さて、このシリーズはあと三話で完結の予定です。
もしかしたら後日談を書くかもしれませんが。
真木と、ニーゴのみんなの救い救われの話。
その終着点まで、どうかお付き合いいただけれると嬉しいです。
では、どうぞ!
真木「......ここ、は?」
急な明かりに驚いて、ゆっくりとまぶたを開く。
まぶたを開いた先に映ってたものは。
真木「う.....み?」
また、だ。
どうしてこうも俺には海に縁があるのだろうか。
海、か。
俺のセカイの海も、この海も。
どういうわけか懐かしさを感じる。
初めて見たはずなのに。
そう考えていると、急に風が吹く。
結構強い風で、食いしばらなければ吹き飛ばされるぐらいの。
風が止み、辺りを見渡す。
すると、さっきまでいなかった誰かがいた。
身長は低く、少年なのか。
不思議に思いながらも、ゆっくりと近づく。
近づくと、少年が後ろを振り向いて話しかけてきた。
名もない少年「お兄ちゃん、だれ?」
真木「俺は重音真木。君は?」
名もない少年「僕はしんきって言うんだって。」
真木「え?」
少年の名前が聞き取れない。
というより、言葉にノイズが走ってるような感じだった。
まるで、初めてあのセカイに入ったような.....
ん?という事は、また知らずのうちにセカイに入ってたのか?
心当たりがありすぎる。
心当たり、というのは。
最近、よく俺の家に来る奏とまふゆ曰く「寝てる時に勝手にスマホを触ってる」らしい。
もしかしたら、それなんじゃないか。
まあ一人で考えてもしょうがない。
そこにいる少年と話してみる事にした。
少年の近くに座らせてもらい、一緒に海を眺める。
波は静かに動いて、心地よさが耳にくる。
何時間だって見られる。そんな気がした。
そして、少年に疑問を投げた。
真木「君は、どうしてここにいるの?」
名がある少年「お母さんとお父さんに連れてきてもらったの!海が好きだから!」
真木「海、か。それはどうして?」
名がある少年「んーと......綺麗だから!青くて、キラキラして、海の上に蒼い空があるから!」
真木「......そうか。」
話している中、俺は一つ疑問が浮かんだ。
この少年、どこか俺に似ているんじゃないか。
髪色が自分の髪色が同じだし、何より。
あの父親から受け継いだ赤色が入っている。
ほとんど確定みたいなものだが。
それでも認めたくなかった。
だって、俺がこんな無邪気に笑っている。
何も思わず、心のままに。
それが、羨ましい。
名がある少年「お兄ちゃんは、海好き?」
真木「......綺麗とは思う。でも、好きかどうかは分からない。」
名がある少年「......そっか。でも、多分好きだと思うよ?」
真木「なんで?」
名がある少年「海見てるお兄ちゃん、目がキラキラしてるから。」
真木「なっ!?」
名がある少年「お兄ちゃんさ、昔好きだったんじゃない?」
少年が言う事は、すんなりと胸の中に入ってくる。
確かに、言われてみれば好きだったのかもしれない。
理由は.....なんだったかな。
「こんな綺麗な海みたいに、みんなを救えたりできるのかな。俺。」
頭に、言葉が流れる。
懐かしく、聞き覚えのある声。
そして、俺の脳に映し出される映像。
誰かと海に来て、脳に響いた声を言った。
そう結論つけると、何もかもが繋がった。
俺のセカイ、ミク?が言っていた「心象風景」、俺に似た少年。
そうだ、俺が好きだったのは。あの蒼い空と、この綺麗な海。
真木「.......今、分かった。なんで俺のセカイが海なのか。なんで俺がこの海に懐かしさを感じるのか。」
名がある少年「あれ、何処か行っちゃうの?」
真木「ああ。俺は帰らないと。」
座っていた砂浜から立ち上がる。
長い間座っていたからすっかりズボンに砂がついている。
それを軽く払って、後ろに背を向ける。
名がある少年「ふーん......ねぇ、お兄ちゃん。一つだけ、約束してもいい?」
真木「約束?」
名がある少年「うん、もう一人で抱え込まない事。」
真木「ああ。約束するーーー」
その先を言おうとした時、俺の意識は消えた。
ーーーーー
真木「はっ!」
意識が目覚め、顔を勢いよく上げる。
辺りを見渡すと、俺の部屋だった。
ベットに横たわっていて、携帯も近くにない。
それに、あの海なんてこれっぽっちもなかった。
真木「なんだったんだろうな......夢って事でいいん.....だよな?」
夢にしては結構リアルだったような......
でも、大切な事を思い出せた。
それだけでも、あの夢に感謝しないと。
それと、一人で抱え込まない約束、か。
あの少年の前で言えなかったけれど。
約束する。
絶対に抱え込まない事。
少年が思い出せてくれた大切な事。
その恩返しってわけじゃないけど。
真木「明日、海を見に行こう。」
そう小さく呟いた俺の声は、部屋に響いた。
続く。
次回予告
真木はニーゴのみんなと共に海辺に向かう。
そして、真木は言う。
自分が、好きなものを思い出せた事を。
そして、一人一人にありがとうを伝える。
日々の感謝、あのセカイから救ってくれた事を。
次回「ありがとうをみんなに」
瑞希、奏、まふゆ、絵名。
救ってくれて、ありがとう。