時間を少し遡り、場所は『聖域』内――ネルソンがシドにより、転移させられた事で残されたシャドウに扮したアルファ達、『シャドウガーデン』とクレアたちはというと……。
「ねぇ……貴女、シャドウだったっけ? 私はシドの姉、クレアよ」
クレアがシャドウに扮したアルファへと歩み、自己紹介する
「どうも初めまして、クレアさん……貴女の事はゼロ、いやシドから良く聞いているわ」
アルファは応じ、手を差し出すと二人は握手を交わした。
「そう、それでシドって二年の旅の時は貴方たちと一緒に居たって事で良いのよね?」
「ええ、そうよ。クレアさんがそう聞いてくることを予想していて、シドは自分の事を話すように言っているからその間の事が聞きたければ話してあげるわ」
「じゃあ、お願い」
クレアがそう言うと二年間における『シャドウガーデン』、無論シドが協力者だという態での話なので脚色は大分あるが……ともかく、アルファは話始め……。
「それでね……」
「ふふふ」
段々と話の内容が変わっていき、シドがどれだけ魅力的だとか小さい頃の話だとかをアルファとクレアだけでなく、アレクシアにシェリーにローズやナツメに扮するベータにイータ、ゼータにイプシロン、シータら等が楽しそうに話し合う『女子会』のようなものへと変わっていく。
アイリスは『ディアボロス教団』について話し合おうとしたが、それはシドが帰ってきてからじっくり話すという事になった。
そうこうしてシドが聖域から『女神の試練』が行われた競技場へと通じる扉を開き、アルファ達が出た後に『女子会』を再開し、早朝の時間帯が近づき、競技場の空に日が昇り始めている時……。
「随分と打ち解けたようだな」
『シド!!』
シドがアルファ達と同じように扉から出て来ると皆がシドへと近づいていく。
「聞いたわよシドっ、道理で女の子の扱いに練れていると思ったら……このこのぉっ!!」
「ぅぐえええ、うおおおお……分かっていたけど、急に来たかぁ」
クレアはシドへと直ぐに詰め寄り、首を絞めながら思いっきり力の如く、揺さぶった。
「ま、まぁともかくそういう事だよ。俺はシャドウたち、『シャドウガーデン』と共に『ディアボロス教団』と戦っている。本当はお前たちを巻き込みたくなかったが、機会が機会だったから、明かす事にしたんだ。悪かった」
「一人で危険な事をしていた事に思わない事が無い訳じゃないけど……でも、貴方の事だから、私達を守ろうとしたのよね」
「貴方はやっぱり、良い男ね」
「シド君は私が会った時から、ずっと変わっていなかったんですね。変わらず、誰かのために悪と戦っていた……」
「あんな怖い人たちと戦えるなんて、凄いですシド君」
クレアにアレクシア、ローズにシェリーらがシドに対しそう話しかける。
「皆を苦しめる悪を放っておけなかったのが大きいけどな……それでシャドウ、大聖堂の方は?」
「無事、終わっているわ」
アルファ達は女子会の中でも別動隊による報告を受けていたので頷く。
「良し、ならアイリス様。詳しい話は大聖堂でしましょう……先に少し、休憩したいですし」
「わ、分かりました。それとネルソン大司教代理は?」
「聖域内に籠りたいそうですよ」
アイリスの問いにシドはそう答えると話は終わり……。
「ゼロ……」
「どうし……んむ、ふ、く……」
アルファに応じていたシドだが、アルファはシドへと近づきながら抱擁し深い口づけをした。
『んなっ!?』
アイリスも含め、クレアたちはアルファとシドの口づけのそれに驚きながら、頬を赤に染めた。
「ふふ、それじゃあ後でね」
アルファは口づけを止めるとクレアたちに挑戦的に微笑むと離れ、『シャドウガーデン』の者たちと去っていき……。
「シドぉぉぉっ!!」
「ね、姉さ……んぐっ!?」
そして、即座にクレアがシドへと近づいて抱擁しつつ、深い口づけをした。
「わ、私も……」
「女神の試練を突破した事ですし……」
「ふふふ……」
アレクシアにローズ、ベータも便乗。
「……ふきゅう」
「シェリーには、刺激強すぎたね」
一方でシェリーは刺激の強すぎる光景にキャパオーバーして気絶、イータが看病を始める。
「……凄い状況ですね」
アイリスも又、なんとも言えない混沌とした状況で呟いたのだった……。
二
少し休憩をした後、シドはシャドウに扮したアルファとクレアにアレクシア、ローズにシェリー、ナツメに扮するベータとイータ、そして『聖教』側だったが、ディアボロス教団の暗躍の一端を掴み、命を狙われたのを助けられた事でシドたちの協力者となったセイジン・セイショクという大司教とその一派たちで集まり、口裏合わせも含めて話合いをする。
というのもセイジン・セイショクは今日よりドレイクとネルソンに代わって秘密裏に此処の大司教となるからである。
「『ディアボロス教団』は世界のどこにでも潜んでいる。例えばこんなふうに」
シドはディアボロス教団について話を始め、アイリスたちが率いる騎士団に潜み、監査中に密かに証拠消しそして、今こうして話し合いをしている事についても盗聴しようと動き、『シャドウガーデン』に捕まった『ディアボロス教団』の諜報員をこの場に引きずり出しつつ、密かに霧状の魔力によって干渉し、自白させた。
「まさか、私たちの元にまでいるなんて」
「だからこそ、俺らと協力して動いて欲しいんです。アイリス様……総合的な面で言えば、奴らは数も力もこちらより上だ。上手く動かないと潰されてしまう」
「……みたいですね。では、お願いしますシドさん、シャドウさん、それにセイジンさん」
そうして、この場にてシドはアイリスやクレアたち、セイジンらと『ディアボロス教団』に対抗するための同盟を組んだのであった……。