この世界の結末は?   作:ありくい

41 / 42
魔王と人類の最後の戦い

 

「まあ、順序だてて話していこう。私が勇者から離れてからの話だ」

 

頭にはてなマークを無限につけている勇者に事の説明をするため、魔王は自身が見てきた光景を話始めた。

 

 

 

 

 

 

 

主戦場へ飛ぶと、既に戦いは始まっていた。両者の最高戦力である勇者と魔王がぶつかり、その流れ弾が飛んで来なさそうな所で、人類と魔族の軍隊はぶつかり会っていた。魔法と、純粋な力による衝突。互いに正念場とわかっているからこそ、その戦いは拮抗していた。

 

こんな時代があったなと、遠目から魔王は眺めていた。こうしてみると、当時の私は酷い。魔法の一つ一つに隙がある。それに、魔法に頼り過ぎで魔剣を上手く扱えていない。魔法で隙を作り、魔剣で突く。単純だが、それができれば傷を負わせられただろう場面が多々あった。

 

 

それに比べ、勇者は流石と言えるだろう。まだまだ未発展だが、確実に魔法へ対応してきている。まさに、戦いの中で成長している。そう言ってもいいくらい、勇者の剣筋は鋭くなっていた。まったく、このていたらくで良くこの戦いを生き抜けたものだ。

 

一日目、二日目と似たような戦いは続いたが、変わったところがある。まず、魔王軍は当初の予定通り、相手が引けなくなって来た当たりを見計らって、守りに入った。このままでは押しきれないと判断しての行動だ。人類も戦い方が変わったことには気づいたが、魔王がいる手前引くわけには行かない。そうして、こちらでも泥沼なみの戦いが始まった。

 

「つまらなんな」

 

正直、見ている側からすればつまらない。魔王と勇者の衝突も減り、一日の犠牲者も片手で数えられる程度だろう。しかし、戻ったところでこれとはそれ程変わらない防衛戦を見るだけであり、何よりも面倒なのはそこに勇者がいることだ。それだけで、こちらに居続けるべきだと判断した。よって、魔王は魔法で暇を潰しはじめる。これは、魔法を覚えたての子供がやる遊びだが、何十年ぶりかの遊びは思ったよりも楽しく、はまってしまった。

 

何日経ったか。戦況に変化が見られた。攻めることを躊躇していた人類の軍が、一斉に突撃し始めたのだ。突然の事だが、予測は出来ていたので、落ち着いて魔王軍は押さえ込む。しかし、向こうには勇者が。気づいたときには一部が破られていた。即座に魔王がカバーし、事なきを得る。

 

だが、遠くから眺めていた魔王は違和感を感じた。

 

「なんだ…?勇者、強くないか?」

 

魔王の目には、今の勇者…ライガには叶わないが、勇者はそれに近い力を出しているように見えている。そう、あの体に纏う光はまさに、

 

「限界突破…?」

 

もう魔王の魔法は見切られ、一瞬のうちに詰められる。そして気付けば、首筋に聖剣が当てられていた。

 

どうなっている?そんなことが有り得るのか?最低限の接触しかしていないというのに、ここまで結果が変わってしまうなんて。いやまて、今はいつだ?なぜ勇者は今覚醒した?

 

確か、勇者は守りたいという感情で限界突破というスキルが目覚めたはず。だとするなら、それに近しい思いが…ある。あの少女だ。あの、リュアという少女の活躍がここまで伝わって来た可能性はある。それだけではない。この世界の勇者と魔王は、未来の勇者という化け物を知っている。それについての対応が、ここまで未来を変えたのか?

 

そこまで考えて、私はすぐにココサ村へ転移した。案の条、勇者はリュアを助けるため突っ込んでいた。同時に近づく閃光。いくら力の差があるとはいえ、相手を傷付けないようにしている剣と、危機を跳ね退けようと速度を載せた剣であれば、速度を載せた剣であるに決まっている。

 

 

「待てええええ!!勇者ぁぁぁぁ!!!!」

 

 

私は叫んだが、時既に遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と、まあこういう事だ」

 

「そうか…」

 

「どうした勇者。貴様にとっては見たかった世界なのではないか?勇者が正当に勝利した世界だぞ」

 

やけにぱっとしない顔を浮かべる勇者に、魔王が尋ねる。

 

「いや、なんでもねえよ」

 

どう見てもなんでもなくはなさそうだが、魔王は気にしない事にした。まあ、勇者としても、リュアが隣にいないという事実が悲しかっただけで、気にはしていない。

 

「それにしても、リセットはいつだ?」

 

「知らん。だが出来るだけ私達は共に行動しておくべきだろう」

 

「まあ、そうだな。いつでも死ねるように。そして、」

 

「チャンスを逃さないように」

 

この世界は、勇者が勝つ世界だ。魔王や勇者が目指した終わりとは違うが、明確に戦争は終結し、魔族が敗北した。これはこれでしっかりとした終わり方で、勇者と魔王の危惧する最悪の終わりかたとはなっていない。すなわち、魔王と勇者にとっては、ここで終わってもいいのである。故に彼等は準備を進める。すべての種族が滅び、世界が崩壊を迎えるのを防ぐために。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。