異世界で生きたくて   作:自堕落無力

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原作開始前
序章


 

 この世界のとある場所、自然に囲まれている穏やかな風景に囲まれた場所にそれなりに豪勢な屋敷があった。

 

 その屋敷を、土地を所有しているのはこの世界の者ならば誰もが体の奥底に持つ『魔力』――それを引き出し、体に込めれば身体能力や感覚の強化、あるいは武器に流し込む事で武器の強化が出来るというその力を使って戦う騎士である『魔剣士』を代々輩出している家系の貴族、カゲノー家である。

 

「ふっ!!」

 

「やあっ!!」

 

 カゲノー家の屋敷の中庭にて凄まじい剣戟であり、剣舞を繰り広げているのは絹のような美しい黒髪を背中で切り揃えた容姿端麗な少女でありながら、確かな気の強さも持つ八才の少女ことカゲノー家の長女であるクレア・カゲノー。

 

 そして、そのクレアと剣戟を繰り広げているのは彼女の二歳年下の弟であり、カゲノー家の長男である短い黒髪、それなりに容姿の整った少年であるシド・カゲノーである。

 

 

 

「最近、俺の子供たちが怖くなってきたんだが……」

 

「そう? 将来安泰そうで良いじゃない」

 

 二人の手合わせを見て、魔剣士としての戦闘技術を教育しているカゲノー家の主、男爵は娘と息子の日々高まっている実力に若干戦々恐々としている。

 

 なにせ教え始めてたったの数年で自分の実力を超える域にまでどちらも達し始めているのだから無理も無い。

 

 対して、彼の妻は、娘と息子の成長ぶりを見て穏やかに微笑んでいた。

 

 

『凄い……』

 

 カゲノー家に仕える使用人たちなども皆、姉弟の戦いにそれぞれ見入っていた。

 

 

「また、腕を上げたわね。シド」

 

「姉さんこそ」

 

 二人は激しく剣舞を交えながら、それぞれの実力を讃え合う。

 

 クレアとシドの戦い方はそれぞれ相対している。

 

 クレアの剣技は言わば、才能やセンスに溢れたものを感じさせる剣技であり、対してシドの剣技は基礎を積み重ねたものである。

 

 クレアの剣舞が鋭く冴え渡ったものであるなら、シドの剣舞は堅実にして臨機応変。

 

 それが故に戦いの状況は拮抗状態。

 

 

 

「それじゃあ、そろそろ本気を出していくわね」

 

「こっちもだよ」

 

 そうして、二人は共に『魔力』を練り上げ、用いる事で魔剣士としての本領を発揮し始めたのだった……。

 

 

 

 

2

 

 

 今日も姉であるクレアとの夕暮れまで決着のつかない手合わせをし、風呂に入り身を清め、食事を取り、俺は勉学のために書庫に入る。

 

 最初に言うが実は俺は転生者だ。まさか、自分がそうなるとは思わなかったがともかく、転生特典というもののためかどうかは知らないが、生まれた時からすぐにそうだと認識出来た。

 

 そのため、赤子生活は辛かったが……。

 

 ともかく、読み込んでいた物語の世界とは別の世界に転生した俺は『魔力』や『魔剣士』、『貴族』という何もかもが転生前とは違った世界に適応できるように努力した。

 

 この世界において『魔力』は武侠物の『気功』のような概念だったのでその方向性での使い方と制御の訓練をし、剣、それに格闘術そのものはとにかく基礎を追求した。結局基礎があるからこそ、応用があるからだ。

 

 そうしてこの世界での情報を掴む事も含めて書物を読みながらの勉学もしている。

 

 

 

 ひとまずは貴族に生まれたのでそれらしい生き方、『ノブレスオブリージュ』を心がけていた。

 

 

 

「……うーん、ここら辺が気になるな」

 

 生活をし、勉学している中で気になる事は纏めているのだがこの世界の重要そうな要素として『魔人ディアボロス』、それを退治した『人間、エルフ、獣人の三人の勇者』、『〈悪魔憑き〉』、『教団』などがあるのが俺は気になった。

 

 いずれ、もうちょっと自由に行動できるようになれば調べてみたりするつもりだ。

 

 

 

「わぷ」

 

「相変わらず、精が出るわねシド」

 

 考えに耽っているとこの世界において俺の姉であるクレアが声をかけていたずらとばかりに頬を突いてきた。僕の机の近くには夜食が置かれている。

 

 わざわざ、持ってきてくれたのだ。

 

 

 

「ああ、姉さん。ありがとう」

 

「どういたしまして……頑張るのは良いけど、根を詰め過ぎては駄目よ」

 

「分かってるよ。でも優秀な姉さんを補佐するには凡人の俺じゃ人一倍、いやもっともっと努力しなくちゃいけないから」

 

 実際、俺は姉で長女のクレアを補佐する者としていようと思っている。貴族にある跡取り問題やらそうした騒動はしたくないからだ。

 

 それにクレアは貴族として普通に優秀で風格もある。

 

 魔剣士としての実力も俺が体の奥底で魔力を圧縮と爆発を高速に繰り返しての蓄積や強固に練り続けながら、溜め込み続けているので鍛錬中使える魔力は制限状態とはいえ日々、俺の実力に迫り続けて今日もそうだが、引き分け続けているのだから……。

 

 

「もう、どこでそんな言葉覚えてきたの。誑しにでもなるつもり?」

 

 照れながらも微笑み、クレアは俺を抱き締めてきた。

 

 

 

「そんな器用じゃないよ、俺は……」

 

 俺は苦笑しながら、クレアを抱き締め返す。

 

 

 

「ねぇシド、貴方は私にとって、自慢の弟よ。それだけは覚えておきなさい」

 

「うん、ありがとう。俺も姉さんが自慢だよ」

 

 その言葉は事実だ。俺はクレアを姉として好きであり、親愛を抱いている。

 

 転生前の世界には姉なんていなかったしだからこそ、美人でありながら、こうして可愛がってくれる姉のクレアが好きである。

 

 

 

「ふふ……それじゃあ、夜更かしは程々にしてちゃんと寝なさい。睡眠は大事よ」

 

「はあい」

 

 クレアはそう言うが『魔力』を上手く用いれば体の自然回復力も増幅出来るので睡眠も少ない時間で済むように出来る。

 

 そうして俺はショートスリーパーとして削った睡眠時間を鍛錬や勉学という自己研鑽につぎ込んでいたのだった……。

 

 

 

 

 




 好き勝手に書いてるだけなのでよろしくお願いします。

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