ミから始まるえぐちぃ人の弟子になった。ふざけんな俺は逃げるぞ──!   作:気晴らし用

6 / 8
やっとゴタゴタが落ち着いてきた……
投稿期間に空きはあれどエタらないから安心してくれぃ…


6話 海賊らしく

「困った。金が無い」

 

 ミラのいた島から逃げ出した俺だが、奇跡的にログが溜まっていた。あんな短時間で溜まるとは思っていなかったが、ここはまあご都合主義展開だと自分を納得させるしかあるまい。

 

 出航して数時間。

 冒頭の言葉へと戻るが、俺は所持金が皆無に等しかった。

 船内にある物を売れば少しばかりの足しにはなるだろうが、生憎と食糧重視のため端金にしかならないだろう。 

 

 この船の耐久性も些か不安が残る。

 壊れた時、俺はエネルギーを取り込みながら月歩で空中を歩く他手段がなく、またそれも何時間続けられるか不明である。

 海にポチャっと着水すれば、俺は瞬く間に溺れて死ぬ。

 一部、海に落ちても息してる化け物がいるけど、あれは例外。そもそもパラミシアじゃ無理だと思う。

 

「次の島で色々補給したいし金が欲しい。……海賊らしく海賊から奪うか」

 

 俺の中の海賊のイメージは、民間人を襲う極悪非道なものではなく、海賊が海賊から宝を奪う。もろワンピース世界線だ。全部が全部じゃないし、ほとんどは確りと犯罪者だが。

 なんだろうなぁ……手配されてる時点で犯罪者なんだけど、元日本人としての価値観からか清廉潔白を演じたくなる。

 

 甘いんだろうねぇ。そんなことしたいなら海軍にでも行きやがれって話だし。

 だからと言って組織に縛られたいわけじゃない。

 価値観に縛られてるあたり完全な自由は不可能っぽいが。

 

「グダグダ考えても仕方ねぇか。海賊がきたら考えよう。海軍が来たら……いや、そこからちょっと拝借すんのもありか」

 

 海軍って上と下の意識の差がありすぎて最早別組織なんじゃねーか、疑惑があるからな。上も好き好んで天竜人に従ってるわけじゃない。ガープとかセンゴクとかゼファーとか。

 

「あの少将大丈夫か……? 露骨に正義感あふれてるイメージだけど、天竜人の振る舞いに耐えられんの?」

 

 あの若さで少将。原作にいない理由として、もしや天竜人に逆らって殺されたとかありそうだな。

 

「やっぱ害悪だわぁ……海賊よりたち悪いぜ……」

 

 己の機嫌次第で人の命を弄ぶとか、悪の化身に爆弾のスイッチ渡してるようなもんだ。

 

 と、まあ胸糞悪い思考をしていると、前方から一隻の船がやってきた。

 

 ご丁寧に海賊旗が掲げられている。

 模様に見覚えはなく、一応確認している億超え懸賞金襴にも記憶がないことから木っ端海賊団だろう。

 大概人のこと言えないくらい俺もクズの沼に片足突っ込んでる気がするな……。

 

「さて、やりますか」

 

 気合いを入れたのは良いが、船が近づくと俺が攻める間もなく、開戦の合図は無数の銃弾だった。

 

「おいおい、こんな小船に載ってる奴に随分と全力で攻めるじゃねぇか」

 

 船を傷つけられたらたまったもんじゃねぇ、とエネルギーの奔流を起こし銃弾全てを吹き飛ばす。

 パラミシアに属しているエネエネの実だが、能力の本質はロギアに近い。自然に存在するエネルギーを操れば、風を起こすことも炎を発生させることも容易いのだ。

 最も自然現象を引き起すだけあって、かなりの低威力だが。

 風は弾除け。炎はマッチ棒程度にしかならない。

 

 俺は小船からガレオン船に乗り移る。

 

「「な、なんだ……っ!?」」

 

 急に飛び乗ってきた俺を見て、海賊団の船員数名がたじろぐ。

 

「ひーふーみー、と……20人くらいか。でかい船の割には小規模の海賊団だな」

 

