそうだ。そりゃそうだよな。目が覚めたら自分が女になってたんだから。

 

だが驚くにはまだ早い。本当に驚くのはこれからだ。ケネスは何がどうなっているのか調べた結果、今自分が居るのがI廃棄されたI.O.Pの研究施設で何と自分が戦術人形になっていたんだそうだ。ケネスが女になったってだけでも信じられねぇのに戦術人形になっただと?設定盛りすぎだろ。だが余りにも荒唐無稽であり得ない話だからこそこの話は嘘じゃないと思えた。

 

「確かに人形は人間とそっくりだが・・・本当にお前戦術人形になっちまったのか?」

 

試しにケネスの腕を握ってみるがちゃんと人間の肌の感触があるし暖かさもあった。今目の前にいるのが戦術人形とは思えなかったが特徴的な赤い瞳と白色の髪も戦術人形だからとすれば合点がいく。

 

「あぁ。今のオレは戦術人形だ」

 

「う〜〜ん・・・見た感じはただの美少女だけどな」

 

整った顔立ちにサイズの合っていない服越しにでも分かるスタイルの良い身体。今のケネスの姿は正に美少女だ。

 

「それは褒めてんのか?」

 

「率直な感想だ」

 

「まぁ確かに美人だなとは自分でも思うよ。まぁそのせいで気持ち悪く思うんだけどな」

 

「ん?どう言うことだ?」

 

俺なら美少女になれたとなると歓喜、とまでは行かなくても結構嬉しく思うと思うんだけどな。いやまぁ実際に女になるかと聞かれたらならないと答えるだろうけど。

 

「こう・・・上手く説明出来ねぇんだけど・・・・この女の身体に慣れてないせいで凄い違和感みたいなのがあるんだよ。この声もそうだけど男の頃と違い過ぎて自分の身体じゃないみたいな感じがするんだ」

 

「なるほどなぁ。で?目が覚めた後はどうしたんだ?」

 

「自分が寝ていたベッドの横にあった端末で色々調べて自分が戦術人形だって知った時はめっちゃ驚いたよ。信じられずに同じ文章を10回くらいは読み返したな。その次に驚いたのは俺が死んでから半年も過ぎていたことだな。で、何とか落ち着いた後に装備を取りに行くことにしたんだ」

 

「装備?」

 

「ほら、戦術人形って決まった武器とか装備品を使うだろ?」

 

「あーなるほどな。そう言えば戦術人形としてのお前の名前は何て言うんだ?」

 

戦術人形の名前は全部使用する武器名から付けるのが主だからな。今のケネスの戦術人形としての名前を知れば同時に使用する武器も分かる。

 

「M27 IAR」

 

「知らない名前だな」

 

「まぁあんまり有名な銃じゃないよな。オレもこの姿になってから初めて知った。アメリカで開発された分隊支援火器だそうだ」

 

ケネスは立ち上がるとソファーの横に置いていた大きめのリュックを開けて中からHK416にそっくりな銃を取り出して机の上に置いた。

 

「これがM27 IAR?HK416にしか見えないんだが?」

 

「そりゃそうだろうよ。HK416に16.5インチのヘビーバレルを付けただけなんだからな」

 

「もうそれHK416だろ」

 

「それはオレも思ったが言うな。まぁ兎に角、銃や服、装備品を手に入れたりして準備を終わらせて、取り敢えず人のいる街を探して荒地をひたすら歩いた。そっからここに辿り着くまでに4日かかったけどな。まぁ早かった方だろ。途中何も飲まず食べずに動き続けたせいで死にかけたり賊に襲われたり色々あったな」

 

「よくぞまぁここまで辿り着けたな」

 

「本当だよ。あ、そうだ、風呂に入りたいんだが良いか?」

 

「風呂?」

 

「ほら、何だかんだでオレ4日間まともに体を洗えていないからさ」

 

「あ~そうか。どうぞご勝手に」

 

