TS転生チートオリ主は主人公が何度も死に戻りしている事に気づかない   作:りなう

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──終わりの敵

「早く、聖剣を渡してくれ」

 

 聖剣は泉の女神によって生み出される。

 魔王が発生すると同時に魔王に対しての対抗手段もまたこの世に現れるというのもどこか都合が良いように感じるが。

 俺の姿を見、女神は機械的な視線を向けてくる。

 いつもの事だ、今更気にしない。

 女神に対して最低限の礼儀を守らなかったところで何も起こらない事も、知っている。

 ……もう時期やってくる、魔物。

 魔王の魔力によって凶暴化した奴らはもう少しでこの村を襲い、大暴れする事だろう。

 それらを防ぎ、ステラを守る為にもまずは聖剣が必要になってくる。

 一応、今の俺でも魔物には勝てるだろうが、万が一のことがあってはならない。

 こんなどうでも良い場所でヘマをやらかすわけには行かないのだ。

 

「気をつけなさい、勇者よ」

 

 しかし。

 

「ん?」

 

 今回、女神から普段とは異なる警告を受け取る事となる。

 

「我らが敵、『輪廻機構』より生み出されし魔王が近くに顕現しています」

 

 

  ♪

 

 

 それは。

 闇から滲み出てくるように、現れた。

 

「ステラ、下がれ」

 

 俺に警告し、前に出るレザーに対し俺は困惑するしかなかった。

『あれ』は、誰だ?

 少なくとも人型をしている。

 暗いローブ、深くフードを被っているのでどのような形相をしているかは分からない。

 背丈は俺と同じくらいだろうか、つまり結構小さい。

 しかしそれは俺と同じく女であるという証左ではないだろう。

 

 正体不明の敵。

 しかし──その身から発せられる敵意、害意は告げる。

 

 目の前のものは、敵であると。

 

「……っ!」

 

 そして──その挙動を目で追えたのは奇跡だろう。

 瞬間移動に見えてしまうほどの高速移動。

 突然目の前に現れた『それ』の手には、光の剣。

 ばちばちと音を立てている、稲妻の刃。

 それが俺の胴体に向かって横薙ぎに振るわれる──

 

「くっ」

 

 辛うじて、防ぐ。

 氷の盾で受け止め、そのまま身体ごと吹き飛ばされる。

 そうして村の外まで弾き飛ばされたところで──追撃。

 空から降ってきた『それ』の振り下ろしを、俺は──

 

「……!」

 

 氷の剣で、迎え撃つ。

 体重が乗った一撃、しかし俺の方が微かに攻撃は重かったらしい。

 弾き飛ばし、しかし空中で軽やかに態勢を整えた『それ』はそのまま華麗に着地。

 稲妻の剣、その切先を俺に向け──刹那、突進。

 

「……やっ!」

 

 そして今度は俺が、振り下ろしで迎え撃つ。

 しかし俺の場合、手に持つ剣の他に複数の氷の剣を浮かべて退路を塞ぐ。

 絶対必中の一撃、その筈で放った一撃は、しかし強引な力技で破られる。

 

「ぐ……っ」

 

『それ』の身体から周囲に向けて、紫電が放たれる。

 球状に展開されたそれは氷の刃を砕き、そして俺の身体を、貫いた。

 浮遊感、背中に痛み。

 一瞬、視界が真っ暗に染まる。

 そして──光が戻ったと思った。

 

 

 

 

 

「てめえ!」

 

 そこには──ヒーローがいた。

 

「何者だ!!」

 

 聖剣、そう、聖剣だ。

 いつの間にか手に入れていたらしいそれを構え、『それ』に怒声を放つ。

 

「どうして……お前は!」

 

 ……俺もまた立ち上がり、兎に角アーサーの助けになろうと思った。

 しかしながら、俺が立ち上がった時にはすでに──そこには『それ』の姿はなく、ただアーサーが呆然と立ち尽くすだけだった。

 

「あ、れは……」

 

 アーサーの呟き。

 それは俺の身体を硬直させるに十分だった。

 

 

「魔王……?」

 

 どうして、ここに『それ』がいる?


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