異世界で生きたくて   作:自堕落無力

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四話

 

 

 

 前からカゲノー家に生まれた神童であり、超天才魔剣士姉弟、そしてクレアに俺が『英雄の子孫であるかもしれない』と俺がアルファたちと共に広めた流言もあってそれを確認、『ディアボロス細胞』の持ち主ならば拉致って、実験材料にすべくこちらへと手先を放った『ディアボロス教団』の支部のアジトを俺は逆に強襲した。

 

 その支部のアジトの責任者は王都――人口百万人を超える大都市にて近衛を務めたオルバ子爵。

 

 結構な地位と職務を得ている彼が『ディアボロス教団』の手先となった理由は彼の一人娘であるミリアが〈悪魔憑き〉、『ディアボロス細胞の暴走』による自滅症状が出始めたからである。

 

 こうした経緯からしても『教団』は王都にもその勢力を有しているのは確定。

 

 又、オルバ子爵にその配下を全滅させた後、アジト内を探れば様々な資料が残っていてオルバ子爵を殺す前、彼が使っていた使用者の魔力を莫大な域に強化し、いわゆる『覚醒状態』にする薬剤の事、『ディアボロス細胞の所有者』と思われる候補者の調査書や他にも『ディアボロス・チルドレン』に関する資料もあった。

 

 『ディアボロス・チルドレン』というのは孤児や貧しい平民の子からわずかでも魔力適性があれば施設に送り、厳しい訓練と洗脳教育、薬剤投与を繰り返して自らの私兵にするというものである。

 

 又、オルバの私室には娘であるミリアの回復を信じた彼による遺書や日記、ミリアが治療を受けている王都にある教団の関係施設の場所の地図などが残されていた。

 

 そうした物があったのは親としての情や人としてのまともな部分があり、悪魔に魂を売りながらも彼なりの抵抗なのだろう。

 

 当たり前だが教団はオルバを従わせるため、一応ミリア嬢に対して治療をしているようだ。

 

 元を辿ればそれは当たり前の話であるのだが、しかして日記に書かれたミリア嬢の治療状況からすればわざと遅々とした治療をしているようである。

 

 だが、俺がオルバを殺した事が知られれば一気に態度を変えるだろう。ミリア嬢をすぐさま実験材料にするに違いない。だからこそ、救出するならばその猶予は僅かだ。

 

 本来ならば俺たちは世界中を移動しながら、もっと『ディアボロス細胞の所有者』の保護に『教団』についての更なる調査に妨害をして対抗していく算段であったが……。

 

 

 

「すまないが、予定を変える必要が出来た。オルバ子爵の娘、ミリアを助けるために……そして、そのためには相当に危険を冒さなければならない。だが、どうか俺に力を貸してほしい。お前たちの力が必要なんだ」

 

 俺はアルファたちを集めて頼み込んだ。あくまで俺の自己満足でしかないが、オルバ子爵の娘に対しての献身、娘のために悪魔に魂を売る等、全てを捧げたその覚悟を報われるようにしたいと思ったのだ。

 

 だが、ミリア嬢を救出するためには王都にあるアジトに踏み込まねばならず、下手な事は出来ない。一歩間違えば教団どころか王都の騎士団ですら敵に回すようになり、危険度は更に増すようになる。

 

 『虎穴に入らずんば虎子を得ず』とは言うが、あまりにも虎穴の規模がでか過ぎる。リスクが高いので俺はアルファたちへと相応の態度を示しながら、頭を下げて協力を頼む。

 

「……もう、本当にしょうがない人。シド、貴方のそういうところは美徳だけれどでももっと、私達を信頼してよ、頼ってよ……言われなくても私は貴方を支えるためにいるんだから」

 

 アルファは頭を深く下げている俺へと近づき、俺の顔を取ると微笑みかけながら口づけしてきた。

 

 

 

「言われなくたってこの力……どこまでもお貸しします」

 

「私は力ではなく、頭脳になりますがそれでも、使ってください」

 

「ボスはもっと、堂々とデルタたちに命令してくれれば良いのです」

 

「どこまでも尽くします。主様」

 

「この身全て、主に救われた時から貴方のものです」

 

「……マスターの為なら、頑張る」

 

 アルファの行動を切っ掛けにベータたちもそれぞれ、俺へと言葉をかけながら口づけてきた。

 

 

 

「ありがとうな、皆。俺は本当に果報者だ……」

 

 そして、俺はそう言いながらアルファたちの行動に応えるべく、全員にそれぞれ、抱き締めながら口づけする。

 

「では一度、教団の懐に潜り込むとしようか」

 

 

『はっ!!』

 

 そうして俺たちは王都に潜り込み、ミリア嬢を救うための計画を練りつつ、準備を始めるのであった……。

 

 

 

 

 


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