Fate /kamen rider Build プリズマ☆イリヤ   作:れるれるみかん

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 頑張って毎日投稿するとか言いながら直ぐに途切れるってね。いや、ホントすみません。オリ主くんがチートすぎかな?って、調整してたら時間が過ぎてました。その割には今回の出来も自分的には微妙なのですが。


転校生は規格外

 

 

 

 

 

「ふぁ~~~~~~~~~~~あ」

 

 のっけから、小学生1名が、テーブルに座って大欠伸をかましている。

 

 爽やかな朝だと言うのに、何とも場違いに思える光景である。

 

 その様子を、彼らの兄は呆れ顔で眺めていた。

 

「どうしたんだイリヤ、随分と眠そうだな」

 

 衛宮士郎は、向かいに座ってイリヤの様子を見て、気遣うように尋ねる。

 

 そうしている間にもイリヤは眠そうに目をこすっている。

 

 一方、琲世はまるで寝不足を感じさせない様子で、普段とあまり変わりはない

 

「いや、ちょっと新しいゲームをね٠٠٠٠٠٠」

 

 取り敢えず視線を明後日にそらしつつ、そう言って誤魔化すイリヤ。

 

 まさか、魔法少女になって、夜の学校で戦っていました、などと言う訳にもいかないので。

 

 と、

 

「イリヤさん」

 

「ギクッ」

 

 背後から聞こえてきた低い声に、思わず肩を震わせるイリヤ。

 

 案の定と言うべきか、そこには腰に手を当てて険しい顔をしたセラの姿があった。

 

「あれほど、夜更かししてはいけませんと申し上げているじゃありませんか」

 

「ごめんなさ~い」

 

 お小言を言われ、しゅんとするイリヤ。

 

 琲世はそんなイリヤの様子を見て苦笑する。

 

 この衛宮家では、両親が放任主義である反面、教育係であるセラがしっかりと締めるべきところを締めている。

 

 事実上、この家はセラで保っていると言っても過言ではなかった。

 

 何はともあれ、イリヤ達は最初の戦いをどうにか勝利で終えることができた。

 

 最終的に、目標であるカードは手に入らなかったものの、ひとまず、あれだけの激戦を無事に潜り抜けたことは評価すべきだろう。

 

 とは言え、いくつか消えない疑問が残ったのも事実である。

 

「結局、琲世のあれって何だったの?」

 

 朝食のパンを頬張りながら、イリヤは琲世を見る。

 

 あの時、琲世の姿は、いったい何だったのか? 最後まで判らずじまいだった。

 

「いや、昨日も帰る時に説明したけどホントにわからないんだって٠٠٠٠٠٠」

 

 対して、ミルクティを喉に流し込み、琲世は淡々とした調子で答えた。

 

「あの時は、夢中で気が付いたら٠٠٠٠٠٠」

 

「٠٠٠٠٠٠ふうん」

 

 ポツリと呟く琲世に、イリヤはもう一人の魔法少女のこともありジト眼を差しを向ける。

 

 どうにも、嘘を言っているようには見えないが、どうにも信用出来ない。

 

 琲世の根は素直な性格で周りの人からも優しい良い奴という評判である。が、人が驚く所やちょっとした人の不幸を見て笑顔を浮かべるような一面も有り、嘘をつくのも得意なのだ。見抜ける人もいるが、イリヤはよっぽどの事が無い限り、琲世に嘘をつかれると判らない。

 

 それに何故かもう一人の魔法少女が琲世のことを知っているような感じでいたのは事実である。

 

「そんな事より٠٠٠٠٠٠」

 

 琲世は露骨に話題を切り替えるように言った。

 

「もうそろそろ家出ないと」

 

「ああ٠٠٠٠٠٠うん、そうだね」

 

 琲世の指摘に、イリヤも頷きを返すが、

 

 今イリヤの頭の中を占めているのはあの少女のこと。

 

 昨夜、戦闘中に現れて、騎兵ライダーにトドメを刺した、もう一人の魔法少女。

 

 彼女がいったい何者なのか、イリヤとしても気になるところである。

 

 しかし、

 

「ねぇ、ハイセ。何となくだけどさ、わたし、この後の展開が読めるような気がするよ」

 

「?」

 

 イリヤの急な言葉に、琲世はキョトンとした顔をする。

 

 対してイリヤは、苦笑しながら振り返った。

 

「あの子、わたし達と同じくらいの年齢だったよね。て事はお約束として٠٠٠٠٠٠٠٠٠٠」

 

 意味深に告げられるイリヤの言葉。

 

 果たして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美遊・エーデルフェルトです」

 

 担任の藤村大河に紹介された少女は、静かな声でそう名乗る。

 

 その姿を見て琲世は、イリヤの予想が外れていなかったことに驚いた。

 

 美遊と名乗った少女が、もしかしたら転校してくるかもしれない。

 

 イリヤは出発前、琲世にそう語っていたのだが、その予想が見事に的中した形である。

 

 壇上に立って自己紹介をした少女は、間違いなく昨夜、あの騎兵ライダーを倒した、もう一人の魔法少女である。

 

 まさか、本当に転校してくるとは。

 

