俺の転生†無双!   作:衝動書きする人

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プロローグ

「さて。早速で申し訳ないが、君には異世界に行ってもらうとする」

 

 気が付けば、一面真っ白な場所にいた。下は白い綿毛のような、しかししっかりとした感覚がある地面があり、遠くを見れば雲一つない真っ青な地平線ば見える。そんな中、俺の前にがっしりとした体つきをした背筋がちゃんとしている老人が白い服を着て立っていた。

 

「……えっと、え?何?どゆこと?」

 

 いきなりわけのわからない展開に、俺は混乱していた。こんなところに来たような記憶はないし、そもそもこんな場所にどうやって来たのか覚えがない。周りを見回してみるが、山の頂上のように下りの道があるわけではないし、谷のような絶壁もあるわけではない。あるのは本当に綿毛のような地面と真っ青な空だけだ。

 

「混乱しておるか。まぁ、混乱のまま行ってもらう気はない。よくかみ砕いて整理するがよい」

 

 そんな俺の頭の中を察しているのか、老人は本当に俺が落ち着くのを待つのかその場に座り込む。混乱している俺はそれに倣ってその場に座り込む。

 

「……んん~?あるぇ~?え、いや、ホントどうなってるの?ここどこ?」

 

 腕を組んで今まで何をしていたのかを必死に思い起こす。記憶にあるのは、夜遅くまで友達と遊んでいて、友達と別れて、暗い夜道を歩いていて、後ろから声がかかって、振り返ったら刺されて……。

 

「……いっ……たくは、ない?あれ。俺刺されたんじゃ……?」

 

 思わず刺されたところを押さえるが、そこが全く痛くないことに気がつく。恐る恐る手をどけて見てみると、服が裂けていてそこには赤黒い隙間が開いているのが見えた。

 

「……は?どういうこと?」

 

 刺された跡があるのは見えているのに、全く痛くない。そのことにさらに混乱する。

 

「状況を整理してたのにさらに混乱してどうするんじゃ」

 

 そんなことをいう老人だが、自分の体に穴が開いているのに痛くないとか落ち着くことができなくて当たり前だろう。

 

「えっと、まず、何がどうなってるのか説明が欲しいですわ」

 

 混乱の最中状況を知っているであろう目の前の老人にそう言えたのは奇跡的だろう。自問自答の坩堝にはまってさらに混乱し、何も言えない、なんてことになっててもおかしくはなかったし。

 そして老人の口から出された言葉はとてもじゃないが信じられないものだった。詳細は省くが、簡単に言えば、俺が殺されたのを見て面白そうだという理由でここに連れてきた、ということらしい。

 

「……えっと、つまり、強盗に刺されて、死んで、このまま輪廻転生に送ってもよかったけど面白そうだから俺を異世界に転生させると?」

 

「まぁ、端的に言えばそうじゃの」

 

「……意味わからん」

 

 老人の言葉に、俺の思考はさらに混乱に陥っていた。死んでもなおこんなに意識がハッキリしているのはおかしいだろう。

 

「えぇ……。待って。本当に理解できない……」

 

 思わず頭を抱える。意識ははっきりしているし、目の前の老人がいるのは間違いない。しかし俺は死んでいる。訳が分からない。というか、こんな何もないだだっ広いところにいることがまずおかしいということもある。本当にどういうことだろう。

 

「……あ、そっか。これも夢か」

 

 そして出た結論がこれは夢であること。同時に強盗に刺されたのも夢だろう。そう考えたらこの訳の分からない世界にも説明がつく。なんせ夢の出来事だ。どんな訳の分からないことでも起こりうるのが夢なのだからこうやっている今も夢の中の出来事に違いがない。

 しかし、すげぇリアルな夢だな。夢だってわかっても全然起きないし、どうなってんだ?

 

「……まぁ、何であれ納得したのであればそれでいいわい。とりあえず、考えるのもそこまでにしてもらって、わしの話を聞いてもらおうかの」

 

「ウイッス。で、じいさん何者?」

 

「わしか?わしは神様じゃよ。まぁ、十把一絡げの、という冠詞はつくがの」

 

「ほへぇ。神様。やっぱ夢ってすげぇわ」

 

 夢の中であっても神様に出会えるなんて、運がいいのか逆に夢見は悪いのか。ただこの老人どこからどう見ても服装以外普通の老人にしか見えないのだが、まぁ夢の中の出来事だしそういうこともあるだろう。

 

「それで、異世界に行ってもらうって言ってたけど、どこに行くの?」

 

「それはわしも知らん。何せ転生させることはできてもどこに行くかなんて設定はできんからな」

 

「つっかえね」

 

 思わず悪態が出た。いや、どこかに行ってもらうとか言いつつ行先はわからないとかどうなっているんだと文句が出ても仕方ないだろう。

 

