俺たちはあの後、なんとかアクアを檻から出そうとしたのだが結局そのまま街に戻って来た。
その間何度もコイツに檻から出る様に言ってるんだが、コイツ檻の中を聖域だの絶対守護領域だのと分けのわからん事を言い始める。
そんでその状態のまま街に戻って来てしまったのだが、そろそろ街の人の視線が痛いんだよ。
しかも終いには変な歌まで歌い始めやがった…。
「おいアクア、良い加減に檻から出ろよ。街の人達からの視線が痛いんだよ」
「嫌よ…この中こそが私の聖域、いえ
外の世界は正しく
ダメだコイツ…完全に心を閉ざしてやがる。
このまま行くと、よくわからん紫の亀裂でも出て来そうだな。
「カズマ、アクアはどうする?」
「仕方ねえからこのままギルドまで連れて行って引っ張り出すしか無いだろ」
檻も返却しなくちゃいけないし、そもそもコイツ檻から引っ張り出さないと話進まないし。
それに、早くキリハに会って今回手に入れたバックル渡してマグナムと交換しないと。あのバックル2つに触れてみたら、どうやら俺の手に入れた今回のバックルは、小型は違うが大型の方はアイツと相性良さそうだったしな。
オマケにエースはパイレーツを持ってるから、エースより早くキリハを見つけて渡さないと。
一応スパイダーフォンで連絡(この前話した時に連絡先を交換した)しても良いが、俺の会話からエースに待ち合わせ場所なりに先回りされる恐れがある。だから俺の幸運に頼るしか無い。
「しかし、順調にバックルが手に入ったな。
この分だと、あの幹部との戦いにも備えられる」
なんかエースが突然ワクワクした様子で物騒なワードを口にしたんですけど…。
「おいおい冗談じゃ無えぞ。アッチは魔王軍幹部で、お前やキリハみたいなタイプは兎も角俺なんて最近ライダーになる以前に最近転生して来たばかりだからな?幹部との戦いとか無理だかんな?」
「何言ってんだ?俺が言ってるのは1対1の勝負の話だが」
「ああ成程、それなら俺関係ないから安心…って言うと思ってんのか⁉︎馬鹿なのかお前!」
しかもよく見たら今すぐにでも戦いたくてしょうがないって顔してるし!
オマケに俺が反論したら「何言ってんだコイツ?馬鹿なの?」って逆に馬鹿にされた感じがする!
「単身で敵のボスに挑む戦士…紅魔族としては燃えるシチュエーションですが、エース。流石にそれは無謀過ぎますからやめといた方が良いですよ」
「確かに、そんなシチュエーションなら私がなりたいぞ」
「めぐみんの言うとおりだ!あとダクネス、お前は余計な事言うな」
いつもの様にまとまりが無いパーティーは一旦放置だ。
不味いぞ、エースの発想は正にバトルジャンキーかそれに近い何かだ。
ていうかちょっと待てよ?
「なあ、そういばまだエースの職業を聞いてなかったな」
「俺か?
冒険者っていう、モンスターと戦う職業ですが?」
「いやそうじゃなくてだ…」
あ、こりゃダメだ。聞いてもパーティーに入るとかしないと絶対に教えてくれないパターンだ。
まあ良い、職業についてはパーティーに加入してもらった後にでも知れるからな。
今は兎に角早くギルドに着かないと。
「女神様?女神様じゃないですか!って痛っつつ…」
「キョウヤ!傷口が開くからあんまり激しく動いちゃダメだよ!」
「急に走り出してどうしたの?」
「?」
何だ?
ギルドに向かう俺たちの元に、1人のボロボロの鎧を着た男が痛がりながら近づいて来て、後ろから軽装な女性2人がついて来ていた。
「何だ、ミノノノギじゃないか」
「あ、エースさんどうも。って僕の名前はミツルギですよ!」
「すまん、噛んだ」
「いえ絶対嘘でしょ⁉︎しかも噛む要素無かったしあったとしてもおかしいでしょ!」
「……カミマミタ!」
「わっ、ワザとじゃない⁉︎」
何だこの茶番は…。
なんかいきなり出て来たイケメンの頭にアホ毛が生えてそうな光景だな。
「なあエース。コイツら知ってるのか?」
「そう言えばお前達は知らなかったな。
コイツはミツルギキョウヤ。仮面ライダーバッファだ」
仮面ライダー⁉︎しかもバッファて確かこの前キリハが言ってたエースの事知ってるってライダーで、前のデザグラの参加者でもあるライダーだったよな⁉︎
この明らかに主人公ですって雰囲気のなんかムカつくイケメンが⁉︎
「そんで後ろにいる緑と赤の髪がフィオとクレメア。まあ取り巻きその1その2で覚えてくれ」
「「誰が取り巻きよ!誰が!」」
「あははは…まあ兎に角、ミツルギキョウヤ。職業はソードマスターをしている。よろしく」
「お、おう。よろしく…」
くっ、イケメン特有のモテオーラを感じるっ…。これが、イケメンか!
