BOM 前世で沼墜ちしたカードゲームのアニメへと転生して父親になりました   作:庫磨鳥

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応援および誤字報告本当にありがとうございます。
なにかとミスが多いと思いますが楽しんでくれるなら幸いです。気になった所があればご遠慮なくお伝えください。

お待たせしました。こんな感じですちょっとずつ進めていこうと思います。


再会してBOM(後半)

 

『現在のフィールド』

 

 

『シュバルツノ=ハクナ』 先攻

手札2枚 HP:8

フィールド:【シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ】 

 

シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ

BP:2 ATK:2000

属:霊 種類:EXM EXP→「シュバルツノW」

【効果】

≪コスト≫:HP×2枚を『コストゾーン』へと送る。≪制限≫:バトルタイムに移行した時にのみ発動できる。

このカードが墓地に存在する時、自分フィールド上の「シュバルツノ」と名のついたメインズの上に重ねてEXP扱いで展開する事ができる。その後、フィールド上に存在するメインズ1体を破壊する事ができる。

 

VS

 

『当星ヒタキ』 後攻

手札3枚 HP:9 

フィールド:【決勝将軍(けっしょうしょうぐん)クリスタルパイルズ】←【バスターパイル

 

決勝将軍(けっしょうしょうぐん)クリスタルパイルズ

BP:2→(3) ATK:1700→(2000) 属:機 

種類EXM EX→「パイル」


【効果】

≪制限≫:1ターンに1度のみ発動する事ができる。

メインズを破壊する効果を無効にする。


装備中:【バスターパイル

 

 

 



 

 

 

「私のターン。ドロー」

 

ドロータイム

 

ハクナの2ターン目へと以降、ドローによって手札が3枚となる。

 

『ハートテイクドロー』はせず。それも当然で“シュバルツノ”のテーマはHPをコスト要求してくる事が多いため、基本的には手札リソースを増やすよりもHPを温存する事が大事となってくる。

 

パワータイプに見せかけたテクニックタイプと良く言われていて、地球ではアニメの活躍や、その見た目から子供人気が高かったとされているが、勝つとなれば“シュバルツノ”というテーマはバトルの最中考える事が多く、難しかった。

 

しかし、7才のハクナは、そんな“シュバルツノ”を、完全にと言っても過言ではないぐらいに扱いきれていた。

 

フリータイム

 

「【シュバルツノK(カー)】を展開」

 

神の天罰によって肉体を滅ぼされ、魂を封印された新たな怪物が姿を現わす。

 

南米遺跡のような紋様が刻まれている石によって拘束されている牛の怪物が、【シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ】の右隣へと現われた。

 

「そのまま【シュバルツノK(カー)】の効果発動。このカードとHP1枚を『コストゾーン』へと送る事で、デッキから“シュバルツノ”と名の付いたメインズを1枚特別展開し、そのあとEXメインズを1枚『破棄ゾーン』へと送る」

 

 

シュバルツノK(カー)

BP:1 ATK:1000

属:霊 種類:M


【効果】

≪コスト≫:場に存在するこのカードとHP1枚を『コストゾーン』へと送る。

デッキから「シュバルツノ」と書かれたメインズを1体、自分『メインズゾーン』へと出す。その後デッキからEXメインズを1枚『破棄ゾーン』へと送る。

 

「【シュバルツノA(アー)】を特別展開、そして──【シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ】を『破棄ゾーン』に送る」

「……なに?」

 

ハクナはコストとして、効果元である【シュバルツノK(カー)】自身とHPを2枚『コストゾーン』へと送った。これによって8から()7となる。

 

牛の怪物が消え、代わりに同じ封印処置が成されたありの怪物が場に出る。それはいいが、気になったのは『破棄ゾーン』に送ったカードが予想外のものだった。

 

プレイミスとは言えないものであるが、このタイミングで『破棄ゾーン』に送る意味。それを考えた上で、予想される展開が、あまりにもハクナらしくないと思ってしまったからだ。

 

「──先生、このバトル、本気だから」

 

