七夜「これは…………」
ノエル「金色の短剣………?いや、でもちょっと短いわね」
マーリオゥ「鍵………か?」
七夜たちは街中を調査していたところ、突如、地面に落ちていた黄金の鍵を見つけてしまった。鍵にしては巨大であり、短剣にしては小さすぎる。こんなにも豪華な鍵、何に使うものかと。
七夜「まったく、可笑しい趣味の輩もいたもんだ。こんなもの、何に使うんだ。扉に使うようなものじゃないだろう?これ、適当な物語の失われた王国の金庫とかに差し込むアレじゃないのか」
ノエル「こんな豪華な金庫鍵なんか、持っている人いるの?」
マーリオゥ「どういうことだ………?その鍵と、鉄骨事件がどう関係しているんだ?」
三名が首を傾げる。と、そこへ…………
???「調査は難航しているようだな、用心棒たちよ」
七夜「誰だ、アンタ」
◆ ◆ ◆
《地下王国・城》
一方で翡翠一行。突如麻婆豆腐店の地下に見つけた黄金の城に侵入した。
志貴「いや、普通入っちゃだめじゃん」
翡翠「この奥に今回の事件の犯人がいると見ました」
志貴「そんなことはもう誰でもわかってるよ……」
ランサー「もう誰も信じられねぇ」
シエル「しかし、なんという豪華なお城なんでしょう。こんな巨大なもの、作るのに一体どれだけの年月をかけたんでしょうか………」
辺りにはずっと黄金が続いている。日干しレンガで作られた、広い床。
志貴「なに、このメソポタミア感………」
ランサー「だよな、お前もそう思うよな」
シエル「なんの話ですか?」
志貴「大丈夫、先輩、知らないほうがいい」
翡翠たちは廊下をてくてくと歩いていく。今のところ、侵入を迎え撃つ罠や仕掛けなどはなく、誰も何も仕掛けてこない。それが余計に不気味だ。
???「ほう、我(オレ)の庭に迷い込んだ蟲どもがいたと思えば。貴様らだったか、洗脳探偵よ」
翡翠たちの向かう先から、金髪の若者がやってきた。その男は両手を広げて、侵入者である翡翠たちを歓迎する。
???「よくぞ参った!!真実を教えてやろう、洗脳探偵!!雑種どもの蔓延るこの小さな街の平和を脅かすコンクリートジャングル事件、その犯人は、この我。英雄王ギルガメッシュだ!!」
翡翠「志貴さま、ここの部屋は………」
志貴「キッチンまでしっかりと完備されているね」
シエル「冷蔵庫の中は………見てください遠野くん!!カレーが入っていました!!」
志貴「先輩黙ってください」
ランサー「この城では、住民が普通に暮らしているだけなのか?」
翡翠「住所どうなっているんでしょうか…………」
ギルガメッシュ「おのれ貴様ら!!!!我を無視するとは何事だ!!!!」
志貴「わー、だれだあのきんぱつのおとこはー」
ギルガメッシュ「見て見ぬふりとは随分と思い上がっているようだな………下郎!!折角貴様らが追う犯人の正体を明かしてやったというのに………!!!」
翡翠「犯人を知っているのですか!?」
翡翠が驚愕する。(もう遅い)
ギルガメッシュはふふんと一笑した後、再び語り出す。
ギルガメッシュ「当然だ。我は完全にして万能。この世の全てを知り得る者だ。貴様らに教えてやろう、この事件の真犯人を!!(二回目)」
翡翠「──────(ごくり)」
志貴「─────(嫌な予感しかしないんですけど)」
シエル「──────(カレー美味しそう………)」
ランサー「─────(帰っていい?)」
ギルガメッシュ「貴様らが追う、この事件の犯人、それは────」
シエル「なんですってぇぇ!!」
志貴「早いです」
シエルは志貴の背負い投げを食らった。
ギルガメッシュ「やり直す。教えてやろう、貴様らが追う、この事件の犯人、それは────」
シエル「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
志貴「帰れ暇人」
シエルは志貴のタックルを食らって廊下のもっと奥に吹き飛ばされた。
ギルガメッシュ「貴様らが追う、この事件の犯人、それは、この我、英雄王ギルガメッシュだ!!!!」
ギルガメッシュはドヤ顔で決めポーズなんか決めた。
翡翠「志貴さま、この事件の犯人像を特定するには、この辺りがこうで、ここらへんがああで」