「ところで、どうして女神様は檻に?」
「あー実は」
俺はミツルギという目の前の男に、どうしてアクアが檻の中にいるのかについて説明した。
「な、成程…湖の浄化でそんな事に…」
説明を終えると物凄い引き攣った顔をされた。
まあ無理もない事だけども。
「……」
「ん?どうかしたんですか?エースさん」
「いや、お前以前にアクアの事を恩人の様に語っていたからもう少し荒ぶると思ったから意外でな」
「えっ⁉︎」
何?この人アクアの事を信仰してんの?人の好みにアレコレ言うつもりは無いがこの人にはやめといた方が良いと言いたい。
だってコイツとまだ短い間だが一緒に居た俺だから言えるが、コイツ碌でもない奴だよ?
「まあエースさんの言う通り、前までの僕ならきっと話も聞かずに詰め寄ってたでしょうね。
…でも、僕の思い込みや勝手な判断で、もう後悔はしたく無いしさせたく無いですから…」
「「……」」
あれ?何か雰囲気が暗く…。
「ったくお前は」
「アタッ⁉︎」
ミツルギ達の雰囲気が暗くなるとエースがアイツの頭に軽くチョップを入れた。
「アレはお前の所為じゃ無い。
アレは仕方なかった事だ。それに、アレは俺がしっかりしてれば起こらなかった事だしな」
「ッ!エースさん…貴方は!」
「あのぉ、お話中申し訳ないのですが…」
ヒートアップしそうな雰囲気の中めぐみんが遠慮しながら話に入ってくる。
正直助かった、理由は不明だけど何だか重い話になりそうな雰囲気だったからな。
「どうした?めぐみん」
「いえ。この人がアクアを女神と呼んで事など気になる事が色々と有りますが、早くアクアをギルドに運ばないと。
流石に先程から周りの視線が気になって…」
「あーそうだな。なあエース、話はギルドに着いてからに出来るか?
それとアンタ、ミツルギだっけ?アンタもギルドでアクアに傷治してもらった方が良いぞ。見たところボロボロだし、アクアはアークプリーストだから回復魔法も得意だしな」
「俺は構わないぞ」
「えっ?あっ。僕もそれで良いよ。
フィオ、クレメア。君たちもそれで良いかい?」
「私はキョウヤが良いならそれで大丈夫よ」
「私も」
「決まりだな」
と言うわけで俺たちはギルドに向かった。
けど道中でアクアが「ドナードナー」だの何だなと歌うから街の人たちの視線がスッゴイ痛かったけどな。
「(エースさん…どうして貴方は、僕を“責めてくれない“んだ…)」
カズマ達がギルドに向かっているのと同時刻、ウィズ魔道具店ではいつも通りウィズが今回も来ない客を待って項垂れていた。
「うぅ…何でお客さん来ないのぉ。売れるのに…今回は絶対に売れるのにぃ…」
彼女は今回はエースに内緒で以前購入したカエル殺しを売れると判断して店頭に並べたのだが、そもそも使い捨てな上にかなり金のかかるその道具を買える人物などこの駆け出しの街に居るはずもない。
なので、今回も絶賛赤字なのだ。
「これじゃ、またエースさんからお金を出してもらう事にぃ…」
「お邪魔しまーす」
そんな彼女の店に1人のフード付きのマントの女が入って来た。
「あ、いらっしゃいま…せ…」
最初はいつもの様に挨拶をしようとしたウィズだったが、その女性の人間離れした美しい容姿や赤と青のオッドアイを見て一瞬言葉を失う。
「……」
「あれ?私の顔に何か付いてるかい?」
「あっ…。いえすみません!とても綺麗だったからつい…」
「ふふっ♪嬉しいねぇ。
まあ私の容姿の話は置いといて、この店って魔道具を取り扱ってるんでしょ?何か良いやつ無い?」
「あっ、それでしたら最近カエル殺しを入荷していまして」
「マジで⁉︎じゃあそれちょーだい」
「えっ⁉︎良いんですか!こちらかなりお値段が張りますが」
「良いよ別に。それに私の知り合いがカエル関係で困っててねぇ、だからプレゼントでもしようかなって」
女はウィズに紹介されたソレを手に取ってある程度眺めると、カウンターにその金額の分だけ硬貨を置く。
「これで良いかい?」
「はい!ありがとうございます!」
「いやいや気にしなくて良いって大袈裟だなぁ。兎に角今日はいい買い物が出来たよ。
それじゃあね、“アンデッドの王様“♪」
「えっ?」
女の最後の言葉が気になり呼び止めようとしたウィズだったが、その時にはもう既にその女は店の外へ出てしまっていた。
「ま、待ってください!」
慌てて彼女も店の外に出たが、もう女の姿は何処にも見えず夕陽によってオレンジ色に彩られた街並みが見えるだけだった。
「今の人は、一体…」
「いやぁ、ケケラへの嫌がらせ道具探すついでに行ってたけど、まさか本当に人間社会に紛れ込んでるとは」
フードの女は自分が消えて慌てた様子のウィズを、屋根の上から見ていた。
