瑞希とともに、家から持ってきたP〇5でゲームをしていたが、頭の片隅には、謎の記憶がよぎっていた。
瑞希の兄さんもスタンド使いだった、そしてスタンドは、『ソフト&ウェット』。
俺のスタンドとまったく同じだ。
...スタンドは、精神エネルギーを具現化した能力...つまり、俺と瑞希の兄さんは同じ精神エネルギーを持っている。
...本当にそんなことがあり得るのか?
いや...違う、あの記憶の俺は、違うスタンドを持っていたはずだ。
あの記憶に出てきた瑞希の兄さんは『君がもってるのかっこいいね! 僕のはこんなだからさ。』って言っていた...つまり、『ソフト&ウェット』以外のスタンドを、俺は持っている...
複数のスタンドを持つことは可能なのか?
いや、その前に、俺のもう一つのスタンドは何なんだ?
「...ジョジョ?」
「...ん?」
「さっきからボーッとしてるけど大丈夫?...やっぱり体調が悪い?」
「いや、考え事をしてただけだ、大丈夫。」
「...やっぱり、あの記憶の事?」
「...ああ、前まではどーでもいいって思ってたけどよ、スタンドや、瑞希の兄さんが出てきたしな...」
「...今まで、そんなに過去の自分に興味なんてなかったが...今になって過去の自分がどんな人間で、どんな親から生まれてきたのか気になってきたな。」
「ただ、こうも思うんだ。」
「なに?」
「知らなければ、俺は俺で、このままでいられるんじゃあないかってね。」
「っ!」
「さっきも言ったが、俺は瑞希の兄さんを殺した可能性がある、もしそれが本当なら、俺は人殺しになるわけだ。」
「周りの見る目も変わる。」
「...」
「正直、そういうのがめんどくさい。」
「めんどくさい?...怖いとかじゃなく?」
「ああ、そういう気持ちもあった...けどそれ以上に。」
「俺の正体を知りたい。」
「俺がどんな人間で、どんな人間から生まれたのかを。」
「そうじゃないと、俺は前に進めない気がする。」
「だから、前へ進むために、俺は、俺の正体を探る。」
「......強いな...ジョジョは...」
「...でも探るって言っても、もう8年前の出来事だし、記憶も断片でしか覚えてないんだよね?」
「正直に言えば、この広いシブヤを自分の足で探すのは、確実に無理だ、コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実にな。」
「なにその例え?」
「それぐらい、無理だってこと...だが、一つだけ可能性がある。」
「え、あるの?」
「瑞希の兄さんと当時の俺は、子供とはスタンド使いだ、よっぽどなことがない限り、行方不明にはならないはずだ...だが事実、よっぽどな事が起こった。」
「スタンド使いとスタンド使いはひかれあう...つまり、スタンド能力によって、当時の俺と瑞希の兄さんは襲われた可能性だ。」
「そんなこと...いや、その言葉通りに、ジョジョと郷秀くんは出会ったし、仗助さんや、花京院さんとも、スタンドを持っている人なんてそうはいないのに...まるで、糸でつながれたように。」
「そして、当時の俺と瑞希の兄さんも、同じように出会った。」
「だから俺は、スタンド使いを探して、俺の正体を調べる。」
「...でも、危険だよ、今まで会ったことあるのが良い人だったけど、スタンドを持っている人が全員、良い人ではないんだよ。」
「すべて承知の上だ、遅かれ早かれ、俺はどうせスタンド使いと出会うことになるだろうしな。」
スタンドの矢を調査してるし、いずれはスタンド使いと衝突するだろう。
「...意志は固いんだね。」
「ああ。」
「そっか...じゃあさ、ボクも協力させてよ。」
「...はっ?...危険って、自分言ってたじゃあないか、それに俺が瑞希の兄さんを行方不明にした犯人かもしれないだぞ。」
「それはわかんないでしょ...それにボクは知りたいんだ、なんでお兄ちゃんがどこに行ったのか...なんで襲われることになったのか...それが知りたい。」
「...本気でいっているのか?」
「本気だよ...それに、ボクがそれを聞いてそのまま見送るなんてすると思う?」
「思う。」
「ちょっ!?......そこは思わないって言うところじゃないかな~?」
「冗談だ...どうせ俺が来るなって言っても来る奴だろ、お前は...わかった、だが一つお願いがある。」
「なに?」
「ヤバイッって思ったらすぐ逃げろ...絶対にそれ以上踏み込むじゃあない...それだけは守ってくれ。」
「わかってるよ。」
今まで、スタンドの矢の調査は、郷秀の復讐の協力のためだったが...新しく目標ができた。
俺の正体を探る、そして、当時の俺のスタンドを探る。
後で、郷秀にも言わないとな。
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数時間前
side:郷秀
「さて、久々にここに来たわけだが。」
まさか、響助抜きでここに来るとはな...ただどこから入ればいいんだ?
