天才美少女ドロンボー   作:ちいさな魔女

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理想と現実

一方、アリサとすずかの通う学校では、2つの席が空席となっており、教室は暗い雰囲気が支配していた。それでも放課後は訪れる。そんな中で、なのはは空席となっている2つの机を見た。

 

なのは(アリサちゃんにすずかちゃん………大丈夫かな)

 

なのはは、アリサとすずかを心配していた。もう一週間も音沙汰がない。分かっているのは、アリサとすずかが共に遊びに行った事と、クマの大型メカが空を飛んでた事。

 

間違いなく、ドロンボー一味と何かあったのだろう。しかし、メカは大きいにも関わらず見つからない。恐らくステルス機能が搭載しているのだろう。

 

なのは「ドロンボー一味がもし誘拐してたなら、絶対容赦しないんだから」

 

なのは、アリサの机を撫でる。

 

逢魔「なのはー!早く帰ろう!」

 

なのは「あっ!うん!」

 

なのはは帰路に着く。二人の親友の安否を心配しながら。

 

――――――――――――――――――――――――

 

一方、トレセン学園では、ドロンボー一味がジムでライスシャワーのトレーニングを見ていた。

 

ランニングマシン。ライスはランニングを続けていたが、マシンの速度について行けず、後ろへ転がってしまう。

 

すると、ドロンジョはある物を倒れたライスに渡した。それは、縄跳びの縄であった。

 

ドロンジョ「ほら、立ちな。立ったら次は縄跳びだよ」

 

ライスシャワー「えっ?縄跳び?」

 

ドロンジョ「そうだよ。因みにライス。お前は走るのに必要な筋肉って、分かるかい?」

 

ライス「えっ?そりゃあ全身です。特に、腸腰筋を鍛える事」

 

ドロンジョ「そうさ。分かってるなら早くやるよ。何時までも寝てんじゃないよ!」

 

ライスシャワー「は、はい!」

 

そして、ジムの広い場所に移動して、縄跳びを始める。ライスシャワー。ライスシャワーの隣で、ドロンジョも縄跳びを始める。

 

ライスシャワー「えっ?何でトレーナーさんまで?ライスのトレーニングでは?」

 

ドロンジョ「アンタもやる以上、私もやらない訳には行かないだろ?まあ、女ってのは体を鍛えて自分を磨くもんなのさ。鍛える女は、良い女だよ」

 

ライスシャワー「は、はぁ……」

 

ドロンジョ「ほら、私に構うんじゃないよ。集中しな!」

 

ライスシャワー「は、はい!」

 

こうして、縄跳びを一時間以上続けた二人。スポーツドリンクを買ってきたボヤッキーとトンズラー。トンズラーは自分用の食べ物を大量に買ってきた。

 

ライスシャワー「ハァ!ハァ!ハァ!」

 

ボヤッキー「お疲れ様です。アクエリっす」

 

ライスシャワーはボヤッキーからスポーツドリンクを受け取ると、すぐに飲み始めた。

 

ドロンジョはタオルで汗を拭きながら、ライスシャワーを褒める。

 

ドロンジョ「良いねライスシャワー。逸材だね秀才だね天才だねぇ〜。此れなら優勝を狙えそうだよ」

 

ライスシャワー「あ、ありがとう…………」

 

そして、ライスシャワーは立ち上がる。トンズラーはライスシャワーにご飯を食べようと誘う。

 

トンズラー「ライス。ご飯食べに行こう」

 

ライスシャワー「う、うん」

 

すると、ボヤッキーとドロンジョは、ライスシャワーが何処か迷いがある事、そして何かを躊躇っている事を見抜いた。

 

廊下を歩きながら、ドロンジョはライスシャワーに訊いた。

 

ドロンジョ「……ライス。アンタ、まだ自分が大会に出なければ誰も傷付かない。なんて甘い事を考えてないかい?」

 

ライスシャワー「い、いや……そんな事は……」

 

ボヤッキー「嘘っす。貴女は棄権しようとしてるっす。でもその反面、走りたい気持ちがある。なら、どうしてそうしないんすか?」

 

ボヤッキーの問い掛けを聞いた途端、ライスシャワーはその場で歩くのを止める。ドロンボー一味は、ライスシャワーを通り過ぎた後に歩くのを止めて、ライスシャワーの方を向いた。

 

トンズラー「どうした?」

 

ライスシャワー「………ライスは、皆を不幸にしてしまう。ミホノブルボンさんも………メジロマックイーンさんも、皆があの人達の勝利を期待していた………なのに、ライスがその人達の夢を壊してしまった!ライスは、自分が勝つことでキラキラと輝き、見てくれる人々に新たな希望を与えたいのに!走りたいよ!走って勝ち続けて、皆に希望を与えたい!でも、ライスが勝っても誰も喜ばない!ライスは名前負けしたただのヒール!ならもう走りたくない!レースにだって出たくない!ライスはもう………誰かを不幸にしたくない!なら、ライスが出ない方が………」

 

ハッと、ライスシャワーは気付く。あまりにも言い過ぎた。心の内を吐露しすぎた。

 

