魔法科高校の滅龍魔法師   作:チート大好きマン

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なんか就活とか卒論とか、どうでもよくなってきそうなぐらいなんもかんも上手くいかない

唯一の楽しみは最近ハマったVtuberの風吹スサノオさんの配信を観ることのみ


グッと引いて伸ばしながら拳を捻る

勧誘期間も終わり授業が本格的になってきた。フォルトは昨日の夜達也に言われた通り『ブランシュ』と『エガリテ』の拠点の割り出しだけに留めて、襲撃は我慢している。しかし達也に会う度に「話し合いは終わったか?」「いい加減ウザくなってきた」と言い続けている。言われる達也も参ってきたようで、もうGOサインを出してしまうかと思いながら今日もいつも通り学校生活を……

 

『在校生の皆さん!!』

 

……送れる訳が無かった。校内のスピーカーからハウリングする程大音量で流れてきた放送に、他の生徒達も何事かと文句を口にする

 

『失礼しました。僕達は学内差別撤廃を目指す有志同盟です。僕達は生徒会と部活連に対して対等な立場での交渉を要求します!』

 

放送はそれだけで終了した。放送を聞いた生徒たちはざわめいているが達也は溜息を吐きながら立ち上がる

 

「フォルト、渡辺先輩から召集だ、行くぞ……いない」

「アイツなら放送が流れた瞬間出てったわよ?」

「本当か?」

「何処行ったかは知らないけど」

「……そうか、ありがとう」

 

お仕事頑張ってね、といい笑顔でエリカに送り出された達也。途中合流した深雪と現場に行くと既に達也とフォルト以外の生徒が集まっていた

 

「遅いぞ。フォルトはどうした」

「すみません。放送が流れた瞬間に何処かに行ったと聞きましたが何処に行ったかは」

「全く……まぁいい、状況を説明するぞ」

 

渡辺は現状を達也と深雪に伝えた。電源を切られて放送は出来ないが、立て籠もっている放送室の内側から鍵を掛けていて扉が開けられないらしい

 

「外からは開けられないんですか?」

「連中がマスターキーを盗んでいてな」

「明らかな犯罪行為じゃないですか」

 

相手を暴発させない為にも慎重に行くべきと進言する市原、多少強引にでも早期解決を図るべきと言う渡辺。答えの出ない問答を切るように達也は十文字にどうするか聞いてみた

 

「俺は交渉に応じてもいいと思っている。だが学校施設を破壊してまで早急に解決するべきかと言われれば、そこまでの犯罪性は無いと思っている」

「なるほど」

 

十文字の意見を聞いた達也は端末を耳にあてる

 

「壬生先輩ですか?司波です」

『おう達也』

「………」

 

壬生に電話した筈が、聞こえたのは聞き慣れたあの声。達也は無言で通話を切った

 

「お兄様?どうかなさいました?」

「何があった?」

 

深雪と摩利は普段しない達也の行動に少し心配になり声を掛けるが、達也は大丈夫と言ってもう一度掛け直す

 

「……もしもし」

『無言で切るなんて酷い奴だな』

「……順番に聞いてくぞ、まず、なんで壬生先輩の端末からお前の声が聞こえる、フォルト」

 

フォルトが中にいる、達也の言葉からそれを察した周りの生徒達は最早言うことが見当たらなかった。摩利と深雪はフォルトの突拍子も無い行動に慣れているので俯いて目頭を抑えるだけに留まった

 

『なんでって、その壬生って奴の端末持ってっからだろ』

「つまりお前は今放送室の中にいるんだな?」

『そうなるな』

「中にお前以外に生徒がいる筈だ。彼等はどうした?」

『俺の目の前に転がってっけど』

 

やっぱりかと達也は思った。基本的にフォルトがフラっと人知れず何処かに行った時は決まって予想の斜め上の結果(良い意味でも悪い意味でも)が超特急でやってくるのだ

 

「……手荒な真似してないだろうな」

『クソ雑魚な魔法撃ってきたからコークスクリューブローブチ込んだけど』

「……何処にだ」

『女は顔はマズイだろうから鳩尾に、他の野郎共は顔面』

 

もう聞いてて頭が痛くなってきた達也、だがここまで来たら最後までやり遂げなくては、その思いで話を続ける

 