仮面越しであるが戸惑っているのを悟られたのか、ハクナは到底7才がしていいものではない、恐ろしいほどの決意を込めた目で、俺を見て来た。

「ハクナ……」

「HP1枚を『コストゾーン』に送る事で、手札・デッキから【シュバルツノA(アー)】を1体、メインズゾーンに特別展開する」

 

シュバルツノA(アー)

BP:1 ATK:1000

属:霊 種類:M


【効果】

≪コスト≫:HP×1枚を『コストゾーン』へ送る。

デッキから「シュバルツノA」を1体、自身の空いている『メインズゾーン』に特別展開する。

 

コストを支払った事で、ハクナのHPは6に成る。そしてデッキから2体目の【シュバルツノA(アー)】ヴォルフを挟んで反対側に特別展開された。

 

シュバルツノAは素でBP1持ちであるため、この場面で数を揃えて殴りに行くのは良い戦法である。しかし、今日のハクナは、絶対に俺に勝ちたいハクナは、ここで止まる気は無いのだろう。

 

──彼女はらしくない速攻によって、このターンで決着を付けに来た。

 

「──『アーカイブ』。【蹂躙(じゅうりん)怪物(かいぶつ)】を発動。自分のヴォルフと、先生のクリスタルパイルズを破壊する……!」

 

蹂躙(じゅうりん)怪物(かいぶつ)

種類:A


【効果】

自分フィールドの「シュバルツノ」と名の付いたメインズ或いは「シュバルツノ」をEXP条件としているEXメインズを1体破壊する事ができる。

【効果】

相手フィールドのメインズを1体破壊する。

 

「……クリスタルパイルズの効果発動。1ターンに1度、破壊を無効にする」

 

天から光の柱のようなふり注ぎ、2体のEXメインズに直撃する。クリスタルパイルの方は効果を発動して無傷、ヴォルフだけが破壊された。

 

「──幾つもの平行世界を滅ぼした。怪物の本気……それを見せるよ」

 

ハクナは、ここからが本番だと言わんばかりに、アニメのハクナと同じ決め口上を述べた。初めて聞いたが、ただただ悲しかった。

 

バトルタイム

 

「──バトルタイムに移行した瞬間。コストとしてHPを2枚『コストゾーン』へと送り、“先ずは”『破棄ゾーン』に存在する【シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ】の効果発動」

 

シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ

BP:2 ATK:2000

属:霊 種類:EXM EXP→「シュバルツノW」

【効果】

≪コスト≫:HP×2枚を『コストゾーン』へと送る。≪制限≫:バトルタイムに移行した時にのみ発動できる。

このカードが墓地に存在する時、自分フィールド上の「シュバルツノ」と名のついたメインズの上に重ねてEXP扱いで展開する事ができる。その後、フィールド上に存在するメインズ1体を破壊する事ができる。

 

「──原罪再解放、エクスペリメンツ!」

 

ついにハクナの『HP』は半分以下の4となり、先ほど己の『アーカイブ』で送ったヴォルフを【シュバルツノA(アー)】へと重ねた。

 

「場に出た事で空いてメインズを1体破壊する効果発動! クリスタルパイルズを破壊する……!」

 

クリスタルパイルズが破壊され、俺の場は完全ながら空きとなってしまった。しかしハクナには、まだ攻撃するつもりはないのだろう。なにせ場にはまだ、二体目の【シュバルツノA(アー)】が残っているのだから。

 

──少々ややこしい話も混じるが、ヴォルフを含めた“シュバルツノ”たちの、『破棄ゾーン』からの効果はEXP扱いにおける展開であるため、EXPのターン1の回数制限を消費する。そのため使用したターンは、EXP可能回数のカウントを回復でもさせないかぎり再び使うこともできない、それは同じ効果を持つ“シュバルツノ”にも言える事であった。

 

 

「続けて、コストにHPを2枚支払って“もう一体”の効果を発動──」

 

──コストの支払いで、削りに削ってハクナの『HP』は2に。

 

しかし、“シュバルツノ”の中には同じ出し方をできるが、EXPではなく特別展開として出すため回数制限に引っかからないEXメインズが1体だけ存在する

 

「原罪解放……! 全てを白へと()す、暴虐の化身の復活……!」

 

──それがアニメでも、この世界でもハクナのエースであるEXメインズであった。

 