 口笛を吹きながら人数を数えていると、油断なく銃を構えた海賊の一人が叫ぶ。

 

「だ、誰だてめぇは!! 俺たちがトロル海賊団だと知っての狼藉か……!?」

「誰だてめぇは、ってこっちのセリフじゃボケ。船旅中に容赦なく弾丸の雨を降らしてきやがってよォ……。あぶねぇだろ!」

「「「いや、全部避けたお前が言う!?」」」

 

 敵ながら天晴なツッコミだ。

 ワンピ世界らしい緊張感の無さ。うーん、良い。

 

「トロル海賊団だかチロルチョコだか知らんけど、攻撃仕掛けてきたってことはやり返してもいいよな……?」

「「……っ!?」」

 

 ニヤリと笑みを深めてほんの少しだけ覇王色の覇気をぶつけると、船員らは微かに手足を震わして銃を構える。

 

「う、撃っちまええええぇ!!」

 

 恐怖に耐えかねたように発泡された銃弾を皮切りに、多種多様の飛び道具が飛び交う……って誰だバナナ投げてきたやつ。

 

「最初に効いてない、って分かった時点でやたらめったらに撃つのは愚策だろ。思考できる脳みそあるぅー?」

 

「っ、舐めんな!」

 

 一人、また二人と剣を抜いて襲いかかってきた。

 どうやら銃から肉弾戦へと切り替えた様子。

 

 複数人が俺を取囲み、一斉に剣を振り下ろした。

 

 

 ……おー、あのシーンが再現できそうだな。

 

 

 俺を笑いながら剣を抜き──無数の剣をたった一本の剣で防いだ。

 

 

「な、なんだ! 何をしやがった!!」

「剣が動かねぇ……ッ!」

 

「馬鹿だなお前ら」

 

 最も三刀流ではない俺は、方向とリーチもあって完全に防ぎ切ることは不可能である。

 だから、一合交わして覇王色を剣に流した。

 微かに黒い稲妻が空間を歪ませるが、手加減しているので精々体が硬直するだけ。

 剣が動かねぇ、ってのは単に恐怖で動いてないだけだ。

 

「無双……気持ちいいいいいぃぃ!!! アーハッハッ!!!」

 

 よし!

 

「飽きた!」

 

 途中から面倒になったから覇王色で全員気絶させた。

 効率重視じゃないから最初からそれやれよ、とかは勘弁。

 

 てか、俺の情緒がやべぇ……。

 自覚できるほど不安定だぞ、俺。

 

 世のチート転生者はこんな無双を繰り返してイキってるのか。飽きるだろ。確実に。

 最初は優劣感に浸れて楽しくてもずっと雑魚狩りだと剣の腕が錆びて仕方ねぇ。あくまで俺は鷹野郎と決着を望んでいる身。無双は程々にしたい。

 

「あ、その代わりに煽りの実力上げようと思ったのに……」

 

 

 微かに落胆していると、船の中から大柄な男と一般海賊A(モブ)が現れ、死屍累々(死んでない)の部下と高笑いする俺を見て、大柄な男の額の血管が浮き出る。

 

 お、キレてるぅ!

 

「何してんだおまェ!!!!」

 

 それお前のセリフじゃねぇぇ!!

 お前みたいな【悪】しかしてなさそうな海賊団の長が言えねぇ神聖なセリフだぞ、おい!

 

「つか、何してんだ、って見りゃわかんだろ」

「お、お前何したか分かってんのか!? ここにおわす方は懸賞金8000万ベリーのツキノワ様だぞ!!!」

「いや、誰だよ」

 

 知らねぇよ。

 モブ海賊のセリフに思わず素面で返した俺だが、それが更に男……ツキノワの怒りに触れたのか、腰に差してあるサーベルを抜き放った。

 

「おィ……てめぇが誰だか知らねェけどよォ……。俺の仲間に手を出されちゃァ逃がせねェんだ。今まで舐めてきた奴は全員ぶっ殺してきた。泣く子も黙るツキノワ様とは俺のことよォ……!!」

