オリ主が司波達也のライバル(自称)になる話   作:zhk

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赤バーに染まったからこれは実質王道劣等生SSということ(大嘘)


植物のように生きたかった・・・ダメみたいですね

 

 司波達也にとって、平穏とは何よりも重要視すべき事柄の一つである。

 

 波風を立てず、問題を起こさず。注目されず、ひっそりと過ごす。ある程度の友人と最低限の学業を修め、魔法大学への切符と魔法科高校を卒業したという事実のみさえあれば達也としてはそれ以上は求めていない。

 

 そんなモナリザの腕に欲情して救急車に轢き殺される爆弾殺人狂人のような思考回路で生きる司波達也は現在、自身の教室である1-Eにて視線の筵となりつつあった。

 

 ひそりひそりと教室の端々から噂話と奇異の視線が飛んでくる。聞こえる内容はもっぱら昨日の一騒動に関して。あの問題児と関係がある―そんな事実は一切ないのだが―という語らいにより、同じ穴のムジナと思われているようで。

 

 (俺の平穏はどこへ行ったんだ・・・)

 

 目立たず出しゃばらず、学生演劇の木のように静かな生活を送りたかったというのに、あの赤猿のせいですべてがパーである。昨日は一日どうしてこうなったという後悔の気持ちと、引きこもりが生まれる理由がなんとなくわかった達也であった。

 

 「よっ、話題に欠かないねぇ司波くん」

 

 悲しみから遠い目をしていた達也へふと声がかかる。朝の一時間目前から胃痛やら諸々で死に切った目を音源の方向へと向けると、そちらには昨日関りが出来た(意味深)エリカと美月の二人であった。

 

 「俺としては何も嬉しくないんだがな・・・平穏を返してくれ・・・」

 

 「まぁ退屈しないからいいんじゃない?」

 

 「なら立場を代わるかい千葉さん?俺は大歓迎なんだが・・・」

 

 「冗談。傍から見るだけなら全然いいけど絡まれるのはアタシもごめんだわ」

 

 「ハハハ・・・私もちょっと遠慮したいですね・・・」

 

 三人の頭に腕を組みアホ面を晒しながら高笑いする赤毛チビ(推定身長160センチ前後)の顔が浮かぶ。諸悪の権化め、いつか痛い目に合わせてやると達也は心の中で復讐を誓う。

 

 しかし今更起こったことは変えられない。自身の魔法『再生』で生きる時間ごと巻き戻せたりしないかと願ったりしたが残念なことにそんなことは叶う事もなく決まってしまった現状は変わることはない。ならばこの第一印象に変化をもたらすほかないのだがそれはそれで面倒が多すぎる。

 

 入学2日目にここまで色々と考えなくてはならなくなるのかと、今後の苦労を想うとさらに胃が痛くなってくる。頑張れ達也、たくさん考えて、平穏な学生生活をゲットだ!!(まちかどまぞくナレ)

 

 とまぁそんなことを考える最中であった。三人が談笑に耽っていると、ふと達也の前の席の生徒がこちらに振り向く。

 

 「なぁ・・・もしかして、昨日颯真に絡まれてたって生徒ってアンタか・・・?」

 

 「?」

 

 突然の質問に、達也は疑問の意図を込めて眉を顰める。

 

 がっしりとした体格の、彫りの深い顔つきの男子生徒であった。肩を半身だけ出してこちらを見ていた彼は、達也のきょとんとした顔に気づいたのかはっとしたような顔になり、体を達也へと向けて話し出す。

 

 「ああわりぃ、説明が悪かったな。えっと小柄で赤髪の、声がでかくて態度もデカい―――」

 

 「私が来たぁっ!!!!」 

 

 彼の言葉は最後まで語られることはなく、教室の扉の勢いよく開かれた音とバカでかい声で入ってきた誰かの存在感ですべてかき消された。その口調と声に嫌な予感がしてならない達也は、ゆっくりと視線を教室入口へと向けた。

 

 壊さんばかりの勢いで教室へと入ってきたのは、赤い髪をした小柄の少年であった。暑苦しいほどの声量と、唯我独尊とした態度。誰の目も気にしていないという現れのようなその男の登場に、騒がしかった教室が一瞬で静かになる。

 

 それもそうだろう・・・なぜなら、噂の張本人が教室へと殴り込んできたのだから。

 