「残り1体の【シュバルツノA(アー)】に重ねて【シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ】を特別展開!」

 

封印された魂は解放され幾多の世界を滅ぼした怪物が復活を果たす。地球では太古から恐怖の化身、その象徴として描かれてきた純正の怪物。神々しいまでに純白に輝く竜がフィールドに現われた。

 

がら空きの俺のフィールドを通して竜の怪物が、頭上からこちらを睨んでくる。心なしか、いや、確実の己の主であるハクナを悲しませている存在として、怒っているようだった。

 

単なる気のせいではないのだろう、なにせ、この世界の『BOM』のカードであるメインズたちには、確かな意思が宿っていると明言されているのだから。

 

「……速攻で来るのは正直予想外だった」

「負けられない……バトルだから……!」

 

“シュバルツノ”が求めるコストは、大半がバトルの勝敗に直接的に関係する『HP』が主である。そのためコスト管理をしくじると負けに直結してしまう“テーマ”であった。

 

絶対に負けてはならない世界を治める上座の娘としての学び、あるいはその血が訴えるのかハクナは教えるまでもなく、勝つことを大事とし、安定的で慎重な動きを好む。そんなハクナが“パイルズ”というテーマに対して、『HP』を2にするという危険を犯してまで速攻を仕掛けてきた。彼女の目論見通り俺は意表を突かれたのは事実だ。

 

シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ

BP:2→4 ATK:2000→4000

属:霊 種類:EXM EXP→「シュバルツノ」


【効果】

≪コスト≫:HP×2を『コストゾーン』へと送る。≪制限≫:バトルタイム中にのみ発動可能。

手札、または破棄ゾーンに存在するこのカードをEXP可能なメインズに重ねて特別展開する事ができる。この効果によって場に出たターン。タイムエンド時までBP値、ATK値の数値は2倍となり、2回攻撃ができる。

【効果】

このカードはウェポンカードを装備できない。

 

ドラッヘの効果は、分かりやすく己の素のパワーを全て2倍にして、それも2回攻撃できるという、バトルに終止符を打つに相応しい純粋なパワータイプであり、まさにここぞという時に出すに相応しいエースメインズであった。

 

「……行くよ先生」

 

ハクナの宣言に、二体の純白な怪物たちは咆哮をもって呼応する。

 

「【シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ】で先生に直接攻撃──〈暴光白死(ぼうこうはくし)〉……!」

「……っ!」

 

出かかった言葉を仮面の奥で耐える。ドラッヘは口先を天に向けると大きく息を吸い始めた、公式のガイドブックでは太陽や月や星が発する光を体内に蓄積させているのだと言う。充分に溜め込まれた光は、ドラッヘの体内で物体へと変化し、ブレスとして俺に放たれた。

 

『BOMボール』から出力されている『仮想(バーチャル)映像』だと分かっても、迫り来る光、視界が真っ白になる光景は未だに慣れない。メインズの直接攻撃が迫力ありすぎる、カードゲームの世界に転生して知りたくなかった知識のひとつだった。

 

「HP4ダメージ、内容チェック──クリック無し」

 

しっかりとプレイ行為を宣言しながらドラッヘのBP分の枚数、『HP』のカードを4枚を捲り、内容を確認してから『破棄ゾーン』へと送る。

 

「続けて、もう一度ドラッヘで攻撃……!」

 

再び光のブレスによって視界が白に染まる。9から()5へと、そしてドラッヘの二度目の攻撃によって『HP』は残り1と成ってしまった。

 

まだハクナのメインズゾーンには、BP2のヴォルフが存在し、攻撃を通してしまったら俺の負けになるだろう。

 

──だが『BOM』は、そう簡単ではない。対抗手段は場や手札以外にもあるのが、このカードゲームだ。

 

「……内容チェック──俺は『“フラッシュ”アーカイブ』、【リタイア・アラート】を発動! デッキから、BP値0、アタック値1000以下の機属性メインズを1体を特別展開する」

「────あ」

 

リタイア・アラート

種類:A(F)フラッシュアーカイブ。


【効果】

デッキからBP値0、ATK値1000以下の機属性メインズを1体、自分のメインズゾーンへと特別展開する。効果が発動したターン終了時、そのメインズは破壊される。

 