「しかも表面上は上手く取り繕ってるけど、どうやらチヒロくんが死んで堪えてるのは当たりだったみたいだね。この分なら」
女は懐から1つのひび割れたIDコアを取り出した。
その絵柄はよく見るとペンギンの様にも見える。そしてそれと一緒に後もう一つ、何かの檻のようなバックルが握られていた。
「ふふっ♪もしコレを使ってギーツにけしかけたら、彼はどんな風に絶望してくれるんだろう♪」
その2つのアイテムを見ながら、女は狂喜的な笑みを浮かべて笑うのを堪えている。
それがどれだけ女が異常なのかを物語っていた。
「そこまでです、“アベル先輩“」
「…あー、最悪だよ。折角良い気分だったのにクソ真面目な後輩の所為で台無しだよ。
どうしてくれるのかな?“エリス“」
女、アベルが明らかに不機嫌そうに後ろを振り向く。
そこには、ショートカットの銀髪の女性が腰に帯刀してあったダガーの刃を彼女に向けている姿があった。
「どうしたもこうしたもありません!貴方は、自分が何をやっているのか分かってるんですか⁉︎」
「……その感じだと、どうやら私が“デザグラで死んだ魂の一部をくすねた“り、オマケに“ジャマト側に協力している“って事も知ってるみたいだね」
「それだけじゃありません!
先程確認したところ管理していたデザイアドライバーが幾つか減ってる上に、管理者権限を持つ“ヴィジョンドライバー“の1つまでも盗まれた事が判明しました。
その場に残っていた神気の残穢から貴方が盗んだ事も判明しています」
「へぇ、そこまでバレてるんだ」
自らの悪事が暴かれてると言うのに、アベルは不機嫌そうだがそれ以上に不機嫌にはならず、寧ろ段々と先程の笑みを取り戻しつつあった。
「まあお前がやった事はそれだけじゃ無いんだがな」
「ッ⁉︎…おやおやおや驚いたなぁ。
まさか君まで出しゃばって来るとはねぇ。
何の様かな、“門矢士“くん。それとも仮面ライダーディケイドって呼んだ方が良いかな?」
アベルはエリスとは違う方向から聞こえて来た方向を見て彼女が出て来た時より動揺を見せていた。
彼女の視線の先には、マゼンタ色の鎧に緑の複眼をし、腰に巻かれたドライバーはデザイアドライバーでは無くマゼンタ色のまるでカメラの様なベルトだった。
その戦士は、本と剣が一体化した様な武器の切先をアベルに向けている。
「お前だろ?最近、“他のライダーの世界にダークライダー達の偽物を出現させた“のは。
俺の今まで周った世界にも、倒したはずの怪人どもまで何体か復活してたしな」
「……成程カインの奴が調べたのか。
他の世界に干渉出来る権限を持つ神は多く無いからね」
「はい。そしてそれを突き止めたカイン先輩は、私に門矢士と一緒に貴方を捕えろと命令しました。
さあ、もう貴方に逃げ場はありません。大人しく捕まってください。私も、同じ女神相手に乱暴な事はしたくありませんから」
「流石はエリス、絵に描いたような優等生ちゃんだねぇ。
だけどねエリス。
たかが生真面目な後輩と世界を超える出しゃばり者が、私を捕らえられると本気で思ってるのかな?」
「⁉︎」
「ッ!チッ」
アベルの雰囲気が変わった事に狼狽えるエリス。士は舌打ちをしながら彼女を逃すまいと剣を振るう。
しかし、その剣は彼女を捉える事なく空振り、気がつくと彼女の姿は見えなくなっていた。
「…逃したか」
「アベル、先輩…」
標的を流した事に2人はやり切れない気持ちを抱える。
そしてそこに残ったのは、アベルが魔道具店で購入したカエル殺しとソレに貼られている「あ、これケケラの奴に渡しといてね♪」という紙だけだった。
余談だが、律儀にそれを守ってケケラとやらにそれを渡したエリスは、こっぴどく怒鳴られたとか何とか。
あの後俺たちは無事にギルドに着いた。
その後ギルドのお姉さんに事情を説明してアクアを引っ張り出すのに協力してもらった。最初はかなり激しく抵抗されたが、ミツルギが「女神様は、出て来てください」の“女神“という単語に反応して何とか復活して自分から檻から出て来た後、ボロボロだったミツルギに回復魔法をかけてくれた。
その後、アクアは儲けた金でいつも通りシュワシュワを飲み気をよくして宴会芸を披露する。
めぐみんとダクネス。そしてミツルギのパーティーメンバー達はそれに夢中となり、俺とエース、そしてミツルギの3人は少し離れた席で話していた。
「しかし驚いたよ。まさか君がエースさんのチームメンバーだなんてね」
「ああ、俺も同じチームにエースが居てくれて心強くは思ってる。
ただ、パーティー組めてないから日頃のクエストが大変なんだよ」
「え?でも君のパーティーって見たところアークプリーストのアクア様にアークウィザードとクルセイダーの女性の3人が居る上に仮面ライダーの君も居るんだろう?
