月夜に蔓延る吸血鬼   作:【ガリア】

3 / 3


 それでは、どうぞ…(前置き無し)


王都:ミリスフィリア

 

 

 

 今日は、日除けの魔法を行使して朝の時間から王都の中にいる。

 

 特にこれといった理由はないが、強いていうならば観光だ。

 

 ここにくるのは実に数百年ぶりなので、何か変わっている物があるかもしれないという期待を込めてここにきたのだ。

 

 

「安いよ安いよー!おっ、そこの嬢ちゃん!うちの大根買ってくかい?嬢ちゃんの足のように滑らかでしっかりしてるぜ!」

 

「あらやだクソジジイ、そんな照れるわ!私の足が細くてしなやかなんて!」

 

「それにここのとこなんて嬢ちゃんの足そっく___ぐぶ!?な、なん」

 

「なに平然と話進めようとしてんのよこのデリカシー無しジジイ!!誰が大根足ですって!?私の蹴りを喰らってみたいわけ!?」

 

「い、いや、俺が言いたいのはこの大根はおすすめだよーって」

 

「だったら大根を女性の足に例えるんじゃないわよ!」

 

「ぶべっ!?」

 

 

 綺麗な弧を描いて放たれた女性の蹴りは吸い込まれるように野菜売りの男性の顔面に直撃した。

 

 吹っ飛ぶわけでもなく、一応衝撃を首で堪えた為か吹き飛ぶことはなかったが、それでもダメージは少なくないのか男性は手に持った大根と共に倒れ伏した。

 

 その際にトマトが下敷きになってぶちゅりと音を立てながら赤い汁を飛び散らせ、まるで腹から大量出血した男性の死体のようになった。

 

 その光景を見届けてから女性はふんと鼻息を鳴らしながらその場を去っていった。

 

 

「…朝から面白い物が見れたな」

 

「だねぇ」

 

「あぁ………ん?」

 

「ん?どうかした?」

 

「いや…誰だお前は」

 

 

 自然と俺の独り言に割り込んできたためすぐに気づけなかったが、気付けばいつのまにか隣にいた女が不思議そうな顔でこちらを見ている。

 

 その表情は俺がするべきだと思うのだが、最近の王都の常識は変わったのだろうか。

 

 

「僕はアミ、しがない一般王国騎士さ」

 

「いっぱ…王国騎士?」

 

「おや、知らないのかい?珍しい」

 

「いや王国騎士自体は知っているが…」

 

 

 俺がいま一番知りたいのは何故俺に関わってくるかなのだが。

 

 

「だって、そりゃ基本的に人間に害を与える種族が王国内に侵入してきたら警戒するでしょ?勿論」

 

「…俺が吸血鬼だというのはバレバレだということか」

 

「まぁ気づいたのは僕だけだろうね。これも経験の差というやつさ」

 

「処女がなにをほざいている」

 

「ごめん一回殴って良いかい?こんな公衆の全面で吸血鬼の嗅覚を利用したセクハラされるとは思ってなかったからさ」

 

 

 何やら拳を握りしめて青筋を立てているが、いかんせん頬が少し赤くなっているからか全く怖くない。むしろさっきの女性の方が怖かった気がする。

 

 

「はぁ…で、王都に何の用だい?市民には手は出させないけど、僕が管理してる囚人の血なら吸い上げても良いよ?」

 

「いや、俺は人間の血は好んで飲まん。どうせなら野菜や肉を摂る派だ」

 

「なんて健康的な吸血鬼だ。…健康的なのかな?吸血鬼的に」

 

 

 どうだろうな。吸血鬼本人である俺からしてもその疑問には答えられない難問だ。

 

 あと七百年は誰にも答えられない課題だろうな。多分。

 

 

「ただの観光だ。数百年前に一度来ただけだからな、何か変わったものは無いかと無断侵入してきた」

 

「なんて傍迷惑な観光だよ…。しかも数百年前って、かなり高齢なんだね?絶対満月級でしょ君」

 

「ついでに元新月級でもあるな」

 

「異常個体の満月級って…あーもう僕には手に負えない案件じゃないか。唯一の救いは君が理性的だっていうことだね」

 

「まぁ、俺は基本的に人間に手を出さん。まぁ危害を加えられたら反撃するがな」

 

「まぁそれは仕方ないから良いよ。でも裏路地とか人目のつかないとこでやってね。…はぁ、まーた隠滅することができちゃったし、また埋め合わせのウソ書かないとなぁ」

 

「…では、俺はこのまま失礼して良いだろうか?他にも色々見ておきたいんだが」

 

「あーうん。少なくとも王都に悪い影響を与える存在でもなさそうだし…良いよ、ついでに通門書も渡しておくから、出る時はちゃんと門から出てね」

 

「了解した。感謝する」

 

「あーはい。じゃ、僕はこれで」

 

 

 そういうと女は踵を返して、王城の見える方へと足を進めて姿を消した。

 

 …最初から最後までよくわからん人間だったが、王国騎士だけあって一定以上の強さはあった。ただもう少し強くなければ俺と戦うどころかと俺の前で喋ることすらできないだろう。

 

 というより所属は聞いたが、階級はなんなのだろう。

 

 昔は確か“王将級”が団長だと聞いたことがあるが…まぁ多分“銀将級”位だろう。

 

 そんなに強くなさそうだったしな。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 何アレ何アレ何アレ何アレ何アレ何アレ!?

 

 さっきの吸血鬼と別れた僕は、人目につかない場所に入ると、今まで押し込んでいた感情を爆発させて座り込んだ。

 

 一体アレはなんなのか。

 

 アレはどう考えても吸血鬼という種を超越した存在だ。

 

 あんな生物が存在して良いはずがない。

 

 僕の頭の中はそんな思考で埋め尽くされていて、整理して落ち着くのに数十分はかかった。

 

 改めて思い出しても理不尽な魔力制御。

 

 “視る”事に特化した僕でも微かにしか見えず、それでも濃密に凝縮を重ねたようなあの重圧感。

 

 そういえば彼は数百年前とか言っていた。

 

 ということは僕が何気なしに言ったように間違いなく満月級。彼も否定せずに、しかも元新月級という頭がパンクしそうな情報までぶち込んできた。

 

 通常、満月級は実はそんなに希少な存在ではない。

 

 弱い吸血鬼でも血を吸い続ければ強くなるし、事実、現在確認されている満月級の何人かは下弦級のやつもちらほらいる。

 

 問題は、”元新月級“であるかなのだ。

 

 この肩書きがあるだけで、満月級の価値が大きく変わってくる。

 

 通常の満月級がアリであるならば、元新月級の満月級はドラゴンみたいな物だ。それだけ力関係に大きな差があるのだ。

 

 そして、満月級には等しく“月”を持つ。

 

 それは、満月級の吸血鬼が等しく持っている“領域”と呼ばれる物のことだ。

 

 魔力を解放して、自身を中心に世界を塗り替え、夜にしていく満月級の特権。世界の一部を自分だけのものにする、ある意味反則的な技だ。

 

 そして、塗り替える夜は満月級によって違う。

 

 森の中だったり、大きなお城の中だったり…兎に角バリエーションが豊富だ。

 

 ただ、彼は“領域”を薄く纏っていた。だから日の中でも活動できていたのだ。

 

 だからこそ、僕は“視る”ことができた。彼の“領域”を。

 

 

 

 その世界には……“太陽よりも大きな、紅い月が覗き込むように浮かんでいた”。

 

 

 







 一人称視点難しくないですか?

 もっと練習しなければ…

 それでは、次回もお楽しみに…

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。