志貴「なるほど、つまりそういう共通点から犯人がわかるんだ」
ランサー「流石は洗脳探偵だな」
ギルガメッシュ「聞け貴様ら!!!!」
志貴&翡翠&ランサー「ダレダオマエハー」
ギルガメッシュ「貴様ら本気で我に捻り潰されたいのか」
翡翠たちはギルガメッシュに何の関心も示さない。
翡翠「さぁ、お遊びはここまでです。英雄王ギルガメッシュさま」
ギルガメッシュ「ほう、遂に来たか、洗脳探偵」
場の空気が揺れ出した。翡翠からはかつてないほどに冷たく鋭い眼差しが放たれている。ギルガメッシュですらも、その瞳からは目を反らしそうだ。
翡翠「言い逃れはできません、貴方を犯人です、英雄王ギルガメッシュさま」
ギルガメッシュ「我、言ったぞ」
翡翠「どうして、罪のない人々に、鉄骨をけしかけたのですか」
ギルガメッシュ「は、探偵のくせにそれすらも推測できないとは。弛んでいるな、洗脳探偵。市民のことなどどうでもよい。我が求めているのは貴様だ、洗脳探偵。町中を巻き込むほどの怪事件を引き起こせば、貴様が反応するというものだ、貴様が事件解決に動き出した時点で、貴様は我の罠に掛かっていたということだ。我の目的はな、貴様を捕らえて、【あの女】の元へと連れゆくことだ。あの女は貴様の来訪を心待ちにしているようでな。わざわざ一般庶民がこの我に依頼をしてきた程だ。あの道化の、我を選ぶ人材選択の適性、そして言峰との共闘等の条件を踏んで、我は特別にあの女を我の駒とすることにした」
翡翠「そんな………!!なぜ、貴方は………私達を………!!」
志貴「翡翠、絶対その反応は違うでしょ」
ランサー「なにがなんだか知んねぇが、テメェを捕まえれば、それで解決なんだな!シンプルじゃねぇか。いいぜ、テメェの相手は俺だ!!」
ランサーはギルガメッシュを取り押さえるために、赤い槍を持ってギルガメッシュに向かって走り出す。
ギルガメッシュ「ふん、学習能力の無い猿め。身の程を弁えよ、貴様の存在も、我にとっては計算通りだ」
ランサー「何………!?」
ギルガメッシュ「よいか、貴様が洗脳探偵に接触した時点で、我の思う壺だ。貴様は洗脳探偵たちを此処へ連れ込むだけでよかった。貴様はもう用済みだ、とく失せよ、ランサー」
ランサー「テメ─────」
ランサーが言い終わる前に、ガタン、と音がした。それと同時に、ギルガメッシュの背後に、無数の、黄金の円盤が出現する。
シエル「アレは────!!」
シエルがいち早く危険を察知して、志貴と翡翠を連れて場を離れる。
円盤の中から、螺旋状の剣が出現する。
ギルガメッシュ「───王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」
螺旋状の剣は、折り重なる刃の嵐となって、矢のように一斉掃射された。機関銃のようにランサーを襲う剣の雨。
ランサー「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
ランサーの身体を剣が貫いていく。
翡翠「ランサーさん!!剣が飛んできていますよ!!」
ランサー「遅ぇよ言うの!!」
シエル「ダニィ!?グレッグ、生きてるかァ!?」
ランサー「あぁ……ナントカ………」
ランサーは苦しげに身体を抱えながら言う。もちろん、大丈夫ではない。重傷を通り越して致命傷だ。しかし、ランサーは苦悶は上げない。ここまでふざけながらも、共に歩んできた仲間たち。翡翠たちに、心配はかけられない。
ギルガメッシュ「ほう、鳴き声を上げぬとは、まさに英雄の鑑だな。最後まで忍耐を貫き通すか。良いだろう、その最期まで戦う姿勢に免じて、素晴らしき最期を見せてやろう、最後まで英雄クー・フーリンが英雄であったことを称賛し、引導をくれてやる」
ギルガメッシュが手を挙げる。
シエル「上から来るぞ、気をつけろォ!」
シエルの忠告ももう遅い。ランサーは真上から落下してきた鉄骨に圧し潰されてしまった。
ランサー「ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
シエル「ランサーが死んだ!!」
志貴「この人でなし!!」