呼ばれてないけどジャジャジャジャーン。
今週は俺の武器、光桜剣と桜花について話をしようと思う。いつもここで、どうでもいいオープニングトークみたいなのをいれるけど、それをしない方がいいということにやっと気が付いた。
ということで、ツクとサクラも呼んでおいたぜ。
「こんにちはー」
「こんにちは」
ツクはちょっとほんわかしている。サクラは空気がキリっとしている。
どちらも桜属性なのは間違いないけど、こういったところで違いが出てくる。
「私たちの話ですねー、どこの話ですか?」
「手に入れたときか、お前らの能力が伸びたときか、どっちがいい?」
武器を手に入れたのは、俺が一人旅を始めてからそれなりにすぐの時期だ。その時は、まだ神器じゃなかったし、切れ味も普通の剣だった。
それが神器に昇華されたのは、俺が魔王をぶっとばして、神としてちゃんとした仕事をするようになってからだ。とある戦闘中に力が解放されたのだ。ベタだと思うだろう?でもな、思いがけない力っていうのは、そういう危機的状況の方が発揮されるもんだぜ。
「では今の話をしましょう!」
「今?」
「サクラちゃんは、今の自分の方が好きですからねー」
…どうやら今日は回想はなさそうだ。
俺はいつもこういう、個人にスポットライトを当てるときは、出会いとかターニングポイントを話すのだが、どうやら二人とも、現在の自分たちの方が語りたいらしい。
「昔の、ミキ様に対してツンツンしていた私は嫌いなんですよ…」
「サクラちゃんはツンデレでしたからね。今はもうデレデレですけど」
「言わなくていいわよツク!」
ふむ、黒歴史ってことか。
つまり、黒歴史を開放しろということだな!
「全然違います!鬼ですか!」
「神だよ」
「そういう話じゃありません!」
サクラからの猛抗議。俺のジョークも効かないとは…
いやまあね、黒歴史が誰にでもあるのはそうだし、知られたくないのは分かるよ。でもね、小説のネタとしてはこの上なく美味しいネタだと思わないかね。
「じゃあミキ様の黒歴史も公開してくださいよ」
「ふむ。俺の黒歴史はいつでも、過去視の魔法で見れるからな。それに、神様になれば、子供時代の俺の黒歴史などかわいいものよ」
神になって精神が落ち着いたってわけじゃないけど、様々な時空を見て、自分の小ささを実感すれば、黒歴史など歯牙にもかけないようなものだと言うことに気付くわけだ。海を見て、自分はなんて小さいんだろう、って考えるのと同じだ。
「ツクちゃんだって、黒歴史は知られたくないわよね!」
「えー…私は、いつも自分に誇れる生き方なので、サクラちゃんの期待には沿えませんよー」
「この二人の神様嫌い!」
(´・ω・`)
ツクも神様であり、他の武器たちに比べるとちょっと視点が違うのだ。他の武器に宿っている意思は、武器霊と括れるのだけど、ツクは付喪神なのでね。
「ミキ様、今の話をしましょう!ね!?」
「あ、うん、ソウダネ」
サクラの圧がすごい。
仕方ないので、今の話をするか…
「桜属性って不思議だよな。お前らしか持ってないし」
「そうですね。竜属性や天属性よりも希少だと言えます」
桜属性は、草属性とは別物である。何か特徴があるのかと言われると、実のところ強い特徴はないのだけど、強いて言うならそのすべてに浄化効果が乗る。
邪竜と呼ばれていた魔物も、桜の大木の中で一週間ほど眠らせればすっかり毒気が抜けた竜になった。その子は現在俺の式神である。
「というか、桜というのはミキ様の印でもあるんですけどね」
「でもそれっておかしくないか?桜の神っているんだぞ?」
俺の眷属になると、桜マークのアクセサリーみたいなのが与えられる。方向魔神のショーレは髪飾りだし、別時空軸にいる、とある縁結びの神はブレスレットだった。
しかし、俺とは別に桜を司る神だっているのだ。日本の八百万の神精神のせいで、神界にはやたらと細かく神がいるのである。
「でも、その人だって許可してるんですよね」
「ああ。不服そうではあったけどな」
俺の桜属性によって生み出される桜は、その神の権能範囲外らしく、俺の桜とそいつの桜は別物だということは分かっている。
「ミキ様の属性が桜である件って解決してましたっけ?」
「いや、解決してない。なんでだろねー」
魔王を倒して、仲間も増えて、街もほとんど発展しきってから始まったこの小説だが、それが必ずしも全部終わっているとは限らない。
色々と問題は残っているのだ。尚、この小説が完結するまでにそれが解決されるのかどうかは不明である。
「まあ良いのです。ミキ様のことはじっくり解決していきましょう」
そういえばレベルの話ではあるけど、俺は不老長寿であり、その特性はサナたちにも引き継がれている。なので、別に無理に急いで伏線を回収する必要はないのである。
「桜、いいですよね。咲かせましょうよ」
「え?うーん…じゃあそこらへんに咲かせるか」
俺の桜はたとえ真冬であっても咲かせることができる。そういう特性なのだ。
というわけで俺は二振りを装備して、外に出た。街の外、開けたところだ。魔物がいたので、そいつを標的にして…
「桜千年大木!」
桜属性の技を発動。魔物は桜の木に飲まれていった。あれで浄化されるかどうかは分からん。
この桜は、俺が魔力を流している間は魔法の桜だが、俺の魔力が消えるとただの桜になる。浄化の力もその時に消える。
俺は今回、技を使ったらすぐに魔力供給を切ったので、多分浄化されないと思う。どのみち、魔物が浄化されても消えるだけだ。
『桜!きれいです!』
『私たちの象徴ですねー』
うむ、今回も見事な満開だ。やはり桜はこうでなくてはな。
俺は桜を見ながら、そんな感想を抱いた。