地球から来た男   作:クニヲ

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4話 ランブルリング

 「この人本当にジェターク寮で出場させるんですか?ラウダ先輩にアグニカ先輩。」

 ラウダの顔には今まであったような曇りは無く、明るさが少し戻っていた。そしてアグニカも少し笑顔で佇んでいる。

 「すみません地球寮の自分なんかが...」

 「実際ガエリオはモンタークの子会社の推薦だ出来れば私と同じ場所に立ってもらいたい。それに、彼の機体の装甲や技術はジェタークの技術が取り入れられているし。なんなら、ラウダも了承している。」

 「そんな謙遜しないでくださいガエリオさん。僕なんかよりあなたの方がジェターク寮の人間として出場するのが相応しいですから。」

 その会話にペトラは少し違和感を覚えながらも、そのガエリオと言う最近編入してきた男子に向ける目はどこか今この学校にはいないあの人を思わせる。

 「じゃあもうすぐ始まるので準備をしてください。すまないペトラ先に出って貰えるかい。こっちも話をしなきゃならない。」

 ペトラが出ていくとラウダは微笑みガエリオの手を握る。そうするとガエリオもその仮面を取り外し見覚えのある顔が出てくる。

 「お帰りなさい兄さん!」

 「あぁ、俺の居場所を守ってくれてありがとう、ラウダ。マクギリスも話を通してくれて助かったよ。」

 「別に何かをやったわけじゃ無い。準備を始める、納得してくれてありがとうラウダ、ここからはグエルと私で、切り開く。」

 「お願いしますアグニカさんに兄さんも。」

 そうして彼らはパイロットスーツに着替えると、機体に乗り込み準備を始める。地球寮の人間が何故?と思うジェターク寮生は多くいたがアグニカとラウダの推薦という事もあってか特に邪険にされる事もなかった。

 この機体も色々と面白く作られている、あの機体にも遅れを取ることなぞ一切無いように思える程に。

 「おい、マクギリス。」

 「なんだガエリオ、緊張でもしてるのか?」

 「いや、違う。こいつはこの機体達はパーメットを使っては居ないんだよな?」

 「あぁ一切パーメットを使っていない機体だコイツらはそれがどうかしたか?」

 技術革新もいいとこだ。これほどの性能を持つ機体がパーメットすら使って無いとは、それだけで面白いし、それに今のこいつはジェタークを背負ってる。大きすぎる機体ではあるが操作性も全く持って悪く無い。面白い話だ。

 「時間だ、いくぞグエル。」

 「その名前で呼ばれるのは久しぶりだなマクギリス。」

 「その名前で呼ぶお前がいなかったから。俺もその名で呼ばれるのは久々だよグエル。この試合が、始まりの合図だ。」

 

 ランブルリングの説明が行われるもう試合が始まるのだ。双璧のように立つ白いモビルスーツと青紫のモビルスーツは何かわからぬ悍ましさがある。そしてその機体の入ったコンテナは発進する。そのコンテナが開く時それこそが開戦の証である。