「仕方ないじゃろう。輪廻の輪は無数にある。どれがどの世界だなんて細かく見んと分らんし、無数にある世界を覚えておくなんぞできるわけがなかろうて」

 

 マジで使えねぇなこの神様。いや、言いたいことはわかるんだが、神様なんだからそれぐらい不思議パワーで何とかできないのだろうか。夢の中なのにどうしてそこは融通が利かないんだろうか。

 

「まぁ、世界は選べんが、力を授けることはできる。生活基準が底辺で転生してすぐに死んだ、では面白くはないからの。転生させる準備として好きな能力を授けようではないか」

 

「何その異世界転生テンプレ展開」

 

 あったわ不思議パワー。しかも超絶テンプレなやつ。さすが夢の世界。

 

「いやぁ、他の神がやっているのを見て面白そうじゃなぁ思ってな。ラブコメを期待している神もいればバトル展開になるのを期待している神もいる。中には苦しんでいる様を楽しみにしている神もいるからのう」

 

「最低だな。そいつ絶対邪神だろ」

 

「祟り神じゃな」

 

「え、なにそれこわ」

 

 いるんだ祟り神。夢とはいえ祟り神を引かなくてよかったわ。いや、目の前の神が祟り神でない証拠にならないから不安ではあるんだけど。

 

「まぁ、安心せい。わしは俺TUEEEEEが見たいだけの神じゃからな」

 

「神様の口から俺TUEEEEEって言葉が出るとは思ってなかった。人間界に毒されすぎじゃない?」

 

「だって人から神に成った神じゃもん」

 

「なにそれすげぇ」

 

 いや、でも俺TUEEEEEなんて単語ここ最近できた単語だぞ。いくら人から神になったとはいえ最近の知識を持っている神ってどういうことだ。マジで最近神になったのか?夢の中とはいえ、いや夢の中だから訳が分からん。

 

「ま、雑談もそこそこにしておいて。どうじゃ?いくつでも、とは言えんから最大3つまでなら能力をあげるが何が欲しい?」

 

「何が欲しいって急に言われてもなぁ……」

 

 夢の中とはいえ適当に言えるようなことじゃない。いや、夢の中だからこそ俺TUEEEEEしてみたいという気持ちもあるし、逆になんでも叶えてくれるということなら会ってみたい人を呼んでもらって転生先で暴れるのも悪くない。

 じっくりと考えてみるが、考えれば考えるほど何がいいのかわからなくなる。俺TUEEEEEならワン〇ンマンのサイ〇マが最強格だし、他にもドラ〇エやF〇の呪文を全部使えるようにしてもらえたらそれなりに無双できるだろう。

 色々と考えてみたが、どれがいいか悩む。自分で無双をするのも悪くないが、でもよく考えたらケンカもしたことがない日本人なのにいきなり戦場に出て無双なんてできるんだろうか。無双しようにも精神的な弱さが出て無双できない、なんてことにもなりかねない。となれば、他者が無双できるような状態にすれば俺が攻撃されるようなことにはならないだろう。

 

「……んじゃあ、Fate/のイリヤスフィール・フォン・アインツベルン以上の魔術回路、サーヴァントとしてランサーにクー・フーリンとアーチャーに俵藤太をください」

 

「……いや、まぁ確かにチートじゃけど。そこは王の財宝とか無限の剣製とかが欲しい!と言わんのかの?」

 

「あ、俺の趣味で言ったのにわかるんだ。いや、王の財宝は俺みたいなのが使ったら王様から殺されそうだし、無限の剣製は確かに憧れるけど扱いきれるとは思えないし、だったらどこに行くのかわからないなら無限に出てくる飯と安心できるボディガードがいればいいじゃんって思って。あとクー・フーリン好きだし」

 

「わしとしては君に俺TUEEEEEをしてもらいたいと思っておったんじゃが、まぁよかろうて。君の望み通りにしてしんぜよう」

 

「え、いいの?」

 

 正直ダメだと言われてもおかしくないと思っていたがOKをもらえた。さすが夢の出来事だ俺に都合がいい展開になっている。まぁ起きたらこの出来事も忘れているだろうけど。

 

「さて、それじゃ早速転生してもらおうかの」

 

「……あの、その手に持ってるハンマーは何ですか?いや、というかどこから出したんですかそんなでっかいハンマー」

 

 気が付けば、いつの間にか神様の手にはでっかいハンマーがあった。どれぐらいの大きさかと言われれば、身長178cmはある俺の身長の大体半分ぐらいが面になっていると言えばその大きさがわかるだろうか。

 

「細かいことは気にするでない。それ、歯を食いしばれ」

 

「それ敵とかに言うセリフですよねちょっと待って振りかぶらないで何する気ですかいや言わないで予想つくからやめてお願い怖いからぁあああああああああ!」

 

 空気を割くような音が聞こえ、ハンマーが向かってくると思ったら逃げる間もなく全身に衝撃が走り、痛みを感じる間もなく俺は意識を失った。


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