傲慢たれ罪の王   作:もちゃもちゃの玉ねぎ

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前書いてた小説を消してしまったので実質初投稿です。


始まり

 

 

____5年前

 

 

 

 

……まだ死にたくなかった。だから自分の命を捨ててでもこいつを殺さなければと思った。自分でも矛盾していると思う。死にたくないのに自分の命を代償にこの神を殺そうとしているということが。

そして神の心臓を穿った、という感触が手に、全身に伝わってきた。

このまま自分は死ぬのだろうか、、死ぬのは嫌だが、神に一矢報いることが出来てスカっとしている。

 

 

「………まさか、……まさかこの我が人風情に、それも年端も行かぬ小童に破られようとはな。ククク、クハハハハハハハハ!!!」

心の底から愉しそうに笑う神。ただ家族旅行に来ていた一介の中学生だった自分が出会った何よりも美しく、傲慢な神。漆黒の羽、諸人を平伏させる威厳を持つ美しき男神。

人生で最も濃厚な、この先どれだけ長生きしても決して忘れられないだろう時間。

それもいま終わり―――否、始まろうとしているのだ。

簒奪の宴が。

 

「なんとも面白き小童よ。汝の幸運と汝の欲望。

何よりそのこの世の人間の誰よりも傲慢な小童にこの我が敬意を示そう。」

 

「ふふっ、■■■■■様ったら討たれたというのに嬉しそうでいらっしゃるわね」

 

「おお、汝が噂に聞く全てを与える女神か。貴女が此処に居るということは、愚者と魔女の落とし子を産む暗黒の聖誕祭が始まるのだな!」

 

「ええ、あたしは神と人の狭間に立つ者。あらゆる災厄と一掴みの希望を与える女なのですから!

新たな息子を迎えにいく労を惜しむことはありませんわ」

 

新たに現れた女は一度言葉を切り、愛おし気な声を無残に横たわる人の子へと向ける。

 

「貴方が私の七番目の義息ね。ふふ、■■■■■様の神力は貴方の心身に流れ込んでいるわ。今貴方が感じている熱と苦痛は貴方を魔王の高みへと到達させるための代償よ。甘んじてお受けなさい」

 

甘く可憐な美声が耳朶を打つ。激痛と灼熱感で意識は切れ切れとなっていても分かる誰よりも『女』を感じさせる声。誰だ、と疑問が浮かんで答えを結ばずに消えていく。

 

「さあ■■■■■様、この子に祝福と憎悪を与えて頂戴! 魔王となり地上に君臨する運命を得たこの子に、聖なる言霊を捧げて頂戴!!」

 

「ククク クハハハハハハハハ!!!!!良いだろう!!良いだろう!!ならばこの我がこの小童に、いや佐条 黎斗に、祝福を与えよう!!______新たなる神殺しよ!!貴様は我が傲慢と金星の権能を簒奪し、神殺しとなる。誰よりも傲慢であれ。貴様が得るであろう権能は傲慢であるほど強くなる。傲慢であれば負けることはない、永遠に勝者となるだろう。これから先、貴様には乗り越えなければならない出来事が否応なく迫ってくるだろう。 何度も言うが、傲慢であれ!

我が愛し子よ!!」

 

この言葉を聞き終えると同時に俺の意識は暗く落ちていった。

 

 

____これが後に罪王と呼ばれる王の誕生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々が!!我々が何をしたというのですか罪王よ!!!!!」

中年の男が顔から涙や汗、唾をごちゃまぜにしたような体液を飛ばしながら叫ぶ

「________安心しろ。お前たちは”俺には”何もしていない。」

 

「ならば、なぜ、、、?」

困惑した顔をして男が呟く

「”俺以外”にお前たちは何をしてきた?孤児達を使った人体実験。自らの組織以外の人間を人間と認めない傲慢さ。

なぜ貴様ら程度の猿がそこまで傲慢になれる?心底不思議でならない。この世に、俺よりも傲慢である者など存在してはならない。

それが今日貴様らがこの世から消える理由だ。 では、”死ね”」

 

「待っ!!『グキャ』」

男は潰された蛙のような声を出して息絶えた。

 

 

prrrrrrrrrr

「、、、甘粕か。」

電話の相手の名は甘粕冬馬。日本の呪術業界を統括する正史編纂委員会のエージェントである

「あぁ!佐条さん。やっと出てくれました。犯罪に染まった結社の殲滅は完了したようですね。」

 

「あぁ。今組織の長を殺したところだ。」

 

「それは、それは、お疲れ様です。ほんとに助かりましたよ。その組織は最近では孤児だけでなく片っ端から子供をさらっていたんですよ。」

電話越しだが、彼が心底安心した顔をしているのが伺える。

「それはそうと佐条さん。恐らくまつろわぬ神であろう呪力が観測されました。」

 

