これの次回作も頑張ってます
展開が急なのは許せ。
五月と六月。
六月とは、宝塚を皮切りに秋までG1レースがなくなっしまう。
というか、五月もシニア級以降は地方のかしわ記念とヴィクトリアマイルしか存在しない。そんで,私はダートに出るのをトレーナーに止められている。
別に走れない,どころかダートも芝とほとんど変わらないように走れる。
「いや、良心って知ってる?」
とはトレーナーの言葉だ。
良心とは。
短距離走るの許してくれたんだからダートだっていいじゃないか?
「うん,走れるのはいいんだ!verry good!けどね。君がG1の王冠を席巻しすぎていると『URA』の上の方から言われていると理事長から伝達があってね…」
誰だよ(真顔)。
URA…確か,レースを運営しているところだったはずだ。学校の授業,歴史でやった。
そこの上の方が言ってる?何言ってんだ。
外国じゃあたった1人が頂点をとることだってあるだろう。いつかのeclipseや、アメリカのBig red。そんな奴らを否定するのと同義に感じる。
なんだ?私が冠を取り続けるのが不満なのか?
別に,世間はたまーに私のことをドーピングだのなんだのとか,ダイイチやらシンボリやらメジロやらを貶めたいのか知らんがどれかの名家の隠し子だとか言ってくることがある。
なんなら血液検査まで受けることになったりもしたが、得られた結果は私が一般家庭の出だということと,私の血液型がo型であるということだけである。
「それは、私がいないシンボリルドルフと同じじゃないですか?」
「うーん…いやねぇ?シンボリルドルフはシンボリルドルフでミスターシービーやカツラギエースに先着を許しているから大丈夫!ヨシ!らしいんだけど。そのレースは君が勝利しているんだ。だから、ダメってわけ…と理事長には聞いている。」
「ちょっと理事長室行ってきます。止めないでください。」「止めるよ???」
離せ!
私は理事長に直談判しなくちゃいけないんだ!わかってくださいトレーナー!
「わかる!気持ちはわかるけど!「ならいいですよね。」待って。真顔で言うのやめて?怖い,怖いから。」
気持ちをわかってくれるなら行かせてほしいと思う。
と言うかここできちんと理由とかを説明してくれるところ優しいと思う。個人的にはウマ娘を大事に思っていない輩はこういう時なんでダメなのかとかを伝えてくれないし。
でも、私は行かなければいけないんだ。
ほら,手を離して。吹っ飛ばすぞ。あなたが鍛えた我がパワーをあなたにぶつけることになるぞ。
「静止!エンドレスブレイブ,それについては私が説明しよう。」
扉が開いて理事長が入ってきた。
ここから長ったらしい説明が始まったので要約する。
・今回の件,私としては本意ではない。
・URAの言い分としては,君が勝利を重ねることでレース業界の停滞を恐れているようだ。
・一強というものは人を退屈にさせるのである。
・けど私としては結構ムカつくし,理事会もイケイケゴーゴーだからURAに直談判しても特にわたしたちからは何も言わないし,サポートもしよう。
らしい。
つまり,理事長は助けてくれるということらしいのである。
ならばやるしかない。思い立ったが吉日という言葉の通り,これより私はURA本部に討ち入りを決行する!
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そして私は今現在URAの前にいる。
ちなみに服はスーツである。自宅から走って15分のところにあってよかったと思う。
自動ドアを通って中に入り、受付を済ませてそのまま無駄に上の方にある議場に向かう。はっきり言って私達学園側はキレ散らかしている。
呼ばれた部屋の扉の前に立つ。
無駄に大きくて重々しい扉である。いや、生徒会室もこんなもんだ。
ノックせずに扉を開けて、ズカズカと部屋に踏み込む。
すると、一気に部屋の中にいた者共の視線が私に向く。老人が一匹、老人が二匹。3匹4匹うじゃうじゃいる。虫みたいな言い方してるけど視線がねちっこくて虫の様にうざったいので虫である。
とりあえずそこの席に座ろう。私の名前が書いてあるからね,私の席だよな?