 そう、嵐を伴ってやってきたのは、ライバル認定(非公式)怪人こと目下達也の学校生活の目の下のたんこぶであるあの赤髪男であった。

 

 「・・・あんな奴なんだけど、見覚えある?」

 

 「悲しいほどにある。本当に悲しいほどにな・・・」

 

天を仰ぎ、目を押さえながら達也は前席の彼の言葉に応える。背後からはウワ出たというまるでゴキブリが出た時のような反応をするエリカの声と、ええ・・・という美月の嘆き声が耳に入る。

 

 「悪い少し持病の腹痛が痛んできた俺はトイレに行ってくるから先生にはテキトーに言っておいてくれ」

 

 「えちょっと司波君!?」

 

 跳ねるように飛び出た達也の背に、背後から美月の焦った声が刺さるが達也は気にしない。対策を考えないとと思っているうちにこれだ、どうやら神はよほど達也の事が嫌いらしい。ホームルーム前にこの教室に入ってきたということは十中八九奴も同じクラスだということ。あんな変人と一年間同じクラスだと言う事実に泣きそうになってくる達也だが、達也は切り替えがが出来る男である。

 

 今やるべきは自分の不運を嘆くことではない。目下自分の平穏と、ひいては妹の平穏も脅かすかもしれない(過大評価)男への対策を練るのが得策である。切り替えていく。

 

 切り替えていく(大事な事なので二回)

 

 ひとまず今は時間が欲しい。ホームルームを少しくらい抜ける程度なにも教師も問題だと思わないだろう。それに達也の所属するには二科生のクラス。悪く言えば将来有望な一科生のスペアとなり得る可能性を持つ者が選ばれたクラス。今の社会の風潮や校内の差別的意識を考えれば、二科生が一人消えた程度教師側も気にも留めることはないはず。

 

 幸運にも教室の出口ーこれも入口と呼ぶべきか悩むところであるがーは達也の席から近い。腹痛を訴えているのにどうにも動きが機敏すぎるようにも思えるがひとまず今は撤退第一である。戦地の最終ラインである扉の取手へ手をかけて―――

 

 「どこへ行こうと言うのかね??」(ムスカ)

 

 耳元でバカ()の声が耳を打った。

 

 瞬間、跳ねるように振り向きながら下がろうとするも、残念ながら達也の背にはまだ閉鎖中の扉。距離を空けることは叶わない。明らかに不利な立ち位置に、咄嗟に達也の口から舌打ちが漏れかける。

 

 「おいおい我が宿敵よ・・・そんなまるで夜道にろす・・・ろきゅ・・・げふんげふんっ!!ろちゅっ!ろしゅちゅっ!!・・・柔肌をチラつかせ他人に見られ興奮する変質者に遭遇したような反応をされると俺も悲しいじゃないか」

 

 「今お前はろ し ゅ つ き ょ う ー (強調)よりも俺にとって質が悪いんだがな・・・」

 

 「安心しろ俺のライバル。俺にそんな特殊な性癖は存在しない。あくまで一般の範囲に入るものだ。しかし最近では雑誌などを買ったはいいがほとんど姉ちゃんに見つかって処分されるため、近くの公園の茂みにて厳重に保管している。俺と一戦交えてくれると言うのなら、俺のスーパーコレクションからいくつかプレゼントしてやっても構わんぞ?」

 

 「思春期全開の中学生みたいな保管方法だな・・・」

 

 キメ顔のまま語るバカに対し、呆れるように達也は返す。もうこいつに標的にされれば逃げ切れないと察したのか、諦めたように肩を落とす。

 

 「さて・・・姉ちゃんの介入ということで名乗りが止まってしまったが、ここでもう一度させてもらおうっ!!俺の名は中条 颯真っ!!お前を倒し、そしていつか最強の魔法師となる男だっ!!!」

 

 だっー!!!だーっ!!だっー!