『フラッシュアーカイブ』、主に『フラッシュ』と呼ばれるカードは『HP』がブレイクされて捲られたさいに有った場合、回数制限無しで発動できるアーカイブカードだ。

 

そう、俺ががら空きでありながら余裕……ではないにしろ、焦らずにプレイを見続けていられたのは、流れを止められるカードが『HP』に有ると分かっていたからである。

 

俺のターン時の最初、【パイルズ・ボルト】の効果でデッキサーチをした主な理由は、望んだカードがHP落ちしていないかという確認、それと同時に“HP落ちしたカードがなんであるか”を確認するためだった。

 

「……俺は【ギアパイルズ】を特別展開する!」

 

戦況が劣勢となって、古い骨董品の機械ですらも兵器改造されるようになった末期。博物館に眠っていたのを起こされて、ちんけな杭を持たされて前線へと立つ事となった歯車式のロボットが俺のフィールドに現われた。

 

「っ! ……ヴォルフでギアパイルズを攻撃……!」

 

ハクナは少しばかり考え込んだあと、ヴォルフで【ギア・パイルズ】を攻撃し破壊。これによってハクナのメインズは全ての攻撃が終了し、俺はHPを1残す事となった。

 

「……タイムエンド」

 

本当ならこのターンで決める筈だったが防がれた。そんな気持ちが分かりやすく見て取れるぐらいに彼女らしくない長考の末に、ハクナは渋々とターンを終了させた。

 

タイムエンド

 

ハクナのターンが終了した事で、ドラッヘのBPおよびATK値が元に戻る。

 

シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ

BP:4→2 ATK:4000→2000

属:霊 種類:EXM EXP→「シュバルツノ」


【効果】

≪コスト≫:HP×2を『コストゾーン』へと送る。≪制限≫:バトルタイム中にのみ発動可能。

手札、または破棄ゾーンに存在するこのカードをEXP可能なメインズに重ねて特別展開する事ができる。この効果によって場に出たターン。タイムエンド時までBP値、ATK値の数値は2倍となり、2回攻撃ができる。

【効果】

このカードはウェポンカードを装備できない。

 

ドロータイム

 

「……ドロー」

 

俺のターンとなり静かにデッキからカードをドローする。『ハートテイクドロー』は行なわない。

 

4枚となった手札を見ながら深く考える。それはプレイについてではなく、ハクナの事であった。

 

──ハクナは、自分のプレイスタイルから逸脱した速攻で決着を付けに来たのを除いても、らしくないプレイを幾つもした。

 

いつものハクナであったのならば、俺がデッキを確認して、ダイヤモンドパイルズしか展開しなかった時点で、攻撃を止められる『フラッシュ』が有ると警戒していた筈だ。それに攻撃は最初にヴォルフでしていたのならば、それならば2打点から入り、それからドラッヘの二回攻撃を行なえば、俺のHPを9、7、3と捲る枚数を少なくできた。

 

細かいようだが『BOM』、あるいはカードゲームでは、こういったプレイングが勝敗を分かつ場面はきっと珍しくない。俺が教え、ハクナが大事にしてきた事であった。

 

その理由は明白で、俺に勝ちたいから。負けたくないからという気持ちが先行し過ぎてしまったのだろう。ここに来て自分自身の成熟しきっていない子供の心がプレイに影響を与えてしまった。

 

二年の長い付き合いだ。表情こそ出ていないが、ハクナが己の失敗に気づき落ち込んでいる事が分かった。俺の一挙手一投足に反応して脅え始める。

 

生徒に、子供に、そんな顔をさせてしまっている。これは俺の所為だ──だけど、勝たなければならない。この世界では『BOM』が全てだから……!