ガチャッ
「まさか、響助よりも早く、お前が来るとはな、郷秀。」
「烏ッ!?...見てたのか?」
「ま、そういうことだ...その感じだと、仕事を受けに来たって感じか?」
「ああ、暇だったもんで。」
「中に来い、いい仕事を紹介しよう。」
「...いい仕事?」
烏の発言が気になりながら、『RS』の中に入った。
「...そういやよォ、ここって前、『FS』とかそんな名前じゃあなかったか?」
「...何言っているんだお前?」
「いや、忘れてくれ...それより仕事ってのはなんだよ?」
「ああ、これだ。」
烏は、俺の前に書類を出す。
「...ライブハウスの警備?」
「ああ。」
「俺にピッタリってどういうことだ。」
「ここ最近、ここらあたりでクラッカーのような破裂音が聞こえたという情報を聞いてな。」
「...銃ってことか?」
「ま、確定したわけじゃないが、おそらくはな。」
銃か...スタンド能力の可能性があるな。
「ま、それもあるが、ここのライブハウスな...カワイイ子が働いてるぞ。」
「ぜひ、やらせてください。」
最高じゃあないか、カワイイ子と一時的とはいえ一緒に働けるとは。
...チョロい?...良いんだよ、それでカワイイ子と働けるなら。
「んじゃ、ライブハウスの場所はここだからな、ライブハウスの店長にはこっちで連絡するから、そのまま向かってくれ。」
「了解だ。」
さーてェ...いっちょ行っちゃいますかね。
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俺は言われた、ライブハウスに到着した。
「君が、郷秀君だね、今日はよろしくね」
「よろしくお願いします。」
さてと、かわい子ちゃんどこかな?
...ん? 別に仕事を忘れちゃあないぜ、同じバイト仲間だからな、だから一度自己紹介をしないといけないだろ?
だから探してるんだぜ、どこにいるかなっとォー...おお!
銀髪で緑目で、童顔ながら、一匹狼のようなクールな眼差し...美しい。
「初めまして、私、宝来郷秀と申します、本日はよろしくお願いします。」
「ど、どうも、日野森志歩です、本日はよろしく。」
日野森?...同じ苗字なだけか?
正直、嘘をつかれたのかと思ったが、ホントに可愛い子に会えるとは、こいつァ、良い1日になりそうだ。
だが、仕事は仕事、これは真面目にやらないとだ、この辺で破裂音...つまり、銃声が聞こえたって事だ。
ライブハウスは人が集まる場所だ、無差別に発砲するなら、恰好の的だ。
だが、今日現れるかは、わからないし、この場所で起こるかはわからないし、まあ気楽にやりましょうかね。
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んっん~、色んなバンドの曲も聞けるし、カワイイ子もいるし、お金貰える。
1石2鳥ならぬ、1石3鳥だな。
今のところは、怪しい人物はいないみたいだ。
このまま平和でいってほしいところだな
「...」
「ん?」
...なんだあの人...なんか違和感があるな
それに、ポケットが妙な膨らみを感じる。
「あの、すみません、そのポケットの中身を見せてほしいのですが、よろしいでしょうか?」
「...」クルッ
「っ!?」
なんだ、この人の目...普通じゃあない...焦点が合ってねェ...
