『聖地リンドブルム』には英雄オリヴィエと魔人ディアボロスによる伝説や『聖域』、『女神の試練』など世界中においても有名な話や場所などが多くある。
そのためにこのリンドブルムには多くの観光客が訪れているのだが、実のところ、特に観光客を惹き付けるのはリンドブルムが温泉の名地であるという事だ。
傾向として、温泉好きが多い日本人の一人であるシドも又、温泉好きでありだからこそ、リンドブルムの事は気に入っている。
故に『女神の試練』開催当日である今日、早朝に温泉に入る事で試練と更に試練の後、状況次第では行う事になる作戦を開始する前のリフレッシュしようと考えていた。
ただし、昨夜と違って早朝の温泉は混浴となってしまうのでクレアにアレクシア、アイリス三人が入った後に温泉に浸かろうと考えていたのだが……。
「シド、一緒に温泉に入るわよ」
「……は?」
アレクシアとアイリスによる好意から高位貴族専用の最高級宿の部屋を与えられ、同室となっているのもあり、ベットが二つあるのにクレアの抱き枕となりながら寝て過ごし、そうして起床したシドはクレアが発した言葉に混乱した。
「今日は貴方が女神の試練に挑む記念の日だしね、万全の状態で挑めるようにお姉ちゃんがたっぷり癒してあげるわ」
「いやいやいや、癒すも何も……姉弟とはいえ、混浴するのは不味いだろう」
「何が?」
とりあえず、クレアを冷静にさせようと説得を試みたシドだが、クレアは本当に何が問題あるのかという態度で問いを返してきた。
「何が……って、え……」
「ふふふ、シドはお姉ちゃんの体に欲情しちゃう変態さんって事なのかしら? それはそれで私にとっては愛しいけど……ふぅ」
シドが混乱してる間に誘惑するかのように、クレアはシドをまるでヘビが獲物を捕らえるかのように抱き着き、その耳に艶やかな息を吹きかけた。
「っ……か、揶揄わないでくれ、姉さん」
シドはクレアの息に悶えながら、言う。
「私に黙って、色んな女性と仲良くなったりするからよ……そこはもう、諦めているけどだからって、許してるわけじゃないんだから。ほら、良いから観念しなさい」
「ぅ……っぐ……はい……」
クレアは愉し気に彼の首元や耳に甘噛みするという悪戯をしながら、命令してシドは『(どこで接し方、間違えたんだ)』と思いながらも応じるしか無かったのでクレアと共に部屋を出て、露天風呂のある浴室へと向かった。
そして……。
「おはよう、シド。そしてクレア姉様」
「…………っ、お、おはようございます……シドさん」
明らかに図ったタイミングでアレクシアと凄く恥ずかしそうにし、今もなお、戸惑っているアイリスと出会った。
「おはよう、アレクシア。そしてアイリス姉さん『なんで逃げるの?』ぐえっ!!」
いよいよどころか現実的に状況がヤバくなってきたので挨拶して、逃げようとするとクレアとアレクシアに首根っこを掴まれて逃亡阻止された。
「なんでって……どう考えようと、どう見てもヤバいだろうがこれはっ!! というかアイリス姉さんまで巻き込むな」
「何言ってるの、巻き込んだりしていないわ。アイリス姉様だって、ちゃんと納得して此処に来たもの、ねぇ、アイリス姉様」
「ひっ!?、え、えぇ……そ、そうですよアレクシア。シド君、わ、私は大丈夫ですから」
アレクシアが凄い腹黒い笑みでアイリスを見ながら、言うとアイリスが怯え、震えながら頷く。
「明らかに大丈夫じゃないよ……」
いったい、アレクシアとアイリスはどんなやり取りをしたのかと思いながらシドは結局、温泉に入る事に……。
『おおっ……』
服を脱ぐとその究極と呼べる域で鍛え上げられ、絞り込まれたシドの肉体と聖剣を思わせるようなとあるものに対し、クレアにアレクシアは恍惚とした表情で絶賛する息を吐き、アイリスもシドの肉体に対しては魅入りながら、とあるものに対してもちらちらと顔を赤に染め、照れながら見てきた。
「どう、シド。私の体は?」
