徒然異世界紀行集   作:源北

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記録:n+2132 雲界世海

●概説

n+2132 は雲海と浮遊する大地世界である。

全ての陸地は雲海に浮いており、人をはじめとする動植物はその生態系を陸地の表層に築いている。

 

陸地の内「大陸」や「島」に分類される程の大きさは、その自重により体積の九割が雲海に沈んでいる。

眼下に広がる雲海とは別に、雨を降らす積乱雲が上空に浮かんでいる為、陸地は上下を雲で挟まれている形になっている。

 

その環境特性から大陸・島間の移動方法や技術が発達しており、飛行機や飛行船等の地球でも見られる飛行機械の他、浮力を起こす能力を持つ蒸気船や翼竜・鳥類等の大型生物で雲海を渡る騎獣士といった存在が確認できる。

 

n+2132の雲海には一切の隙間がなく、雲底下の様子を視認することはできない。

また雲海の内部は、表層付近から隔絶した暴風が吹き荒れ、その風速は深部に向かう程悪化している。

さらに大小様々な岩石が風に乗って飛び交っている為、一度そこに足を踏み入れた者は無事では戻れない。

 

赤道付近では、熱せられた気流による上昇で雲海が高く、その影響で強風が吹き荒れている。また、その霞な中を「島」にも満たない岩石群がその中を周回する光景が見られる。

 

宇宙空間から見れば、おそらくn+2132 は大陸を有するガス惑星のような見た目だろうかと思う

 

 

 

●生物

n+2132で確認できた知的生物としては一般的な人間の他、獣人やエルフなどといった亜人種が確認でき、浮遊大陸や島々に点在している。

 

動植物は地球に現存する種と同等のものが確認できるが、異なる点として魚類―――特に地球で海水魚と汽水魚に類する種にはトビウオのような羽が付いており、実際に雲海を泳ぐ姿が見れる。

 

その他、騎獣として調教されている巨鳥や翼竜などn+2132独自の生物が確認できる。

 

 

 

●幻獣

人や動植物の他に、雲海で確認された存在の総称。

ニュアンスとしては宇宙人やネッシー、天狗等のUAMや妖怪といったものに近い。

 

その他人里に被害を出すモンスターや神獣や悪魔として崇拝されるモノなど、人に凶暴な存在や超常的な力を有する者も含まれる。

 

 

 

●軍事・技術

n+2132の軍事・技術の発展度合は、その環境特性による格差はあれど概ね18世紀から19世紀相当。列強諸国においては20世紀相当までの発展が見られる。

特に航空機技術については、地球のそれと比べても早いものがある。

 

航空機技術―――n+2132では造船技術になるだろうか―――の変遷としては、まず巨鳥や翼竜といった騎獣を操る騎獣士の登場。次いで軽い気体で浮揚を得る飛空船が交易の主役を担った。

 

産業革命が起こると内燃機関の船舶や航空機が登場し、旧来の大国を打ち負かす列強諸国の台頭を促した。

 

 

 

・空中軍艦

浮揚力を起こす内燃機関を搭載した軍用艦船。

それまでの飛空戦列艦では難しかった重装甲・重武装が容易にできるようになった。

 

炸裂弾を防ぐための装甲艦から始まり、強力な艦砲と堅牢な装甲を誇る「戦艦」遠洋航行能力・高速性などを活かした攻撃力を持つ「巡航艦」魚雷などの水雷兵装を装備した「水雷艇」などが存在する。

 

※海でないのに魚雷と聞くと変だがこの世界の魚は雲海を泳いでいる。

 

 

・飛空戦列艦

多数の側舷砲を装備した非装甲の飛空船。

ガレオン飛空船を起源とし、空中軍艦が登場するまでの海戦の主役を担った。

 

大砲の技術向上のより、その脆弱性と重装甲が難しいといった問題が浮き彫りになったことで、飛空船から蒸気船へと海戦の主力は移っていった。

 

 

・騎獣士

巨鳥や翼竜といった飛行生物の騎乗に長けた者、または職業の総称。

 

主に巨鳥と翼竜の二種類が主流で、その生物的違いから騎獣兵と竜騎兵の二種類分けられる。

空を飛べるという優位性と機動性から、偵察や伝令に活用された他、戦線後方への奇襲や爆撃、海戦においては敵船への切り込みなどの場面で活躍した。

 

その反面で高い技量が要求されることから、馬に騎乗する騎兵と比べその頭数は少ない。

 

1、竜騎兵

半神的、凶暴な肉食獣として幻獣に類する竜種の中で、比較的に人の手で調教できた種に騎乗する兵士。

弓矢を寄せ付けない鱗とその体躯による高い攻撃力を誇る。

 

竜種故にその気性は荒く運用が難しいものがあり、余程の大国でなければ竜騎兵の大量投入はできない。

 

2、騎獣兵

主に鳥類を騎獣に用いた兵士。

運用の難しい竜騎兵に比べ遥かに扱いやすく旋回性でも上の為、中小国ではこちらを主力とすることも多い。

 

