「必死にやったんですよ、これが」
この作品の初心にかえって曇り曇らせ、情緒破壊をやるぞっ
「なぁ、瑠菜ちゃんって可愛いよな?」
「なんだよ…いきなり」
今は体育の授業の時間で準備運動の為にペアになっている
ちょうど背中合わせでお互いの腕を組み稲司を背負って体を伸ばしている為にコイツの顔は見れないが真面目そうな顔をして馬鹿な事を考えているんだろう。
「いや、だってさ…瑠菜ちゃんってまた先輩に告られたんだろ?今年でもう何回目だ?」
「………っ………三回目だ」
そう俺達兄妹が中学校に入学してから四ヶ月の時が過ぎて、初対面で
「よっと…まあ、瑠菜ちゃん可愛いから仕方ないよな」
稲司を地面に降ろして今度は稲司が俺を背負い、重量によって背中が伸びるのが分かる。
「他人事だからいいかもしれないけどな…最初は大変だったんだぞ?」
「ああ、あの先輩の件だろう?」
そうだ…入学してちょっと過ぎた頃に瑠菜が少し良くない噂がある先輩に放課後にこっそり呼び出しを受けたみたいで…それが瑠菜一人で向かったのが良くなかった。
最初は穏便にお断りをしていた瑠菜に痺れを切らしたのか噂の先輩が強引に腕を掴み瑠菜に自分と交際するようにしつこく迫ったのだ。
ちょうど瑠菜が一人で人気のない場所に向かった所を見たというクラスメイトの報告を聞いた俺は急いで駆け付けて瑠菜の元に駆け付けたと言う経緯だ。
あの時の事はまだ鮮明に覚えている。
「お兄さまッ、違うんですッ⁉私は…そんなつもりではッ⁉」
駆け付けた俺が先輩を追い返してから瑠菜の体に手を回して介抱すると、よほど怖い目にあったのか気が動転していて。
「違うんです…違うの、おにぃさまァ…」
あの利発な瑠菜が髪を振り乱し露わになった額の傷跡を指でなぞりながら…しまいには皮膚に爪を立てながら地面に泣き崩れて。
何度も何度も傷跡を掻き毟ろうとするので腕を掴み瑠菜に落ち着くように声を掛け続け。そこからクラスメイトの助けを借りて学校から連絡を受けた母さんが迎えに来てくれた。
家に帰ってからも瑠菜が落ち着くには時間がかかり、その週は念の為に瑠菜には学校を休んで貰った。
俺も時間が許す限りは瑠菜の傍に居るようにしたが、男の俺が近付くとビクと脅えるように身体を抱いて震えしまって…うまくコミュニケーションが取れなかった。
その間は母さんに瑠菜のお世話をお願いしていたが…美味しい物を食べる事が好きな瑠菜が…オヤジが作ったオムライスでさえ、ろくに食べようとしないで…本当に大変だった。
瑠菜を怖い目に合わせてしまった俺はいったい何度学習すればいいんだと自分に怒りを感じ、強く机を叩いてしまった…拳がジーンと痛むが瑠菜の負った心の痛みに比べれば全然ヌルい。
俺が瑠菜のお兄さまなんだ、しっかりしろ。
そこから大分落ち着いた瑠菜に学校での呼び出しの時に一人になるのは危ないのと呼び出しを受けたら直ぐに俺に知らせて欲しいと伝えたら…。
「それだけで…許してくれるんですか?」
「ああ…そうだ」
「分かりました、お兄さま」
そう言うと瑠菜が小指を差し出して来て俺は自分の小指を絡ませて指切りげんまんをした。
「しっかり見ていて下さいね、お兄さま」
やはり、まだ不安なのか念を押してくる瑠菜に俺は自分が情け無くなってしまう。
そこから学校に登校した瑠菜からは逐次何処に居るとか何をするのか事細かく俺に報告してきた。
もちろん放課後などに瑠菜の事を呼び出す要件については俺は瑠菜と一緒に行き少し離れた場所で待機するようにした。
もう二度と同じ失敗をしないように。
「ふぅ…あの後は俺も瑠菜に着いていくようにしたからな」
稲司が俺を地面に降ろしてストレッチを交代する。
「まあ、あれからお前がなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「あぁ…」