「お姉ちゃんの体についても感想が欲しいなぁ」
アレクシアもクレアも服を脱いで、挑戦的かつ誘惑的に自分の体に対しての感想をシドに求めた。
「アレクシアも姉さんも男である俺からすれば、とても魅力的で素晴らしいと思う。だから混浴出来て俺はとても恵まれていると思う。アイリス姉さん……必ずなにがしかの方法で責任は取るよ。後、とても綺麗です」
「……あ、ありがとうございます。シドさんも良いと思いますよ……今回の件はお互い様という事で」
シドは大きく恥ずかしがっているアイリスに対して言葉をかけるとアイリスも言葉を返した。
その後、事ここに至ってシドは意識を切替え、クレアにアレクシアとアイリスの三人との混浴を楽しんだのだった……。
二
『女神の試練』が開催されるのは広大であり、豪華なドームであり競技場の中。
『女神の試練』に参加するシドは剣と共にルーナによって贈られたという形式である彼専用の騎士の礼服(これも特殊な製法により、魔力の伝導率など性能は極上)を着、ミスリルの合金による剣を帯剣して競技場の外に居た。
傍には彼を見送るために居るクレアとアレクシア、アイリスと……。
「ふふ、良くお似合いですよ。シド君」
「と、とても格好良いです。シド君」
ローズにそして、シェリーがシドの姿に見惚れながら、微笑んで言葉をかける。
「ありがとう、ローズ、シェリー先輩。二人もよく似合っていて綺麗だ」
シドは微笑んで礼を言うと来賓のために着飾っているローズと同じく来賓用のドレスを着ているシェリーの姿を賞賛した。
「ありがとうございます」
「ありがとう、シド君」
二人もシドの言葉に微笑んだ。
「イータ所長もシェリー先輩を世話してくれているようで……ありがとうございます」
「気にしなくて良い……シェリーはとても良い子で助手としても優秀な子だから」
シドはシェリーの傍に居てやはり、来賓であるために着飾っているイータに対して言いながら、視線で『よろしく頼む』と告げるとイータは微笑を浮かべ、シェリーの頭を撫でながら『任せて』と返答した。
ネルソンが教団の幹部であり、確実に元幹部であったルスランの事を知っているのでシェリーに何か言わないよう、対応させるためにイータに同席するよう頼んだのだ。
イータはこれにシドからの頼み、シェリーを日頃、可愛がっており個人としても気に入っているので即座に応じたのである。
「これはこれは……今すぐ本にしたくなるほど、微笑ましい光景ですね」
「げ……」
そんな時、これも又、いざという時の護衛の役割をも担っているナツメに扮するベータが現れる。初対面早々、気にくわない相手だと認識したアレクシアは顔を歪めたが……。
「それはどうも。ナツメ先生。貴女もとても綺麗だ」
「ありがとうございます、貴方もとても格好良いですよ」
来賓のために着飾ったベータを褒めると彼女は内心、凄く悶えながら応じる。
視線では『計画』のための準備は整っている事をベータは伝え、シドは了承する。
そして……。
「じゃあ、そろそろ行ってくる」
『女神の試練』は日が沈んでから行われるが、開会式やらなにやらのために参加する戦士は競技場の中に居なければならない。無論、女神の試練が行われるまでは用意された部屋にて色々と快適に過ごしたり、出来るらしいが……。
「ええ、行ってらっしゃいシド」
「皆に貴方の実力、見せてあげなさい」
「シドさんの実力、楽しませてもらいます」
「お気をつけて、シド君」
「精一杯、応援しますね」
「頑張って」
「ご武運をお祈りします」
そうしてシドはクレアたちから見送られ……王女含めて魅力的な沢山の女性に見送られるその様子に……。
「あ、あいつは何者なんだっ!?」
「なんて奴なんだ……」
試練に参加しようとする戦士など男性陣はシドに対し、羨望やら驚愕やら嫉妬やらを覚え、そしてその多くは直後に甘い雰囲気多めだったのでショックで地に伏せたのであった……。