 

 末尾の言葉が反響し、教室の外の廊下を轟いていく。キーンッと耳をつんざくうるささに頭が痛くなり始めるが、こいつと関わるという事そのものが頭痛の種だったなと達也は再確認。今はとりあえず颯真との絡みを終えることが先決である。周囲の視線も何やら『やっぱりか・・・』となにか納得するようなものになりつつある、これ以上の誤解はどーにか避けたい達也である。

 

 友人に助けを求めようかと視線をチラリと動かすも、エリカは爆笑するのみで動くことはなく美月はオロオロとするのみで助力は求めれはしないようだ。ジーザス(諦め100%)

 

 「さぁ・・・次はお前の番だ我が宿命のライバルっ!!貴様の名を俺の魂に刻ませろ!!」

 

 「・・・・・・司波 達也だ・・・・・・」

 

 諦めながら、達也は小さく自分の名を名乗る。わざと偽名を名乗る案も浮かんだが、ここまでくればどうせ遅かれ早かれ名は知られるだろうし、加えて嘘をついた時の方がこのチビッ子は怖そうである。

 名乗り終えると、彼はかみ砕くように何度も達也の名を口ずさむと、ニヤリとまたあの厄介そうに笑って見せる。 

 

 「司波 達也!この三年間、俺から逃げられると思うなっ!!お前は俺の燻っていた炎に火薬を投げ込んだっ!!」

 

 「そうか・・・まったく身に覚えはないがそのまま爆散して消えてくれればありがたかったんだがな」

 

 「ふんっ・・・たかが火薬の爆発程度で俺が死ぬわけないだろう・・・人間はそう柔ではないわ」

 

 「柔なんだよなぁ・・・」

 

 呆れの言葉を飛ばすが颯真はどこ吹く風。まさにノーダメージと言わんばかりに話を続ける。まだ終わらないのかとため息をつこうとしたその時、ふと颯真の覆うように影が出来る。

 

 「お前がどうして実力を隠してるのかは知らんがっ!!俺がその冷めた化けの皮をぐびぃ・・・・・・!!」

 

 「いい加減にしろこのバカ野郎がっ!!」

 

 次の瞬間、彼を覆う影であったあの達也の前席の青年が怒声を上げながらげんこつを一発振り下ろした。クレヨンしんちゃんよろしくな効果音が鳴ったかと思いきや、ふらりふらりと体をふら付かせ颯真はそのままバタリと床に倒れ伏す。頭の上には星が舞い、目はコメディ漫画のようにグルグルと回り続ける。いつの演出だと思わざるを得ないが、どうやら危機は去ったらしい。こいついっつも倒れてんな(作者比)

 

 「ったく・・・あずささんにあんだけ言われてまだ懲りてないのかこいつは・・・えっと達也だっけ?こいつに代わって謝罪するわ。ホントすまんこの騒がしい猿が面倒かけて」

 

 「あ、ああ・・・」

 

 伸びきった颯真の襟首担ぎ上げて、ガタイの良い彼はペコリと謝罪を達也へ。ピクピクと電池代わりに使ったカエルのようになっている颯真はあえて視線から外した。世の中考えない事の方が幸せになれるものである。

 

 「ああ自己紹介が遅れたな。俺は西城レオンハルトっつうんだ。レオで構わねぇよ。このバカの幼馴染だ。だからといってこいつと同じ括りにしないでくれよ?それはほんとに心外だから」

 

 「いや見た目でいえばお前も似たようなもんげびばっ!?」

 

 一瞬起きた颯真に再度降りかかるげんこつ一発。ガンッと中身の入ってなさそうな音が高くなって、ぷっくりと颯真の頭上にたんこぶが鏡餅状に出来上がった。今度はしっかり意識が刈り取られている。手慣れてるところに彼の苦労が忍ばれた。

 

 「司波 達也だ。俺も達也でいい。出来るならもっと強く殴ってやってもらって構わないぞ?」

 

 「これ以上こいつにバカになられたらこっちも手に負えねぇよ・・・」

 

 渇いた笑いをレオは口にしながら、完全気絶した颯真をテキトーに放り投げる。ぐえぇという鈍い音を鳴らしながら、滑りのよい床をドンブラコドンブラコと颯真が流れていくが達也は気にしない。自業自得である。

 

 とそんな頃、本鈴が鳴った。どうやら予鈴はなっていたらしいが、騒音野郎の大騒ぎのせいでそれすら耳に入らなかったらしい。それとほぼ同時に教室のドアが開き、一人のスーツ姿の女性が教室へと足を踏み入れた。

 

 「はい皆さんおはよっ!?な、なんで倒れてる子がいるんですか!?!?」

 

 入室一番の言葉は落ち着いたものから、入口付近にゴミのように転がってる颯真(ゴミ)を見て驚き一色に早変わり。その甲高い叫びに意識が覚醒したのか、颯真はむくりと顔を上げて入口付近にたたずむ彼女へと視線を向ける。すると颯真はじーっと彼女を下から覗き込むように見て一言。

