TS転生女神だけど、臣民達がもっと搾取して欲しいって目で見てくる   作:銀幕の臣民

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流石パンジャン汚い

 我らが【銀幕】はすべての戦に勝利を収めていて、それが原因で信仰度はマックスな訳だったが、しかし何かの拍子でそれらが失われてしまう可能性がある。

 政略で失敗したりした時とか、一気に不満が噴出して「あのクソ生意気な女神排除しようぜ」って事で下剋上。

 そんでもって討ち取られてみんなの公共慰み者に。

 おおう、そうなったら最悪だぁ……

 

 と言う訳でとにもかくにもみんなからの信仰度を上げつつも情操教育を施し逆らうという気持ちが湧かないようにしないといけない。

 基本的に政策というのは与えるか奪うかのどちらかをする事によって反逆心を奪うのだが、私が取ったのは与える方だった。

 教育の効果が出るのは子供が大人になってから、そしてその大人が子供を産みその子供が教育機関に入ってから。

 長いスパンを経なくてはならないが、しかしその効果は絶大だ。

 と言う訳で早速【銀幕】中に教育機関を設置。

 教育を始めるのだった。

 

 それと同時にこの世界のエネルギー事情の研究も開始した。

 現状、私の神様パワーでこの国の防衛力は賄われているが、そのパワーはいつ失われてしまうかも分からない。

 そもそもその神様パワーはどこから生まれているのかが分からないのだから、そんな意味不明エネルギーに依存しているのはかなり危険である。

 と言う訳で、完全に神様パワーに依存しないエネルギー開発も行う。

 幸いと言うべきかなんというべきか、この国には『ミスリル銀』の鉱脈が多数存在していた。

『ミスリル銀』というのは莫大な魔力を蓄えた銀の事で、広大な鉱脈が見つかっているのは現状【銀幕】だけである。

 まあ、それがあったからこそこの国は【銀幕】って名前がついたのだが、それはさておき。

 

 調べてみたところ、現状の掘削スピードから考えるに数百年後には間違いなく枯渇する量の『ミスリル銀』。

 しかし将来的に『ミスリル銀』が大量消費される可能性もある。

 なんにせよ、これまた神様パワーと同じように、いずれ底を突くと分かっているものに依存するのは危険だ。

 やはり何か再利用可能なエネルギーを発見する必要があるだろう。

 

 ……人間も不思議だ。

 この世界の人間はファンタジーのお約束の魔法を使う事が出来る。

 しかしその魔法を行使する時に発生するエネルギーはどこから得ているのか。

 少なくとも魔法を使うと体力が奪われているみたいだが……?

 

 エネルギー問題。

 将来的になくなるかもしれない資源。

 考える事は沢山だった。

 しかし問題は次から次へとやって来る。

 

 そしてその問題は海の向こう側からやってきた。

 

「ぜひ、我が国で収穫する事が出来るこの果実、『ゾルク』を購入していただきたいのです」

 

【銀幕】からやや離れた位置にある海に面した国、【グローリア】。

 その大使が、我が国に『ゾルク』の輸出を申し出た。

 しかし『ゾルク』ってなんぞや。

 そもそもめっちゃ安い値段で売って来るのはなんでやねんと首を傾げると同時に不穏なものを感じた私は、ひとまず神様の権能を使って自らの分身を生成。

 それに自身の意思を移し、実際にその『ゾルク』を食べてみる事にした。

 

 めっちゃハッピーな気持ちになった。

 

 ご飯が美味しい、空気を吸っているだけでなんだか心がふわふわする。

 不安なんてすっ飛んでいった、自分が最強に思える。

 いまなら何でも出来そうな気がしたし、何よりもっと『ゾルク』を食べたいと思った。

 

 ――そして、それを食べなくなって訪れたのは案の定と言うかなんというか、禁断症状だった。

 身体を走る痛み、痒み、飢え、乾き。

 視界が真っ暗になり常に不安と恐怖が心を支配する。

 それを救ってくれる唯一の物は、『ゾルク』。

 その時点で私はその分身を破棄し、元の身体に戻った。

 

 溜息。

 がっつり麻薬やんけ。

 

 その兆候が出たのはかなり後。

 大体一か月継続して『ゾルク』を食べ続けた頃、自覚症状が出始めた。

 最初は「なんだか気持ちがぽかぽかするな?」程度だったが段々とその気分が強くなり、そして絶った途端に禁断症状が出た。

 これはあれか。

 あれなのか。

 麻薬で国を内側から腐敗させ、そして最後に戦争を吹っかけて支配するっていうあのあれか?

 

 ブリカス仕草って奴なのか?

 

 そうなると例の【グローリア】は【銀幕】の支配を目論んでいる事になる。

 それはかなり、厄介だ。

 なんだかんだで例の国は大国である。

 とはいえ幸い【銀幕】の不敗伝説を聞いたのか実際に戦争を吹っかけては来ていない。

 しかしだからといってこんな手段に出てくるなんて。

 

 なんてクソなんだぁと頭を抱えると同時に、これをどうにかして利用できないかとも思った。

 麻薬麻薬と一言で言うが、しかしそれは人体に悪影響が出るからそのように言われているのであって、実際麻薬は『薬』と書かれている。

 

 そんな訳で、実験を開始。

 どうしたら麻薬成分を無毒化出来るのかを研究する。

 今のところ具体的な実験施設はないので兎に角回数を重ねた。

 炙ってみたり燻ってみたり、蒸かしてみたり、燃やしてみたり。

 水に晒したり、酢を掛けてみたり。

 兎に角いろいろ試した。

 

 そしてその試行回数が1000回を超えたあたりで、ようやっと私は『ゾルク』の無毒化に成功したのである。

 

 それは、砂浜に埋めて一か月ほったらかしにする事。

 それにより完全に麻薬成分が消え去り、ただの美味しくて食べると少しだけハッピーな気持ちになる果物になる事が判明した。

 と、それが分かったのでさっさと安いうちにと『ゾルク』を輸入。

 国内に流通する時は勿論、無毒化作業をした安全なものである事を前提とし、そしてそれには【トラム】印の焼き印が付けられた。

 

 

  ■

 

 

 智神【ソラス】が曰く。

 

 

「彼女のその知的好奇心には目を見張る物がある。

 僕はあくまで目の前にある不可思議な現象にのみそれらが発揮されるが、しかしながら彼女は違う。

 どうやら彼女は僕らと違ってその好奇心の矛先を制御しているみたいなんだ。

 それは学者が生きていく上で必要な技術であり、なかなか修得する事が出来ない、あるいは僕みたいに一生習得できない者もいる。 

 兎に角、彼女はそれと文字通り人並み外れた熱意を以てして【銀幕】にメリットのある情報を捜査し、吟味し、獲得してきた。

 あるいは彼女は誰よりも学問に対して無関心であり、学者としての資格を持っているのかもしれない。

 ただ――僕とはあまりウマが合わなかったのも事実だ。

 僕みたいに好きな事だけに熱中するという事を、彼女はあまり好きではないみたいだったからね」




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