「うーわ、すっごいフラグ。大概1話か2話あたりに登場するかませと同等だぞ、お前」

「あ゙あ゙ぁ゙!?」

 

 横にも縦にも長く太い男はそれなりに人殺しの経験があるらしい。

 ここらじゃ名の知れてる海賊なのかもしれない。俺は知らないが。

 

「てかよ、偉大なる航路で誇れるような懸賞金なのお前? あ、ごめんな。俺、億超えしか覚えてないんだ……。えーと、イキってる雑魚? もうちょっと派手に有名になってから自慢しようね」

 

 ニッコリと警戒心を緩めるように笑ったつもりだったが、顔を真っ赤にしているツキノワを見る限り怒らせてしまったようだ。

 あれれぇー?(茶番)

 

「てめェは絶対ぶち殺す……ッッ!!!!」

 

 怨嗟と憤怒の混じった表情で叫ぶと、ツキノワの身体がグングン大きくなり始めた。

 4mほどだった体躯は今や12mほどになっている。

 

「なるほど、4黄猿くらいか……」

 

 一人で謎の納得中、あれいたの? とツキノワの隣りにいたモブが、ご丁寧に解説をしてくれた。

 

「でたぜ、ボスの悪魔の実……! ヒトヒトの実モデル、トロール! あの体躯に巨人族以上の力が詰まってんだ……! ああなったボスは無敵だ!! はっはー! てめぇの命も尽きたなぁ!」

 

 まさしく虎の威を借る狐。

 狐以下だと思うけど。

 

「よそ見すんなァ!!」

 

 持っていたサーベルも巨大化してるのは謎だが、振り下ろされた鈍色の刃を十拳剣で軽々と防ぐ。

 

「なっ……! ボスの攻撃を片手で!?」

 

 モブの驚愕は無視し、俺はへぇ、と納得した。

 

「あながち巨人族以上の力ってのは嘘じゃないみたいだな」

 

 乱雑な攻撃だったが、威力だけならあった。 

 最も覇気で受ける必要性を感じない程度のものだが、懸賞金以上の実力はある。精々一億程度でも前半の偉大なる航路じゃ良い方なんじゃねーの。

 

「まァ……剣術はお粗末、体躯を活かした攻撃方法も無し。……ただの宝の持ち腐れだね。お疲れ様。負け犬」

 

 いつまでも余裕たっぷりで過ごしてきたんだろう。

 格上と戦ったことが無いと分かる嘲りっぷり。

 

「覇剣」

 

 軽く剣を振り下ろしただけで、ツキノワは空の彼方に吹っ飛んでいった。

 

「グアアアアアアアアアアァァ─────」

 

 

「────ッ!?!?!?!?!?」

 

 

 モブ海賊はワンピ世界の最上級驚愕顔で固まっていた。

 よくバギーが見せるあの表情である。顔にどうなってんの、それ。

 

「海に落ちてなきゃ生きてんじゃね。死んだら死んだで因果応報だろ」

 

 うーむ……清廉潔白ってなんだっけ。

 自分の躊躇いのなさにちょいとビックリ。前言撤回コペルニクス的転回どころじゃねぇな、これ。殺すつもりはゼロだったが。結構手加減したし。

 精々海軍に突きだそうかなぁ──思ったより吹っ飛んだなぁ!? が今の出来事の顛末である。

 

「通り名の技。オサレじゃね、と思って編み出したけど手加減できねぇぞ、これ」

 

「は、は、は、は、覇剣……っ!? 初頭手配2億越えの超ルーキー……!!」

 

「なんだ知ってたのかよ。じゃあ顔で気づけよな、ばーか」

 

「なぜお前がここに……!!」

 

 量産型的反応だなぁ。

 船長がいないだけでこの体たらく。敵討ちとかで斬りかかるだけの度胸と仁義は持ち合わせてないようだ。

 

 

「あー……しいて言うなら……暇つぶしかね」

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 




ヨル選手 次回で無双、一時中断の模様


次回はようやく例のお方にご挨拶しに行きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。