自分の書いたゲーム転生小説の主人公に成り代わってしまった主人公の話   作:ぱgood(パグ最かわ)

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我が名はピーマ…………いや、魔導師Pだぁぁぁぁぁぁぁ

☆☆☆

 

その日、俺、真道才は不思議な男と出会った。

 

「我が名は魔導師P。このピーマンの被り物とプロデューサーのPから取った素晴らしき名前を持つものだ。

お前に大切なものを守る力を与えるために現れた。」

 

その男はピーマンの被り物をして、俺に大切なものを守る力を与えるとか、胡散臭い事を言ってきた。

正直、こんな怪しい奴、無視しても良かったのだが、その後に言った言葉が俺をこの場に押し留めた。

 

「さあ、選べ、人間と戦人の混血よ」

 

それは誰にも言っていなかった俺の秘密。

最近少しだけ仲良くなった剣凪にも、地元の友人たちにも言ったことのない俺の最大の秘密。

 

知られれば、後ろ暗い研究機関に捕まってもおかしくない。

だから、知っているのは俺と親父だけの筈…………。

 

それを何でこいつは知っているんだ‼

☆☆☆

 

決まった。

俺は階段の上から真道才に手を差し伸べるポーズをとる。

恐らく、日も良い感じに落ちてきて、逆光もこの演出の一助になってくれてることだろう。

 

クックック。

 

なんかビーマンの被り物を見つけたときにピンと来たんだよな。

こういう、果物被ると不思議と強キャラ感というか不気味な感じも出るし、身バレ防止も出来て一石二鳥だ。

 

いやぁ、きっと、真道は今頃、内心で「こいつっ⁉何者だ?」ってなってんだろうな。

 

主人公(偽)の為に用意してあげたイベントなんだ。

存分に楽しんでくれ!

 

「………何が目的だ。」

 

うぉぉぉぉ、めっちゃ考え込んで警戒心全開で話しかけられてしまった。

主人公にこんな対応させるなんて完全に主要キャラですわ。

まあ、真の主人公は私なんですがね?

 

「ふむ、先ほどの話を聞いていなかったのか?

私は魔導師P、先ほども言ったが「そうじゃない!」ふむ、では何が聞きたいんだ?」

「何で、俺のことを知っている。どうして接触してきた。別にこんな怪しい接触の仕方をしなくても良かっただろう?

………だって、お前…………

 

 

 

 

 

 

 

…………制服着てんじゃん。

ここの学園の生徒だろ?」

 

…………確かにな。普通に生徒として近づいて信頼を勝ち取ってから、実は~って感じで事情を話せばいいよな。

うん、それはそうだ。

そうだわ、普通に。

お前、天才か?

 

「何か言ったらどうなんだっ!」

 

えぇぇぇ。そんな剣幕で言い募られても…………。

想定してなかっただけだし、えぇぇっと、えぇぇっと。

何かあるかなぁ、理由。

考えろ俺、何か、何か、ある筈だ。この場を切り抜ける突破口が‼

 

「それでは遅すぎる。遅すぎるんだ…………。」

 

「⁉どういうことだ?」

 

何か、何か言わなきゃと思って口を開いたら、切り抜けられたわ。

あ、因みに嘘じゃないです。マジで、一番初めのイベントは割と目前まで来てます。

 

いやぁ、人間極限状態だと限界を超えるっていうけどマジだったんだね。

 

何とかなりそうで良かったぁ

 

「…………近々、魔物の群れがこの学校襲う。それまでにお前には強くなってもらう必要があるんだ。」

「な、なに?」

 

ここで、演出の一環として目を伏せる。

あっ、そう言えば被り物してるから目を伏せても気づいてもらえないわ。

うっかり、うっかり。

 

「どういうことだよ、それ。それで麗や愛華(まなか)、千弦(ちづる)たちが、危険に遭うのか?」

 

あっ、メインヒロインたちは大丈夫です。

この一度目の襲撃は只の様子見みたいな所もんだし、そんな強くないから彼女たちはむしろ大活躍して学校の注目を集めるはずだ。

 

まあ、真道君にとって彼女たちの存在が大きなウエートを占めているのなら言わない方が良いだろう。

 

「それは…………言わないでおいた方が良いだろうな。」

 

俺にとってね。

 

だって言ったら緊張感とか無くなるかもしれないだろ?

困るなぁそれは。

 

あっ、でも最終的には君のためでもあるからね?

ほら、物語が進めば敵も強くなるかもだしね。そうなったら君の大好きなヒロインちゃんたちも命の危機に瀕するかもしれないじゃないか?

 

ま、そんな先のことは俺も知らないんだけどね。

 

「……わかった。お前の手を取ってやる。ただし!少しでも怪しいと思ったら斬る」

 

俺の言葉に悩んでいた真道君は決心をしたかのように俺の目を見てくる。

…………それはそれとして、今は怪しくないってことでOK?

