時空神の青年は世界を回す   作:nite

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初物世界

やあやあミキさんだよ。

気がついたら随分な話数になってたから、そろそろ挨拶もいらないかもしれないけど、いつまでも動画投稿者スタイルは崩さないぞ。この話を最初に読むような変態もいるかもしれないからな。

さて、俺は言わずもがな時空神なわけで、その力は神界ナンバースリーと呼ばれるほどだ。そんな俺だが、力が大きすぎるせいで失敗してしまうこともある。

 


 

俺はいつも通り魔法の研究をしていた。時空魔法って未知な部分も多いから、新しい魔法とかを生み出しやすいんだよね。

色んな時空に〈時空魔法〉と呼ばれるものがあるけど、それらはすべて俺の時空魔法の劣化版に過ぎないので、どうしても新しい魔法は自作するしかないのである。行ったことのない時空にほぼノーコストで転移できるのは、上位互換らしいだろ?

さて、そんな俺だが、役職は時空神である。時空を司る神なのだ。まあ俺の上にトキネっていう空間全てを司る神がいるので、実のところ時間の可逆性転換とかはできないのだけど、時空を司っているのだ。

 

「…異世界って作れないかね」

 

当時の最初の発想はこれだ。時空移動ができるのなら、時空生成もできるはずであると。

どこかの時空では、とある神が百個くらいの時空を纏めて一つにしてたり、とある眼帯男が指輪の中に別の世界を作ったりしてたが、そういうものではなくオリジナルの時空をそのまま作りだしてしまおうという話だ。

どっかの神が、宇宙を何度も作り出して遊んでたりするけど、あれは不完全だったりする。誰ものにも干渉されない世界というのが完全たる時空なのだ。まあ俺ならそんな時空でも全断剣で斬ることで干渉できるけど。

 

「でも詠唱もイメージも思いつかんなぁ」

 

基本的に俺は、俺の時空の魔法体系に沿って魔法を作っている。他の時空の魔法体系でも作れるのだが、やはり慣れている方がいいよね。

取り敢えず行き当たりばったりで時空魔法を発動。

 

「うーん…至高の果て…凄惨たる黄泉…新参の思い出…」

 

なんか上手い具合にいかないかと、頭の中に浮かんだ時空を構成するものを並べていく。

時空と言えども果てはある。空間と空間の間には何かしらの別のものがあるので、黄泉という言葉で固定して、過去はないので新しい形として時空記憶を生成する。

 

「遥かなる天…広がるは蒼穹…落ちる界雷…」

 

空は高く、青く、環境は地球に近いのが過ごしやすい。

ついでとばかりに、生物がいた方がいいなと詠唱を継ぎ足す。。

 

「生まれ行く輪廻…混ざる原点…流れる砂粒…」

 

と、ここで俺の周囲が歪み始めた。どうやら時空形成に上手くいっているようだ。

ここから、更に詠唱を加速させていく。

 

「固定する存在、繋がるは歯車、定型に嵌らず光は昇る!」

 

魔力が高まり、更に俺の周囲が歪んでいる。それと同時に、急速に俺の魔力と神力が持ってかれていく。どうやら時空生成は魔法の範囲内ではどうしても収まらなかったようだ。

俺が詠唱を続けていると、突然トキネが転移してきた。

 

「ちょっとミキ!それ禁忌!ストップ!」

「え、なんで?」

「それやられると時空間が崩壊するから!」

 

と、言われても、俺の魔法は既に発動している。ここで止めると、多分この時空が吹き飛んでしまう。

 

「無理。諦めて」

「ああもうっ!」

 

俺の魔法にトキネの神力が混ざった。時の女神が直々に時空魔法の制御を手伝ってくれるようだ。

 

「あとで怒られろっ!」

「悪かったって…」

 

トキネに怒声をもらうけれど、しかし詠唱は止まらない。そして、最後。

 

「無垢なる世界!」

「ミキ!条件付けして時空範囲の狭めて!今の時空配置に無理やりこの作られた時空が入ると崩壊するから!」

 

噛みあっている歯車同士の間に、新しい歯車を無理やり詰め込むみたいな状態らしい。確かにそれは崩壊するな。

とはいえ、俺は時空神なので自分の時空を持てない。神域も特殊条件なので作れない。天照は既に日本があるし、マイたちは時空を持つには少々力不足だ。

となると…

 

『私!私が持つ!』

『了解』

 

ウイが自己主張してきたので、それに便乗することにする。ウイは古代の神なので、現代だと自分の世界や神域を持っていないのだ。俺が作った時空をそのまま、ウイのものにしてもらえばいいだろう。

 

「初なる世界の果てに!」

 

一気に俺の手元から光が溢れる。

 

「行くぞっ!創世!」

 

 

気が付いたら、俺とトキネは何もない平原に立っていた。一応鑑定魔法で見てみると、少なくとも未だにどの時空にも存在していない植物で構成された平原らしい。

 

「もうっ、ミキ。創世禁止!それ本来は絶対神とかの領域だからねー?」

「はい、すんません」

 

口調は軽いけど、トキネはガチ怒りである。

まあ最悪の場合は、俺の友達の無効化持ちに創世自体をなかったことにしてもらえばいいと思っていたので、セーフだ。安全策くらいは前もって準備している。

 

「わーい、私の世界だー!」

 

ちょっと離れたところに、いつの間にか魂から出ていたウイがはしゃいでいた。どうやら、自分の世界を持てたことが嬉しいらしい。

 

「この時空は…今までのどこの時空軸にもない世界だね。私の管轄外…ミキ時空軸の時空ってことになるのかな」

「おお」

「そこ!喜ばない!」

 

どうやらこの時空は俺とウイが好きなようにできるらしい。それは…非常に素晴らしいな。

 


 

俺にとってはメリットなのだが、トキネとゼロに滅茶苦茶に怒られた。つまり、時空神としては失敗なのである。最悪、神界が吹き飛んでいたかもしれないので、この反省は仕方ない。

そんな俺が作った時空は、現在は初物時空という名前で、俺とウイの管轄のもと存在している。意思ある生物は生まれるのだが、人間という概念は初物として生まれないので、俺が把握している住人は二人である。別の時空から連れてきたサイボーグっ子と初物時空で生まれたダンジョンボスの姫様の二人だ。

もっと色んな時空を作ることができれば、もっと楽しいことができるだろうと思うのだけど、残念ながら今の俺は一時的な固有結界的な創世しかできない。

まあ、時空生成というだけで強すぎるんだけどね。ハハ。


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