≪魔王視点≫
すやぁ
ばんっ!
「おはようございます魔王様!」
「喧しい!」
気持ち良く寝ているところに煩い奴が入ってきた。
「そろそろお仕事のお時間です。さっさと起きてください」
「うん…?まだ一時間前だろう!リース!朝早いのにも程があるぞ!」
「逆にお尋ねするのですが、寝惚けた頭でお仕事をするつもりですか?」
リースの正論パンチ!魔王は20のダメージを受けた!
朝食を済まし、執務室に入ると書類の山が築き上げられていた。うん。いつも通りだ。
「リース。これで最後か?」
「いえ、まだ内容確認前の書類が多数あります」
「…分かった。じゃあさっさと済ませろ」
「承知しました」
積み上げられた書類を見る。
天井近くまで積み上げられているのだが、これでもリースのおかげで少なくなっているのだ。
「やるか…」
二年前の内容なんて覚えているわけがない。でも、やらなければこの国は回らないので、仕方なく私は書類を手に取った。
十二時間後。
終わった…。ベッド、ベッドが恋しい。早く寝たい。
「魔王様。会食のご予定が入っています」
「は?いますぐ中止しろ!」
「出来ません。前回と違い、今回は人類との戦争の最前線の拠点となっている都市の権力者です。ここを蔑ろになされますと全体の指揮に悪影響が出ます」
…はぁ。
勇者よ。済まない。私はしばらくそっちには行けなさそうだ。
≪勇者視点≫
魔族の家族を聖剣に閉じ込…保護した後、俺は馬車に乗って学園のある王都へと行った。
王都はこの国の中心なだけあってココサ村とは比べられないほど発展している。大通りには店が建ち並び、たくさんの人で賑わっていたので、昔は余りの雰囲気の違いに立ち尽くしたものだ。
「おや?勇者様は王都に来たことがあるのですか?」
「無いですけど…」
「そうですか。いやはや、王都に来たことが無いのにも関わらず、王都を見て驚かないとは。勇者様は肝が据わっておられるのですなぁ!ハッハッハ!」
あっ、成程。確かに田舎者が王都を見て驚かないなんて可笑しいか。
でもまあ、このおっさんが言ったように肝が据わってるって事でいっか!わざわざ昔の俺を演じる必要も無いだろうしね!
「えっと確か、すぐに聖剣の儀式でしたよね?」
「はい。その通りですぞ!しかし、勇者様もお疲れでしょう?どうしますか?予定通り今すぐ始めてもいいですし、明日でも構いませんよ!」
確か、前回はここでびびって明日にしたんだけど、今回はやりたい事もあるし、今日でいいだろう。
「おっ!ほんとに肝が据わってらっしゃる!ではでは、そうさせて貰いますね!」
「ここに、新たな勇者の誕生を宣言する!勇者よ!この聖剣と共に魔族から我等を守るのだ!」
王の宣言と共に、周囲の人々が立ち上がり、普段は厳粛な雰囲気の教会が歓声に包まれた。
聖剣を受け取り、教会を後にすると、さっきのおっさんが後からついて来た。
「勇者様、お疲れ様でした。ところで、この後はどうなさいますか?もしご予定が無いのでしたら、学園について教えてさせて頂こうと思っているのですが」
学園…。最後に通ったのは一年前だっけ?その後からすぐ戦場に出たからルールとか全部覚えているか不安だな。
「じゃあお願いします」
「よしきた!それではついて来てください!実際に見ながらご説明致しましょう!」
そうして俺は、おっさんの説明を受けることにした。
「それでは勇者様!ここが学園です!勇者様にはこれから一年間、この学園で戦い方を学んでもらいますぞ!」
おっさんは、一つの建物の前に降りると、それを指差した。
「こちらが基本的に勇者様がお学びになる校舎です!強くなるための施設は、全てこちらに揃っております!」
次に、その校舎の横に立っているマンション風の建物を指差す。
「そして、こちらが寮です!生活に必要な施設は全てここに揃っており、一人一人に部屋が与えられます!施設はこれで以上です!」
「成程…。ルールとかはありますか?」
「はい!校則の事ですね!それはもう単純!一つ。卒業まで、学園の敷地内から出ないこと!二つ。戦闘は校舎内の戦闘ルームのみ!それ以外での戦闘は禁止!」
「これにて、学園についてのご説明は以上となります!質問はありますか?」
「いや、いいです」
「そうですか!もし後からご不明な点ができましたら、誰でも良いので職員にお聞き下さい!寮は今日から入れますがどうなさいますか?もし入られなくても別の宿がありますが…」
「ほんとですか?ぜひお願いします!ちなみに、施設なんかも使えますよね?」
「ええ。ええ!入学式は明後日!私が伺いますので寮にてお待ち下さい!」
「はい。ありがとうございました」
さぁ!入学までに、やれることやってやるぜ!