 

「──俺は『破棄ゾーン』に存在する。【ギアパイルズ】の効果発動。手札から“パイル”と名の付いたカードを1枚『破棄ゾーン』に送ることで、このカードをメインズゾーンへと特別展開する」

 

ギアパイルズ

BP:0 ATK:500

属:機 種類:M


【効果】

≪コスト≫:手札から「パイル」と名の付いたカードを1枚『破棄ゾーン』へと送る。≪制限≫:この効果は1ターンに1度のみ発動可能。

破棄ゾーンに存在する、このカードを通常展開扱いで自身のメインズゾーンへと展開することができる。

 

再び歯車のロボット兵が俺の場へと展開される。

 

通常の展開扱いであるため、メインズの展開制限を消費してしまうが、『破棄ゾーン』から展開できる。また“パイル”と名の付いたカードであるならば、メインズでもウェポンでも『破棄ゾーン』へと送れるコスト使用の使い勝手が、かなり良い。

 

そして個人的に、『破棄ゾーン』に存在する“パイル”の名の付いたカードの枚数を変える事なく、EXPに必要なメインズを場に出せるというのが、このカードの最もたる強みだと思っていた。

 

──俺の『破棄ゾーン』には現在、【リタイア・アラート】と、使用しなかったもう1枚の『フラッシュ』を除いた、“パイル”と名の付いたカードが10枚以上存在する。それが意味するのは、このバトルの決着であった。

 

「全てのパイルズ。その始まりであったとされる鋼鉄の機械兵。ここに立ち上がれ、エクスペリメンツ──」

 

躊躇わないために敢えて言った前口上は、自分でも疑うほど沈んだ声であった。俺は【ギア・パイルズ】にカードを重ねた。

 

「──【殲滅巨兵(せんめつきょへい)パイルズ・オリジン】を展開……!」

 

古きロボット兵に、どこからか現われたパーツたちが纏わり付き、純白の竜であるドラッヘ以上の巨大なロボット兵となった。その姿も、どこか古くさく、動く度にギギギと音が鳴り、装甲表面には錆と苔が纏わり付いている。

 

「あ……う……」

 

もし、相手が前回戦った近衛の様な奴であったのならば、オンボロなロボットはと馬鹿にしていたかもしれない。でもハクナは彼の秘めたる能力を知っており、そして、何回も見てきたであろう俺がこれからするコンボを予想し、苦悶の声を漏らした。

 

「……パイルズ・オリジンの効果発動。コストとして『破棄ゾーン』に存在する“パイル”と名の付いたカードを5枚、『コストゾーン』へと送ることで、ターン終了時まで相手メインズ1体のアタック値を0にする」

 

殲滅巨兵(せんめつきょへい)パイルズ・オリジン

BP:0 ATK:2000

属:機 種類:M EXP→「パイルズ」


【効果】

≪コスト≫:『破棄ゾーン』に存在する「パイル」と名の付いたカードを5枚『コストゾーン』へと送る。≪条件≫:相手メインズを1体指定する。

指定したメインズのATK値をターン終了時まで0にする。

 

「“先ず”はドラッヘのアタック値を0に……続いてもう一度コストを支払ってヴォルフのアタック値も0にする!」

 

シュバルツ・ウアシュプルング・ドラッヘ】と【シュバルツ・ウアシュプルング・ヴォルフ】の高いATK値が0に成る。

 

コスト要求が、それなりに重い割に相手のATK値を0にするだけの内容は、正直言って使いにくい部分はある。だが、この効果はターン1制限が無く、コストさえ支払えるならば、何回でも使えるという利点があった。

 

なにせ“パイルズ”というテーマには、相手メインズを破壊するだけで『HP』にダメージを与えられる、貫通持ちのEXメインズが存在するのだから。

 

「『アーカイブ』……このカードの効果によって『コストゾーン』に“パイル”と名の付いたカードが7枚以上存在する時、コストを支払わずに発動する事が出来る」

 

もしかしたら、俺の運命力が働いたのかもしれない。そのカードは地球では後に完全な上位互換とあるカードが現われた事で出番に恵まれなくなったカードであり、上限である3枚を揃えるのは至難の技である事から、単に数合わせのために入れていたに過ぎないカードであった。

 

それが今、俺の心境に、このバトルに、あまりにも適していた1枚となっていた。

 

「──俺は【(くい)だらけの戦場(せんじょう)】を発動! パイルズ・オリジンを素材として、デッキから“パイルズ”と名の付いたEXメインズを1体、場に特別展開する!」 

 

(くい)だらけの戦場(せんじょう)