「あの......っ!?」
もう一度声をかけた途端、奴の目が鋭くなった...これはマズイッ!?
「がぁっ!!」ブンッ
「くっ!?」サッ
ナイフを隠し持っていたか...いや、ポケットの膨らみが変わってない、ナイフ以外何か隠し持っているッ!
「あいつ、ナイフを持っているぞっ!?」
「キャーッ!?」
「皆さん、下がってくださいっ!!」
まずは、客や出演者の安全が最優先だ、なるべく逆上させねェように、時間稼げねェとな。
「どいつも、こいつもうるせェ奴がァ...俺の邪魔ァ、しやがってェ!!」
「邪魔だァ?...ナイフを持って暴れる奴がいたら、うるさくなるのは当たり前だろーが...一旦落ち着けよ。」
そう言いながら俺は、奴との距離を詰める。
客は...どうやら離れた、見てェーだな。
「うるせェ...まずはてめェから、ぶっ殺してやるァ...」
「殺すだァ?...さっきの不意打ちナイフで出来ねェなら、無理だろ...それとも、他に何か、策があるって事か?...そのポケットの膨らみ...それが策か?」
「だったら、さっさと出しな、その策とやら。」
「さっきから聞いてりゃあッ調子に乗りやがってェ...」
サッ
「ぶっ殺してやるッ!!」
やっぱ、拳銃を隠し持っていたか...だが...射程距離内だ。
ガコン
バララ
「ッ!?...うあああっ、けッけッけッ拳銃が!!バラバラにーッ!? なっなんでェー!?」
「オイッ! よそ見すんじゃあねェーッ!!」ブンッ
ベシッ
「ガッ!?」
バタンッ
奴が、バラバラになった拳銃に気を取られている間に、スタンドでぶん殴った。
「...ったく。」
奴の目は異常だった...薬をやってる可能性が高いな。
警察に電話するところだが...ここはSPW財団に電話するとするか。
「...」
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side:志歩
一体何が起こったっていうの?
拳銃で取り出したと思ったら、拳銃からネジのようなものが現れて、一瞬でバラバラにした。
...まさか、響助さんが言ってたスタンド使いってことなの!?
郷秀さんに聞いてみる?...でも郷秀さんが、どんな人かわからない以上危険だ。
「...あ、志歩ちゃん、お客さんや、出演者さんは?」
「...え、あ...大丈夫、全員怪我はないよ。」
「そっか、志歩ちゃんも怪我はない?」
「うん、大丈夫。」
「よかった。」
...いや、聞いてみよう...郷秀さんは、響助さんと同じような雰囲気を感じる。
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side:郷秀
さて、SPW財団に、電話したし、来るまで見張っておかないとな。
「...あの、郷秀さん。」
「ん?...どうしたの、志歩ちゃん?」
「...郷秀さんって...スタンド使いなんですか?」
「っ!...なんでその名前...どこで知っ...いや。」
たしか、この子の名前は、日野森志歩ちゃん...
響助は、日野森雫ちゃんと出会っている...つまり、志歩ちゃんと雫ちゃんは姉妹ってことだ。
そうじゃあないと、仮にスタンド使いだとしても、スタンドって名前は聞かないはずだ。
ただ、スタンドの事を、何故、志歩ちゃんが知っているんだ。
こりゃあ...響助に追求しねェーっとなァ...たっぷりと。
この間、わずか0.2秒。
「響助と知り合いなのか?」
「っ! 響助さんと知り合いなんですか!」
「ああ、ダチって奴だ、んで...志歩ちゃんの言う通り、俺はスタンド使いさ。」
「やっぱりそうなんですね。」
志歩ちゃんと話していると、SPW財団の職員の人が入ってきて、暴れた奴を運び、車で送られた。
「...あの、郷秀さん。」
「ん?」
「...あなたや、響助さんは...何者なんですか?」
「んー......スタンドを持ってるだけのただの高校生だよ。」
言えることは...これしかないかね。
仕事も終わったし、響助のとこに向かうか。