LEGENDS to restart 未来からの来訪者と、再会を願う現代の子供達 作:natsuki
「シマボシさん……」
「単刀直入に言う。お前は敵か?」
シマボシさんの言葉は、至極尤もな言い方だった。当然といえば、当然なのかもしれない――ともあれ、シマボシさんとしても、この異質を少しでも取り除きたいなどと思っていたのかもしれない、けれど……。
「……申し訳ないが、いきなりそう言われても私はどう答えれば?」
「時空の裂け目を知っているか?」
「時空の裂け目……?」
女性の反応を見て、シマボシさんは深い溜息を吐く。
「そういう反応ということは分からないのだな……。全く、こうも問題ばかり起きると困るのだが……」
シマボシさんは何度も溜息を吐きながら、頭を抱えていた。
仕方ないと言えば仕方ないのかも。今まで時空の裂け目を閉じるために必死にギンガ団一丸となって頑張ってきて、漸く休息のひとときがやってきたというのに――。
「今、何が起きているんだ……? 私はただ、タイムマシンを使って……」
「タイムマシン? それは何だ?」
シマボシさんの言葉は、鋭く突き刺さる。
しかし、私はその答えを知っていた――タイムマシン、それは時間を旅する装置。けれども、私が暮らしていた世界でもそんなものは夢のまた夢だったような気がするけれど……。
「タイムマシンは、時間を移動できる代物。けれども、その具体的なギミックは我々にさえ理解することが出来ない……」
「時間を……移動できる?」
シマボシさんは首を傾げながらも、さらに話を続けた。
「ならば、時空の裂け目と何ら関係はないと?」
「関係はない……と思われるが、そもそも時空の裂け目とは? あの山の上に広がっていた、あの穴のような奴か?」
女性の言葉に、シマボシさんは頷いた。
「……その様子だと、本当に知らないようだな。しかし、そうなると困ったものだ……。ならば、どうしてあれはまた発生した? あれの元凶とされる存在は既に沈静化したはずではなかったのか?」
シマボシさんは頭を抱え、踵を返す。
「どちらへ?」
「私も暇ではない。その人間が時空の裂け目の主犯格でないのならば、やらないといけないことは変えなくてはならない。人々の不安を取り除くのが、我々ギンガ団の役目だからだ」
そう言って、シマボシさんは部屋を出て行った。
相変わらず、忙しい人だ。
それはさておき、先ずは目の前の問題を解決しないといけない……。
「ええと、それじゃあ……あなたの名前は?」
私は問いかける。
女性は少し考えている様子だ。どうしてだろう? 自分の名前であれば別に直ぐに言えば良いような気がするけれど。
「私は……オーリムだ。未来のとある地方でポケモン博士をしている。いや、正確にはしていた、というのが正しいのかな……。いずれにせよ、私がやって来たことが、この世界に何らかの影響を与えているというのであれば、私はどうにかしないとならない。そうだろう?」
何処か言い回しが遠回しな感じがするけれど、まあ、それはそれで良い。
ヒスイの人達に慣れてしまっただけのような気もするし。
そう思いながら、私は手を差し伸べる。
「……?」
「握手、しましょう? 別にヒスイの常識だとかそういうことではないのだけれど……。初めて出会った人に、握手をすることは何もおかしい話じゃないと思うよ?」
「フフ。それも――ああ、いや、そうかもしれないな」
何かおかしなことを言ったかな? と思ったけれど、人の笑いの沸点なんてそれぞれだ。
別に、自分がおかしなことを言っていないと思っていれば、それで良いのだ。
そう思って、私はオーリムさんと握手を交わすのだった。