種類:A


【効果】

≪コスト≫:HP×4 ≪条件≫:自分メインズゾーンに存在する「パイルズ」と名の付いたメインズを1体

手札・デッキから「パイルズ」と名の付いたEXメインズを1体、指定したメインズに重ねて特別展開する。

【効果】

自身の『コストゾーン』に7枚以上「パイル」と名の付いたカードが存在する場合、コストを支払わず、効果を発動してもよい。

 

「あらゆるものに研磨され、偽りから真なる将へと到った当機を見ろ……! 【超貫通将兵(ちょうかんつうしょうへい)ダイヤモンドパイルズ】を展開する!」

 

巨大なロボット兵から罅割れていきブリリアントな光が漏れ出した。その身が崩れたかと思えば、中から最も美しく頑丈だとされる鉱石の機体を手に入れたロボット兵。ダイヤモンドパイルズが現われた。

 

「そして、ダイヤモンドパイルズ()アヴェンジャーパイル】を装備する」

 

超貫通将兵(ちょうかんつうしょうへい)ダイヤモンドパイルズ

BP:1→2 ATK:1000→1500

属:機 種類:EXM EXP→「パイルズ」


【効果】

≪貫通≫:相手メインズとの戦闘によって勝利した場合、BPダメージを与える。

【効果】

 このカードに装備されている「パイル」と名の付いたカード1枚に付き、相手メインズに攻撃が可能。


装備:【アヴェンジャーパイル

 

アヴェンジャーパイル

種類:W 装備可能:「パイルズ」】


ATK+500

【効果】:自身の『HP』が、相手よりも少ないときの場合、追加でBP+1を得る。

 

「──私の……負け……?」

 

──静かに見守るだけだったハクナは、己の敗北を悟り、ぽつりと声を漏らした。

 

ハクナは確かにらしくない失敗をした。だが、幾つかのリカバリー手段を残していた。

 

ハクナの『破棄ゾーン』にはドラッヘとヴォルフ2体のATK値を1000上げられる。【シュバルツノW(ヴェー)】が存在しており、もしもダイヤモンドパイルズが装備によって2000以上になったとしても返り討ちにできるようにしていた。俺のデッキに入っている『ウェポン』では、ダイヤモンドパイルズが1ターンで3000を超える事は、そうは無いと分かっていての対策でもあった。

 

シュバルツノW(ヴェー)

BP:1 ATK:1500

属:霊 種類:M

【効果】

≪コスト≫:このカードを『コストゾーン』へと送る。≪制限≫:このカードが『破棄ゾーン』に存在する時のみ発動できる。

「シュバルツノ」および「ウアシュプルング」と名の付いた自分メインズ全てのATK値をタイムエンド時まで1000アップさせる。

 

それが2体ともパイルズ・オリジンの効果によってATK値が0に成った事で、効果を発動しても現在、ATK値1500のダイヤモンドパイルズに勝てなくなってしまった。

 

それにもう1つ、ハクナが持っている手札は恐らく、条件さえ合致すれば相手のターンでも発動できる『クリックアーカイブ』である、【温情(おんじょう)自覚(じかく)】だ。もしも万が一、俺が3000以上のメインズを出した際には、これでバトルを止めるつもりだったのだろう。

 

温情(おんじょう)自覚(じかく)

種類:A(C) ≪クリック≫:発動条件に適した場であれば何時でも発動可能。


【効果】

≪コスト≫:HP×1をコストゾーンへと送る。≪条件≫:相手メインズに「シュバルツノ」、または「ウアシュプルング」と名の付いた自分メインズを攻撃された時に発動可能。

攻撃されたメインズを手札に戻し、その戦闘を無効化する。戻したカードがEXメインズだった場合、そのまま『破棄ゾーン』へと送ってもよい。

 

しかし、『ウェポン』を1枚装備したダイヤモンドパイルズは、相手メインズに2回攻撃ができる。1度無効にした所で、ドラッヘとヴォルフ、どちらかが必ず残り、俺は残ったほうを攻撃してしまえば貫通効果によって、ハクナの残り2の『HP』を0にする事ができる。

 

