●あらすじ●
富!名声!力!この世の全てを手に入れた男、海賊王ゴールドロジャー、彼の死に際の一言は多くの人々を海へと駆り立て、世はまさに大海賊時代となった。

これはそんな大海賊時代に海賊王を夢見る一人の海賊の冒険の物語である。

●設定●
ルフィの食った身がバネバネの実だったら…?

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バネバネのルフィ

 大海賊時代、ここはまだ比較的安全な海、イーストブルー。その大海原を一つの樽が漂っていた。

 それを回収したのはアルビダ海賊団の海賊船であった。さっき比較的安全だと言ったが、アレは嘘ではない。海賊団と言ってもピンからキリまでいるのだ。その中でもアルビダ海賊団はかなり低ランクに該当する。特筆すべき強者は金棒のアルビダという二つ名を持つ船長のみなのだ。

 

 回収した樽にかなりの重量を感じた船員たちは中に酒でも入ってるのでは無いかと期待に頬を緩ませる。数人がかりで引き揚げ、期待に胸を躍らせながら樽を開くと中から少年が飛び出て来た。飛び出た拍子に酒だと期待して顔を覗かせたガタイのいい男を一人ブッ飛ばし、男は海に落ちた。

 

「いやぁ〜思ったより樽って狭いのな!」

 

 メガネをかけた貧弱そうな少年は、出て来た少年と彼が入っていた樽を交互に見比べる。

 

(明らかに樽の容量に収まる体積じゃない…一体どうやって樽の中に入ってたんだ!?)

 

 その疑問は次の瞬間に吹っ飛ぶことになる。海に仲間が落とされたと少年に対し周りの海賊達が一斉に襲い掛かったのだ!

 

(あんなに囲まれてたんじゃ助かりようがない!)

 

 メガネの少年はせめて悲惨な光景を見ないようにと目を瞑りしゃがみ込む。

 しかし、恐れていた事態は起こらなかった。樽から出てきた少年は襲いかかる男達の攻撃を躱し、腕を縮ませた。明らかに人間の体の構造を逸脱していたが、この混沌とした乱戦にそれに気づけたものは居ない。そして縮んだまま腕を思い切り振りかぶり、元の長さに戻しつつ殴ると少年は叫んだ。

 

「バネバネの…ピストル!」

 

 振り被った少年の殴打に弾かれるように一気に伸びた勢いが加わり、殴られた男は吹き飛んで行き、やはり海に落ちていく。そこでようやく事態に気付いたものがいた。

 

「こいつ、悪魔の身の能力者だ!」

 

 人体の構造を逸脱した腕の伸び縮み、その正体は悪魔の実。食べればその身に不思議な力が宿る摩訶不思議な木の実であり、少年が食べたのはバネバネの実、バネ人間となった少年は身体の各所を伸び縮みさせることができるのだ。

 

「騒がしいね!何やってんだい!」

 

 ようやく現れた巨漢の女、金棒を持ったその人こそ金棒のアルビダ、この海賊団の船長だ。

 

「アルビダ様!あそこの変なガキが暴れてるんです!」

「なにィ?どこから入って来やがった!」

 

 そしてアルビダが金棒を構えると、バネ人間の少年はアルビダを指差し

 

「オメェ、ブスだな」

 

 と言葉の直球を投げ付けた。人間の容姿を悪く言うのはやめましょう。作者との約束だぞ。

 己の容姿を美しいと信じて止まないアルビダはその一言にキレた。自慢の金棒を振り上げるとバネの少年の脳天をカチ割らんと振り下ろす。

 巨漢に違わぬ剛力と金棒の純粋な質量は重力に吸い寄せられ、バネの少年に凄まじい速さで振り下ろされる。

 

「へっ!生意気なガキが…口ほどにも…!」

 

 脳天に突き刺さり、少年は金棒を受けて沈んでいく。それは側からみれば少年が潰されたように見えるが、実現象は異なる。

 踵から頭のてっぺんまで、見事にバネのように縮んだ少年は次の瞬間一気に元の大きさに戻り、金棒を弾き飛ばす。弾いた金棒はアルビダを吹っ飛ばしやはり海へと落とした。

 

「効かないねぇ…バネだから!」

 

 アルビダでも勝てない相手に自分達が叶うはずがないとアルビダの部下達は自ら逃げるように海へと飛び降りていく。そして残ったのはバネの少年と、物音に驚き思わず目を開けてしまい、その後アルビダが吹き飛ばされる様を見ていたメガネの少年の二人だけであった。

 

「あ、あの…あなたのお名前は…?」

「俺か?俺はルフィ!麦わら海賊団のルフィだ!」

 

 彼らを乗せて海賊船は海を漂う。

 

 

 

 



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