この世界の結末は?   作:ありくい

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最後の戦い①

 

「急報ー!魔獣が辺りに出現しました!数は不明!しかし、すべての森から魔獣が出て行ったとの報告が出ています!」

 

「チッ!まだ途中だってのに」

 

「ふむ。まあ想定通りだな」

 

緊急を要した兵士の報告に、勇者と魔王がそれぞれ反応をする。

 

「行くぞ、勇者」

 

「分かってるよ!ニア、後は任せた」

 

「任された」

 

兵士の訓練をニアに任せて勇者は立ち上がる。それに合わせて、レイトとリュアも立ち上がった。

 

「ん?お前らはもうちょっと後でいいだろ」

 

「何を言っているんだい?見送りに決まっているじゃないか」

 

「そうだよ!ほらほら、ニアも~!」

 

「えー」

 

「勇者。一刻を争う…というわけではないが、もし獣王がすぐに暴れ出したらどうするんだ。前線は崩壊してすべてが終わりだぞ。…いや、私が先に行っているから、やることを済ませてから行くといい」

 

「いってらっしゃいませ。魔王様」

 

そう言うと、魔王はすぐに消えて行った。魔王にしては、やけに空気を読んだ行動だ。勇者は悪態を突きながら、仲間との別れをゆっくりと済まして、魔王の後を追った。

 

 

 

 

「まて、魔王。みゅーちゃんはどこにいるのか分かるのか?」

 

魔王に追いついた勇者は、ひたすら前に進む魔王にそう問い掛けた。前々から気になっていたが、何故か勿体振られていて、教えてもらえなかったのだ。

 

「いや、考え事をしていた為ただの空返事だ。勿体振ったわけではない」

 

「はあ!?じゃあどうするんだよ!」

 

「いや、簡単だろう。私達が獣王を止める理由はなんだ?」

 

「そりゃあ俺達の軍を滅ぼされないようにだろ…って、あ、そうか」

 

「そう言うことだ」

 

話をやめて、勇者は剣に魔力を込めた。とめどなく光が溢れて、

空気が震え出す。

 

「勇者」

 

「俺にはこのペンダントがあるんだから、俺の方が適任だろ」

 

聖剣を振るい、前方の魔獣の群れへ剣を振り下ろす、前に、それはとめられた。

 

「ほう。思ったより早く釣れたな」

 

「そうだな」

 

「そりゃあ、勝ち目が減るからね!遊んでもらうよ!」

 

獣王の拳が空気を振るわせ、衝撃波となって襲い掛かる。剣を捕まれたままの勇者は避けるそぶりを一切見せず、魔王によって打ち消された。

 

「…ねぇ。君達はほんとに最後殺し会うつもりだったの?そうは思えないね」

 

「へぇ。知ってるのか」

 

「切り替えというのは、上に立つものに求められるものだからな」

 

実際、仲間が死んでも勇者と魔王は堪えられる。すぐとはいかないが、確実に生き残る方法を選び取ることが出来るのだ。

 

「へぇー?私はもう何も感じなくなってるから、それと同じだと思ってたよ。≪雷魔法 ライトニング≫」

 

「≪雷魔法 ライトニング≫」

 

獣王と勇者から放たれた雷はぶつかり、光を撒き散らす。同時に、地面を蹴る音が二つ聞こえた。

 

「ハッ!」

 

「チッ!」

 

光が晴れると、剣と腕を交差させる両者がいた。当然、刃物と腕なのだから腕に線が入っている。獣王はさっさと後ろに引いて、魔法ですぐに治した。そこに襲い掛かる勇者と魔王の追撃は軽くかわして、後ろの魔獣の軍に当たった。

 

「なっ…!卑怯にも程があるね…」

 

不利を判断した獣王は走り出す。

 

「は?逃げるのか?じゃああれ殺すけど」

 

「待て!あの方角には都市がある!つまり、軍がこっちに向かっているのだ!」

 

魔王の言葉通り、そこには進軍中の軍隊がいる。

 

「これなら無視できないでしょ!鬼ごっこだよ!≪炎魔法 ファイヤーボム≫」

 

「魔王!」

 

「≪土魔法 アースクリエイト≫!」

 

炎の爆弾が、強大なる土の壁に衝突する。あまりの威力による爆音に軍の前にいた兵士は殆どが気を失ったが、命は救われた。

 

「うおおお!!!!【限界突破】!」

 

「えっ…」

 

閃光となった勇者が、一瞬で獣王との距離を縮める。獣王は目を白黒させながらも、勘で攻撃を捌く。唯一の救いは、魔王は着いてこれない事だろう。なんとか、かろうじて、獣王はかい潜って森へ入った。

 

「チッ!」

 

このままでは森が更地になってしまうから、すぐに限界突破を解除する。獣王にとって、森は最も有利なフィールドだ。獣王は動きやすく、勇者と魔王にとっては、近くの村が受けとる自然の恵みの事を考えると下手に消しづらい。

 

「なあ魔王。これ入る意味あるか?」

 

「さっさと奴の意識を集中させないとああなる。≪風魔法 ウインドフライ≫」  

 

魔王が放った風は、空を駆ける炎を打ち消した。獣王が放ったものだろう。

 

「はぁ。やるよ」

 

互いに互いを殺せない、茶番のような戦いは、それからしばらく続いた。

 

 

 

 

 

勇者のペンダントが、怪しく光るその時まで。                                                                                                                                                                                               

 


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