2体並べなければ、コストを支払い過ぎなければ、無理に1ターンで決めようとしなければ、また違ったのかもしれないが……ハクナが持っている対策札だけでは、ダイヤモンドパイルズの攻撃を止めきれない。このバトル、俺の勝利が確定した。

 

「──ぐす」

「…………」

 

本当ならバトルを宣言するべきなのに、ハクナの目に涙が溢れ出て、プレイを止めてしまう。

 

──ハクナは、“儀式の巫女”に選ばれた子だ。それ故にシュバルツノ家でも、扱いが特別で、親ですら直接会うことを禁じられた立場であった。そんな彼女が交流を持てる数少ない大人が教育を与える講師であった。

 

俺以外にも、彼女に接する大人は居たが……“儀式の巫女”とでしかハクナに接する事は無かったという。そう、これは自惚れでも何でも無く、ただ事実としてハクナにとって頼れる大人というのは、俺しかいなかった。そんな俺がある日突然居なくなった時、どれほど辛いと感じたのだろうか? 裏切られたと思っただろうか?

 

「やだ……ひとりになるのは……やだよ……」

 

俺は、このバトルで勝ったとしてもハクナを遠ざけるつもりは全く無い。ただ話がしたいだけだ。だがハクナが欲しいのは、また俺が傍に居てくれるという保証なのだ。

 

──俺が第二世界に、鳥巻町に来たのはハクナのためだったとしても、勝手に居なくなってしまった俺自身が、何を言った所で信頼を得ることはできないだろう。だからすべき事は勝ってから話をするべきではなく、バトルの間にでもいいから、居なくなった理由とか語るべきだったんだ。

 

このバトル中、話しかけるタイミングは幾らでも合ったはずだ。なのに会話を勝利条件に設定してしまったために気がつけば勝つ事だけど優先していた己に気付いて、反吐が出そうになる。

 

──もう遅いかも知れないが、せめてなにも言わず居なくなった理由を話そうと思ったら、後頭部に強い衝撃を受けた。

 

「ろ、六華……?」

 

後ろを振り向けば、怒り心頭と言った感じの表情の六華が立っており、その手には商品となるBOMカードのパック箱を持っていた、しかも縦持ち……その、六華さん、それは普通にヤバイ凶器ですよ?

 

「バトルしてると思って様子を見ていたら、子供を泣かせるなんて……」

「いや、それは……誤解ではないが」

「どんな理由にせよ、事情にせよ泣かせたらだめでしょ! ああもう、大丈夫? ごめんねこの人、『BOM』だと全力出しちゃうみたいで」

 

突然の事態に、目を真ん丸にして硬直しているハクナに寄り添う六華。なにも否定できる所が無く俺は静かに項垂れた。六華に背負われた明里と目が合うが、ぷいっとそっぽ向かれた……辛い。

 

ちなみにバトルは続いており、心なしかメインズたちが若干気まずそうにしていた。すまん、なんにしても、もう少しだけ待ってくれ。

 

「あ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。私は六華、この子は明里って言うの、あなたは?」

「…………」

「彼女の名前はハクナだ。あちらの世界で俺が家庭教師をしていた子だ」

 

ハクナは、まだ戸惑っているのか口を開こうとはせず、俺が変わりに彼女の素性を簡単に説明する。

 

「そっか、あなたがヒタキさんの……じゃあヒタキさんに会いに来たのね?」

「うん……それで、一緒に住んで欲しいって『BOM』でバトルして……いました」

 

六華に何かしら感じ取ったのか、ハクナはゆっくりと事情を話した。

 

「暮らすって……家の人は何て言っているの?」

「家には私だけしか居ません……誰も居なくて……だから先生に傍に居て欲しくて」

「……ハクナは明里と同じ理由で、この世界で一人暮らしをする事になったんだ」

「また子供を……ほんと、どうなってるのよ」

 

もう六華の中では、アルカデウスの株はストップ安かもしれない。まあアニメでも視聴者から散々言われていたし、俺も言っていた。人としての常識を考えればアルカデウス、正確に言えば貴族たちの所業はシンプルに最低である。

 

「……分かったわ。だったら(うち)に来なさい」

「え?」

「……え?」

「あー?」

 