瑠菜を守るように行動していたら先輩達に目を付けられたんだろう…多分最初に瑠菜に告白した先輩とかが流したのだろうか…。
「
フンと自分の頭が地面にぶつかるまで屈み、背中合わせの
「たくよっ、今日で身長が3cmくらいは伸びたわ」
「無駄口を叩くならまだやろうか?」
「勘弁してくれよ、騎士様」
「おいこら、伊達眼鏡」
準備運動を終えた稲司を降ろしてやり愚痴を聞きながら、稲司の肩に拳を押し付けてグリグリしてやる。
「うん、しょ、ほっ…」
今日も学校の授業が全て終わり…クラスメイトと共に掃除を進める。
今週は私達の班は教室の掃除をしないといけないので、これが中々大変だ。
一旦机を後ろに纏めてから掃き掃除に加えて黒板の清掃と多岐にわたり…前半戦が終わってから机をまた運ぶと言う前世は男に加えて体力があったから良かったが、この身体は少し非力なのだ。
一回、二回と机を運ぶのに往復するなら大丈夫だけど、数が多いから少々骨が折れる。
「瑠菜ちゃん、机を運ぶのはやっておくよ」
「ありがとう…相川君、助かります」
彼は私の隣席になってるクラスメイトの男子生徒。
体力が無くて困ってる私をよく助けてくれる優しい同級生です。相川君とはまだ数カ月の付き合いですが、きっと彼はいい人なのはよく伝わります。でも、どうして私ばっかりに優しくしてくれるのか…うーん、答えは分かりません。
「さて…これで清掃は終わりましたね」
「あ、あの…いちのs」「瑠菜、帰るか」
「はい、お兄さま…それじゃあ、相川君また明日」
清掃が終わり、今日は部活動の無い日なので…愛すべきお兄さまと一緒に帰宅出来ます。
そう言えば…お兄さまが声を掛ける前に出て相川君が私に何か言おうとしたような気がするけど…まあ、重要な内容だったらまた別の日に言ってくれると思うので今はお兄さまとの帰宅に全神経を使います。
「悪いな、相川…」
「お兄さま、何か言いました?」
「いや、なんでも…」
私の全神経を集中させてようやくボソッとお兄さまが何か呟いたのが耳で拾えたけど、お兄さまが問題ないと言うなら大丈夫です。
今日はお兄さまに甘えてくっついて帰っちゃいましょう。
ギュッ。
「おい、瑠菜…」
「ダメですか、お兄さま?」
ああ、最近お兄さまの体が成長しているのかより男性らしくなってる気がします。
もっと逞しくなった腕に瑠菜が抱かれたらきっと幸せになるのは間違いなしです。
「ねぇ、噂は本当だったみたい」
放課後とは言え、まだ学校にはポツリポツリと学生がいます。そう言えば最近お兄さまと一緒に居るようになってからよく他の人の視線が私達に向けられるような気がします。
ははーん?さてはアレですね…?私達
ならば寂しい人達に幸せをお裾分けしなければ…更にぎゅっとお兄さまの腕に抱き付く。
「おーお、お熱いね、騎士様は」
どうやら、お兄さまは騎士様と呼ばれているようですね…前世の時は厨二病が発症していたのでその気持ちはよく分かります。二つ名とか無償に欲しくなりますし。
「…っ」
お兄さまが顔を伏せて…下を向く。どうやら私達のラブラブっぷりを見られて嬉しいんですね?私も同じ気持ちです。でもお兄さまは少しピュアなのです。
でも、あまり下ばっかり向いているのは危ないですね…?。ならば地面よりも私の事を見て貰いましょう。
「お兄さまは私を見てくれるんですよね?」
「あ、ああ…そうだな…俺は約束したもんな…俺は瑠菜のお兄さまなんだ」
うーん、やっぱりお兄さまのお顔は素敵ですね。地面なんて詰まらない物より私を見ることで幸せになり周りの様子を見れるので一石二鳥です。
うーん、これは兄虐の予感(光悦)
TS娘が取り乱す様子、イイね。
答え合わせ
瑠菜(早く終わんねーかな?)
先輩
「聞いてるのかッ」(腕を掴み)
お兄さま
「瑠菜ッ」
瑠菜
「お兄さまッ、(浮気だと思われた?)違うんですッ⁉私は…(こんなカスとは)そんなつもりではッ⁉」