TS転生女神だけど、臣民達がもっと搾取して欲しいって目で見てくる   作:銀幕の臣民

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神々の遊戯

 そしてあまりにもあっさり講和条約は締結された。

 

 というか、そもそもこちらに非はないしを通し抜けたことに驚いている。

 最終的に今後も変わらない貿易を続けさせてほしいという要求はされたが、それ以外はこちらに有利な条件を呑んでくれた。

 こちらに不利なことは一切要求してこなかったし、むしろこちらに利があり過ぎて怖いくらいだ。

 

 恐らくだが、別に例の『ニュートンの林檎』によって国土を爆破された行為に対しては大したことは思っていないと思う。

 あの国は大国、ちょっとくらい国土が消滅したくらいで痛くも痒くもない。

 いやまあ、貿易の神なので多少痛みを感じてはいるかもだけど。

 

 それよりも、彼女にとっては自身の分霊を奪われたことの方が大きいだろう。

 それは恐らく彼女にとって初めての事。

 未知の体験は底知れないからこそ脅威であり、それを経験してしまった時点で私が空恐ろしい相手として認識され始めた事だろう。

 だからこそ、彼女は分霊の返還を求めなかった。

 恐らく、なにされているか分かったものじゃなかったからだと思う。

 

 兎に角、そんな訳で条約は締結された。

 とはいえあちら側は先に『あまりにも大きい賠償物』でこちらを黙らせにきたので、こちらもあまり余計に要求は出来なかった。

 まあ、平和が第一。

 戦争が終わったならばそれで良い。

 そして、私は【銀幕】に残されたものの後始末に手を焼いているのだった。

 

 まず、例の分霊。

 これに関しては厳重に縛ったは良いけれども、この後どうすれば良いかで悩んでいる。

 色々使える資源だから大切に扱わないと、とはいえ今はやることが決まっておらず、持て余している。

 それよりも、【グローリア】から貰った賠償物の方が問題だった。

 

 ……それは、神だった。

 あるいは、元神というべきか。

【クイント】が滅した国のうち、捕虜としてそのままにしていた神を一柱、渡されたのだ。

 これ、厄介物を押し付けられたか? 

 一瞬そう思ったが、しかしまずはその神と会ってみない事には始まらない。

 

「はじめまして、【トラム】。私の名前は【ティア】、だよ」

 

 彼女はかつて【ソーラ】を統治していた神だ。

 またの名を母神。

 高校生くらいの外見年齢の神だ。

 真っ黒な髪を細く長いツインテールにしている。

 特徴的なのは、その腹。

 ふっくらと膨らんでいる。

 これは肥満というものではなくて。

 

「うん、この中に、私の赤ちゃんがいるの」

 

 子持ち神を押し付けてきやがった……

 ていうか神様って身籠るのか……

 ていうか父親誰だよ……

 

「あー、その。お父さんはもう、いないんだ。死んじゃった」

 

 とはいえ、彼女は精一杯の慈愛が篭った笑みを膨らんだお腹に向け、優しい手つきで撫でる。

 

「それよりも、【トラム】。あれはどうするの?」

 

 あれっていうのは、つまりあれだろう。

 むすっとした顔で正座させられている【クイント】の分霊。

 

「貴重なものだし、大切にしないと」

 

 結構辛辣な事を言ってくるが、さておき。

 

 私がじっと見ていると彼女はむすっとした顔のまま言う。

 

「わたくしに神としての何らかを期待しているのならば、裏切られる事になりますわよ。そもそもわたくしは分霊ですし、国を離れ臣民を失った神に存在価値はありません」

 

 てっきりヤケになっているのかと思ったが、しかし彼女の言葉には真に迫るものがあった。

 どういう事かと尋ねてみると、代わりに【ティア】が答えてくれる。

 

「私達神は臣民達を導く倫理、道徳、常識だから。それが唯一にして絶対の存在意義であって、だからそれがなくなったらいないのも同義って事だよ」

 

 ……言いたい事は分かったけど。

 

 だけどそれは悲しくないかな。

 私達はこうして存在しているのに、誰かに存在意義を認められなきゃ存在する事が許されないなんて。

 そしてその言葉をふたりは少しだけ意外そうな顔をして聞いた。

 【ティア】が言う。

 

「なんか、人間みたいな事を言うね」

 

 そりゃあ元がそうですから。

 とは、当然言えない。

 曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す事しかできない。

 

「もし、その性質が嫌なら私が『産み直して』あげても良いよ? 私はそれが、出来るから」

 

 さらっとそんな事を言ってのけるあたり、やはり彼女らは神であって人間ではないのだなと改めて思うのだった。




R18版を投稿しました

https://syosetu.org/novel/304301/

こちらはこの作品の本筋には全く関係のない話となっていますので、読まなくても問題ないです。

特に人間君が可哀想な目にあうのが苦手な方はご注意を。
マゾな方は好きになる、かも?

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