 速攻で動き出すバエルに対して、大きなスカートを開き、フォバーするスレイプニルは全体を静観する。

 「30秒で雑魚は片付ける。上から見えた敵を報告してくれ。」

 事実バエルはスレイプニルの示した位置に颯爽と向かい開始15秒ほどで5機の機体を沈める。

 「なんだあのモビルスーツ!?」

 「アグニカだ!くっそなんだよあの動き気持ち悪りぃ。」

 そうしていると、会場に大きな爆発音が響く。

 「出てきたぞグエル、あいつらを止めるぞ。」

 重い機体を全速力で動かして、向かうは緑色の機体。その機体にランスメイスを叩き込むが避けられる。

 「機体がデカすぎるしなんならそれじゃあ遅すぎるよ!」

 その言葉を最後にソフィは機体に銃を向ける。

 「あぁ、遅いだろうな...だがこいつは裏を持っている。行くぞ、キマリスジェタークフレームタイプ。」

 そう言葉にして一つのスイッチを押すと装甲が剥がれて散らばる。その装甲はソフィの目を塞ぎ弾丸はあらぬ方向にズレる。

 着地した場所には大きな砂埃が立ち上り、それだけでなく美しい赤色の今までのものとは思えぬ程の細い機体が会場の皆の目に映る。

 「なんだよこれ?色々起こりすぎてて訳わかんネェ。」

 「あれ、ガエリオさんが乗るって言ってた機体だよね...なんで肩に獅子のマークが。」

 その機体は今までの動きとは全く違うとてつもない速さで動き、緑のガンダムに距離を詰める。

 「ソフィ、ガンボルヴァを!」

 「分かってるってノレア!」

 そう言ってパーメットをスコアを上げると他のガンダムに似たモビルスーツを操作し始める。

 「ほう、人形遊びか、悪く無いがこんなものが俺とグエルの敵になるとでも思っているのか?」

 バエルは何事も無いかのようにガンボルヴァを破壊していく、何機操っているのかは分からないが、放置していたもう一機の機体が会場に被害を広げている。

 「なんとかしないとな...あの機体、そういうことか。逃げればよかっただろうに何故お前はそこに戻った地球の魔女の一方。まぁ、予想通りに動くじゃないかノレア。」

 グエルはスピードを生かし、ガンボルヴァの破壊をしながらもソフィを止めるべく動き続ける。事実その速度の一方的なまでの速さは、ルブリスウルを追い込むのに十分すぎる。

 「邪魔だなこの人形は...どうした?この程度か地球の魔女の片割れ。だがこのままじゃ押し切れないな、阿頼耶識システムを使うマクギリス。ラストスパートだ。」

 次の瞬間ソフィの機体の腕は吹き飛ぶ。

 「もしかしてアンタあの時の、悪魔...」

 「そうだ、悪魔だよ片割れ。そしてこの闘いは俺とマクギリスを英雄へと昇華させる闘いだ。」

 その次の瞬間またもや腕と両方の足がもがれる。圧倒的なまでのその力は、ある意味パーメットに似ているが違う、それこそ悟りを開いたかのような感覚意識で動かす機体を持って。

 「お前の負けだ。偽りのガンダム。」

 残ったガンボルヴァを全て処理しながらノレアを追う。

 「君では私には勝てないよ。」

 そう言って彼は壁に追い詰めた機体のメインカメラを潰す。それだけでなく片腕を関節から切り外し、バエルソードを腰のマウントに差し直すとその片手で機体を掴んで投げ飛ばす。そのまま背中を切り崩し、機体が身動きを取れないように片手両足を切り落とす。

 「俺の勝ちだ。」

 会場には被害が残る、死者だって出た。だが、それを最小に抑えたのは白いモビルスーツと赤いモビルスーツ片方は角笛のエンブレムもう片方はかの御三家のエンブレムである獅子のエンブレム。双璧のように立つそれから全体放送が流れる。

 モニターに映るのは仮面を被った男の姿。だが唐突にその仮面は外される。そこに映る顔は皆が見知った、皆が憧れたかの男の顔。

 「嘘だ...ガエリオさんがそんな訳無いですよ。こんなの見間違いだって、絶対そうですあの優しいガエリオさんがあり得ません。」

 「ここに、ガエリオ・ボードウィンが仮面を外し、グエル・ジェタークとアグニカ・モンタークが終止符を打った。これより調査が入るだろうが安心してほしい。」

 そう宣言すると共に、他の生徒達は安堵し、他の生徒達はどうしようと青い顔で周りを見る。

 そうしていると、一つの機体がキマリスジェタークフレームモデルの近くに落ちてくる。そのモビルスーツのコックピットが開くと、一人の女性が顔を出す。

 「嘘...ですよねグエルさん。ガエリオさんをどこに隠したんですか!答えてください!」

 その言葉に無慈悲にもグエルはコックピットから顔を出す。

 「ガエリオ・ボードウィンなんて人間は元からいない。お前が見ていたその人間は俺だ。グエル・ジェタークが多くを知るための隠れ蓑でしかなかった存在に何をお前は焦っている?スレッタ・マーキュリー。」

 絶望したような顔を残した彼女は涙を流しながらも続ける。

 「嘘です...そんなの嘘です。私に優しくしてくれて、私にいろいろな事を教えてくれたガエリオさんはあなたなんかじゃぁ...ありません!」

 ガエリオは顔を渋く歪ませて心なき言葉を淡々と述べ続ける。

 「ならガエリオという男は今ここで死んだ。残ったのはこの抜け殻の仮面だけだ。それだけならば俺の目の前から立ち去れスレッタ・マーキュリーお前には興味すらない。」

 そこに残るのは涙を流し続ける女性と、このテロ行為に終止符を打った男の姿だった。


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