 

 「白、眼福!!僕、満足!!」

 

 「――っ!?変態!!」

 

 発言の意味を察したスーツの女性の叫びと同時に、彼女のヒールが颯真の鼻へと突き刺さる。

 

 苦痛の悲鳴までコンマ数秒。魔法科高校は今日も騒がしいのだった。

 

 ――――

 

 「達也ぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

 ホームルームのオリエンテーションが終わり多くの生徒が手持ち無沙汰になった頃。懲りることなく赤毛のモンキーはドカドカと達也の席へとやって来る。

 

 だがその顔は悲惨なもので、顔は床をカーリングした時に擦ったのか赤くなっており、教室にやってきたカウンセラーの小野 遥からの一撃が入った鼻は両鼻は鼻血が出たのだろう雑にティッシュが詰められている。もはやわざとやってるのだろうかと達也の中で疑念が浮かび始めるがそれこそ本当にどうでもいいことなので思考から外す。

 

 「なんだ・・・騒がしいのは嫌いなんだが。もっと言えばお前も嫌いなんだが」

 

 「ずいぶん嫌われたものだなぁ!安心しろ俺は達也の事は嫌いにはならないぞ!」

 

 「欠片もうれしくない・・・」

 

 ここまで雑にあしらわれても絡んでくるあたりよほど気に入られているのだと感じるがそれでもうれしくない。まったくもってうれしくない。

 

 「アンタも折れないわねほんと・・・」

 

 そこで声を発したのは、自然と席へと集まってきたエリカであった。

 

 「む・・・?君は・・・?」

 

 「千葉エリカ、同じクラスだからよろしくー中条くん」

 

 「おお!よろしこ。隣の子は?」

 

 「あ、えっ、えっと・・・柴田 美月です!よ、よろしくおねがいします!」

 

 「よろしく~」

 

 なんとも気さくかつ気軽に会話を始める颯真。そんなついさきほどまでの騒ぎを起こしていた渦中の人物へのイメージと違い、エリカも美月も目を丸くする。

 

 「ん?どったのそんなきょとんとして」

 

 「いやだって、司波くんと絡みが違い過ぎて・・・ねぇ?」

 

 「てっきり誰にでもあんな風に噛みつきに行ってるのかと・・・」

 

 「おいおい心外だなぁ・・・俺そんな狂人だと思われてんの?」

 

 「行動振り返れ自分の行動を」

 

 挙げた疑問の声を、レオが呆れるように頭を小突きながら言う。

 

 「なぁレオ。俺常識人だよな?」

 

 「真面目に言ってるなら頭見てもらえ。きっちり常識人にしてくれるだろーよ」

 

 「頭は何回か見てもらったけど何も問題ないって病院のセンセのお墨付きだ。安心していいぜ」

 

 「診てもらったのか・・・」

 

 その事実を堂々と語るバカっぷりは最早清々しさすら感じられる。ほんとうに頭空っぽなんじゃないかと、達也は診たという医者の言葉があきらめにしか聞こえてこない。

 

 「ま、そんな関りにくい奴じゃないって自負してるから、気さくに話しかけてちょ。呼び方も颯真でいいしむしろそうして?姉ちゃんもいるからごっちゃになっちゃう。」

 

 「わかりました颯真さん。私も美月と呼んでもらって大丈夫です」

 

 「私もエリカでいいわよ颯真くん」

 

 「おかのした」

 

 「お姉さんって・・・確か生徒会の方ですよね?」

 

 「そそ、こいつと違って出来た人だよ。あっ、俺もレオって呼んでくれ。同じクラスだし俺も堅苦しいのはすきじゃねーし」

 

 「りーょかい。よろしくレオ」

 

 「じゃ俺もエリカって呼ばせてもらおうかね」

 

 「えっそれはヤダ」

 

 「なんでだよっ!?なんで颯真はOKで俺はダメなんだよ!?」

  

 「レオ振られてやんのぉ~!」

 

 「またげんこつ振り下ろされたくなけりゃ黙ってろこの赤猿」

 

 「(´・ω・`)」

 

 なんだかんだと交友を深めていく面々たち。仲が深まるのは良い事なのは達也も理解しているのだが、どうして達也を囲うように彼らは喋っているのだろうか。状況はまるでかごめかごめである。ドナドナと子取りに連れていかれそうで居心地が悪い。話を振ろうにも360度面々に囲まれているため、どこに向かって話せばいいやら。何かいい口火を切るものはないだろうかと考えて―――