「なるほど。何処だ?」

変わらぬ無表情のまま黎斗が問う。

 

「三重県、花窟神社です。」

 

「なるほど、伊邪那美か。」

僅かだが黎斗の口が歪む

「すぐ戻る。準備しておけ。」

 

「王の仰せのままに。」

 

 

 

 

あの日、俺が神を初めて殺した日から俺の人生は大きく変わった。

普通の中学生ではなくなり世界を支配する王の1人となった。

あの神が言った通り俺の体は傲慢であればあるほど強靭になっていった。魔術師からは罪王と呼ばれ始め、恐れられ、敬われ、人はみな跪いていく。最初はそれが気持ちよかった。しかし、今ではそれは当たり前になっていった。あの日からまだ1年だが既にこの身に魔王の意識は染み込んでいっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あっ!佐条さんこちらです!、」

甘粕が車へ黎斗を案内する。黎斗はそれに従い車に乗り込む。

甘粕が運転席に乗り込み車が発進する。

 

 

 

 

 

「現場まであとどれくらいだ?」

待ちくたびれたのか黎斗が甘粕に尋ねる。

 

「近場の空港まで飛ばしてあと数十分、そこから飛行機で1時間、そこからまたまた車で数時間ほど着くのは深夜になるでしょうから貸切にしてあるホテルがありますのでまずはそこに。」

うわー苛立ってるなぁーと考えながらも黎斗の問いに答える

 

「チッ急げよ。」

 

 

「―――承知しました。王の仰せのままに」

 

と、うやうやしく頭を下げる甘粕。

ある程度の情報交換を済ませてしまえば特にやることも無い俺はさっさとシートを傾け寝入る体勢に入る。神の類が出てきて穏当に終わったことなど一度もない。今回も厄介事になることは確実だ。

体力は温存しておいた方が良いだろう。

そう考えながら黎斗は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれからいくつかの交通手段を使いホテルにつき、それからすぐに甘粕も黎斗も寝入ってしまった。

 

 

 

 

 

「佐条さん。起きてくださーい。」

寝ている黎斗を甘粕が起こす

 

「………………”あぁ”?」

 

「相変わらず寝起きが悪いですねー」

トホホと嘆きの笑いを零す。

 

 

 

 

 

 

 

_____数時間後

 

「佐条さん呪力を感じますか?」

 

「あぁ。凄まじい圧力。流石は日本の母神。と言ったところか。」

クククと笑いを零し黎斗が呟く。

 

「伊邪那美についての逸話は?」

 

「もちろん知っている。もう行って良いか?あっちも俺が来るのを待ちわびているようだ。」

黎斗の体が神と戦いたいとうずうずしている。神殺しの肉体は神を知覚すると力が湧いてくる。今の黎斗の肉体はまさにその状態であった。

 

「もちろんです。ご武運を。」

そう甘粕は言い、頭を下げた。

黎斗はそれからは何も言わず神がいるであろう神社に向かって飛び去った。

 

 

 

 

報告で聞いた通り伊邪那美は日本の巫女服のような物を身にまとい、頭には鏡のようなものを身につけている。容姿はこの世の者とは思えぬほど美しく、”美”というものを体現していた。

 

目を瞑っていた伊邪那美がその瞳を静かに開け、それと同時に口を開く。

 

「妾の招待に応じ、よくぞ参りましたね神殺し。妾の名は伊邪那美。この日ノ本の産みの親。この地に住まう人の子、全ての母であります。」

伊邪那美は優しく微笑みながら美しい声色で囁く。

 

「 ”知ったことか”そんなことに興味はない。この地の猿共の産みの親?だからどうした。なんだ?それを言えば俺がお前のことを母とでも呼ぶと思ったか?俺にとって人などゴミ、道具以外の何者でもない。

あぁ、確かにお前に礼を言わねばな。ありがとう俺の道具を産んでくれて。」

黎斗が伊邪那美を挑発するように言う

 

 

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふなんと傲慢なことでしょう。良いでしょう!良いでしょう!この伊邪那美が貴方を殺して差し上げましょう!!この世の者とは思えぬ惨いやり方で殺して差し上げましょう!!」

 

 

 

 

 

日本の母神と日本初の魔王と対決が始まる

 




初めて殺した神は誰でしょう。これじゃないかって思う神がいればコメントで教えて欲しいです。結構簡単だと思いますが笑
オリ主の名前は黎斗『くろと』です。
不定期ですので明日続きを出せるか分かりませんがこれからよろしくお願いします

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