「イリヤ姉さんの戯言かと思ったよ٠٠٠٠٠٠」

 

 呆れ顔の琲世。

 

 一方で、イリヤはこの「お約束展開」を予想しており、苦笑いを浮かべているところだった。

 

 確かに「似たような年齢の女の子が突然現れ、その翌日にはクラスに転校してくる」と言うのは鉄板の展開と言える。

 

 もっとも、この後の展開については、流石のイリヤも予想外だったのだが。

 

「えっと、それじゃあ席は、窓際の一番後ろ。イリヤちゃんの後ろで、隣が琲世くんね」

 

「えッ!?」

 

 驚くイリヤをよそに、美遊はさっさとイリヤの後ろの席へと座ってしまう。

 

 対してイリヤはと言えば、背後から送られてくる無言の圧力に完全に気圧されてしまっていた。

 

「な、何か、すごいプレッシャーを感じるんだけど٠٠٠٠٠٠」

 

《メンチで負けてはいけませんよ、イリヤさん》

 

 ルビーのノーテンキな応援を他所に、イリヤは一時限目の間、変な緊張感を強いられて、授業に集中する事が出来なかった。

 

 休み時間になると、早速と言うべきか、美遊はクラスメイト達によって包囲されていた。

 

 転校生と言う存在は、それだけでアイドル的な扱いをされる面がある。皆、新しいクラスの仲間がどんな子なのか、すぐにでも知りたいのだ。

 

 そんな訳で、クラスメイト達から取り囲まれている美遊。

 

 そんな彼女の様子を、琲世、イリヤ、ルビーの3人は、離れた場所から眺めていた。

 

《早速囲まれてますね~》

 

「いろいろ聞きたいけど、これじゃ無理だね」

 

 ルビーとイリヤは、そう言って嘆息する。

 

 とてもではないが、今の美遊に昨夜のことを尋ねるのは無理がある。

 

 と、そこで琲世が、

 

「なら、この人に聞いてみようよ」

 

 この人? 誰の事だ?

 

 琲世の言葉に、釣られて振り返るイリヤとルビー。

 

 その視線の先には、ルビーとよく似たステッキの先端部分がフワフワと浮かんでいた。

 

 見比べれば、両者は本当によく似ている。

 

 もっとも、中心の星がルビーは五芒星なのに対し、向こうは六芒星、左右の羽根も、ルビーが鳥であるのに対し、向こうは蝶の羽根をしている。

 

 間違いない。昨夜、美遊が使っていたステッキである。

 

《あらあら、サファイアちゃんも来てたんですか》

 

《姉さん、会えて嬉しいです》

 

 何やらあいさつを交わす、2本のステッキ。

 

 とは言え、ここは教室のど真ん中なわけで、

 

「ちょ、ちょっと、見つかっちゃうよッ!とりあえずこっち来て!!」

 

 イリヤは慌ててルビーとサファイアを抱えると、窓際に走り寄る。

 

 その後ろから、琲世もゆっくり着いて来た。

 

《紹介がまだでしたねサファイアちゃん。こちら、私の新しいマスターであるイリヤさんと、その弟さんである琲世さんです》

 

《サファイアと申します。いつも姉がお世話になっています》

 

「はあ、どうも」

 

「いえいえ、こちらこそ姉がルビーにはお世話になっています」

 

 ぺこりと頭(?)を下げるサファイアに対し、イリヤは曖昧な返事をし、琲世は丁寧に返す。

 

 宙に浮かぶサファイアに小学生であるイリヤと琲世がお辞儀をする光景はどうにもシュールだった。

 

「ステッキは、2本あったの?」

 

《はい。わたしとサファイアちゃんは同時に作られた姉妹なんですよー》

 

 尋ねる琲世に、ルビーは自慢げに言って聞かせる。

 

 魔力を無限に供給し、マスターの空想をもとに、現実に奇跡を具現化させるカレイドステッキ。

 

 そのカレイドステッキは、初めから2本作られていた。

 

 そのうちの1本を凛が、もう1本をルヴィアがパートナーとしたのだが。

 

 先日の騒動で2人ともステッキに見限られ、ルビーがイリヤに、サファイアが美遊に、それぞれ乗り換えたというわけだ。

 

《でも、美遊さんは大したものですねー。初めてなのに宝具を使うなんて?》

 

「『ほうぐ』って?」

 

 聞きなれない単語に、キョトンとするイリヤ。

 

 そう言えば、昨夜の戦いでも同じ単語が飛び出したのを思い出す。

 

 しかし、それが具体的にどんな物なのか、イリヤにはわからなかった。

 

「イリヤ姉さん、多分昨日エーデルフォルトさんがトドメをさすのに使っていたあの槍のことじゃないかな?」

 

 そんなイリヤに、琲世は自身の仮説を言う。

 

《おぉ~、察しが良いですね琲世さん》

 

《説明してなかったのですか、姉さん?》

 

《そう言えば、カード周りの詳しいことはまだでしたね。一度に説明しても混乱させるだけだと思いましたので》

 

 確かに。

 

 余りにも特異な事態が起こりすぎている事を考えれば、一度に多量の情報を与えられても混乱を来すだけだった。

 