「取り敢えずお前が倒した生徒連れて出てこい。みんな部屋の前にいるんだ」

『おーおー勢揃いで。分かったよ、んじゃ』

「……はぁ」

「あの、お兄様、もしかして今のって」

「ああ、何故かは知らないがフォルトが中にいて制圧してくれたらしい」

 

通話を切ってから十数秒後、フォルトが倒れた生徒を俵担ぎしながら出てきた。手には盗まれたマスターキーを持っている

 

「どーも皆さんご苦労様、ご所望の商品は此方で大丈夫ですか?」

「それは流石に酷いだろう……」

 

床に落とした生徒達を商品と言った挙げ句、目上の先輩にご苦労様と言ったフォルトに効いてないだろうが一応ツッコミを入れておく

 

「んっ……」

「お、起きたか。結構タフだな」

 

床に落とされた事で意識を取り戻した壬生。目を開けたら周りを風紀委員と部活連の代表に囲まれている状況に怯えている様子だ

 

「なぁ達也、ここまでされたんだ。もういいだろ?」

「いい、と言いたいが、それを俺の一存で決める訳には」

「じゃあ決めて貰おうぜ、この場に十師族が二人もいることだしよ」

 

真由美と十文字を見るフォルト、フォルトの不敵な笑みを見た二人は迅速に行動して人払いを済ませた。達也と深雪もこの場は空気を読んで先に帰った。生徒会室に移動した三人、ここで真由美は更に念には念を入れ生徒会室に防音障壁を張って外に声が漏れないようにした。重苦しい空気感に包まれた室内では三人が互いに睨みを利かせている

 

「人払いは済ませた」

「それでフォルト君、私達に決めて欲しい事って?」

「……俺の本気、知りたくない?」

「「っ!!!」」

 

これまでには見たことのないフォルトの表情、戦いに飢えている戦闘狂が見せるような表情が今のフォルトにはある。授業中も風紀委員の活動中も学校生活では一度も見たことの無い表情に息を呑む二人

 

「というかお前ら、俺の事知ってるだろ?下手くそな芝居とかいいから」

「……何時から気付いていた」

「そこの女が近づいて来た時から」

「えっ!?私!?」

 

まさか自分が近づいた時からだとは思いもしなかった真由美から出た驚きの言葉、十文字もこれには驚いている。普段から人を弄って遊んでいる真由美は基本的に何が本音で何が建前か傍目には分かりづらい所がある。十文字でさえ偶に読み違える事があるレベルを初見で見抜いたフォルトはやはり只者ではない

 

「……老師、九島烈殿から十師族全体に通達があった。今年第一高校に入学するフォルティーム・カミーラという男の怒りを買うような事は絶対に避けろ、と」

「それを聞いた私達は立場を利用して密かにあなたを監視するよう言われたのだけれど……」

「まぁそうなるわなぁー、自分たちの立場、ひいては日本の存在そのものを脅かすような奴を野放しにしておく訳無いだろうとは思ってたよ。で、最初の話に戻る訳だ」

「……お前の本気を我々十師族に見せる事か」

 

十文字は理解はしたが納得はしていない様子だ。真由美もイマイチいい顔はしていない

 

「こっちは『ブランシュ』に『エガリテ』の拠点も分かってんだ。この国の病巣を取り除いてやり、さらに危険人物の詳細なデータも取れる、権力と国大好きなお前らにはまたとない好条件だろ?」

「……そこまで分かっているのか」

「十文字君、ここは一旦持ち帰って報告したほうが」

「……そうだな。フォルティーム、今ここで俺達に答えは出せない、そこで一旦家に持ち帰ってちゃんと審議する。結果は後日でいいか?」

「また待つのかよーー、はぁ、とっとと許可取ってくれよ、俺の友達に被害が出たら許可が出て無くても行くからな」

「……明日には結論を出す、七草もそれでいいな」

「私は構わないけど、あの狸親父がどんな条件突き付けてくるか」

「そこは知らね、話はそれだけだから、そんじゃあまた明日……良い返事期待してるよ」

 

一足先に部屋を後にするフォルト、残された十文字と真由美は数分話し合った後、障壁を解除して部屋から出て学校を後にした。空は若干暗くなって夜になりかけている時間だ、夜道に気を付けて二人は帰って行った


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