ライスシャワー「ごめんね………ライス、言い過ぎたよ。さ、さあ、早くご飯にしましょう。ライスは負けた方が皆を泣かせずに済んで――」

 

すると、急ぎ足で行こうとするライスの肩を、ドロンジョが掴む。

 

ライスシャワー「えっ?」

 

ライスシャワーは、人間とは思えないその力を押し切れなかった。ドロンジョはライスシャワーの空いた肩をもう片方の手で掴む。

 

ドロンジョ「言いたい事はそれだけかい?」

 

ライスシャワー「えっ?あの……」

 

ドロンジョ「勝てば皆を不幸にする?勝っても誰も喜ばない?そして“自分が負ければ皆が幸せになる”?ふざけた理想論だよ。負けた奴の言い訳よりも尚始末が悪い」

 

その言葉を聴いたライスシャワーは、ドロンジョの言葉に憤りを感じる。

 

ライスシャワー「それの、それの何がいけないの?誰にも不幸になってほしくないって考えが、間違ってるというの!?」

 

ドロンジョ「ああっ、間違ってるよ。子供の泣き言と変わらない。お前はヒールではないのに、自分からヒールになろうとしてる。一言言うよ。“自分から負けたがるお前は弱虫”だ」

 

ライスシャワー「っ!!ふざけないで!!ライスは皆を幸せにしたい!!それの何が可笑しいの!?」

 

ドロンジョ「おかしいね。良いかいライスシャワー」

 

ドロンジョは語る。ライスシャワーに、一つ現実を教える為に。

 

ドロンジョ「“理想”って言うのは、実力の伴う者のみ口にすることが出来る“現実”の事だよ」

 

ライスシャワー「ッ!!」

 

ライスシャワーはその言葉が何を意味するのか、悔しくも理解していた。

 

今のお前は、理想ではなく空想を吐くだけの弱虫。子供の泣き言と変わらない、惨めな言葉。

 

ライスシャワーの誰にも不幸になってほしくない、悲しんで欲しくない、幸せを運びたいというのは、今のライスシャワーが口にするのに相応しくない。

 

ライスシャワーは心が折れそうになった。そんなにハッキリと言われたら、もう立ち直る気も起きなくなる。

 

すると、ドロンジョがライスシャワーの肩を優しく肩を叩く。

 

ドロンジョ「だからこそ実力をつけるのさ…そんな当たり前な現実を守るためにね」

 

ライスシャワー「えっ?」

 

意外な発言に、ライスシャワーは驚く。

 

ドロンジョ「その為にも、お前が努力しなくちゃならないんだ。何時までもこんな所でぶらぶらしてんじゃないよ。分かったね?」

 

ライスシャワー「は、い………」

 

ドロンジョ「声が小さい!!」

 

ライスシャワー「は、はい!!」

 

ライスシャワーはドロンジョから喝を入れられて、心の内から熱く燃え上がるような昂りが湧いた。

 

ライスシャワー(なんだろう?この胸の高鳴りは?この人に言われてから、やる気が湧いてくる!)

 

ドロンジョはただ、ライスのやる気を湧かせただけだ。しかし、ライスは先程と違ってやる気に満ちた顔をしていた。

 

ドロンジョ「よし。大会に向けてもう少し練習するよ!走るのに必要な筋肉は全身にあるんだから、全身鍛えるよ!終わったら食事にしようじゃないか!」

 

ライスシャワー「は、はい!!」

 

ドロンジョはライスシャワーと共に、グラウンドに向かう。

 

トンズラー「お腹空いた………」

 

ボヤッキー「ドロンジョ様ー!僕達だけでご飯食べに行くっすよー!」

 

ドロンジョ「ああっ!先に向かいなよー!」

 

ボヤッキーとトンズラーは、ドロンジョやライスシャワーと別れて、食事にする為にレストランへ向かうのだった。

 

――――――――――――――――――――――――

 

数時間後の、ドロンボーメカ『ヒグマオウ』のコクピット内。

 

其処でシャワーを浴びてパジャマに着替えたアリサとすずか。ドロンボーに用意されたハンモックで横になり、此れから寝る所だ。

 

アリサ「皆、今どうしてるかしら?」

 

すずか「心配してるよ。私達が人質になってる事を知れば、多分ドロンボーの皆が指名手配されるね」

 

アリサ「そんなの、あの人達が可哀想じゃない!」

 

アリサは一週間もドロンボーと過ごして、彼女達を理解した。彼女達は悪人だが、決して人の命を奪うような残虐な人達ではない。

 

すずか「仕方ないよ。それが、あの人達が決めた道なんだから。あの人達はサイコパスではないけど、悪い人の道を自分で決めて進んでるの。だから、私達がいくら同情しても、あの人達に誘拐された事になってるんだから」

 

すずかもアリサの考えは理解している。

 

とはいえ、いつかは戻らなくてはならない。

 

アリサ「……そうよね」

 

納得行かないが、アリサは解放されたらドロンボー一味に誘拐された事にすると誓ったのだった。

 

そして、二人は眠りに入った。




こんな感じで良いかなぁ?ドフラミンゴの名言でも良かったけど、迷った末にクロコダイルの方にしました。

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