 とは言え、戦いも終わった事で、ルビーも説明してもいいと判断したのだろう。

 

《この間、凛さんに見せてもらったカードは憶えていますか?》

 

「うん、何か、すごい力を持ったカードだって言ってたよね」

 

「アーチャーだっけ?」

 

 凛は、そのカードを回収するのが仕事だと言っていたのを思い出す。同時に「危険な存在だ」とも。

 

 イリヤ達がどの程度理解しているのか判断したサファイアは、説明に入った。

 

《魔術協会は、先に回収した「ランサー」「アーチャー」2枚のカードを分析しましたが、結局、製作者は不明、用途不明、構造解析もうまくいきませんでした。ただ一つ分かったのは、実在した英雄の力を引き出せるらしい、と言う事です》

 

 すなわち、神話や伝承、歴史の中に存在する数多の英雄たちの力を、カードは宿しており、その一部を取り出すことができると言う訳だ。

 

《その力の象徴と言うべき物が「宝具」です。通常の武具を超え、奇跡を成す強力な兵器、又は技。それらを総称して「宝具」と呼びます。私たちは、カードを解して英霊の座へアクセスし、英霊の持つ宝具を一瞬だけ具現化することができるんです。昨夜、マスターが敵を仕留めた「刺し穿つ死棘の槍」もそうです。放てば必ず敵の心臓を穿つ、必殺の槍です》

 

《どうも、カード1枚に対し、英霊1人が対応しているようです》

 

 サファイアの説明に捕捉するように、ルビーが言った。

 

 正直、イリヤには理解が難しい事柄も多い。琲世はある程度理解したようだが。

 

 しかし、あのカードを使えば、何らかの英雄の力を引き出せる、と言うあたりは、イリヤにも理解できていた。

 

《お二人も、もう気づいているかもしれませんが、昨夜戦った敵、あれもカードによって引き出された英霊の一部٠٠٠٠٠٠いえ、英霊その物と言って良いでしょう》

 

《とは言え、どうやら本来の姿から変質しているうえに、理性も吹っ飛んじゃってるみたいですけどねー》

 

 サファイアとルビーの説明を聞きながら、琲世は昨夜の事を思い出す。

 

 昨夜戦ったライダーは、人の形こそしていたものの、その動きはどこか獣じみていたのを覚えている。

 

 確かに、あれでは英雄と言うより、英雄に倒される悪魔、とでも言った方がしっくりくるだろう。

 

《アーチャーとランサーについては、協会が派遣した魔術師たちによって倒されましたが、ライダーは、そうはいきませんでした。彼女は恐らく「魔術を無効化する」という概念的な守りが備わっていたんだと思います》

 

 魔術が効かない相手では、魔術師は殆ど手も足も出ない。

 

 騎兵ライダーの出現によって、魔術協会の回収作業は、完全に頓挫するかと思われた。

 

 そこで、魔術ではなく、魔力そのものを武器として使用できる、ルビーとサファイアの出番となった訳である。

 

 その後、日本に来たものの、任務そっちのけでいがみ合いばかりしている凛とルヴィアを見限り、ルビーはイリヤと、サファイアは美遊と再契約して現在に至る、と言う訳だ。

 

《イリヤ様、琲世様》

 

 サファイアが、改めてイリヤと琲世に向き直った。

 

《わたし達も全力でサポートしますので、どうかマスターと協力して、カード回収にご協力ください》

 

「う、うん。いまいち自信は無いけど、頑張ってみるよ」

 

《大丈夫ですよ!! 私がついてますから》

 

 気軽に請け負うルビー。

 

 その時だった。

 

「サファイア、あまり外に出歩かないで」

 

「「ッ!?」」

 

 突如、背後から声を掛けられ、振り返る琲世とイリヤ。

 

 そこには、いつの間に近づいて来たのか、静かな瞳でこちらを見る美遊が佇んでいた。

 

 その美遊の元へ、サファイアがスッと飛んでいく。

 

《申し訳ありませんマスター。イリヤ様と琲世様にご挨拶をと思いまして》

 

「誰かに見られたら面倒。学校ではカバンの中にいて」

 

 そう言いながら、美遊はイリヤを一瞥する。

 

「あ、あの٠٠٠٠٠٠」

 

 声を掛けようとするイリヤ。

 

 しかし、対する美遊は、そんなイリヤに興味はないとばかりに琲世の方を見ると、

 

「ねぇ、私のこと覚えてない?」

 

 と、たずねてくる。

 

 その泣きそうですがるような雰囲気を見て心臓の鼓動が早くなる。

 

 別にその様子が可愛かったとかではなく、自分の体が早く思い出せと言わんばかりに急かしてくるような感じがするのだ。

 

 思わず全身から嫌な汗が出て、頭がふらふらし、胸をかきむしりたくなる。

 

 そんな自身の状態を周りに気付かれないように答える。

 

「ごめん。何処かで会っていたりしたのかもしれないけど、覚えてないんだ」

 

「でも٠٠٠٠٠٠」

 

 それでもなお、すがるような感じの美遊。だが、

 

「٠٠٠٠٠٠ホントにごめん。僕も分からないんだ」

 