 

 「あっそうだ!達也ぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

 「お前はいちいち俺の名前を叫ばないといけない呪いにかかってるのか?ひとまず落ち着け暑苦しい」

 

 「OK落ち着いたぜ」

 

 「うわ急に落ち着くな気持ち悪い」

 

 一番面倒くさい男が切ってきた。

 

 「我が宿命のライバル達也よ、今暇だな?暇だろ??暇だよな???」

 

 「よくわからん前置きを名前の前に付けるな三段活用で聞くな!なんだ一体・・・」

 

 「このフリーの時間は見学に使っていいと聞いた。そして、この第一高校には!闘技場が!!ある!!!」

 

 「颯真くんボルテージ上がってる上がってる」

  

 「おお悪い・・・つい熱くなった・・・」

 

 エリカに諭され、颯真は面々に謝罪の言葉を1つ。そして心落ち着かせるために深呼吸を数度。そして―――

 

 「俺と一騎打ちだ達也ぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」 

 

 「そうだこいつ人の話聞かないタイプだった」

 

 「感情振れ幅いかれてるからなこいつ」

 

 感情ジェットコースター人間に少しでも理性的な会話を求めたのが問題だったのだ。所詮颯真はただの赤毛の猿じゃけぇ。(一般通過赤犬)

 

 「俺とお前の実力を測るにはちょうどいい!今ここに、長年の引導を渡してくれる!!」

 

 「やっぱり達也さん昔会った事あるんじゃないですか??」

 

 「ない」(断言)

 

 颯真が勝手に存在しない記憶で遊んでるだけなのである。妄想力は思春期青年男子の妄想力をなめてもらっては困る。毎日学校にテロリストがやって来て撃退する妄想に励んだ颯真の想像力には脹相も東堂もびっくりである。

 

 「さぁ!これより始めようじゃないか!!俺とお前、どちらが上かという頂上決戦――」

 

 「私工房に興味あるんです。皆さんも一緒に行きませんか?」

 

 「おおそれは俺も賛成。やっぱ自分の使う道具くらい直しておきたいしな」

 

 「・・・・・・あの、頂上決s――」

 

 「あら、案外頭使うのねアンタ」

 

 「おいおい喧嘩売ってんのか?赤毛頭は喧嘩っ早い規則性でもあるのかよ?」

 

 「・・・・・・・・・・・・頂上けs―――」

 

 「まぁ俺も工房に行くのに賛成だな。時間もそこまでないし早く行く――」

 

 「頂・上・決・戦!!!!」 

 

 扱いがわかってきたのか華麗にスルーされ始めた颯真は、地団駄を踏みながら抗議の遠吠えを上げた。5歳児かな?

 

 「え?頂上戦争?」

 

 「レオそれワンピースだろ!」

 

 「ハァ・・・ハァ・・・敗北者??」

 

 「美月それもワンピース!!じゃなくて!!!」

 

 話を置いといてと両手を動かしジェスチャーで表して、ビシッと音が鳴らんばかりに颯真は達也を指さして言う。

 

 「達也と俺との真剣勝負だよ!?闘技場があるんだからやるしかないだろ!!なぁライバルよそうだるぉぉぉぉ!!!」

 

 「いやでも見学だから俺たちはまだ施設を使えないぞ」

 

 「・・・・・・ひょ???」

 

 達也の正論にインセクター羽蛾と化す颯真。今にも浮いて足で拍手を始めそうな勢いである。

 

 「というわけで俺たちは工房に行くから、じゃ」

 

 「い、いやでもワンチャン行ったらできるかも――」

 

 「達也くんは魔工師志望なの?」

 

 「ああ、CADの調整に興味があってな。美月は?」

 

 「私も魔工師志望なんです」

 

 「いや・・・あの・・・もしもーし!!」

 

 颯真の声かけ虚しく、達也を含むメンバーはまるで颯真が見えていないかのようにどんどん進んでいく。もう彼らの中には工房へ向かうという択以外存在しない。

 

 「いや、チョ・・・待っ・・・行くよッ!俺も行くッ!行くんだよォ―――――ッ!!」

 

 遠く離れていく面子の背中目指して、颯真は走っていくのだった。

 

 

 





次回っ!!噛ませ崎くん現るっ!!デュエルスタンバイっ!!

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