時空神の青年は世界を回す   作:nite

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メイド

さあ、今日も始めて行こう説明回。おっと、文句を言うなよ?現在は大きな事件だとかなんだとかっていうのは全部終わってるからな。まあ今後何か事件が起きる可能性は全然あり得るんだが…まあ期待しないで待っててくれ。そっちとこっちだと微妙に時間の進み方が違うからそっちで何か起きたときに介入するってのも難しいもんでね。

今回はタイトルにもある通りメイドについてだ。実はうちにはたくさんのメイドがいてな。ただまあ経緯含めて主力のメイド全員を紹介するってのも中々に時間がかかるので…今回は回想じゃなくてそのまま過去に視点を戻して小説にするとしようか。えっと…今から大体二年くらい前の話だ。時系列的には俺が目標にしていた憎き魔王を倒したあとだ。当時はまだ時空魔法で時空移動ができない未熟な頃だから日本なんかは知らないぞ。

そんじゃ過去を見る魔法を使用!

 


 

「ミキー…掃除大変だよぉ…」

「魔法使えばすぐだろ」

「そんな便利魔法は持ってませーん」

 

くそ野郎こと魔王を消し飛ばしたあと。旅を終わらせて定住すべく家を作った。旅の仲間は何人もいるものの、全員が生活できるほどの大きさで家を作ったのだ。今までも旅の間はずっと食事なんかを共にしてきたから同じ建物に住むということ自体は問題なかったのだが、その規模故に管理が大変になるという問題があったのだった。なぜ作る途中で気が付かなかったのか。

尚家の大きさと敷地の影響でどこかの街の中に建てることができなかったので建てたのはとある平原の中である。当然魔物なんかも寄ってくるが今更苦労するような相手でもないので心配はない。

 

「私たちも別に出かけないわけじゃないしさ、誰か管理してくれる人でも連れてきたらー?」

「それもありか…」

 

思い浮かぶのは執事とかメイド。

俺たちは家を手に入れたとはいえ知らない土地やら知らない遺跡やらの探索は今後も続けていくという結論に至っている。なのに家の掃除なんかに時間を奪われていては本末転倒だ。確かに誰かを雇うのもありかもしれない。

 

「家事…少なくとも掃除を代わりにしてくれる人がいいな…」

「誰かいい人いる?旅の途中で会った人たちの中にいれば時空魔法で会いに行けるんじゃないの?」

「まだ時空魔法での転移に慣れてなくてそれはできないんだ。だからまあここからすぐ行けるところしかないが……サナ、ちょっと天界行ってくる」

 

天界、それは神の尖兵ともいえる天使が生活している場所である。そして俺は何の因果かそこで天界序列二位としての立場があるのである。

 

〈ちょっと未来から補足失礼するぞ。先日の時空探査で生やした翼があったと思うんだが、実際のところあれは天界で生活する者なら皆が持ってるものだ。魔法で生やした翼なのになんで天界序列なんていう凄そうなものに入れるのかというと、魂関連としか言えない。まだ紹介できてないだけだ。そんじゃ続きどうぞ〉

 

なので俺は天界にいる天使の誰かを使用人として連れてこようと考えたのだ。なぜ天使なのかと言うと、機動力があり、それなりに戦闘力もあり、なおかつ結構暇だからだ。特定の仕事が割り当てられていない天使など日々適当な趣味に時間を使っているに過ぎない。使用人にはうってつけだ。

 

「行ってらっしゃーい」

「カイトたちには俺は使用人探しに言ってるって伝えててくれ」

「りょうかーい」

 

カイトは俺の親友であり旅の仲間だ。同じようにこの家に住んでいる。多分どこか別のところの掃除をしているだろう。

俺は魔法で翼を生やして空へと昇る。通常高く飛ぶだけでは天界など行けるはずもないが、特殊な魔法を使いながら専用のこの翼で飛ぶことで天界へと至ることができるのである。魔法ってすごーい。

はい到着。数十秒で到着するから場面転換も必要なかったな。

雲の上にある白い街。天国の光景を想像しろって言われたらなんとなくで思い浮かぶであろう光景がそのまま天界になる。まあここは死後の世界ではないけど。

 

「ミキさん!いい武器作ったから見てってよ!」

「すまん!今日の目的は別にあるんだ!」

 

一応俺は天界でもある程度活動をしているのでそれなりに知名度がある。先ほどの商人は鍛冶師でもあり、天界の希少な鉱石を元に武器を作ってくれる武器鍛冶師である。なおこれは天界で言うと趣味の範囲だ。なのでお金は必要なく、物々交換でのやりとりとなる。