「٠٠٠٠٠٠そっか」

 

 琲世が嘘をついてないと判断し、何処か儚げな笑顔を浮かべる美遊。

 

「ごめんね、こんなこと聞いて。」

 

 そう言い教室に戻っていく美遊。

 

 そんな美遊の後ろ姿に何故か胸が締め付けられるような感じがし、思わず手を伸ばそうとするが、結局一歩も動けずその背中を見送ることしか出来ない。

 

 そんな湿っぽい中、今まで空気を読み黙っていたイリヤが声を出す。

 

「な、何か、声かけづらい雰囲気だったね」

 

 美遊の雰囲気に、静かにするしかなかったイリヤ。

 

 果たして、これから大丈夫か?それは、誰にもわからなかった。

 

 

 

 

 

 唖然、としか言いようがなかった。

 

 まったくもって、「お前のような小学生がいるのか!?」などと、愕然とする思いである。

 

「まさかこんな事になるとは٠٠٠٠٠٠」

 

 イリヤは、苦笑交じりで、惨憺たる有様となったクラスを眺めていた。

 

 今は昼休みを終えて5時間目の体育の時間。

 

 琲世は体操着に短パン、イリヤも体操着にブルマーという、運動用の恰好に着替えて立っている。

 

 その2人の視線の先では、消沈した様子のクラスの仲間たちがいる。

 

 普段なら、体育の授業前と言う事でテンションを上げているクラスメイト達だが、今日はなぜだか、

 

 皆が皆、「才能の壁」と言う言葉を、小学生にして思い知らされているのだ。

 

 美遊・エーデルフェルトと言う少女は、それ程までに「規格外EXクラス」と言ってもいい存在だった。

 

 ٠٠٠٠٠٠ついでにもう1人のデタラメさも再確認した。

 

 その美遊はと言えば、そんなクラスメイト達の消沈など知らぬげに、1人、準備運動を行っているのが見える。

 

 ははは、

 

 琲世は苦笑交じりに思い出す。

 

 全ての始まりは、数時間前まで遡る事になる。

 

 

 

 

 

 2時間目、算数の時間。

 

 担任の藤村大河に指名された美遊は、黒板の前に出てチョークを取ると、描かれた図形に、スラスラと計算式を書き始めた。

 

「外接半径と線分OBの比はCOS(π/n)。内接半径は線分OBに等しい。この事から外接半径と内接半径の比はCOS(π/n)となり、面積比はCOS²(π/n)となります」

 

 小難しい計算式を、意図もあっさりと書き連ねていく美遊。

 

 断っておくが、この問題はそんな難しいものではない。たんに円の中に描かれた三角形の面積を求めれば良いだけの事だ。

 

 しかし、美遊の書いた計算式によって、まるで高校生の問題並みに難しくされてしまっていた。

 

 ちなみに言うまでもないが、書かれている計算式を、半分でも理解できた生徒は、クラス内に皆無だった。ただ、1人を除いて。

 

「٠٠٠٠٠٠よって、この場合の面積比は4倍となります」

 

 説明を終えた美遊は、淡々とした口調で言って大河のほうへと振り返る。

 

 心なしか、いつも通りの無表情の中にどや顔が混じっているように見えなくもない。たぶん、気のせいだろうが。

 

 一方、

 

 説明された大河は、唖然としている。

 

 教師である彼女にはもちろん、美遊の説明は理解できている。

 

 できてはいる、のだが、

 

「٠٠٠٠٠٠٠٠٠٠いや、あのー、美遊ちゃん?」

 

 静まり返る教室の中、大河は恐る恐る、といった感じに話しかける。

 

「この問題は、そんな難しく考える必要はないのよ。COSとかnとか使って一般化しなくてもいいの!」

 

「?」

 

「いや、そんな不思議そうな顔されても!!」

 

 言い募る大河に対し、美遊はキョトンとした目を返す。

 

 どうやら、なぜ注意されているのか、本気で分からない様子だ。

 

「もっと心にゆとりを持ちなさい!! 円周率はおよそ3よ!! 文句あんのかゴラァ!!」

 

 暴れる大河。

 

 一方、

 

「三平方かぁ」

 

「えっ、ハイセ分かるの?」

 

「これでもあんな事なら分かる程度の頭をしている自信はあるよ」

 

「あはは、そういえばハイセって(ある意味)頭可笑しいんだった」

 

「えっ、それは酷くない?」

 

 とりあえず、学力がすごいと言う事が分かった。

 

 琲世の学力も。

 

 

 

 

 

 3時間目、図工の時間

 

 1枚の絵を手にした大河は、またしても慄き震えを隠せないでいた。

 

「こ、これは٠٠٠٠٠٠٠٠٠٠٠٠」

 

 そこに描かれた絵は、間違いなく人物画である。

 

 しかし、およそ「人」としての形態を最低限残しつつ、その形状を徹底的に分解、再構成しているのがわかる。

 

「自由に描けとの事でしたので、形態を解体して単一焦点による遠近法を放棄しました」

 

 シレッと説明する美遊。

 

「キュビズムで書くなんて斬新だねエーデルフォルトさん」

 