そんな君たちが駆け出しの街のクエストで苦戦するところなんてあんまり考えつかないな…」
コイツの言う事は正しい。
俺だって最初は?隠された力に目覚めるとかのチート系主人公になれるかもとか、仲間は上級職だから楽にクエストを熟ると思っていた。
だが現実はそんなに甘く無くて、俺は最弱職だし、パーティーメンバーも一点特化でバランス取れたないし。
オマケに目を離すと問題ばかり起こして、この前の幹部の時もそうだったけどいつかとんでもない問題起こしそうだから怖いんだよ。
「ミツルギ、コイツの言う事は本当だ。
特に性格面に難ありだ」
「え、エースさんがそう言うならそうなんですね。
君も何と言うか…大変なんだね…」
「あんがと…」
くぅ、相手がイケメンだが今はそれさえも俺にはありがたかった。
正直この世界に来てまともに同情してくれる相手って少なかったよな〜。
パーティーメンバーは皆んな我が強いし。
まあ俺が同情してもらえないのってクリスの時のパンツスティール事故があったからなんすけどね…。
「サトウ、居たのか」
俺が色々と浸っていると、俺の後ろからキリハが話しかけて来た。
どうやらコイツもいまギルドに来たみたいだな。
「あっキリハさん!どうも」
「何だ、ミツルギも居たのか」
「丁度良かった!なあキリハ、このバックル」
俺は懐から今回のアリゲータージャマト討伐の時に手に入れた大型バックルをキリハに渡す。
そしてそれを受け取ったキリハは俺たち全員に共有されてる能力のお陰でそれを瞬時に理解したのか少し笑みを浮かべていた。
「これは…“エクシアバックル“。成程、これは俺と相性が良いバックルだな。なら約束通り」
俺の渡したバックルが気に入ったのかキリハも懐からマグナムのバックルを取り出した。
「ほら、約束のバックルだ」
「おぉ!ありがとうなキリハ!」
俺は直ぐ様そのバックルを受け取りエースに渡す。
「ほらエース、これで俺たちのパーティーに入ってくれるんだろ?」
「おっサンキュー。なら」
バックルを受け取ったエースは俺にパイレーツのバックルを渡して来た。
「これは返す」
「えっ⁉︎いやでもソレは…」
「これはあくまでお前にマグナムを任せた方が楽に事が進みそうだから保険として物質にさせてもらった。
それに俺がコレをチラつかせれば、お前はマグナムを確実に手に入れてくれるとは思ったよ」
「うっ」
つまりは完全にコイツのいいように動いてただけだったのね。
「まあでも、パーティーには入ってやるから安心しろ」
「いやアッサリだなお前!」
「約束だったしな。そもそも俺が最初に手に入れても入るつもりだったし」
「え?じゃあ態々マグナム手に入れる為にコレチラつかせる必要無かったんじゃない?」
「その方が俺の戦力アップの確率が上がるからな。
大体お前にパイレーツ返してやったんだから、文句無しで頼むぜ」
いやそれは良い、それは良いんだけどさ⁉︎
なんか利用された感が有って色々釈然としねえんだよ!
「……」
俺がそんな事を思ってると、何やらキリハがエースの方を見ていた。
「なあ、お前が仮面ライダーギーツ。モガミエースで良いのか?」
「ああ、それで間違い無いが」
「…そうか、ならば丁度良いな」
「キリハさん?」
どうしたんだ?
「実はお前に頼みがあってな。
俺は、お前との決闘を所望する」
………え?
はいと言うわけで今回はここまで!
いやしかし、最近YouTubeで混血のカレコレというチャンネルにどハマりしてしまい投稿に力が入りませんでした。
でも、とても面白くてハマるチャンネルなのでYouTubeを見ていて少し興味のある方にお勧めします。
では、次回まで期待せずにお待ちください。