ディストピアゲーの運営側に転生したので、住人全員『幸せ』を義務にする   作:はさん

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番号が名前になっているものに浪漫を感じる人間です。


私の名前はマリア・セブン

 『Word END』はディストピア――つまり反理想郷な世界を舞台にしたゲームである。 

 文明が発達した未来社会で主人公達はまるで檻の如きこの世界を破壊するべく活動を開始する――というのがこのゲームである。

 ジャンルはハイスピード3Dアクションゲーム。

 かなり人気でゲーマーだけじゃなく一般人にも結構知れ渡っていたゲームだったが、残念ながら私は3D酔いが酷かったのでプレイする事が出来なかった。

 代わりに私はゲームの小説版を読んだ。

 それはディストピアを経営する側の物語で、如何にしてこの世界が出来上がったのかが語られていた。

 やはり地獄を創り出す方も苦労しているんや、という感じの事が延々と語られていて、プレイしていない私から見ても結構面白くて純粋にSF小説としても楽しめた。

 だからこそゲームをプレイ出来なかったのはかなり残念で仕方がない。

 とはいえ、それを純粋に楽しめたかどうかは分からないが。

 私は小説からこのゲームに入ったので、一々運営側の方に感情移入してしまう。

 だからきっと主人公達が建物を爆破する度に「事後処理ががが」と思ってしまうに違いなかった。

 何故にゲームをプレイするのにそんな気持ちにならねばならんのだ。

 

 と、まあ。

 そんな建前はさておくとして。

 

 私が如何にして死んで、そしてこの世界に転生する事になったのかはこの際省く事にしよう。

 ぶっちゃけどうでも良い、私にとって重要なのは『Word END』の世界に転生した事なのだから。

 そんな訳で私は気づけばこの世界で『マリア・セブン』という役割を得ていた。

 『マリア・セブン』。

 カントーエリア第7支部支部長。

 それが私の肩書である。

 自分の事だが、はっきり言おう。

 ぶっちゃけ私、偉いです。

 どれくらい偉いかというと大量虐殺をしたとしても『セカイの為』と言えば許されてしまうくらいには偉い。

 ちなみに私がこのような役職に就く事は産まれた時から決まっていた。

 私はカントーエリア総括の『マリア・オリジン』のクローンであり、支部長としての知識は睡眠学習によって身に付けた。

 そこに前世の知識が横入りした訳である。

 もし産まれた瞬間から前世の事を自覚していたとしたらどうなっていたかは、想像するのも恐いので考えないようにしておく。

 

 ともあれ、私はオリジナルの命令通り第7支部を運営しなくてはならない。

 結構洒落ではないほどに命が掛かっている状態だが、しかし不思議とワクワクしている自分がいる。

 なにせあのとてもプレイしたくて仕方がなかったゲームの世界に転生したのだ。

 その上、攻略側ではなく運営側。

 そりゃあ本気を出したくなるってものよ。

 幸い、私には知識と能力がある。

 『マリア・セブン』として私は文字通り産まれた時から運営能力が身についていた。

 だから、頑張ろう。

 人々を幸せに導くために。

 すべての人々を『幸福』にするために。

 早速頑張っていこうじゃないか……!

 

 

 

 

 差し当たって――まずは食事の改善かな。

 タブレットと謎ビスケット、廃止しよ。


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