「いや、そうい問題じゃないと思うよハイセ。というか、また当然のように知ってるんだね」

 

 呑気に言う琲世に冷静にツッコムイリヤ。

 

「自由すぎるわ!! つーか、キュビズムは小学校の範囲外よ!!」

 

「?」

 

「いやだから、そんな顔されても!!」

 

 またしても、意味が分からないといった感じに首をかしげる美遊。

 

 ちなみにキュビズムとは立体主義とも言われる絵画の美術手法の一つであり、代表的な物でパブロ・ピカソの「アビニヨンの娘たち」がある。

 

 因みに琲世は٠٠٠٠٠٠

 

「ハイセはどんな感じに書いてるの?」

 

「ん?見る?」

 

「見る!!」

 

 そこには一見写真と見間違う程細かく描かれた2人の兄である士郎の人物画が。

 

「お兄ちゃん!?えっ、ハイセってそんなに絵上手かったの!!」

 

「いやぁ~、ついはりきっちゃって」

 

 取りあえず、美遊は美術力もすごいらしかった。

 

 イリヤは琲世が絵が上手かったのを知らなかったことにへこんだ。 

 

 

 

 

 

 4時限目、家庭科の時間。

 

 すでに何度目かもわからない絶句をする藤村大河女史。

 

 その目の前では、これでもかと言わんばかりに並べられた美食の数々が、テーブルいっぱいに置かれていた。

 

「いやだから、なんでフライパン1個でこんな手の込んだ料理が作れるのよ!? しかもウメェェェェェェッ!! なんちゅうものを喰わせてくれるのかァァァァァァッ!! おかわりィ!!」

 

「先生、少しうるさいです」

 

 うっとうしそうに大河に告げる美遊。

 

 さて、こちらのある意味変態は٠٠٠٠٠٠

 

「ほい、イリヤ姉さんおあがりよ」

 

「これって、ハンバーグ?」

 

 どうやら今回は普通のようだ。

 

「まぁ、早速食べてみてよ」

 

「う、うん。じゃあ」

 

「頂きます」

 

 イリヤはハンバーグをお箸で一口サイズにし、口へと運ぶ。

 

「!!」

 

 直後まるで体に電気が流れたように錯覚する。

 

 口に入った一口を何度も何度も噛み締め、味わった後に喉を鳴らしながら胃へ落とし込む。

 

 その後吐き出される吐息。

 

 ٠٠٠٠٠٠何か反応がいちいち大袈裟すぎるし、ハンバーグを食べるだけで小学生がしてはいけないような光景をしているが、今のイリヤの頭の中は某料理漫画のおはだけに近い状態となっている。

 

 そのイリヤの様子に満足そうな表情を浮かべていた琲世の袖がクイッと引っ張られる。

 

 後ろを振り向くと、

 

「あ、エーデルフォルトさん」

 

 そわそわしている美遊がいた。

 

「美遊」

 

「えっ?」

 

「美遊って呼んで」

 

「えっ、あっ、あぁ、分かった。み、美遊」

 

 琲世に名前を呼んでもらい心なしか無表情が和らぐ美遊。

 

 その光景を見ていた周りの小学生と教師は、

 

 苦いものが飲みたい。

 

 と、意見が一致した。

 

 甘いものを食べたわけではないのに口の中が砂糖を舐めたような感覚に襲われたのだ。

 

「これ、食べて」

 

「これ、美遊が作った料理?食べていいの?」

 

「うん」

 

 またしても口の中が甘くなる一同。

 

「わっ、美味しい!!美味しいよ、美遊!!」

 

 琲世に誉められどや顔を浮かべる美遊。

 

「じゃあ今度は僕の料理も食べてよ」

 

 そう言ってもう1つ作っていたハンバーグを差し出す琲世。

 

 美遊はまさかお返しが来ると思わなかったらしく、不意打ちを食らったとでも言うような表情を浮かべる。

 

 恐る恐るハンバーグを受け取り、イリヤと同じように一口サイズにし口に運ぶ。

 

「!!」

 

 どうやら、美遊もイリヤと同様おはだけ状態になったらしい。

 

 その後はシビレを切らした大河によって授業は終了した。

 

 

 

 

 

 以上の通りである。

 

 天は人に二物を与えず?

 

 そんな言葉は犬にでも食わせておけ。

 

 などと言う、どうでもいい言葉が頭に浮かんできてしまうほど、美遊と言う少女は完璧すぎるくらいに完璧超人だった。

 

「うぅー、ちょっと悔しい」

 

 ボソッと告げられたイリヤの言葉に、琲世は苦笑を浮かべる。

 

 5時間目の体育の時間。

 

 琲世とイリヤは、並んで立ち、視線を同じ方向に向けていた。

 

 そこには、体操服にブルマ姿の美遊が準備運動をしていた。

 

 小学生の枠を超えて中学٠٠٠٠٠٠否、下手をすれば高校生の学力すら凌駕しそうな美遊。

 

 ある意味、今日のクラスは完全に彼女の独壇場と化している感がある。

 

 美遊自身に、その自覚があるかどうかはわからないが。

 

 しかし、

 