と俺はいつものノリで答えてしまったが直後に俺は重大な事を思い出した。そう言えば今のケネスは女じゃん。

 

「そう言えば着替えはどうするんだ?」

 

「あー考えて無かったな」

 

ケネスは今は女性だ。昔だったら俺の服とかを適当に貸していたが今のアイツにはそもそも服のサイズが合わないだろう。

 

「まぁ良いや。お前の服貸してくれよ」

 

「適当だなオイ。まぁ良い。適当に用意しておく」

 

「ありがとよ。じゃ、オレは風呂に入らせてもらうよ」

 

そう言ってケネスは風呂場へと歩いて行き、何故か途中で止まると俺の方を振り返って来た。

 

「覗くなよ」

 

「お前の裸なんか見ても嬉しくねぇっての。さっさと体洗って来い」

 

しっしっと言った感じであっちに行けとジェスチャーをしながら言うとケネスは「へーい」と言いながら風呂場に行った。それを見届けた俺はソファーにドスンと勢い良く座り込んだ。

 

「はぁ〜なんか無駄に疲れた」

 

壁に掛けている時計を見てみると現在時刻は1時15分。思ったより時間が経過していた。この短時間の間に色んなことが起き過ぎた。突然俺の家に女がやって来たかと思えばそれはケネスがで、しかも戦術人形になったとか話して来る。話の一つ一つが突飛でありえなさ過ぎる。

 

だが、今まで話した感じだと見た目こそ違えど口調や仕草、雰囲気などはケネスと同じものを感じた。あり得ないファンタジーな話だが俺はあいつの話を信じることにする。

 

もし偽物だった時は・・・いや、相棒を疑うなんてことはやめよう。

 


 

服を脱ぎ捨てたオレは浴室の中に入った。この体で目覚めて初めてのまともな風呂だ。目の前にある大きな鏡で自分の姿を見てみる。腰辺りまで伸びている白髪に赤色の瞳。モデルみたいな体型に整った顔立ち。今のオレの姿は誰もが美少女と認めるだろう。少しの間オレは鏡に映る自分の姿をぼーっと見て、溜め息を吐いた。自分の姿を見て美少女だと思ってしまい、更に自分の姿に若干見惚れてしまっている自分が悲しい。あまり体のことを意識しないようにしてオレはシャワーのハンドルを回した。シャワーノズルから適温のお湯が出て来て体に沿ってタイルの床に滴り落ちて行く。

 

男の時の感覚でシャンプーで髪を洗おうとして手が止まった。そう言えば女の髪なんて洗ったことがないが普通に洗って良いんだろうか?まぁ他にやり方知らないしいつものように洗うか。それに男だろうと女だろうと髪は髪だ。そう考えたオレは男の時と同じ様にごしごしと白髪の髪を洗って行く。

 

「・・・これ面倒くさいな」

 

この長い髪、見た目は綺麗で良いんだが洗う時はなかなか面倒だ。オレは長い髪を洗いながら今日のことを思い返した。本当に一か八かの賭けだった。普通見知らぬ女が「オレはケネスだ!」とか言っても何言ってんだコイツ?と思われるだけだろう。オレだって逆の立場だったら同じ反応をしてその女を無視するか精神病院とかにぶち込んでいただろう。だからマイクがオレの話を信じてくれるとはあまり思っていなかった。諦め半分、期待半分でマイクに話していたからマイクが信じてくれた時は表情には出さなかったがとても嬉しかったし安心した。

 

ま、まだあいつはオレが本当にケネスなのかどうか疑っているところだろうな。恐らく今は今後のオレの対応をどうするか悩んでいたりしているんだろう。今のオレにはオレが本当にケネスだって言うことを証明出来るものが自分の記憶以外何も無い。だからオレは相棒に信じてもらえる様に今までと同じ様に接しよう。

 


 

