麦わら一味の雑用係   作:デデデ

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『ある少女の記憶』

東の海(イーストブルー)、『戦争の島』。

数少ない農地を奪い合って毎日戦争を繰り広げる場所に、私は生まれた。

 

0歳の時点で兵舎にいたらしく、初めて銃を手にしたのは生後5ヶ月。

私は、物心が付く前の時点で既にたくさんの人間を撃ち殺していたらしい。

 

「……上官、また代わった?」

 

「ああ。アイツが死んだため、本日より俺が指令を行う」

 

思い返せば、死に関しては無関心だった。

兵士はご飯を毎日食べられたから、生きること、なんて感覚も麻痺していたような気がする。

 

敵を殺して奪えば、全てが解決したから。

そうやって考えて、疑わなかった。

 

──解決しなくなるのに、そう時間はかからなかったが。

 

「かぼちゃ、取れなくなったんですか?」

 

「ごめんなさいねぇ、戦争で畑が……」

 

最初におかしくなったのは、畑が燃えて食べ物が取れなくなったこと。

その日から、戦争はさらに激しさを増していった。

 

──腹を満たすための戦争だ、最初から何も変わりはないのかもしれない。

 

ただ、一つ変わった事があるとすれば、相手が何も食べ物を持っていないことが多くなった事。

 

そして、自分の体から少しずつ力が抜けて行く事が増えた、ような気がすることだ。

 

腹が一杯のまま眠れる日はなくなった。

戦争の中で大地が枯れて、食事の量も減ってきて。

 

「……何か、食べ物……」

 

鉛玉は怖くなかった。

毒矢も炎も、どっちも怖くなかった。

水だってそうだった、私は魚人の人と同じくらい泳げたから。

 

でも、空腹というのはこんなに辛くて怖い事なのか。

それを知った私は、とても平常ではいられなくなって。

 

──その日はどうしてか砂浜で眠った、らしかった。

 

だが、目が覚めると島は、一切何も無くなっていた。

周囲には壊れた銃と折れた矢が、ひしゃげた鉛玉と一緒に落ちているだけで。

 

まさか寝ている間に全て戦火で燃え尽きたのか、と絶望する私の前に、しかし現れたのは……お魚の頭をした、一つの船で。

 

その日から、私はバラティエの船に乗る事になった。

 

 

 

拳を受け続けていると、ついにパールが汗をかく。

手は真っ赤に腫れており、盾は既にボロボロになっていた。

 

私も目から、額から、至る所から血を流している。

だが、それでも……サンジには言っておきたかった。

 

「サンジも知ってるはずなのです。飢えから救われたら……どれだけ嬉しいかって!この店は、みんなを救う救世主(メシア)なのです!命くらい張りたくもなるのです!」

 

「ギッ……」

 

「よせ、パージちゃん!ガキのお前まで命張る事かよ!」

 

「そんなに死にたいか……なら、最後は大技でキメてやる!」

 

そう言って、私を嘲りながら助走をつけるパール。

だが、そんな彼目掛けて一陣の風が吹いた。

 

──それは、銀色の風。

 

その手に携えた鉄球が振り下ろされ、一撃でパールの盾が砕け散る。

圧倒的な威力。

サンジの蹴り以上かもしれないそれを振り下ろした()()は、そのままこちらを見つめてきた。

 

「ギン……テメェ、なんのつもりだ」

 

「……すみません、首領(ドン)。せめて我々の恩人であるパージさんとサンジさんの二人は……おれの手で葬らせてください」

 

「パージちゃん、下がってろ!」

 

強い。

本能的に理解して警戒の姿勢を取る私の前に、サンジが立ちはだかる。

サンジには悪いが、はじめての流血で少しパニックになりかけていたところなので気分を落ち着けるにはちょうどいい。

 

──ここは大人しく、サンジを頼ろう。

 

そのまま腕を下ろすと、サンジにその場を任せて雑用の安全確認をする事に決めた。

 

「もういっぺん言ってみろ!」

 

「おれ、海賊王になる!お前、ムリ!」

 

──危険を確認

 

私は雑用の彼の援護をするべく、そのまま彼に加勢することにした。

 

「……なんだ、お前?」

 

「ソイツ、めちゃくちゃ悪い奴なのです。協力した方がいいのです!」

 

「いや、いらねェ。怪我してんだし、下がってろ」

 

だが、彼はそれを断りながら正面の敵へと突っ込んでゆく。

首領クリークと、無名の男の激突。

 

だが、どうしてか私は、この無名の男が勝つような気がしてならなかった。

 

「あなたは、いったい……」

 

「言っただろ、俺はルフィ。……海賊王になる男だ!」

 

私はきっと、この日を忘れられない。

 

──この男が、信念を貫いたこの日を。




追記

・パージは元少年兵です

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