「ここまでやられっぱなしなのはイヤ」

 

 呟き対抗心を燃やすイリヤ。

 

 新参の転校生に、こうまでかき乱されたのでは溜まったものではない。ここらで一つ、反撃に転じたいところである。

 

「それじゃあ、体育で挽回だね」

 

「え、何で体育?」

 

 突然話を振られ、キョトンとするイリヤ。

 

 そんな少女に、琲世は声を潜めるように言った。

 

「今日の体育は短距離走だよ。短距離走はイリヤ姉さんの得意分野でしょ」

 

「あ、そっか」

 

 言われて、イリヤは納得したように頷く。

 

 確かに、短距離走はイリヤにとって最も得意な分野である。

 

 これならあるいは、勝てるかもしれない。

 

 一縷の望みは、少女に託された。

 

「イリヤ姉さん、頑張れ」

 

「うん、任せて」

 

 弟の激励を受け、イリヤは笑顔で頷きを返した。

 

 

 

 

 

 鳴り響く号砲。

 

 同時に、小柄な少女2人は、同時に地面を蹴った。

 

 疾走するイリヤ。

 

 コンディションはベスト。

 

 いつも通りの疾走感。

 

 これなら勝てる。

 

 確実に勝てる。

 

 そう思った次の瞬間、

 

 駆けるイリヤを追い越すように、黒髪の少女が、疾風のように駆け抜ける。

 

 先にゴールを超える美遊。

 

「ろ、6秒9!?」

 

 驚愕して叫ぶ大河。

 

 見れば、焚き付けた琲世も、あまりの事態に絶句している。

 

 だが、そんな中で一番驚いていたのはイリヤだろう。

 

 イリヤは自分の足には絶対の自信を持っていた。本気で走れば、大人にだって負けないと自負している。

 

 その自分が、まさかの敗北を喫した。

 

 と、イリヤが打ちのめされていると、

 

「先生ー、僕このままだと1人で走ることになるんで美遊と走りたいです」

 

 周りは琲世の突然の挑戦状とも取れる宣言を聞きざわめく。

 

「先生、私は構いません」

 

 全く疲れを感じさせない声で答える美遊。

 

 美遊が答えたことによって、クラスの切り札だったイリヤを打ち負かした美遊と今日に限って色々と規格外なことをする琲世の勝負が始まった。

 

 

 

 

 

 2人はスタートラインに立ち並ぶ。 

 

「なんで急に私を指名したの?」

 

 琲世の指名が気になり質問する美遊。

 

「いやぁー、クラスの皆がイリヤ姉さんが負けて唖然としてたし、ほんの出来心かな?周りがどんな反応するかなーって。それにあんな走り見せられたら本気で勝負したくなるじゃん」

 

 琲世は焦らされ続けてようやく餌を貰えた肉食動物のような笑みで答えた。

 

 

 

 

 

 2人は体勢を整えいつでも走り出せるようにする。

 

 周りの空気が少しひりつき、観戦している小学生全員が声も出さずに2人を見つめている。

 

 鳴り響く号砲。

 

 同時に、2人は地面を蹴った。

 

 疾走する美遊。

 

 コンディションは先程より体が更に暖まったことでより良い状態。

 

 今までで一番の疾走感。

 

 油断は出来ないが、これなら。

 

 そう思った次の瞬間、

 

 美遊を追い越し、白髪の少年が、颯爽と駆けていく。その軽やかな姿は兎のようにもみえる。

 

 そのままの勢いでゴールをむかえる琲世。

 

「ろ、6秒5!?」

 

 驚愕して叫ぶ大河。

 

 一つ前の時も美遊が驚愕の記録を叩き出したというのに、琲世はその記録を更に越える記録を出したのだ。もうお腹一杯だろう。

 

 観戦していた小学生も、あまりの事態に止まっている。

 

 そして、数瞬経ち状況を頭が処理しきると、

 

「「「「「うおぉぉおお!!」」」」」

 

 一斉に歓声を上げ琲世の方へ走りにいく。

 

「スッゲーな琲世!!」

 

「琲世ってあんなに速かったのかよ!!」

 

「無敵キャラだろ!!」

 

 大勢に囲まれる琲世。

 

 そんな中琲世に向かって美遊が歩いてくる。

 

 あれ程騒がしかった周りがまた静かになる。

 

 モーセの十戒のように琲世に向かっての道が開かれる。

 

 周りは2人の様子を見てまた、静寂に包まれる。

 

「琲世」

 

「美遊」

 

「今回は負けた。けど、次は勝つ」

 

「次も負けないよ」

 

 2人はそう言い握手した。

 

 また、周りが歓声を上げる。

 

 だが、そんな中イリヤは周りに混じらず一歩引いたところで暗い表情でそれを見ていた。。

 

 美遊・エーデルフェルト。

 

 彼女はまさに、完璧を超えた完璧、「ハイパー小学生」とでもいうべき存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 傾く陽。

 

 照らされる夕日によって、下校の道が赤く照らし出される。

 

 そして、夕日の赤は、敗者の背中にも優しく降り注いでいた。

 

「イリヤ姉さん、もう帰ろ٠٠٠٠٠٠」

 