 

いや、今茶化すのはやめよう。

大切な局面だしね。

 

「ああ、それでいい。私としても君がこの世界を救ってくれるのであれば他のことに口出しはしない」

 

と言いつつ、俺の命に関わることにはバリバリ口を出すつもりだから、そこんトコよろしく。

 

「ふん、何を考えてやがるんだか。………それで、俺は何をすればいい?」

「まず明日、キミは魔剣を配布される訳だが、その際に搭載する外付けチップは《   》と《   》だ。いいな?」

「あ、ああ、でもそれで大丈夫なのか?」

「俺を信じるんだろ?」

「分かったよ。信じるとは、言ってねぇけどな」

「俺からすれば同じようなものだ」

 

ふっ、話もついたし、スタイリッシュに立ち去るか。

 

…………いや、スタイリッシュに立ち去るってどうやるんだよ。

意味わかんねぇよ。

一応窓ついているし、飛び降りる?

いや、足折れるだろ。ねん挫で済むかもしれないけど。

 

もっとこう、一瞬目を離したすきに居なくなるとかしたいんだけど…………。

いや、全然目ぇ離さないなあいつ。

 

どうしよう。歩いて帰るのはちょっとダサいよな…………。

 

「おい、才。そんなところで何してるんだ。」

 

よっしゃぁぁぁぁぁぁ。今だぁぁぁぁぁぁぁ。

 

俺はスッと階段の折り返しの所で四つん這いになる。

完全に隠れた。恐らくあちらからは見えていないだろう。

見えてたら超ダサい。

俺はその体勢を維持したままカサカサと移動を開始する。

 

「えっ、麗?ああ、変な奴と話してて、っていない」

 

よしっ。

 

これはスタイリッシュと言っても差し支え無いのでは?

完全にかっこいい立ち去り方だったわ。

 

クックック。

計算通り。

 

………因みにこの体勢で階段を上っている人って客観的に見てどんな印象を持たれるのかな?

 

☆☆☆

 

いやぁ、にしても上手くいきましたなぁ。旦那。

って旦那なんてどこにもいないやないかぁ~い。

 

でも軌道には乗ってきているな。

悪くない。悪くない。

 

悪くないと言えば、この親子丼も悪くない。

この世界に来る前の高校じゃあ、食堂なんて言ったことなかったし、大学も食堂なかったからめっちゃ新鮮だ。

 

つうか、もう一度高校生活を始められると考えれば割と悪くない?

いや、命を懸けなければいけない訳だから普通に悪いわ。

 

危うく騙されるところだった。

自分に。

 

にしても、俺は勿論ながら他の生徒も死ぬかもしれないんだよなぁ。

例えば目の前にいる俺のフレンドとかも。

 

「ん、どうかしたの?

音長君」

「いいや、ただ、三年間一緒に過ごせればいいなって思ってさ」

「ちょっ、不吉なこと言わないでよ。」

 

まあ、この学校は単位とかが理由で退学とかは無いからな。

退学になる場合は相当ヤバい問題を起こしたか、魔物との戦いで命を落としたかの二通りしかない。

 

どっちだとしても縁起が悪いことこの上ないな。

 

ま、それはそれとして、今はこのフレンドとの食事を楽しむか。

 

別に冗談で言った訳じゃないしな。

いや、出会ったばかりだけど彼は良い奴だし、問題を起こすようには見えないから、前者が理由でいなくなることは無いだろうけど。

魔物と遭遇してバイバイすることはあり得るからな普通に。

 

そうなってくると、少なくとも大切な友達よりも、友達百人作った方が良いのかな。

…………いや、友達百人作っても、腹の内は分からないし、恨みを買っててどさくさに紛れて『ぐさり』とかもあり得るから、信頼できる友達数人の方が良いな普通に。

 

「音長君、うんうん頷いてどうしたの?」

「いや、キミと友達になれて良かったなって思ってたんだ。」

「えっ?どうしたの急に」

 

急にとは失礼だな。

しかも、何だいその訝しむ顔は?

俺は常に俺の友人になってくれた子には感謝を述べているからな。

 

ほんとだぞ?

 

むしゃくしゃしてきたぜ。

こうなったら、ご飯をかき込んで、部屋に帰るしかない。

 

むしゃむしゃ、あっ、ここ、笑う所だから

 

「うわぁ、今度はご飯かき込みだしよ。しかも、漫画でしか見たことのないかきこみ方だし……どうしたの?ちょっと、怖いよ?

それとも、君はそう言う人なのかな?僕は今、君と友人になったことを後悔してるよ」

 

むっきー。

許せん。許せんぞぉぉぉぉ。

 

そんなことを言って許されるのは美少女だけ⁉

フツメンの君なんてなぁ。うっかり打ち首にされたっておかしくないからな?

