エルデンエムブレム   作:yononaka

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火山館の成果を見せるとき

 ない。

 

 ……どこにもない。

 

 てっきりオレはワープの杖は砦に置いたままなものかとばかり思っていた。

 どこにもない。

 砦のどこにも

 金目のもの及びゴールドそのものならあった。

 ざっと15,000ほど。それはいい。とてもありがたい。

 

 だが、ワープ、ワープの杖だ。

 あれは金じゃ買えない代物なんだ。

 

 オレは亡者のような足取りで砦を彷徨く。

 

「──……」

 

 音、いや、声?

 

「──……けて」

 

 近くはない。

 

「たす──……けて」

 

 確かに聞こえた。

 周りを見渡す。音の方向には壁。

 が、オレはこう見えてもメッセージに踊らされて現地時間で一週間以上壁を叩き続けた男。

 こういうのところには隠し扉があるに決まっている。

 

 ハンマーを取り出し、ひとまず眼の前の壁をぶっ叩く。

 がぁん、その音と共に壁が脆くも崩れる。

 やはり隠し通路だ!

 

 その眼前に現れたのは下半身剥き出しのサムシアンらしき男と、

 年端もいかない少女が組み伏せられている姿。

 

「な、あ、か、壁を壊し……?」

「た、助けてえ!!」

 

 少女のその声に即反応する。

 手に持っていたハンマーを横薙ぎに振るうと、サムシアンの男はまるで風に飛ばされた木の葉のように吹き飛び、水風船が壁にあたったように破裂した。

 

「大丈夫か?」

「あ、う……う、うわぁあぁああぁん!!!」

 

 少女が泣き出す。

 うーん、もしかしてオレは間違ったことをしてしまったのか?

 「そういうお楽しみ」をしていた二人の邪魔をしてしまったとかなのか?

 などと考えそうになったところで、少女がオレに抱きついてきた。

 わんわんと泣く彼女を見て、とりあえずオレの妄想は的はずれであったことは安堵しつつ、

 やるべきこともないので彼女の頭でも撫でて落ち着かせんとした。

 

 ───────────────────────────────

 

 彼女が泣き止み、落ち着いて話せるようになる。

 その辺りのことは省略するが、オレが発見(破壊)した通路の先はサムシアンの主力商品の一つである人間を保管する場所だったらしい。

 この先にあるオレルアン王国南部の街から連れてこられた女子供だそうだ。

 

 状況を説明するためにシーダたちのもとに彼女らを連れて行くと、シーダは商品になりそうだった人々を元の場所に返してあげたいと願い出る。

 

 オレとしても次に行く場所は決めていなかったわけだし、それに同意した。

 

 それなりの人数がいたために、取りまとめ役として先程の少女がそれを担当することになった。

 

「今更だが、名乗っておくか

 オレはレウス、故も知らぬ騎士(ナイト・エラント)だ」

「わたしはフィーナ!よろしくね、騎士様!」

 

 ───────────────────────────────

 

 夜が明けはじめた頃にサムスーフの拠点からオレルアンに向かい、出立する。

 ペガサスは傷こそ癒やしたものの、空を飛ぶことをどうにも嫌がっており現在は捕らえられていたものの中で、怪我を負っているものを乗せている。

 

「ねえねえ、騎士様!」

「レウスでいい」

「様を付けて呼ばなくてもいいの~?

 男の人はみんなそれが嬉しいって言ってたけど」

「どこの世界の『みんな』かは知らんが、オレは別に気持ちも入ってない様に興奮はしねえなあ」

「ふぅん……

 ね、レウス!レウスはどこから来たの?」

「狭間の地」

「はざま?」

「遠い場所だ、誰も知らねえくらい遠い場所だよ」

 

 物怖じせずにオレに質問を投げかけ、オレも別段隠すようなこともないので返答する。

 シーダやレナはオレの出自が気になっていたらしく、側で耳を傾けていた。

 

「どうしてこんな物騒なところまで来たの?」

「物騒……サムスーフのことか?」

「ううん、そうじゃなくて。アカネイアのこと」

「物騒、物騒ねえ」

 

 つい、ククク、と笑いを漏らしてしまう。

 人によってはせせら笑ったと取られかねない笑いだったろう。

 そういう意図は無いが、笑ってしまった。

 

「オレが来た場所ってのはな、話が通じる奴は殆どいなかったし、

 話が通じるかもって思ったやつは時間が経ったら頭がパーになっちまったのか、

 殴りかかってくるような場所だった

 それに比べればここは天国みたいな場所だ」

 

 両手を開くよう(すしざんまい的)にして、オレの話を聞いていたシーダとレナを示して、

 

「オレがいた場所にこんな美人は殆どいなかった

 ゼロじゃないが、少なくともオレには縁のなかった相手だった

 美人がいて、話が通じて、いきなり殴りかかってくる奴がいなくて──」

 

「騎士殿ーッ!

 て、敵襲ですぞ!」

 

 リフが声を上げる。

 

「いきなり殴りかかって来るのはいるみたいだよ、レウス」

 

 フィーナが苦笑を浮かべてそう言った。

 


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