「お願いだから、もうちょっとだけ放っておいて」

 

 道端で体育座りして落ち込んでいるイリヤ。

 

 琲世声をかけるも、反応は薄い。

 

 どうやら、美遊にコテンパンにやられた事が、相当ショックだったようだ。

 

《もう、イリヤさん、いつまでいじけてるんですか? 早く家に帰りましょうよ》

 

「別にいじけてないよ。ただ、才能の壁を見せつけられたって言うか、何かハイセがこんなにハイスペックだったのを知らなくてショックだったと言うか٠٠٠٠٠٠」

 

 明らかにいじけていた。

 

 琲世がさらに声を掛けようとした時だった。

 

「٠٠٠٠٠٠何してるの?」

 

 背後から声を掛けられて振り返ると、そこには不思議そうな顔でこちらを見ている美遊の姿があった。どうやら、彼女も今帰ってきたところらしい。

 

「あ、これはどうも、お恥ずかしいところを٠٠٠٠٠٠美遊さんにあられましては、今お帰りで?」

 

「٠٠٠٠٠٠何で敬語?」

 

 突然、三下風になったイリヤに、美遊は不思議そうなまなざしを見せる。

 

 そんなイリヤに、ルビーが詰め寄った。

 

《イリヤさん負けちゃ駄目ですよ。なに卑屈になってるんですか!! 美遊さんは同じ魔法少女仲間です。学校の成績なんて関係ありません!!》

 

 珍しく正論を言うルビー。

 

 その言葉に思うところがあったのか、イリヤはようやく顔を上げた。

 

 そんなイリヤに対し、美遊が静かな声で話しかけた。

 

「あなたも、ステッキに巻き込まれて回収を?」

 

 思えば、美遊とまともに会話をするのはこれが初めてである。

 

 少し嬉しくなって、イリヤは口を開いた。

 

 改めて見てみれば、美遊も相当かわいらしい外見をしている。イリヤと並んで立つと、それだけで絵になる光景である。

 

 イリヤが華やかな西洋人形なら、美遊は静謐の日本人形のと言ったところだろうか?

 

「う、うん、成り行き上仕方なくっていうか、騙されて魔法少女にされたと言うか٠٠٠٠٠٠」

 

「そう٠٠٠٠٠٠」

 

 それっきり、会話が続かない。

 

 美遊は相変わらず、ジッとイリヤを見つめている。

 

 対してイリヤのほうは、そんな美遊に気圧されたように押し黙っていた。

 

《ちょ、ちょっと、空気が重いですね》

 

「あはは、そうだね」

 

《ここは琲世さんの軽快なトークで、場を盛り上げてくださいよ》

 

「無茶ぶりしないでよ٠٠٠٠٠٠」

 

 琲世とルビーがヒソヒソと話し合う中、

 

「٠٠٠٠٠٠それじゃあ、あなたは」

 

 美遊のほうからイリヤに話しかけた。

 

「どうして戦うの?」

 

「え、どうして٠٠٠٠٠٠て?」

 

 質問の意味が分からず、キョトンとするイリヤ。

 

 そこへ、美遊が淡々とした口調で続ける。

 

「ただ巻き込まれただけなんでしょう? あなたには戦う義務はないはず。本気で戦いを拒否すれば、ステッキだって諦めるはず」

 

 その言葉を受けて、琲世は傍らのルビーを見る。

 

 対して、ルビーはシレッとした調子で、肩をすくめるように羽を動かした。

 

 そんな中、イリヤが苦笑がちに口を開いた。

 

「ほ、ホント言うとね、ちょっと、こう言うのあこがれてたんだ。ほら、これっていかにもアニメとかゲームみたいな状況じゃない?」

 

「ゲーム٠٠٠٠٠٠?」

 

「٠٠٠٠٠٠」

 

 イリヤの説明に、美遊はポツリと呟きを漏らす。

 

 どこか、低い調子で告げられる言葉。

 

 琲世はイリヤをジッと見つめ黙っている。

 

 だが、イリヤはそれに気づかずに続ける。

 

「まほー使って戦うとか、変な空間にいる敵とか、冗談みたいな話だけど、ちょっとワクワクしちゃうっていうか٠٠٠٠٠٠せっかくだから、このカード回収ゲームも楽しんじゃおうかなって٠٠٠٠٠٠」

 

「もう良いよ」

 

 イリヤの説明を黙って聞いていた美遊が、低い口調で言い放った。

 

 拒絶を含むような言葉には、どこか失望と諦念の色があるように思える。

 

 踵を返す美遊。これ以上、イリヤたちに用はないという事を、態度で示している。

 

「その程度? そんな理由で戦うの?」

 

「え、ちょっと、あの٠٠٠٠٠٠」

 

「遊び半分の気持ちで英霊を打倒できるとでも?」

 

 美遊は最後に振り返ると、立ち尽くすイリヤに冷たい視線を投げかけていた。

 

「あなたは戦わなくて良い。カード回収は全部私がやる。あなたはせめて、私の邪魔だけはしないで」

 

 それだけ言うと、美遊は振り返らずに立ち去っていく。

 

 後には、立ち尽くすイリヤが残されていた。

 

 琲世はそんなイリヤの様子をただジッと見ていた。

 

 

 

 

 

 なぜ、美遊が怒ったのか?

