この世界の結末は?   作:ありくい

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なんかぁ。書きたくなったのでぇ


番外編 部下の努力

 

≪リース視点≫

魔王様が戦場へ出て行かれた。今日の分の仕事を終えているので、何の問題も無いのだが、それにしても護衛の一人や二人はつけてほしい。どれだけ頼んでも、唯一転移魔法を使える魔王様が認めて頂けなければ一緒に連れていってもらえないのだから意味は無いのだ。

 

粗方の書類を整理し終え、魔王様のスケジュールを調整しながらため息をつく。

 

「はぁ。それにしても突然どうして…」

 

これも、突如として魔王様が変わったことと何か変化があるのだろうか?あの日、突然強大な力を持ってから、勇者と協力したり、まるで未来を知っているように神の一手で戦況を有利に作り上げていったり、不思議な事がたくさんだ。

 

「…執務室へ書類を届けに行きましょう」

 

立ち上がり、自分の背丈よりも高く積み上がる書類を担ぐ。昔はげんなりとしていたものだが、慣れというのは恐ろしいもので何も感じなくなってしまった。

 

「失礼します」

 

誰もいないと知っているが、ノックを済ませて部屋に入る。いつもはここに頭を抱える魔王様がいるのだが、今日はいないので少し寂しさを覚える。

 

「よいしょっ…!【風魔法 ウインドフライ】」

 

書類を置いた瞬間、誰かに見られている気がし、反射的に魔法を放つ。そうして、机の影から風によって浮かび上がったのは一匹の鼠だった。

 

「なんだ。ただの鼠ですか。にしても、よく侵入出来ましたね。毎日掃除しているだけでなく、護衛や私、魔王様までいるのに」

 

魔王様は私よりも鋭い。だからこそ、不自然さを覚えてしまう。

 

「ヂュー!」

 

「キャッ!」

 

空中に拘束していたはずの鼠が、突然加速して噛み付いてきた。すぐに風で叩き潰したが、普通の鼠には有り得ない行動だ。

 

「魔獣」

 

魔法を使う動物。魔獣。彼等は、人も魔族も見境なく襲う。そんな彼等が私達に見つからないように気配を忍ばせる。おかしい。まるで監視でも任されていたのかと勘繰ってしまう。

 

「監視…」

 

嫌な予感がする。すぐに執務室を出て、多くの情報が飛び交う諜報部へ向かう。

 

「諜報部!」

 

「リース様!お探ししておりました!大変です!各地の集落、都市部で魔獣の襲撃が発生した模様です」

 

そういうことか…!魔王様不在を見計らって…!

 

「全権を託されている私が命じます!魔王様護衛部隊を除き、ここにいる部隊はすぐに各地へ散らばり各地の援護に入りなさい!魔王様護衛部隊はすぐに王都のパトロール!おそらく、ここにも来ます!」

 

「「「はっ!」」」

 

魔王様がお帰りなさるまで、なんとしてでもこの国を守らないといけない。

 

 

≪トーニック視点≫

商業都市トルサの自警団代表のトーニックは、頭を抱えていた。

 

「うおおお…!足りない!」

 

商業都市トルサは、面白いくらい簡単に寝返った。いや、寝返らざるを得なかった。それは仕方ない事と言える。なんせ、化け物二人に脅されて、頼りの勇者様はその化け物の一人である。それに、こちら側へ提示されたメリットは余りにも大きかった。今でも、涎が出そうな顔で電卓を打ち、魔王と勇者に笑顔で握手したこの都市の代表者の顔が脳にこびりついている。

 

そんなトルサの役割は、軍や難民を匿う事と魔族と人類を仲良くさせることだ。魔王から送られる人類と、勇者様から送られる魔族達に職を与え、訓練させ、できる限り交流を持たせることで結び付きを強くする。

 

その担当を押し付けられたトーニックは先述したとおり、頭を抱えていた。

 

なぜか。それは簡単だ。突然増えた人口の分の食料が足りなくなってきているのだ。ここしばらくは何とかなるが、正直、後一ヶ月立てば何人かに行き届かなくなることは明白だった。

 

「くっそ。買い出し班はちょい前に出て行ったばかりだからな。誰か早馬を…いや、再編成した方が安いか?」

 

電卓を叩いていると、ドアがノックされた。返事をすると、魔族の若者が一礼してから入ってきた。

 

「トーニック様!トルサの周辺に魔獣がいるとの報告が来ました!」

 

「なに?」

 

魔獣の襲撃。ここ数年なかったが、戦争前はよくあったそうだ。しかし、最近の実例が無さすぎて、どうすればいいのかわからない。

 

「冒険者ギルドに緊急依頼を出せ。ギルドの指示をよく聞いて対処してほしい」

 

「かしこまり…なんだ?新たな報告?トーニック様。また別の情報が出た様です」

 

そういって魔族の青年は下がり、代わりに今度は人間の若者が出てきた。

 

「失礼します。先ほどの魔獣の件ですが、ここだけではなく、周辺の村等でも確認されているそうです。また、冒険者ギルドのギルドマスターを名乗る男が軍を貸してほしいと言っています」

 

思ったより規模が大きい?いや、こんなものなのか?何にせよ、かなりまずい事態であるらしい。しかし、魔族の兵は外には出せない。そうなるとトルサの兵は戦争に出て行っている分も含めてかなり減ってしまう。

 

どうすればよいのだろうか。被害を減らすためには、魔族の兵を出すしかない。しかし、そうなってしまえ王都はもちろん、他の都市からも敵と判断されかねない。そうなってしまえば、もうトルサはおしまいだろう。

 

「…そのギルマスは軍といっているんだな?」

 

「はい」

 

「なら、魔族と人類を混ぜた軍を貸してやれ」

 

「しかし、それでは…」

 

「そのかわり、魔族の兵に優先的に周辺の村の人を助けさせろ。もし御礼を言えないような奴がいれば、容赦なく魔獣の餌にしてやればいい」

 

「流石にそれは…」

 

「冗談だ」

 

これなら、運が良ければ恩を売れて黙らせられるはずだ。もし無理なら、勇者様に泣きつくか。

 

「全責任は俺が持つ!お前らは気にせず、命令通りに動け!」

 

「「はっ!」」

 

この賭けがうまくいくことを願うとしよう。

 

 

 


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