浴室から聞こえて来るシャワーの音が聞こえて来る。ケネスの着替えの服を用意して浴室の前の洗面所に置きに来た俺は一瞬動きを止めて半透明のドアの向こう側で動く人影を見ていた。この向こう側には一糸纏わぬ姿の美少女がいる・・・中身が相棒だと分かってはいるがそう考えると柄にもなくドキッとしてしまう。あ、言っておくが俺はホモとかじゃないからな?それによくよく思えば女を俺の家に上がらせたのは今回が初だったな。初の女が女になったケネスになるとは想像だにしていなかった。と言うか想定外だ。

 

だが幾ら相手が美少女でも中身は俺の親友であり戦友であり相棒のケネスだ。確かに今俺は変な想像とかをしてしまったが相棒には手を出さないし出す気もない。姿は変わっても相棒は相棒なんだからな。まだ俺はあいつがケネスだとは信じ切れていないが俺は昔から相棒を信じて来た。だから俺はあいつ言うことを信じて昔と同じ様に、いつも通りに接しよう。

 

「おいおい・・・」

 

着替えを置置こうとしたが浴室前のドアの下に服が散乱していた。どう見ても奴がさっきまで来ていた服だ。う〜ん、こう言う所は変わって無いな。昔からあいつ片付けとか整理整頓とか出来なかったもんな。洗濯機に相棒が脱ぎ捨てた衣服を突っ込んで行っているとパンツを見つけた。女性用のパンツではあったが期待していた様な物じゃ無かった。別にエロくも無いし可愛らしい見た目って訳でも無い。飾りっ気の無い灰色のスポーツショーツだった。下の方もスカートだったら面白かったんだが残念ながらコイツが履いていたのは半ズボンだ。

 

「ちゃんと脱いだのを入れろよな」

 

と言って脱ぎ捨てていた服達を洗濯機の中に突っ込んだ。すると風呂の方から「あぁ悪い」と言う返事が帰って来た。この何気ないやり取りも久しぶりで俺は懐かしさやら嬉しさやらで涙が出そうになったが堪えた。

 

「着替え置いといたからなー」

 

「おう、ありがとうよ」

 

ケネスに一声かけてから俺はリビングに戻った。ソファーに座ってスマホを弄っていると洗面所の方からこっちに向かって来る足音が聞こえて来た。どうやらケネスが風呂から上がったみたいだけど、意外に早かったな。そう思いながら顔を上げた俺は相棒の姿を見て目を奪われた。

 

風呂から上がって来たケネスの格好は上は白色のTシャツで下はパンツ一丁と言うとんでもない格好だった。そう言えばそうだった。風呂上がりのコイツは昔もよくこんな姿になってたな。男同士の時は特に気にしなかったが見た目が女だとその格好は大問題だ。

 

若干サイズの合っていないTシャツ、そのTシャツを押し上げられて強調される胸、そして若干サイズが合っておらずブカブカなせいで襟から少し見えている胸の谷間や鎖骨・・・何とも言えない色気がそこにはある。これじゃぁまるで彼シャツだ。

 

「って言うかこれっていわゆる彼シャツ的な状況じゃね?」

 

どうやらケネスの方も同じ発想になったらしい。だが相棒の際どい格好にドギマギしている俺とは違いケネス自身は特に深いことは考えずに言った様だ。その証拠にケネスは特に恥ずかしがったりする訳でもなくいつもの様に冷蔵庫を開けて中からミネナルウォーター入ったペットボトルを取り出して一気に飲み干している。その姿を見てみると見られていることに相棒も気がついた。

 

「ん?何だ?コレ飲んじゃダメだったか?」

 

「い、いや、そう言う訳じゃないんだけど・・・何かこうしてお前が俺の家に入って来て風呂に入ったり勝手に冷蔵庫の飲み物を飲んだりしている姿を見てなんか昔を思い出してた」

 