「それで、何の用ですか?」
「いやそれはこちらの言葉だろう。いきなり押しかけてきおって準備するこっちの身にもなれ」
ため息を疲れながらこの中で1番若そうな奴に正論を喰らった。
確かに唐突に押しかけたにしては席に名札があったりと準備はされていた。そういうところはちゃんとしているのか。
「なんでダート走っちゃいけないんですか?」
本題をぶつける。
1番高い席にいる奴が答えてくれるようだ。
「不都合だ。お前が勝利を重ねるたびに,我々URAの売り上げは下がっていっている。そもそも我々の収益とは,民衆がレースでウマ娘の勝敗を当て,当たったもののみが許されるさまざまな優先権だ。ミスターシービーの世代など強者が揃っていて大儲けであったが,お前の世代はどうだ。シンボリルドルフとお前が芝のマイル以上の冠を席巻している。シンボリルドルフはまだいいとして,お前はどれほど勝ち,どれほどの損害を我々に与えている?エンドレスブレイブ,お前は世間になんと呼ばれている?『絶対』だ。」
いや,そんなの知らないけど。
確かに皇帝だとかターフの上の偉大なる演出家だとか,エースだとか異名?二つ名?は見たことあるが,自分のなんて知ってるわけないだろ。恥ずかしいぞ。シンボリルドルフが皇帝を名乗ってるの見て恥ずかしくないのか不思議だぞ。
「絶対とは,レースにあってはならない。そして,その絶対が生まれると我々に主に被害がいくのだよ。今までの戦績を消すだのなんだのとは言わんが,もう貴様はレースに出したくない。日本で走るな。たとえお前がどんなに世間に訴えかけようとも,我々はお前のレース入りを認めんぞ。」
「宝塚ぐらい別にいいんじゃないですか。あ,あと有馬記念にも出たいです」
「図々しいな,人の話聞いてた???お前を出すと不都合だという話をしていたのに,何故日本の二大グランプリに出たいと???」
チッ,たった二つなんだからいいじゃん。
有馬記念と宝塚には連覇がかかっているので(建前)出たい。本音を言うともっと走らせろ。
それに突然お前レース出んな!日本から出てけ!って言われても,出る予定でローテ組んでるから。変えられないから。
あと民衆が黙っちゃないぞと言いたいところだが私がいないほうが盛り上がりそうなので別に民衆は私がいなくても問題なさそう。というか、盛り上がったほうが楽しいだろうし,そもそもレースは娯楽なので間違ってるのは私の方らしい。
この考えに反対なのは『唯一抜きん出た奴がいないとレースじゃねえんだよ!』と言うコアな考えを持つ奴であろう。
「いや、宝塚に出る予定でローテ組んでるんですよ。それに出れないとしてもまだ走りたいんですけど。」
「なら世界に行けばいいだろう。日本で走らなければもう我々はいいのだ。」
「日本で走りたいって言ってるんですけど。」
「だめだ。走りたければ世界で走れ。」
「日本で走りたいです」
「世界で走れ」
しばらくずっとこの繰り返し。
周りの老人たちは頭を抱えていた。全員が全員さっさと日本を出ていけと言いたそうな感じでかなりムカつく。
日本で走る,世界で走れ。その言葉を繰り返し続けること数十回。
ついに向こうが呆れたようで,折衷案を出してきた。我々の勝利である。
「では,こうしよう。お前は世界に出て,3年間向こうで3大グランプリを連覇して来い。無論,無敗でだ。そしたら帰国した年の有馬記念に出してやろう。」
勝つだけでいいらしい。
3大グランプリが何かとかは知らないが。3年間その三つを連覇すればいいらしい。それだけなら別に問題はないと思われる。
なので,快く承諾し帰宅することに。
席を立って無駄に広い部屋を出ると,1人のウマ娘がいた。
「やあ、ご機嫌いかが?」
「誰です?」
不審者か。かかって来い,蹄鉄のサビにしてくれるわ。
「そんなに身構えないで。私はしがない1人のウマ娘ですよ,URA幹部のね。」
じゃあなんでさっきいなかったのだろうか。
幹部だったらいると思うんだけどな。もしかして呼ばれてなかったとかかな?
「いやあ,寝坊しちゃって。それで,世界に行くんでしょ?色々手伝ったげる。」
なんだコイツ。
敵意や害意ないみたいだけど…まあヨシ!帰ろう。にしても,幹部が呼ばれているって言うのに寝坊したーですませていいものなのだろうかとか,そもそも名前とかなんなのとか,何故手伝ってくれるのかとか疑問は尽きないがそういうものなんだろう。
そのウマ娘の隣を通った時,
「また会おう,待っているよ」
と囁かれる。コイツストーカーか何かかと思いつつもそのまま今日は帰宅した。
その後,理事長に報告をして,トレーナーに挨拶。
まあ日本を出るからね,連れていってもいいけどURAは納得しないだろうし,これ以上あいつらと関われば面倒なことになるのがわかるのでここに置いていこうという判断である。
トレーニングのメニューは今までのをひたすら繰り返しておけばいいだろうし,しばらく連絡とれないだろうな。
「はい,というわけで世界に行きます。ではまた3年後。」
「ああ、3年後に君を負かすのは僕たちだ。」
「期待してますよ。」
色々話したり,困惑されたり色々あったが無事に話は終わった。
前にした約束の通り最強を育てて私を迎え撃ってくれるらしいので3年間待ってやる!
そんなことを思いつつ,只今空港で乗る予定の便を待っている。乗るのはイギリスのとある空港に行く予定の便である。サングラスに帽子という軽い変装をしてキャリーバッグ片手にロビーを歩いている。
と、もうそろそろ時間だ。
目的の飛行機の受付に行き,荷物をベルトコンベアに乗せたらロビーを出て飛行機に搭乗。持っているのは小さめなバッグのみ。入っているのは必要最低限のものである。
取った席は両隣が空席であり,1人でゆったりすることができるファーストクラスの席。寝るのだし,お金はたくさんあるのだからこれぐらいはいいだろう。
飛行機が間も無く動き出す。シードベルトをつけ,機体の揺れに身を任せていると意識は遠のいていった。
目覚めた時にはイギリスの地だろうと思い,そのまま眠ることにした。
まあ,その予測は外れることになるのだが。
あと2個ぐらいで最後。