ハジメ「言っとくがこれはまだ始まりだ」
ハジメの一言に雫と香織は戦慄する、実際まだ序章も序章、しかし既に空の前世は苦痛と言う言葉では足りない程過酷な物だった
雫「な、南雲君、冗談よね?、だってもう空は…………」
香織「そ、そうだよハジメ君、これ以上の事なんて…………」
ハジメの言葉が質の悪い冗談であってほしいという願いを込める様にハジメに聞く、しかしハジメはその願いをバッサリと切り捨てる
ハジメ「いや、俺も悪い冗談だと思いたいが事実だ、今まで話したのは始まりに過ぎない」
ハジメの言葉に2人は顔を青くする、そんな2人を無視しハジメは再び話し始める
ハジメ「そして異界賊神は空に加護を与えた後空の世界の物資、人、武器等全て略奪し空1人を残し時空を越え消えていった、空はその世界で一人になった」
雫「そんな、世界に1人ぼっちだ何て」
香織「空…………」
香織は寝息をたて1人眠る空を見る
ハジメ「ああ、そして空が次にしたことは……………………自殺だ」
雫「は?」
香織「え?」
ハジメ「世界に絶望したんだ、死ねないと分かっていても死にたがる、あんまり言いたくないが、それは俺も少し分かる気がする、俺も奈落の底に落ちた時絶望したからな」
雫「ちょ、ちょっと待って南雲君、自殺って何?どういう事?」
香織「そうだよハジメくん!!、ちゃんと説明して!!」
ハジメの言葉に2人は強く迫る、しかしハジメは何事も無かったように答える
ハジメ「言葉の通りだよ、飛び降り、首切り、炎に飛び込んだり水の中に飛び込んだり、思い付く限り全部試したんだよ、そしてその全てが無駄に終わった、それが何回続いたか空自身にも分からくなった時、空は世界を破壊することを決めた、まぁこう言っちゃ何だが人が居なかったのは幸いかもな」
雫「そうね」
香織「うん、本当にね」
ハジメは暗い雰囲気の2人を励ますため少しでも明るい事実を持ち出す、この事実が後の惨劇を加速させることを告げずに
ハジメ「それから空は世界を破壊し始めた、見たこともない大陸、知らない海、知っている程度の大陸、知り尽くしている大陸、そして住んでいた家、錬金した数々の作品全部な、そうしている内に空は喰らい尽くし狂い尽くした」
ハジメは記憶の中の空の前世を思い出す、忘れたくても忘れられない巻き起こる嵐、燃え盛る炎、枯れ果てた海だった場所であろう黒い大地、そしてそれらに囲まれる立ち尽くし一筋の涙を流す血の様に赤い髪の男
ハジメ「……………………」
雫「南雲君?」
香織「ハジメ君?、大丈夫?」
ハジメ「あ、ああ悪い、そして世界の全てを破壊し尽くした後、空は再び自身に刃を突き立て、そして」
そこから雫と香織は先の話を予測した、自身に突き立てた刃により絶命し今世に招かれたのだと しかし
ハジメ「そして…………死ねなかった」
雫「え?、嘘よね?」
香織「そんな、そんなのって」
ハジメ「2人とも異界賊神が空に与えた加護の内容覚えてるか?」
雫「え?、えっと確か空の世界が存在する限り空が死ねないって……………………え?嘘、そう言うことなの?」
雫はいち早く察し戦慄する
香織「え?何々?雫ちゃん分かったの?」
雫「香織、空の世界が存在する限りってことはきっと空の世界にいた人も含めるのよ、そして空の世界の人達は空を残してその世界から連れ去られてしまった」
香織は説明を聞き震え出しハジメは苦い顔をしながら答える
ハジメ「正解だ八重樫、空の話だと世界の定義ってのは決まってるらしい、その内の1つに人が居ることってのがあるらしい、そして世界と人は繋がりがあるらしい、それは何処に居ようと途切れる事はないつまり」
2人はいやな予感を覚えその予感は的中する
ハジメ「世界の破壊、それには人を殺すことも含まれるんだ」
雫「そんな」
香織「…………」
雫は顔を抑え香織は顔を伏せる、ハジメが2人の限界を感じる
ハジメ「時間もない、ここからは簡潔に話すぞ」
それからハジメは宣言通り簡潔に話し始めた
異界賊神を追いかけ世界を渡り破壊の限りを尽くした事
何年経ったのか分からない程の時間が経ち、漸く宿敵を見つけ殺したこと、自身の世界の人間が既に心も体も殆どの人が壊れていたこと
まともな者を見つけても世界を壊したことを責められ罵られ蔑まれたこと
その人達も全員殺したこと
そして自分の命を絶ち漸く死ねたこと
ハジメ「これが空の前世にあったことだ、最後はささっと説明したけどな」
ハジメはこの言葉を最後に話を打ち切り運転に集中した
ハジメ「そろそろ町に付く筈何だが……ん?」
そこには巨大なワームのような生物が立ち尽くしていた