「あーそうか。俺にとってはそうでもないけどお前にとっては半年振りに出会うもんな」

 

「ま、まぁな」

 

咄嗟に嘘を吐いてしまったが今言ったことも嘘では無い。もう一生ケネスに出会いないと思って居たがこうして目の前に居る。姿は違うが言動はケネスのそれだ。自然と男だった時のケネスの姿が浮かんでくる様だ。だがそれはそれとしてやっぱり今の相棒の格好はヤバい。男の悲しい性と言うべきか動く度にチラチラと見える胸元や下の無防備な生足などをチラチラと見てしまう。だが余りジロジロと見られるのはケネスも良い思いはしないだろう。それに今まで通り接しようって心に決めたばかりだろうが。

 

そんなことを考えているとケネスは目の前のソファーに「はぁ〜疲れたぁ」と言いながら座った勿論今の格好で座ろうもんなら俺からはケネスの穿いているパンツが丸見えになってしまう訳で俺は顔ごと視線を晒した。

 

「・・・ふふっw」

 

「?」

 

するとケネスがもう堪え切れないと言った感じで吐き出す様に笑い始めた。俺は何がそんなに可笑しかったのか分からず首を傾げる。

 

「気づいてるぞ。胸とか足をチラチラ見てんの」

 

「すまん」

 

俺は良い訳などはせずに素直に謝った。やっぱり見てたのは気づかれていたか。

 

「別に謝らなくて良いって。そんなに気にしてねぇし」

 

「いや、でもお前女として見られたりするのは嫌なんだろ?」

 

「別に嫌って訳じゃない。それに女扱いされてしまうのは避けては通れない道だ。どんなにオレが嫌がろうと周りはオレを女として見るし扱う。これは仕方ないことだ。それにこんな格好していて注目しない方が男として終わってる。それと、実を言うとお前があたふたしている姿を見て楽しんでたしな」

 

「はぁ⁉︎」

 

「いや〜お前がチラチラ胸とかを見たりしてそれを必死に隠そうとしている姿は面白かったぞ」

 

「おいおい、こっちはお前を傷つけない様にって心配していたんのにお前俺の反応みて楽しんでいたのかよ!」

 

「ほれ」

 

そう言うと相棒は襟を引っ張って谷間を曝け出して来た。更に少し前屈みにしているお陰でその谷間がばっちり見えてしまっている。俺はほぼ反射的に首を別方向に背けた。

 

「ちょ⁉︎お前なぁ!今は自分が女だってこと分かってんのか?」

 

「分かってるからこんなことしてるんだろ?」

 

 

「お前実は女として見られるの気にしてないだろ」

 

「気にしていないって訳じゃないがお前相手だとそんなに気にならないんだよな。と言うかお前動揺過ぎだろw童貞のガキかってんだ」

 

「くっそ!鬼!悪魔!痴女!」

 

「痴女じゃねぇ!」

 

「どー見ても痴女だろうがよ!自分から男に胸を見せる女が痴女じゃなかったら何なんだよ!」

 

「痴女ってのは自分からS◯Xを誘って来る様な奴だろうが!」

 

その後もしょうもないやり取りを俺達はし続けた。再開の祝いとして酒を交わしながら最終的には昔と変わらない様な馬鹿騒ぎをしていた。ケネスと酒を片手に話しながら俺は懐かしさと嬉しさを感じていた。姿性別は変わりはしたがまた相棒とこうやって馬鹿騒ぎすることが出来たのはとても楽しかった




ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。もしこの小説に興味を持って下さったのでしたらまた次回も読みに来てください。

それと、マイクとケネスのそれぞれの一人称についてですが2人とも口調が似ているので区別し易くする為にマイクの一人称は「俺」ケネスの一人称は「オレ」にしています。

描いてもらったオリジナル戦術人形M27 IAR


【挿絵表示】


詳細なキャラ設定などは後日書こうかなと思っています。



ご感想お待ちしております!

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