趣味が鍛冶だとか鍛錬だとか守衛だとか、そういう人間の街と同じような役割を持った人々が集まって天界というのはできているのだ。今日はその中からお世話だとか掃除だとかが趣味な天使を探す。

天使が天界の外に出てもいいのかという疑問については、全く問題ないとしか言えない。別に天使がここから別の世界に行ってはならないという決まりはないからな。因みにこの天界は一つの時空として定義づけされているらしく、移動方法により色んな時空に行くことができる。俺の時空魔法を極めて行けば特殊な魔法なしでも天界に転移することができるようになるだろう。

 

「掃除好きな人はいないかー?なんか世話係とかでもいいぞー」

 

適当に街を歩きながら適当に人材を探す。誰かいい条件の人が引っかかってくれたらいいのだが…

 

「あー、ミキさん」

「ん?メレか」

 

サナと同じくらいの身長で、白い髪のセミロングの女性の天使メレだ。天界では比較的関わりが多い方の天使であり、関係を聞かれたらちゃんと友人と答えられるだろう。さっきの武器屋のおっちゃんは知人だ。そういえばメレの趣味は…

 

「私は家事全般得意ですよ」

「めっちゃ適正」

 

メレの趣味、それは奉仕活動である。掃除とか子供の世話とかそういうの全部やるのだ。しかも悪人(天界では悪人はそうそう出ない)がいたときは箒とかで撃退することもある。まさに俺が探していた人材と言えるだろう。

とはいえメレ自身が何の用で俺が声をかけていたのか分かっていないようなのでそこらへんを詳しく説明する。メレに来てもらえれば一番助かるんだけどなぁ…

 

「なるほど…それって私でいいんですか?」

「できればメレがいいって思ってるくらいだ。頼めないか?一応報酬も希望があれば応えるが」

「ふむ…家ってミキさんたちの家ですよね…ミキさん、その話お受けします。先に戻っていてください。準備したら行きますので」

 

よっしゃ。一人目で快諾。メレが専属でいてくれるならばもう安心だ。俺たちもメレに任せきりじゃないように仕事はするつもりだしな。

 


 

そして一日後。家を叩く者がやってきた。一応家の人たち皆を呼んでおく。

 

「皆様、初めまして。私はメレと申します。今後はここでメイドとして働くことになりましたのでよろしくお願いします」

 

昨日に比べて更に丁寧さが増した話し方に少々驚いてしまう。というかもっと驚くことがその服であり、完全にメイド服なのだ。昨日会ったときは普通の天使の服だったのに一体どこで手に入れてきたのだろうか。

 

「こちらの服は知り合いに作ってもらいました。使用人がマスターたちよりも目立つのはよろしくないと思いまして」

 

確かに天使の服は目立つ。なんせ純白の服なのだ。この世界では真っ白な布というのは中々手に入らない高級品であり、そんな服を着ていれば目立つことは間違いないだろう。その判断は正しかったかもしれない。

 

「マスターって?」

「マスターはミキさんのことです。一番上の存在ですので、私はマスターの部下ということになりますね。勿論サナ様たちへの奉仕も致しますので心配しなくても問題ありません」

 

一応この仲間たちの中で一番強いのは俺だ。それにメレを直接雇いに行ったのも俺だ。だから俺がマスターとなるのも分かる。あまりされない呼び方なので少々気恥ずかしい。

 

「私で時間を頂くのも申し訳ありませんので皆様はお戻りいただいて構いません。マスターは少々お時間を頂きます」

「おう、今後についてだな」

 

サナたちが元の場所に戻っていく。そして俺はメレを迎え入れてダイニングにある椅子に座らせる。メレは既にメイドとしての心構えを身に着けているのか座るのは遠慮がちだったのだが俺が命令して座らせた。既に主と召使いとしての関係が構築されているのはどうなんだろう…

 

「んでまあ報酬については…」

「いえ、給料などは大丈夫です。元より私はあまり私物がありませんので」

「えぇ…」

 

何も払わないというのはこちらとしては少しばかり心苦しいのだが、メレはマスターから頂くのはと言い続けるので結局俺が折れることになった。給料を無理やり渡そうとして拒否されるのはどういうことなのだろうか。

 

「ただ一つ望むとすれば私の部屋を一つ頂きたいです。天使はあまり眠る必要はありませんが、休息は必要なので」

「ふむ、じゃあ取り敢えず家の隣に小屋でも作るよ」

 

家自体は魔法を使えばすぐにできる。時空魔法で空間把握能力を上げれば設計図などがなくとも完璧な家を完成させることができるのだ。昔必要になるかもしれないと身につけた建築関連の知識が役に立ってよかった。