 

 その理由が判らないまま、イリヤと琲世は家の近くまで戻ってきた。

 

「結局、何だったんだろう?」

 

 先ほどの美遊の事を思い出しながら、イリヤはぼやき交じりに呟く。

 

 イリヤの言葉を聞いていて、突然怒り出した美遊。

 

 いったい何が気に食わなかったのだろう?

 

「判んないよ。だいたい、巻き込まれたのはあの子だって一緒なのに」

 

《何か地雷でも踏んだんですかね~?》

 

 イリヤとルビーも、そろって首をかしげている。

 

「٠٠٠٠٠٠僕はなんとなくだけど、言いたいことが分かったよ」

 

「えっ?ホント!?」

 

「でも、僕からは言いたくないかなぁ?」

 

「なんで?」

 

「もし、本当に僕の考えが当たってるなら、イリヤ姉さんが自分で考えないといけないことだと思うから」

 

「うーん、よく分からないけど、ハイセがそう言うなら自分で考えてみる!!」

 

 琲世はそう語ったが、当の美遊本人があまり多くを語らない性格であるらしいため、こちらとしては判断の材料が少なく、予測の域を出ない。

 

 そうしている内に、家の前までくるイリヤ達。

 

 と、

 

「あれ、セラ?」

 

 首をかしげる琲世。

 

 見れば、家の前に立っているセラが、何やら唖然とした顔で家の反対側を眺めていた。

 

 セラのほうでもこちらに気付いたのだろう。振り返ってこちらを見る。

 

「どうしたの、セラ?」

 

「ただいま」

 

 近づいて来た2人を出迎えるセラ。

 

 だが、その顔は心なしか強張っているようにも見える。

 

「ああ、イリヤさん、琲世さん、お帰りなさい。実はですね٠٠٠٠٠٠」

 

 言いながら、家の向かいを指さすセラ。

 

 釣られて、琲世とイリヤも振り返る。

 

 果たしてそこには、

 

 朝までには確かになかったはずの、超豪邸が、傲然と立っていたのだ。

 

「な、ナニコレェェェェェェ!?」

 

「うそーん」

 

 唖然とする、イリヤと琲世。

 

 屋敷は洋風なようで、目の前に巨大な門構えがあり、背丈を大きく超える壁がぐるりと囲っている。

 

 庭も広大なようで、見事な樹木が立ち並び、その奥に白亜の壁が遠望できる。

 

 ここからざっと見ただけでは、その全貌を伺い知る事は出来なかった。

 

「どういう事?」

 

 恐る恐ると言った感じに尋ねるイリヤに対し、セラは困ったように口を開いた。

 

「今朝、皆さんが学校に行った後に工事が始まったと思ったら、あっという間にこのお屋敷が出来上がったんです」

 

 いかにすれば、これほどの豪邸を半日で建設できるのか?

 

 しかも、昨日までは確かに、普通の民家が存在しており、衛宮家とも近所付き合いがあったほどである。

 

 それらの家庭は、いったいどこへ消えたのだろうか?

 

 もはや、ちょっとしたミステリーである。

 

「いったい、どんな人が住むんだろう?」

 

「王様とか?」

 

 門の前で一同が立ち尽くしている時だった。

 

 背後から小さな足音が鳴り振り返る。

 

 するとそこには、

 

 つい先ほど、喧嘩別れした、転校生のクラスメイトが立っていた。

 

「あ٠٠٠٠٠٠」

 

「美遊」

 

 対する美遊も、足を止めてしばし向かい合う。

 

 重苦しい沈黙が、周囲に流れる。

 

 何しろ、さっきの今である。互いにどんな顔をして相手を見ればいいのか測りかねているのだ。

 

 と、

 

 美遊は視線を外すと、こそこそと豪邸の門の中へと入っていく。

 

「え、ちょ、ちょっと!?」

 

 その姿に、驚くイリヤ達。

 

「ここ、美遊の家?」

 

「まあ٠٠٠٠٠٠そんな感じ」

 

 美遊は最後にそう言うと、門を閉じて中へと入っていく。

 

 後には、唖然としている琲世、イリヤ、セラ、ルビーだけが残された。

 

 なんとも妙な感じである。ステッキを持つ2人の魔法少女が、互いにお向かいの家に住んでいる、など。しかも、現状は最悪と言って良いくらいに反りが合っていない2人である。

 

「どうするの、イリヤ姉さん?」

 

「いや、どうするも何も٠٠٠٠٠٠どうしよっか?」

 

 ヒソヒソと話しかけてくる琲世に、イリヤも途方に暮れた感じで答える。

 

 状況が急展開過ぎて、どう対処していいのか判らないのだ。

 

「まあ、どっちにしても٠٠٠٠٠٠٠٠」

 

 イリヤは言いながら、ポケットに入れておいた紙を取り出す。

 

「今夜また、会うだろうしね」

 

「٠٠٠٠٠٠そうだね」

 

 それは、凛から再び届いた呼び出し状だった。

 

 

 

 

 




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