この世界の結末は?   作:ありくい

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元勇者と元魔王

 

「【土魔法 クリエイトソイル】」

 

魔王の体を土で構成して、ちょっと暗めの聖剣をぶっさした。

 

「魔王?出てこれるか?」

 

その声に応じるように、聖剣から闇が流れ、土の器へ入り込んでいく。すべてが入り、やっと動き出した。

 

「もう少し丁寧に作れないのか?」

 

不格好にも程がある体を動かしながら、魔王は不満を愚痴る。実際、彼の見た目は酷いもので、面影すらなかった。

 

「どうせ体を変えるんだから別にいいだろ。流石にこのままだと不都合がありすぎる」

 

「じゃあ何故この世界の勇者に姿をみせたのだ?突然自分と同じ体のやつが聖剣奪って別の聖剣置いていくとか一生忘れられないぐらい記憶に残るだろう」

 

「あー。それは一回こっちの魔王にこの姿を見せちゃったから不公平かなって」

 

なにいってんだ?と土の人形を器用にいじって冷たい目を表現する魔王。というか、魔王しかり勇者しかり、あくまで土の人形の中に入っているので言葉も表情もなんでも魔法でやらないといけないのだ。魔力を潤沢にもつ彼等で無い限り、簡単に出来ることではない。

 

「まあ。とりあえず運よく成功したな。まさか魔剣の中で俺が生きれるとはな」

 

「ま、そうだな。というか、あの聖剣と獣王はどうしたんだ?」

 

「新しい方の聖剣は前の世界でずっと腰につけてたから勇者の力扱いで着いてきたっぽいな。で、獣王というかみゅーちゃんはここだな」

 

そう言って、胸を勇者は叩いた。

 

「は?」

 

「いやな。思ったより魔剣の中でしっかり混ざっちゃったぽくて今俺の心の中で騒いでるよ」

 

「ほう?なら、貴様は今獣王でもあるのか?魔獣でも操れたりするのか?」 

 

「力は増したけど、魔獣を操るのは無理だな。なんかみゅーちゃんは獣との信頼を元に操ってたらしくて、それが浅いから勇者である俺の言うことは聞いてくれないらしい」

 

「ああ、道理で私にも認識できない程の速度で勇者から聖剣を奪えたわけだな」

 

実を言うと、魔王は勇者の接近に気づき、こっちの世界の勇者を叩き起こしてからずっとこっちの世界の勇者に握られていたのだが、本当に気付いたときには持っている勇者が変わっていて驚いていたのだ。私が弱くなっている等いろいろな可能性を考えていたが、これで明確に原因がわかり、ホッとしたのが事実だった。

 

「じゃあ、これからどうするよ」

 

「……なんとかしてあの男を殺したところで、世界の崩壊は止められない。どうする?」

 

あの男がキレていた所から察するに、本当に自分で起こした訳では無いのだろう。しかし同時に、奴らはあの男をそれほど大切にしていないということでもある。

 

「あの男を寝返らせるのはどうだ?」

 

「出来るのか?あの男には忠誠心的なのはなさそうだが仕事だと割りきっているように見えたぞ?」

 

実際、あいつはかなしいだのなんだの言っておきながらあの世界の人間魔族魔獣のすべてを滅ぼした。確かに、慈悲の心なんてなさそうだ。

 

「まあ無理か。とりあえず今は体を変えて、この世界を旅してなんとか解決法でも探るか」

 

「はぁ。まあ私もわからない訳だし、行くとしようか。で、姿形はどう変えるんだ?モデルとかはあるのか?」

 

「は?自分で考えれば?」

 

「む。そうか…」

 

そうして、勇者は一先ず学園の友達であるレイトの姿に、魔王は………

 

「おい。なんでそれにしたんだよ」

 

レイトの姿をした勇者から余りにも冷たい反応を貰ってとある幼女が震えていた。

 

「いや、私はリース以外となるとこれしか…」

 

「なんで声もメルによせてんだよっ!」

 

勇者のツッコミが空に響いた。

 

 

 


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