少し考えた六華は躊躇いなく、そう提案した。言われたハクナも、聞いていた俺も思わず聞き返してしまうほど驚いた。ちなみに明里は単に反応しただけである。

 

「ここ、今日から私たちが暮らす家なんだけど、ハクナちゃんも一緒に住まない? ここでご飯を食べてもいいし、寝ても良い、いつでも来て良いわ、もちろん強制はしないから、好きな時に自分の家に帰っていい」

「で、でも……私は儀式の……」

「私には関係ないわよ。頼れる大人がいないんでしょ? ウチに来ればヒタキさんも居るし、遠慮なんてしなくていいんだから」

「え、っとあの……」

 

敢えて強引な感じで話を進めて居るであろう六華、それに戸惑い答えが出せないヒタキ、そんな光景に俺は、どうしようもなく笑いそうになった。

 

──これが、BOMプレイヤーとして正しい事かは分からない。だけどハクナの先生として、大人として、俺はハクナの背中を押すことにした。

 

「──俺は、このバトルを降参する」

「先生?」

 

降参宣言を受け取った『BOMボール』は、俺の敗北を認証してバトルを終わらせた。メインズたちは消え去り、『BOMボール』は蜘蛛の子を散らすように、どこぞへと居なくなってしまう。

 

「……俺の負けだな」

 

──この世界では『BOM』の勝敗での約束は、かなり重い。それこそ口約束であれど守らなかったら、社会的死が待っているといっても過言ではないくらいに、だったらうん、守らないと行けないな。

 

「一緒に暮らすか、ハクナ」

「……いいの?」

「ああ、もちろんだ」

 

ハクナは俺を見て、そして確認するかのように優しく笑う六華を見て、そして遠慮がちに頷いた。

 

──本当に、六華には救われてばかりだな。

 

「うん、じゃあそうね。ハクナちゃん、お腹空いてる?」

「は、はい、ペコペコ……です」

「なら、少し早いけどお昼にしましょうか? あ、ヒタキさん」

「はい」

 

圧が強い名前呼びに、俺は思わず背筋を伸ばして応えた。

 

「ごめんなさいだけど、遅れてやってきた荷物を店に運び出すのお願いできます?」

「もちろん、任せてくれ……」

「それ終わるまで、ご飯はお預けですからねー」

「あー」

 

そういって、六華たち三人は店の中へと入っていった。元より俺が中へと入れる予定だったのだ、罰になっていないなと、今度こそ吹き出してしまった。

 

「──ありがとな、六華」

 

今日はできれば、ひとり寂しくお昼ご飯をしたくないと、気がつけば置き配されていた荷物を急いで店の中へといれはじめた。

 

 

 

+++

 

 

 

──それからの“9年間”、原作が開始されるまでに何があったのかは、ちょっとずつ話していこうと思う。

 

「──お父さん、お母さん。それじゃあ学校行ってくるね!」

「行ってらっしゃい、明里」

「あっ、ハクナお姉ちゃんからメッセージ来た……もー、そんなに心配するなら家来れば良いのに……」

 

ただ言えることは、この9年間、俺達は四人家族として生きてきた。

 

星のような白混じりの黒髪の“娘”が二階から降りてきて、相変わらず仮面を被ったまま、店番をしていた俺に満面の笑みを浮かべてくれた。

 

「──お父さん、行ってきます!」

「ああ、車と不審者には気を付けてな」

 

元気いっぱいに学校へと行く娘を見送り、俺は、これから起こるであろう原作に物思いにふける。

 

 

 

 

 

 

「────変えてみせるさ」

 

 

 

 






――前世の地球においては“シュバルツノ”シリーズは最初期のパックから存在していたカードでしたが、販売当初はデザインはいいけど、専用のウェポンカードが無く、素の火力が高い初心者用。そう思われていた。アニメにて使用者であるハクナ登場回に発売された新パックにて、テーマ本来の姿を表した。

ヒタキの『HP』には【リタイア・アラート】とは別に、もう1枚発動しなかった『フラッシュ』カードが有ります。これは効果条件が合わなかったわけではなく、こ43で負けたとしても使っては駄目という判断からです。


絶光(ぜっこう)
種類:A(F)


相手メインズを1体破壊する。

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