 

ごっくん。

 

「ご馳走様。先に帰ってるよ。」

「うん、お大事にね」

 

いや、元気だからな⁉

それはそれとして、体は大事にするよ。

ありがとう。

 

 

因みにこの後普通に仲良く風呂に入った。大風呂だったからね。

それで分かったことなんだけど、彼はどうやら素で毒舌らしい。

これから、仲良くやっていけるか不安になってきたぜ。

 

☆☆☆

 

次の日、なんともうはや魔剣をくれるらしい。

 

パチパチパチ。

知ってたけどね。

 

普通ならちょっと早いかなって思うかもしれないけど……まあ、それも当然なのかもしれない。

だって、一刻も早く実践に遅れる防人を育てないといけない訳だからね。

そう考えれば、速いに越したことは無い。

むしろ、当日に渡されなかっただけ、温情なのかもしれない。

あ、それとマジックチップの配布は後日になるよ。

どのマジックチップが欲しいかを記入用紙に書いて提出しろって言われた。

俺は普通に両方防御系だ。

 

先生は防御と攻撃両方持ってる方が良いとか何とか言ってたけど、そんなことをすればリスクを増やすだけ。

戦闘は他の人間に任せて、守りに徹した方が良い。

特に、俺の場合はマジックチップが届く日、つまり、というか何というか、この日に襲撃を受ける訳だけど、バリバリ真道君に張り付いて守ってもらうつもりだから、防御特化で良いのだ。

 

あっ、一応言って置くと全然タンクとかやる気ないよ。

流れ弾防ぐので精一杯だろうしね。

 

本当頑張ってくれよ、真道君!

君だけが頼りだ。

 

あっ、因みに魔剣の形状は刀だ。

これは個人的にかっこいいからって言うのもあるけど、物語的には魔剣は刀身から魔力を吸収し、肉体強化のマジックチップを発動するという設定だから、自ずと自前の魔力で肉体強化を発動する際も同じ手順を取る必要がある。

 

そうなった際に両刃だと格好がつかないし危ないから、片刃の剣になった、てな感じ。

 

つまり、刀の峰の部分に触れて肉体強化を出来るようにしたってことだね。

 

どう?

カッコいいし、中々いいアイデアだと思わない?

 

「おいっ!音長!何サボっている。貴様だけ追加で素振り百回だ」

 

ひぇぇぇぇ。素振りサボってるのばれて、更に追加された。

最悪だ~。

 

因みに剣凪さんと真道君は涼しい顔で素振りをこなしていた。

流石は代々魔剣士の家系である剣凪さんと戦人とのハーフの真道君だ。

 

……それに、俺の友達でかなりの毒舌家な毒ノ森(どくのもり)君も滅茶苦茶素振り頑張ってる。

 

どうせ、殆ど意味なんてないのに…………。

でもそれって、きっと生きるのに一生懸命ってことなんだろうな。

 

………俺も死にたくないって思うなら、多少はガンバらきゃだな。

どれだけ努力しても強キャラには勝てないだろうけど、この努力が生きるか死ぬかを分ける可能性は十分にあるんだもんな。

 

よしっ、ちょっと頑張ってみるか‼

 

あっ、それでも真道君が希望ってことは変わらないから、修練を怠るんじゃないぞ。

 

ま、今のところはそんなことにはならないか。

滅茶苦茶頑張ってるし。

ただ、ヒロインとイチャコラするばかりで修練を怠ったら、「エッ」な場面の時にピーマンの被り物して出てきてやる。

 

☆☆☆

 

魔剣を使っての素振りの時間、音長という生徒が教師である私からは見えづらい場所でサボっていた。

こういう生徒は例年いる。

国を守る立場であるにも関わらず、学生気分が抜けていない生徒というやつだ。

 

だから、私はその生徒に注意を促し、ついでに罰則を与える。

すると、音長という生徒は考えを改めたかのように真剣に素振りに取り組む。

 

ようやく、自分がこの国と、そして魔力を持たない市民を守る希望であると理解したらしい。

 

にしても、学生気分の抜けていない生徒を一声で改心させるとは私の教師としての腕前には恐れ入るな。

 

まったく!

 




どうでもいい補足


因みにシチュエーションが踏切の場合は線路渡った後、電車が来たタイミングで並走を試みていました。

こんな感じ。


(真道サイド)



「それでは私は帰るとしよう」


謎の男はそう言うと踏切を渡る。
そして、こちらを振り返る。何か言い残したことがあったのだろうか?
顔が分からないため、何がしたいのか、何が狙いなのかは分からない。
暫くすると電車が来て男の姿が電車によって隠される。


「いない…………」


そして、電車が通り過ぎた時には既に男の姿はいなくなっていた。


(音長サイド)


はぁはぁ、ぜぇはぁ。
いや、きっつ。スタイリッシュにその場から離れるのもらくじゃ、無いぜ…………。
よ、よし、そろそろ歩こう。




て、あれ?目の前に知らないおばあちゃんがいる。




……………………電車と一緒に走ってたの見てました?


☆☆☆








おばあちゃんが何時からいたのか、主人公が何故走っている時に気づかなったのか………

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