 

「それでは早速仕事に移りますね。私の仕事は家事全般でよろしいですか?」

「基本は掃除。料理とか周辺環境整備もしてくれたら嬉しいかな」

「かしこまりました」

 

そのままメイド服のメレが掃除を始めた。とはいえ拠点は大きいので一人では時間がかかってしまうだろう。もう少しは人員を増やした方が良いだろうか…

そう思ってサナに相談してみたらすぐに答えは返ってきた。

 

「ミキ、そういえば擬人化魔法っていうの開発してなかった?あれ使ってそこらへんの魔物テイムしてみたら?補助メイドなら教育すればいいでしょ」

「なるほど。ありだな」

 

俺はちょくちょく魔法の開発をしている。というのも俺の時空魔法の時点でこの世界には存在しない魔法属性なので自分で魔法を開発して実用的にするしかなかったのである。その中で体の構造にアクセスして疑似的に人間と同じ姿にする魔法を開発したのだ。形としては土をゴーレムにして使役する魔法と似たような感じ。

俺は早速外に出る。できる限り人間形態に近ければ消費魔力も少なくて済むのだけど…あ、スライム。あいつでいいや。擬態するスライムもいるし多分大丈夫なはず。

こちらから攻撃しない限りは攻撃してこない魔物のスライムに近寄って捕まえる。なんか知らないけど捕獲するだけだと反撃とかされないんだよね。そんでそのまま擬人化魔法。スライムの体が光った後、数秒したらそこには一人の女性が立っていた。まあ女性の体をしたスライムだけど。

 

「あれ…?」

「成功だ。スライムの割には結構自我があるんだな」

「スライムは基本的にちゃんと自我はありますよ?」

 

しっかり二本足で立ちながらキョロキョロするスライム。

すごいゆったり生活しているから希薄な自我しかないと思っていた。それこそゴーレム的な存在にしてメレが扱えるようにできればいいと思ったのだが、普通にメイドとして働かせることができそうだ。尚擬人化魔法で思考に影響を与えることはないので敵対している魔物は擬人化してもこちらを攻撃してくる。というか攻撃的なやつには擬人化魔法は効かない。

スライムに色々説明中…

 

「なるほど。まあいいですけど」

「攻撃してこないよな?一応テイムしようかとも思ったけど」

「んー…心配ならテイムしていただいてもいいですよ。スライムの体じゃできなかったことができるようになってそれだけで私の好感度は結構高めですけど」

 

一応テイム。テイムと言っても契約式の魔法で攻撃してこないように縛るだけだけど。

ついでにこのスライムの名前はスラにした。すごい分かりやすいだろ?別に追加人員をスライムだらけにするつもりもないので大丈夫だろうと安易につけた名前だ。

 

「じゃあ早速メレから教えを受けてくれ」

「分かりました」

 


 

おかえり。今の光景はとある時空の魔法である≪次元決戦演算(ディメンション・グラディエイト)『前日譚』(リコール)≫を使った過去視だ。基本的に今後も過去を見るときはこの魔法を使うからな。どこの時空の魔法かは…君らのグーグルやらなんやらで調べればすぐに出てくると思うぞ。

んで話がすごいぶっとぶが俺の三人目の妻というのがこのメレである。順番としてはサナが最初で次にマイ、そんでメレと結婚している。俺はサナしか愛するつもりはなかったのにどうしてこうなった。

 

「懐かしいですねぇ」

「この時のメレって今より固かったよな」

「この時はまだ雇われの身という意識が強かったので…マスターもぎこちなかったですしね」

 

実はメレは隣で一緒に過去を見ていた。折角なので呼んでおいたのだ。スラに関しては別件で仕事をしているのでこの場にはいない。

現在はメレとスラ以外にもたくさんのメイドがいる。その中でメレはメイド長、スラは副メイド長として活躍している。特にメレに関しては更に技術が上がり腕が何本もあるメイドや触手を使えるメイドよりも早く家事をこなす。

 

「ミキさん…」

 

…メレが俺のことをマスターではなく名前で呼ぶときはメイドとしてではなく妻としての振る舞いに切り替わったタイミングだ。どうやら過去を見たおかげか少々気持ちが高ぶっているらしい。

妻に求められたのでまた次回会おう。そんじゃ。




ミキ「俺たちの世界には英語がないことを前に言ったと思うが、天界は時空的に地球とも繋がってるから英語が一応あるんだ。だから地球に転移したことなくてもメレを雇った時点で英語を知ってるんだぞい」

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