しかし鳥類故に耐久性が低く、特に羽毛に引火する恐れから騎乗しながらの銃火器の使用が出来ない。

その為、主な攻撃手段として弓矢刀剣の他、空気銃などが使用される。

 

 

 

・航空機

地球と同様に動力と主翼による揚力で飛行する機械で、軍用機として戦闘機、爆撃機、偵察機などがある。

異なる点として、進んだ航空機技術に銃火器が追いついていない為、その武装は異なる。

 

具体的に言うと、ガトリング砲や斉射砲など重く取り回しの悪い機関銃しかないため、航空に搭載できる機関銃が登場していないからだ。

 

しかしn+2132では騎獣士といった航空戦力が存在している為、航空機銃の代わりに散弾銃が戦闘機の主武装に用いられている。

 

 

 

 

 

 

追記:秘匿性が高く確認したわけではないが、魔法に類する技術もあるらしい

 

 

 

●国家・文明

雲海と浮遊大地から成るn+2132 は、いわば断絶された幾つもの小さな世界の集まりと見ることができる。

それ故か、浮遊大地ごとによって20世紀相当の近代国家があれば、古代・中世程度の技術しか持たない国も散見された。

 

幾つかの国々を訪問したところ、この格差は主要となる航路上から外れている国家程その差が顕著に拡大する特徴が見られた。

 

雲海を渡る手段としては、飛行船などの船舶、巨鳥や翼竜といった騎獣などが広く各国で官民問わず活用されている。

また先進国といった国では軽い気体を使用する飛空船のみならず、浮力を起こす機関を搭載した空中蒸気船、航空機などが開発・実用化されている。

 

以下訪れた国々で、発展国をn+2132‐1群、途上国をn+2132‐2群と分けて一部情報を下に記す

 

 

 

・八洲皇国

国旗 :白地と薄紅色の八弁桜

君主号:大皇

区分 :n+2132‐2群

 

・千数百年の歴史を持つ島国。幾つかの島々の他、本土とする大地はその表面の大半が水面に覆われているという特徴を持ち、特に海産物の富んでいる。

 

・半世紀前は全土に戦火が広がる戦国の世であったが、三〇年前に終焉して以降は文治貴族と軍事貴族の合議制により安定した治世が敷かれている。

 

・しかし列強諸国の侵攻による周辺国の植民地化、保守派と改革派の政治的対立など近い将来激動の時代を迎えることが予想される。

 

・海鮮料理がとても美味かった。

 

 

 

・グラートノスク帝国

国旗 :黒地に双頭の竜

君主号:皇帝

区分 :n+2132‐1群

 

・雪と凍土に覆われた大陸の大国。専制君主制が敷かれ、空中戦艦をはじめとする強力な軍事力と国土は彼の国民の高い誇りの源となっている。

 

・しかし農耕の難しい不毛な地が多い上、大陸自体の沈下と崩壊現象が年々ゆっくりとしかし確実に進行しており、新たな新天地を求める軍事行動による衝突が頻発している。

 

・寒い中食べるスープは格別だ

 

 

 

・ギルド連合体

国旗:ギルド紋章

首相:総帥

区分:n+2132‐1群

 

・複数のギルドが寄り集まったことで構成された都市国家群。金と契約が絶対的なルールとして刻まれている。

・各国に支部を持つ冒険者ギルドの本部が存在しており、富や名声を求める冒険者が集うことで多種多様な人種を見ることが出来る。

 

・冒険者ギルドによる航路開拓・未開地探索の他、傭兵ギルドによる血の輸出も各国に行っており、武装中立の立場を確立している。

 

 

・空賊

首領:族長

区分:n+2132‐2群

 

・空賊という俗称から追い剝ぎや強奪を行う盗賊集団のイメージを受けるが、その実態は渡り鳥に乗って雲海を渡る遊牧民やジプシーに近い。

 

・過去には彼らを介した交易が行われ、その卓越した騎獣技術を活かした軍事力で各国に多大な影響を与えてきた。

 

・現在は銃火器や飛空船、航空機の発展によりその影響力は下火になりつつある。しかし、彼らしか知りえない飛行路など、その存在は無視しできないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記:主要航路から外れているにも関わらず現代並みかそれ以上の技術を有する国が確認できた。

よってこの例外的な成長が見られた国をn+2132‐3群と区分する。

 

・ノースネル島

国名:不明

国旗:不明

首領:不明

区分:n+2132‐3群(推定

 

・強酸雨と瘴気により近づくのが困難な島。(公害だろうか?

・最接近した船乗りの撮られた写真には霞の中に建つ幾つもの高層ビルらしきものが映っており、かなりの技術文明国だと予想されている。

 

 

 

 

 

●遺跡

各地の浮遊大地に点在して見られる遺構。n+2132‐3群が発生した要因として考えられる。

 

侵入防止の罠や凶暴な幻獣の住処になっていたりする場合がある。

幾つかの遺跡を訊ねた所「アルスヘイム」という共通した言葉が散見され、もとは一つの巨大な大陸を支配した超文明だったかもしれない。


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